第1回:血統表を見てみよう

1.血統表の見方


まずは血統表の見方です。
これをじっくり見ていくことが大切ですので知らないという人はここから読んでください。
一般的な表記では下のような形が多いかと思います。

1代目 2代目 3代目
父(ア) (アの父) (イの父)
(イの母)
(アの母) (ウの父)
(ウの母)
母(A) (Aの父) (Bの父)
(Bの母)
(Aの母) (Cの父)
(Cの母)

このような並び方を5代目くらいまで掲載してあることが多いかと思います。
ただし馬の特徴を知る上では9代目まで見ていくのが理想で5代血統表では情報不足といえます。
少なくとも6代目まで見なければその特徴をつかむことは困難であろうかと思います。


表のなかで父であるアを種牡馬、母の父であるBをブルードメアサイアー(BMS)と呼びます。
またア-イ-エと続く父のつながりのことをラインと呼びます。
一方母に関してはよく牝系ということばを目にしますがこれはA-C-Gという母から母への流れのことを指します。
母方という表現の場合は牝系にこだわらずB側も含めて表現するのが一般的です。


つぎに父と母の祖先に共通の馬がいる場合ですが、例えばエとDが同じ馬だったとします。
これらを
クロスと表現します。
クロスは競走馬に影響を与える最大の要因ですからこの講座でも話題の中心はクロスです。
この場合エは3代目、Dも3代目ですから3×3のクロスと言います。


通常ここまでが表から読み取れる情報で、ここから馬の能力・特徴を推定していきます。
クロスは思っている以上に複雑ですので実際に血統表を見ながら進めていきます。

2.クロスの定義

では実際に血統表を見てみましょう。
例にしたのはダンツフレームです。

1代目 2代目 3代目 4代目 5代目 6代目
ブライアンズタイム Roberto Hail to Reason Turn-to Royal Charger Nearco(A)
Sun Princess
Source Sucree Admiral Drake
Lavendura ll
Nothirdchance Blue Swords Blue Larkspur
Flaming Swords
Galla Colors Sir Gallahad
Rouge et Noir
Bramalea Nashua Nasrullah Nearco(B)
Mumtaz Begum
Segula Johnstown
Sekhmet
Rarelea Bull Lea Bull Dog
Rose Leaves
Bleebok Blue Larkspur
Forteresse
Kelley's Day Graustark Ribot Tenerani Bellini
Tofanella
Romanella El Greco
Barbara Burrini
Flower Bowl Alibhai Hyperion
Teresina
Flower Bed Beau Pere
Boudoir ll
Golden Trail Hasty Road Roman Sir Gallahad
Buckup
Traffic Court Discovery
Traffic
Sunny Vale Eight Thirty Pilate
Dinner Time
Sun Mixa Sun Briar
Comixa
インターピレネー サンキリコ リイフォー Lyphard Northern Dancer Nearctic
Natalma
Goofed Court Martial
Barra ll
Klaizia Sing Sing Tudor Minstrel
Agin the Law
Klainia Klairon
Kalitka
Nell's Briquette Lanyon Cornish Prince Bold Ruler
Telerun
Lemon souffle Johns Joy
Miel
Double's Nell Nodouble Noholme
Abla-Jay
Tota Nell Ballydonne ll
Mama Tota
モンテマリア ネヴァービート Never Say Die Nasrullah Nearco(C)
Mumtaz Begum
Singing Glass War Admiral
Boreale
Bride Elect Big Game Bahram
Myrobella
Netherton Maid Nearco(D)
Phase
キネウスマリア ロムルス Ribot Tenerani
Romanella
Arietta Tudor Minstrel
Anne of Essex
マリアドロ Big Game Bahram
Myrobella
Golden Marie Goyama
Nearly


このなかで父ブライアンズタイムと母インターピレネーに共通の祖先となっているのは世代の若い順に見て父側の4代目と母側の5代目に存在するRibotです。これをRibotの4×5のクロスと言います。
他にはNasrullahの5×5もあるのがわかるかと思います。


