第4回:第3回までのまとめと実践

第1〜3回の内容から血統を知る手がかり的なものが見えてきたかと思います。
多少、読みもの的なところもあったせいか、今になって見てみるとなんだかわかりにくい内容だったようにも思えます。
今回はこれまでの内容のまとめを掲載し、それに基づいて実際の競走馬の血統表をみていきます。

1.クロスについて

競走馬にその能力を伝えるのは父と母共通の祖先(クロス馬)です。
クロスは間に2世代以上存在する場合は有効ではありません(3×6などは無効)。
全兄弟の馬は存在する血が同じなので同じ馬とみなします
父側3×母側4という場合は世代の若い3世代目側(父側)から影響を与えることが多い。
クロス馬の形態としては以下のタイプに分類されます。
 ・系列ぐるみのクロス:クロス馬がさらに代を追ってクロスとなっているもの
 ・中間断絶クロス:間に1世代入る場合
 ・単一クロス:系列にも中間断絶にもならない単一の場合
影響の大きさは、系列ぐるみ>中間断絶>単一 となる。

2.評価のポイント
評価のポイントについては故・五十嵐氏の唱えた名血の8条件に基づいて8項目をチェックします。

2-1.主導勢力
 強力な系列ぐるみを形成し全体的な分布から明らかに影響が大きいクロス馬。
 2世代目の4頭で分けられる4グループにバランスよく存在することが望ましい。
 血統表ではっきりとわかるくらいの存在であるほうが能力遺伝がされやすい。

2-2.位置と配置
 クロスの世代は近いほうが望ましく同世代か1世代ズレくらいが良い。
 前述の4グループに存在するクロス馬は大きな偏りがなくバランスよく配置されているのが良い。

2-3.結合度
 別のクロス馬どうしの祖先の中に同一のクロス馬がいることを結合といいます。
 主導勢力と他のクロス馬は結合していることが望ましい。
 結合せず孤立しているものは減点対象。

2-4.弱点・欠陥
 5代目の馬を基準に6〜9代目までにクロス馬がいないことを欠陥という。
 6〜8代目にはいないが9代目にだけクロス馬がいる場合は弱点という。
 これらがある場合はマイナスで、影響度の大きな箇所にあったり複数の場合はマイナス要素も大きい。

2-5.影響度バランス
 2代目の馬4頭のバランスを数字で表したもの。
 2〜6代目までのクロス馬をそれぞれ5〜1点とし、4頭について集計。

2-6.種類・数
 仕上がりやすさ、反応のよさから種類は少ないほうが良い。
 数は弱点・欠陥が生じないだけの数を備えていれば十分。

2-7.質・傾向
 クロス馬の質の高さは重要で、優れた血統構成に加え競走馬としての成績も優秀であることが理想。
 Ribot、Hyperion、Nearcoなどがきわめて優秀といえる。
 父・母それぞれの主導勢力が同じであれば相性は良く、傾向があっているとされる。
 ヨーロッパ系・アメリカ系といった点からも統一感があるのが良い。

2-8.スピード・スタミナ
 十分なスタミナ勢力を備えたうえでスピード勢力も持ち合わせていることが重要。
 スタミナの基盤がない馬は名血とは成り得ない。

上記8項目についてそれぞれ評価していくわけですが、総合評価はひじょうに難しいかと思います。
この評価の仕方で優秀としても日本の固い馬場には対応できない場合があるからです。
そのため日本向きのNasrullah、Mumtaz Mahal、Tetratema、The Tetrarchにも注目しておくと良いでしょう。

3.実践
ではこれまでの内容に基づき実際に血統表を見ていきます。
使用する血統表はアドマイヤマックスです。
身近なものが取り組みやすいだろうということでサンデーサイレンス産駒を選んでみました。
ここで掲載したのは6代血統表ですが、9代血統表はこちらから→(9代血統表

