音楽は人間だけのものか

 音楽には人を動かす大きな力があることは、誰もが認めるところであろう。では、音楽から影響を受けるのは人間だけなのだろうか。決してそうではないようである。動物や、植物さえも音楽を「聞く」ことができるようである。

動物と音楽

 今から15年ほど前のことであるが、2月のこと、ソ連のセンヤビン海峡の重い浮氷塊の後ろに取り残された推定1,000ないし3,000頭の白クジラが通る道を切り開くため、ソ連の砕氷船が急派された。しかし、ソ連では北極イルカとして知られるこのクジラは付いて来ようとしなかった。「最後にある人が、イルカは音楽に敏感な反応を示すことを思い出した。そこで、上甲板から音楽を流し始めた。ポピュラー、軍楽、クラシックなどである。クラシックが白クジラの趣味には一番合っていた」と、イズベスチヤ紙は伝えている。やがてクジラはその船に慣れきってしまった。「クジラはその船を四方八方から取り囲んだ。子供のようにはしゃぎ、飛び跳ね、氷の浮かぶ海原に広がっていった」とその記事は続けている。24kmにわたって氷を砕いたあと、船はようやく2月の末にクジラを外海に連れ出した。
 日本のある酪農家は、人の目が届きにくい傾斜地に散らばる牛を集める効果的で手間のかからない方法を探してきた。それで、牛を音楽で管理できないものかと実験を行なった。雌16頭に1日2回から4回、13日間にわたって「春の小川」を3分間ずつ聞かせ、聞いた直後に好物のえさを与えた。雌が子牛を産む冬の間は音楽をやめた。それから「学習」済みの10頭と、子牛9頭を牧草地に出して、同じ曲を流した。「2分間でみんな集まった。約4ヶ月ぶりに聞く音楽だ」と朝日新聞は伝えている。

植物と音楽

 20年ほど前に、アメリカ、コロラド州のデンバーにあるテンプル・ブエル大学で、注意深い監督のもとに一連の実験が行なわれた。その結果、長時間ロックにさらされた植物が、スピーカーとは逆の方向に向き、倒れて枯れたことが明らかになった。1ヶ月続けられたその実験で、一つの植物群に向かってはセミクラシックの音楽をスピーカーから流し、もう一つの植物群に向かっては別のスピーカーからロック音楽を流した。音量および生育状態は同じで、音楽の様式だけが異なっていた。セミクラシック音楽に向けられた植物はスピーカーの方に傾き、良い成長ぶりを示したが、ロック音楽に向けられた植物はスピーカーと逆の方向に傾いて枯れたということである。
 スピーカーを製造する日本のある音響メーカーは、音楽を流すことで温室の植物の発育を促すシステムを開発した。技術者の説明によると、音楽の刺激で植物の気孔、つまり葉の表面にある、植物が呼吸するための微小な穴の開きが良くなる。とはいえ、どんな音楽でもよいというわけではない。毎日新聞は、太鼓の音をずっと聞かせたら、枯れてしまったというインドの植物の例を引き合いに出し、植物は速いテンポの音楽、特にロックンロールには弱そうだと伝えている。音楽を植物の発育を速めるのに利用している大阪のある農園は、「音楽はクラシックに限らなければならない」と述べている。少なくともこの農園のメロンやトマトは良い趣味を持っている―モーツァルト、バッハ、ビバルディがお気に入りである。



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