第5回:数字で見る成績

かなり、ひさびさの血統講座です。
今回は、ちょっと今までとはちがった話題。血統というか競馬の知識みたいな話ですから競馬に詳しい方にはくだらないかと思います。
知らない方にはそれなりにタメになるはずなので興味あれば読んでみてください。
で、何を説明するかというと種牡馬が優れているかどうかの判断材料ともなる数字のお話です。
話題のメインとなるのはアーニングインデックスという数値です。
JRAのHPでも公表されているリーディングサイヤー(以下LSと表記します)というデータを中心に数字を見ていきましょう。

まず、このLSというものは競馬関係の雑誌やHPでもほとんど掲載されているデータですから、簡単にデータを見ることが出来ます。
JRAのHPに掲載されているデータをもとに話を進めます。
下のリンクを開いて、数字を参照しながら読んでもらうといいでしょう

平成14年リーディングサイヤー(JRA発表)

さっそく表を見ていきます。単純な数字が多いのですが一通り説明します。
では表の左側の数字から見ていきましょう


1.出走頭数
これは簡単ですね。何頭の馬が出走したかというだけのことです。
実際には種付け頭数の制限やら種付け料やらの問題が絡んできますが、頭数の多い馬ほど生産者側での人気は高いと見てよいでしょう。
また、出走頭数が多い(種付け頭数も多い)ということは種牡馬自体がひじょうに元気で健康であることも意味しています。


2.勝馬頭数
出走した馬のうち何頭が勝ったかという実に単純な数字です。
これが少なければどうにもならないわけです。


3.出走回数
この回数は全出走馬ののべ出走レース数ですから、1頭あたりの出走数が多ければ当然大きな値となります。
出走頭数の割にこの数字が小さい場合などは、あまり産駒が丈夫とはいえず休みがちな馬が多いことになります。
[ 出走回数 ÷ 出走頭数 ]で産駒の健康状態への影響度はある程度つかめるでしょう。


4.勝利回数
勝利回数は勝馬ののべ勝利数ですから、クラスが上がっても勝ちつづける馬がいなければこの数字は増えません。
勝馬頭数の割に勝利回数がさほど多くない場合はクラスの壁に当たって沈むケースが多いわけで、産駒のレベルを計る材料になるでしょう。


5.賞金
これが多い順にランキングが付けられます。たくさん勝つことというほかに重賞級の馬を輩出することが重要となります。


6.1出走賞金
1回の出走で獲得した賞金の平均です[ 賞金 ÷ 出走回数 ]
着順は出来るだけ上で、また賞金の高いレースに出走していることが必要とされます。


7.1頭平均賞金
[ 賞金 ÷ 出走頭数 ]で出された数字です。
これが多いかどうかの比較は後述のアーニングインデックスを用いることになります。


8.勝馬率
この数字は種牡馬にとってひじょうに重要なものです。[ 勝馬頭数 ÷ 出走頭数 ]で算出されるこの数字は高くなければ優れた種牡馬とはいえません。
低い場合はいわゆるクズ馬(この表現は個人的にはあまり好きでないが)が多いということになります。
また、種牡馬の系統を古くに遡って見ていくと繁栄や衰退を予測しうる数字ともいえるのが勝馬率です。
これが低い種牡馬はそのラインも先細りとなって消滅してしまっているものも多いことがわかります。
将来的に子孫を繁栄させていけるかどうかは高い勝馬率を持つ種牡馬を輩出させていけるかどうかにかかっています。
計算には出走頭数(Runners)を用いていますが、産駒数(Named Foals)を使う場合もあります。
Winners/Named Foalsについては生涯成績の評価などに用いられます。
単年度の評価はJRA同様、出走頭数を用いたほうが都合が良いでしょう。
ここでの勝馬率は単年度評価ですので、LS上位の馬でも30〜40%という数字になっていますが、通算成績で見るとさらに高い値となります。
中央競馬においては通算成績で見た場合には40%くらいが平均となります。
また、ここではあくまでも中央競馬の数字しか見ていませんが、海外の種牡馬とは単純には比較できません。
各地域によって番組編成のちがいがかなりあるため中央競馬の数字はかなり低く見えてしまいます。
過去の中央競馬LS上位と海外のLS上位とを比べると、例えばアメリカとは大きく差があります。
北米LSの上位は単年度でも55〜65%という高い勝馬率ですから、このへんを知っていればある程度の比較はできるでしょう。


9.アーニング・インデックス
表記上、他のメディアではEarning IndexとかAverage Earning Indexと表記されていることもあります。またそれを略してEIやAEIとしていることもあります。
先の勝馬率と併せてこの数字が種牡馬の活躍を見る上でもっとも使いやすい数字となります。
[ 1頭平均賞金 ÷ 全ての競走馬の1頭平均賞金 ]で算出されます。
つまり全体の平均に対して、ある種牡馬の産駒はどのくらいのレベルかというものを見る上で適した数字になります。