3-1.主導勢力を見つけましょう
 6代以内にもたくさんのクロス馬が存在しますから、この中に主導勢力があると予想できるはずです。
 目立つクロスとしては
  Almahmoudの4×5、系列で〜Mahmoud〜Blenheimと連なる。Mahmoudとしては5・6×6・6。
  Nearcoの6×5、系列で〜Pharos〜Phalaris〜Polymelusと連なる。
  Hyperionの6×6・5・6、系列で〜Gainsboroughと連なる。
  LavenduraUの6×5、系列で〜Pharos〜Phalaris〜Polymelusと連なる。
この中ではやはり世代の浅いAlmahmoudの影響が強く、しかも系列の3連を作り上げていることから主導勢力ととらえてよいでしょう。
上の世代のMahmoudが5、6代目にバランスよく(父父・父母・母父・母母のグループに1個ずつ)存在するのも好材料です。
はっきりと主導勢力を見つけることができる馬は反応の良さなどにおいて長所となります。
Almahmoudはサンデーサイレンスを特徴づける重要な馬ですからサンデーらしさが伝わっていると思われるでしょう。

3-2.クロスの分布状況を見てみましょう
 通常クロス馬の世代は同世代・1世代ズレ・2世代ズレまでありますが基本的には同じか1世代までが好ましくAマックスの場合も、
全体的に2世代ズレはそう多くはなく特に問題はないかと思います。
また、2世代以上離れてクロスになれないような形も少なく父と母の世代が近いことが読み取れます。
 父父・父母・母父・母母の4グループでのクロス馬の数もそれぞれ87・69・80・87個で若干父母WishingWellのグループが少ないのですが、
大きな偏りもなくほぼ均等に分布していると言えるでしょう。

3-3.血のつながり(結合)を見てみましょう
 6代以内に存在するクロス馬が共通の祖先を持っているか探してみるとどの馬にもSt.Simonという馬が祖先に存在することがわかります。
これによってそれぞれのクロス馬がうまく影響を与えられる状態にあることがわかります。
Aマックスと他の馬とを比べて見た場合にはこの点は良いものがあるといえます。

3-4.欠陥・弱点はないでしょうか
 5代目の馬を基準に祖先をみてみると9代目までクロス馬が出現しない馬はゼロですから特に欠陥は見当たりません。
9代目にならなければ出現しない馬がMignon、KingDorsettの2頭ですが32頭のうちの2頭であれば大きな弱点とはならないでしょう。
また、この2頭が存在するグループは影響度の小さなグループであることも救いといえます。

3-5.影響度バランスはどうでしょうか
 各グループの影響度を数字にすると父父〜母母まで11・2・11・6となります。
Haloとノーザンテーストのグループが影響度が大きいことがわかります。
主導勢力Almahmoudが前面にあるHaloの影響度が大きいのは早い時期からでも力を発揮しやすい状態となります。
また、ノーザンテーストの影響からも早い時期の活躍は見込めますが、こちらの影響が強い馬の特徴としては成長力への疑問や
大一番での底力などにも不安要素があることから、長く活躍できるかどうかという点では物足りないかもしれないでしょう。

3-6.数と種類はどうでしょうか
 クロス馬の種類は57種類と現代の競走馬としては平均的で特に開花が遅くなるほどの種類ではないでしょう。
数としては欠陥もなく弱点も少ないことから必要十分な数は備えていると判断されます。

3-7.質の高い血を含んでいるでしょうか
 圧倒的な底力を示すRibotの血は含んでいませんが、スタミナ・スピードともに優れたHyperion、Nearcoといった血が前面でクロスしており、
クラシックを戦っていくだけの能力を示すことが可能な血統と思われます。

3-8.スピード・スタミナは十分といえるでしょうか
 前述のHyperion、Nearcoが生きた配合でスタミナの基盤は出来上がっています。
それ以外で目立つ点がないのも事実ですが、日本の硬い馬場を考えた場合十分なスタミナと考えて問題ないでしょう。
 スピードは主導勢力のAlmahmoudをメインにかなりのものを持っています。Almahmoudのスピードを武器にするのはサンデー産駒の特徴ともいえます。
Almahmoudを生かすタイプは多く存在しますが、注目したいのはMahmoud内MumtazMahal、TheTetrarchもしっかりクロスとなっている点。
これによって日本の硬く軽い馬場への適性はグッとアップします。TheTetrarchのクロスは広く分布し日本適性の高い1頭であるといえます。

