第2回:バランスの重要性

1.第1回のおさらいと補足説明

第1回目ではどんな馬が競走馬に影響を与えてるのかを簡単に説明しました。
全体のなかで影響の大きな勢力がつかめたかと思います。
この影響の大きな勢力を主導勢力とよびます。

主導勢力は競走馬の特徴を明確にし全体をリードしていく役割をなすものですから血統表を見てはっきりと読み取れる存在でなければなりません。
ところが血統表から主導勢力が読み取りにくい場合もあります。

例えば下の表のような場合もあるかと思います。

1代目 2代目 3代目 4代目 5代目 6代目
父父  
父母    
母父  
母母    

父父~母母の4つのグループに存在するクロスのうちA-B-Cは系列のクロス、D-E-Fも系列のクロスという場合には
クロス馬がどんな馬であっても両系列に大きな差があるとは考えづらいはずです。

さらに主導勢力と思われるAとD両馬の世代を見ても差がみられないとなると主導勢力を限定するのは困難なこととなります。

このように主導勢力が読み取りにくい馬に多くみられる傾向として
 ・早い時期に活躍できる決め手を持たない
 ・芝のスピードレースなどでも反応が鈍くキレがない
などが挙げられ、割引材料ばかりが多くなってしまいます。
特にスピードに関しては主導勢力と思われそうな2頭がともにスピード型の影響を示す場合でもそのスピードが生かされない場合が多く見られます。

そのほか第1回目の補足説明ですが、血統表を見て5代以内にクロスを持たない馬も存在するかと思います。
このような配合を異系交配とよびます。
逆に5代以内にクロスが存在すれば近親交配とよびます。
近親交配には伝えたい能力の強調という意義がありこれによって祖先の持つ能力の再現をはかります。
異系交配には余計なクロスを持たないことで必要の無いクロスの干渉を受けないという良さがあります。

2.クロスとバランス


よくある話ですが「父の影響よりも母の影響が強い」とか「母父(BMS)側の影響が強い」など一部のグループを特定した表現が用いられていることがあります。
これまでに説明した内容から全体をリードする主導勢力が強い影響を与えることはわかってもらえたと思いますが、クロスの位置と数によっても能力の伝わり方にはちがいが生じます。。
今回はクロスがどこにどれだけあるのかによって生じる影響度のちがいを簡単に説明します。

まず大きく祖先を下の表で色分けされているように4分割します。

この4つのグループにおいて下のA~Dというクロスが存在するとします。

1代目 2代目 3代目 4代目 5代目 6代目 (7代目)
父父   B・D    
父母        
母父      
母母     (D)


この色別の4つのグループそれぞれのクロスの数・世代が重要となります。
2~6代目それぞれでのクロス馬に5~1と点数をつけグループごとの点数を比較します。
Dのように5×7のクロスがある場合は6代以内に存在する側のみに点数を加算します。

すると各グループごとで以下のような点数がつけられます。

0+4+0+4+0 8点
0+0+0+0+1 1点
0+0+3+0+1 4点
0+0+0+2+1 3点


ではこの点数について説明していきます。
普通は点数の高いグループほど競走馬に与える影響は大きくなります。
つまり若い世代にクロスが存在するかクロス数が多いグループの影響は大きくなるということです。
こうしてみると上の例では各グループのなかで父父のグループが若干影響度が大きく、父母のグループの影響度が低いことがわかると思います。
このように影響度にバラツキを持つ競走馬もいれば均衡のとれたものもいます。

いろいろなパターンがありますが通常は下のような8つのタイプに分類されます。

影響度の点数が4グループでほぼ均衡している。
1グループだけが影響度の強いタイプ。近親交配の場合。
1グループだけが影響度の強いタイプ。異系交配の場合。
異系交配で全グループとも点数は低め。
全グループの点数が極端に低い。
父方と母方の1グループずつが点数の高いもの。
父方か母方のどちらかが点数の高いもの。
1グループだけ点数が低く、他の3つは均衡。


世界的に名馬と称される馬にもさまざまなタイプが存在することから、8タイプのなかのどれがいいのかは明確ではありませんが、多く見られるのはア~エの4タイプであることからこれらが理想的なタイプと言えるかもしれません。

アについては全体のバランスが良くそれぞれのグループからの影響度に差がみられないことで父と母の存在が尊重され、競走馬が大きな問題を抱えることも少ないと思われます。ただし点数は各10点前後が多く、それ以上に極端に高い点数でバランスしているものは近親度の高い配合で、気性面や調整面で問題を抱えることが多く、また好不調の波も大きい場合が多く見られます。

イとウは近親交配と異系交配のちがいはありますが、どちらも強調したいグループを明確にすることで伝わる能力もはっきりとし、早い時期からの活躍が期待できます。クラシックのトライアル時期などには、この強調された能力が大きな武器になります。

エについては異系交配ということで影響度は若干弱めになってしまいますが、バランスは良く能力が開花すれば安定した実績を残すことが期待できます。クロスの世代が若くないぶん晩成型を示すことが多いタイプです。

オの極端に低いというのは0点、1点のことでこの場合には持っているクロスから能力が表面化するとは考えづらいタイプです。

カ~クは1グループの強調・集約とは異なり、バランスをとりづらい形でお互いがその良さを打ち消すように干渉しあうのか、ある程度の活躍は見せるがもうひとつという印象の馬が目立ちます。これらのタイプに名馬と称されるものはあまり多くありません。