例えばサンデーサイレンスの場合EI=2.14ですから、中央競馬の出走馬全体の平均賞金よりもサンデー産駒は2.14倍賞金が多いということになります。
一般的にはEIが2.0以上ならばかなり優れた種牡馬といえます。また、1.0未満は平均に満たないわけですから劣っていると考えることができます。

この考え方がひじょうに使い勝手が良いとされるのは、賞金額変動の影響を受けないということです。
単純な賞金額の比較となると過去の種牡馬とは当時の賞金総額もかなり違ってくるため補正しなければなりません。
こういった事情から世界的にもアーニングインデックスによる評価が用いられています。

注意しなければならない点もあります。
例えば、平成14年で見た場合、デインヒルのアーニングインデックスがとてつもなく高い点に気付くでしょう。
これはデインヒル産駒の出走頭数が37頭と少ないことが関係しています。
デインヒルはシャトル種牡馬といってその年によって種付けをする地域が異なります。
日本で走っている馬には日本で生まれたものもいますが、海外から輸入されたものもいます。
輸入された馬の場合、選りすぐりのものだけをかなりの期待を背負って購入されてくるわけですから、活躍するのも納得がいきます。
国内で種付けされる場合にも、毎年種付けのチャンスがあるわけではないのでトップクラスの牝馬が相手として選ばれるわけです。
つまり日本で走っているデインヒル産駒は少ないながらも極めて質が高いということになります。
さらに、その中から大物が出れば賞金も上がりますのでEIは高くなります。
平成14年度はファインモーションという怪物牝馬の大活躍もあってこれだけ高いEIになったわけです。
デインヒルは極めて優れた種牡馬ですが単純に日本でのEIだけでサンデーサイレンスよりも優秀だと考えることはできません。
こういった点に注意すればアーニングインデックスは大変利用価値のある数字だと思います。

もうひとつだけ注意が必要な点として、このEIという数字だけでは繁殖牝馬の質はわかりません。
つまり産駒が優秀だからといって本当に種牡馬として優れているのかは見極めにくいという欠点があります。
こういった点はJRAのHPではわからない問題ですが、知っておくと便利なので説明します。
種牡馬の評価を産駒の活躍から求めるのがアーニングインデックスです。
さらにその産駒の半兄弟たちの活躍によって交配した牝馬のレベルを表すのがコンパラブルインデックスという数字です。
Comparable Indexを省略して普通はCPIと表現されています。

なんだかよくわからないでしょうから下のカコミを見てもらいましょう。


EIとCPIを見ればその種牡馬が本当に優秀なのかが見えやすくなります。
上記カコミの例は解り易いように示しましたが、実際は膨大なデータ数となるため簡単には計算できません。
どこかで目にすることがあれば参照されると面白いと思います。
パソコンでJRA−VANのデータを利用している方なら計算可能です。

ちなみにリーディングサイヤーの上位でこのEI/CPIが特に優れているのはサンデーサイレンスとブライアンズタイムの2頭です。
この2頭は他の種牡馬よりも遺伝能力が高く、またそれを産駒にしっかりと伝えているといえるでしょう。
逆にEI/CPIが低い種牡馬にはティンバーカントリーが挙げられます。
ティンバーカントリーのCPIは高めでなかなか優秀な牝馬に種付けされているといえます。
その割にEIが低く、残念ながら他の種牡馬と比較して優秀だとは言いにくいでしょう。

10.平均勝距離
この数字から産駒の特徴をつかむのは難しいです。
例えば長距離戦は番組が少ないので、本質的に産駒にステイヤーがどのくらいいるのかわかりません。
数字にはっきりと表れているサクラバクシンオーなんかは短距離を得意としていることがわかりますが・・・
現実には距離の他にも坂の有無なんかも重要ですから、この数字だけではあまり意味がないかもしれませんね。


以上で説明は終わりです。
実はこういった話題は話すと長くなるというか結構奥が深いのですがあくまでも超初心者向けということで・・・
また、詳細なデータはJRAでは公表しておらず、さまざまなデータを得るには少々お金が必要となってしまいます。
そこまでは一般的には必要ないかと思いますが、血統の楽しさが競馬の魅力のひとつでもあることをJRAの方々は忘れてしまったんでしょうかね。
なんか素っ気無い説明になってしまいましたが、今後血統講座をわかりやすく説明するためにも必要な知識ですのでわからないことがあれば質問して下さい。
次回からの予定ですが、これまでの五十嵐理論から離れた話題にふれてみたいと思います。
実際のところ五十嵐理論が絶対とは思えない点がありますし、血統理論が確立されていない現状を考えると、いろんな考え方を柔軟に受け入れていくほうが理解も深まるのではないかと考えます。
では、次回をお楽しみに。

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