 以上の点を簡単にまとめるとアドマイヤマックスの血統がどんな感じなのか見えてくるはずです。
サンデーサイレンス産駒のなかでも上位ともいえるスピードを持つ馬といえます。
特別目立った欠点も見当たらず、結合度の高いバランスのとれた配合といえるでしょう。
このバランスの良さというのはどの馬にも大切な要素ですが、特に気性面で難しさをみせる馬が多いサンデー産駒には重要な要素といえます。
圧倒的なスタミナは持ち合わせていないためステイヤー血統とは言えませんがクラシックを戦うのに十分な内容です。
能力開花に時間を要さず早い時期から勝ちあがれる配合です。
気になる点はノーザンテーストの影響が大きくなったことで古馬になってからの活躍には疑問も残ります。
父サンデーとBMSノーザンテーストの組み合わせというとフサイチゼノン(アグネスゴールド)が思い浮かびますが、配合の内容からも
似通った点は多くこれらの馬をイメージすると良いかもしれません。
3歳になったばかりの現段階では新聞・雑誌で注目のサンデー産駒にはアドマイヤマックス同様BMSがNorthernDancer系の馬が多数います。
 モノポライザー(BMS・ノーザンテースト)
 モビーディック(BMS・Nijinsky)
 ファビラスキャット(BMS・FabulousDancer)
 ヤマニンセラフィム(BMS・Danzig)
これらの馬の血統を見比べながら実際のレースを想像してみると面白いかもしれません。
なかなか自分が想像したとおりにいかないことも多いのですが、たくさんの馬を見ていくことで注目すべき共通点なんかが見えてきます。
とにかくたくさんの血統表とその走りを見ていくことが血統を知るうえでは欠かせませんから、興味のある方は頑張ってみてください。

今回でいちおう五十嵐理論に基づく説明は一旦終了となります。
簡単な実践も交えて説明しましたがどうだったでしょうか。
よくわからないことなどは質問してくだされば出来る範囲でお答えします。
また、ウチでやってる簡易診断と自分の診断結果を比べて疑問などが出てきた場合も遠慮なく質問して下さい。
次回からはこれまでとちがった理論などを説明してみたいと思います。


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アドマイヤマックス 6代血統表

サンデーサイレンス Halo Hail to Reason Turn−to Royal Charger Nearco
Sun Princess
Source Sucree Admiral Drake
Lavendula II
Nothirdchance Blue Swords Blue Larkspur
Flaming Swords
Galla Colors Sir Gallahad
Rouge et Noir
Cosmah Cosmic Bomb Pharamond Phalaris
Selene
Banish Fear Blue Larkspur
Herodiade
Almahmoud Mahmoud Blenheim
Mah Mahal
Arbitrator Peace Chance
Mother Goose
Wishing Well Understanding Promised Land Palestinian Sun Again
Dolly Whisk
Mahmoudess Mahmoud
Forever Yours
Pretty Ways Stymie Equestrian
Stop Watch
Pretty Jo Bull Lea
Fib
Mountain Flower Montparnasse Gulf Stream Hyperion
Tide−way
Mignon Fox Cub
Mi Condesa
Edelweiss Hillary Khaled
Snow Bunny
Dowager Free France
Marcellina
ダイナシュート ノーザンテースト Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Lady Victoria Victoria Park Chop Chop Flares
Sceptical
Victoriana Windfields
Iribelle
Lady Angela Hyperion Gainsborough
Selene
Sister Sarah Abbots Trace
Sarita
シャダイマイン ヒッティングアウェー Ambiorix Tourbillon Ksar
Durban
Lavendula II Pharos
Sweet Lavender
Striking War Admiral Man o’War
Brushup
Baby League Bubbling Over
La Troienne
ファンシミン Determine Alibhai Hyperion
Teresina
Koubis Mahmoud
Brown Biscuit
Fanciful Miss King Dorsett Brown King
Jewell Dorsett
Hianne Jack High
Tatanne