以上が各タイプの特徴です。

ここで実際の競走馬を例に点数を出してみると

ダンツフレームの場合は

父父 Robertoのグループ 0+0+0+2+5 7点
父母 Kelly's Dayのグループ 0+0+3+2+3 8点
母父 サンキリコのグループ 0+0+0+0+0 0点
母母 モンテマリアのグループ 0+0+0+4+3 7点

という結果になります。
この結果からみてあまり好ましくない部分があることはみなさんもお気づきかと思いますが、母父サンキリコの影響度が極端に低いということです。
他のグループに対するアシストがないのでは父ブライアンズタイムの良さが十分に発揮できませんし、母インターピレネーと父とのバランスも崩れてしまいます。

ではブライアンズタイムを父に持つ他の馬の場合はどうでしょうか。
比較がしやすい馬としてナリタブライアンを例にしてみます。

父父 Robertoのグループ 0+0+0+0+5 5点
父母 Kelly's Dayのグループ 0+0+0+0+3 3点
母父 Northern Dancerのグループ 0+0+3+6+6 15点
母母 Pacific Princessのグループ 0+0+0+0+4 4点


これだけではクロスの詳細はわかりませんが母父のグループを他がバランスよくアシストしておりこのグループの良さが全体からもうまく伝えられる形であるといえます。
これは先述の1グループだけ影響度が強いパターンですが、平均的なパターン同様名馬に多く見られるタイプです。
種牡馬だけで特徴を推測することを否定するつもりはありませんが、こうしてみると同じ父でもずいぶんと違いがあることは理解してもらえたのではないでしょうか。


なおナリタブライアンを例に挙げたのは興味深い血統であるためです。
クラシック無冠と3冠という点についてはあくまでも結果であり血統だけでは語れない面も多いという点から比較のうえでは参考にはしていないことをご理解願います。

第1回からここまでの内容は理解できたでしょうか。
血統を見ていくうえで重要な点はいくつかありますがそのなかでここまでの内容はひじょうに重要なものです。
第2回の内容としてはここまでとしますが、ここまでの内容を十分理解していなければこの先はちょっと難しいかもしれません。
逆にこんなの楽勝という方なら次回以降も大丈夫だと思います。

ただここまでの内容だけではNasrullahやHyperionってどんな馬?と思っているかもしれませんね。
よくコメントなどで「この馬はNasrullahのスピードが生きている」などといったことばを耳にすることがあります。
それを聞けば確かにその馬の特徴は解ってしまいますが、皆さんに注目して欲しいのはコメントからNasrullahの特徴を知ることです。
実際にその馬の血統表を見ながら検証してみると、ここまでで学んだ主導勢力にNasrullahがあてはまるはずです。
これができればNasrullahが主導勢力である馬の特徴はスピード型だろうと推測できると思います。
ただし馬の特徴は一から皆さんで覚えてくださいというのではやる気も起きないでしょうし血統表を見てもつまらない名前の羅列にしか見えないでしょうから次章に参考資料ということで若干ながら掲載してみました。

3.資料として

自分の経験上では一度にたくさんを見ると逆に特徴をつかみづらいということがあったので大まかに見ていくのが良いかと思います。
大まかに見た場合の見落としは避けられませんが特徴をある程度つかむのが第1歩ですし無理なく進めると思います。

では大まかに見る場合に注目すべき馬はなんだろうかとなると一般に~系といわれる馬から見ていくのが良いでしょう。
例えばミスプロ系という表現はよく耳にするのではないでしょうか。
このミスプロ系というのはMr.Prospector(ミスタープロスペクター)という種牡馬とその子孫である種牡馬を指します。
このうちの多数はMr.Prospectorの特徴を備えているのでこの馬の特徴をつかんでいればMr.Prospectorのクロスが与える影響から競走馬の特徴までをつかむことはある程度可能になります。
これら~系と名のつく馬は遺伝においても影響力が強いのでこれを大まかに見るベースとしてみると解りやすいと思います。

スタミナ・スピードのとらえ方ですが表に距離を示しますのでそれを参考にして下さい。
例えば距離が1200m~1600mとなっていればスピード型である。とか1600~2400mならスピードとスタミナのバランスが良いタイプというふうに見てもらうと良いでしょう。
実際のところは日本の馬場が硬いスピードの出る芝であることから距離も200mくらいならほぼ問題なく融通が利くと思ってもらってよいかと思います。

どの系統も世代を経てその特徴は変化していきますが、現代の日本におけるスピード競馬で圧倒的な影響力を持つNasrullahとTurn-toについては参考までに次の世代も掲載しました。
また現代競馬の祖ともいわれるNearcoは子孫が多種多様であり、もはやNearco系といった分類では特徴を読み取ることも不可能ですが、HyperionやRibot同様にスタミナの核を形成する重要な存在であることから掲載しています。

父系 距離   距離
Nasrullah 1200~1600 Nasrullah系の小系統  
Grey Sovereign 1200~1600
Princely Gift 1200
Bold Ruler 1600
Red God 1200~1600
Never Bend 1200~2000
Turn-to 1200~1600 Turn-to系の小系統  
Hail to Reason 1600~2000
Sir Gaylord 2000~2400
Mr.Prospector 1200~2000
Fine Top 2400
Hyperion 1600~2400
Teddy 2000
Dante 1600~2400
Fairway 1600~2000
Northern Dancer 1600~2400
Blandford 2400
Prince Rose 2400
Ribot 1600~3000
Son-in-Law 3000
Nearco 2000

これらを参考に興味のある馬の血統表を見てみてください。
なんとなく競走馬の特徴がイメージできるのではないでしょうか。
次回は血統を見るうえでのさらに細かい要素を紹介したいと思います。

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