ここで注意すべき点があります。
Ribotがクロスならその父もクロスになるのかという点ですが、この場合これはクロスとしては認めません。
ではNasrullahの父Nearcoがクロスなのは何故かというとNasrullahの父として存在する(B)・(C)以外にも(A)が存在し(A)と(C)がクロスとなっているからです。この場合(B)にも(A&B)×(C)というかたちでクロスに対する有効性が与えられます。他にも(D)が存在するので(A&B)×(C&D)という複雑なクロスを作り上げていることになります。
一般的な表記ではこれを
Nearcoの6・6×6・6のクロスと表現していることが多いでしょう。
ここまででクロスの考え方は理解できたと思います。


ひとつ注意しなければならないのは世代です。
共通の祖先が特徴を伝えるのは近い世代に存在する場合で通常は間に2世代以上はさんだ場合にはその影響は無いとされ、クロスとしては認めないこととしています。
つまり3×6(間に4世代目と5世代目をはさむ)はクロスにはならないと考えるということです。

3.競走馬を特徴づけるクロスは?

ダンツフレームに存在するクロスは6代目まででは
 Ribot    の4×5
 Nasrullah の5×5
 Nearco   の6・6×6・6
と3種類が存在します。
以上の3頭が影響を与える可能性を持った馬です。
ここでダンツフレームという競走馬を特徴付けるクロスを見極めることが重要です。
浅い世代にあるクロスほど影響を与えやすいことからRibotの影響が大きそうな感じがすると思います。
ところが前述のとおりRibotの父はクロスにはなっていません。
対してNasrullahはRibotより若干深い位置にありながらもその父Nearcoもクロスになっていていかにも影響が強そうという感じがするかと思います。
ではどちらがより強い影響を与えているかですが、結論からいえばNasrullahです。
クロスにおいて何代か続けてクロスを形成しているものはその影響度がひじょうに強いと考えられているからです。
また、Nearcoのように広く存在するクロスはスピード、スタミナを形づくる存在として全体をまとめる役割を担っています。
このNearcoが受け持つ重要な役割を果たす馬は当然すぐれた能力を持つ馬でなければなりません。
血統の骨格ともいえるクロスを形成するわけですからスタミナ・スピードともにすぐれた遺伝能力を持っている必要があり、この役割を果たせるだけの馬となるとごく少数でRibot、Nearco、Hyperionなどが挙げられます。

6代目までで競走馬の能力を推定することは難しいのですが、この情報だけからでもダンツフレームはNearcoのスピード、スタミナをNasrullahのクロスを通じてうまく伝えられているのではないかと考えることができます。
また、Nasrullahは特にスピードを伝えますからこの馬を通じて能力を伝える場合にはNearcoのなかのスピードがどちらかといえば強調されることが多くなり、全体的に分布するNearcoからもスピードが伝えられることになります。
ですからダンツフレームは意外にもスピードが強調された配合ということになるわけです。

4.クロスにおける系列の重要性

すでに説明しましたがNasrullah-Nearcoのように代々続くクロスの影響力は大きく、例えば
Nasrullah-Nearco-Pharos-Phalaris
と続くラインがすべてクロスならばこの系列の影響を強く受けることとなり、世代の若いNasrullahの影響を活かすならばこういった形が理想的ともいえます。
父・母の持つ血を考えると現実には系列のクロスを作り上げることはなかなか難しく次のような例も数多くみられます。
Nasrullah-(Nearco)-Pharos-Phalaris
のなかでNearcoだけはクロスになれないという場合。
このように1世代空いてしまう場合には系列すべての場合に対し影響力は弱まります。
さらにPharosもクロスにならなければ系列としては機能せずNasrullahだけのクロスとほとんど変わらない内容となります。


さて、第1回目はここまでです。血統表を見てみるというのが初回のテーマなのであまり深い話題にはふれていませんが、競走馬に対する影響度の大きなクロスがある程度つかめるようになったかと思います。
血統表をじっくり見ることがほとんどなかった方も少しは興味を持って見てみようかという気がしてくれたら申しぶんないです。
血統表は5代血統表が多く6代目まで掲載されているものはあまり多くありませんが、インターネットでも手に入れることは可能です。
PedNetなら8代目までの表示が可能でおすすめです。
血統表を手に入れる手段としては血統表を表示するソフトを利用するなどさまざまですが、気になる馬だけチョット見てみようという程度ならネットで入手するのが便利です。

次回は競走馬の特徴をもうすこし深く把握していくための要素を紹介しますが、今回の内容がつかめていれば十分理解していただけると思いますので暇があれば何頭かの血統表を眺めてもらえたらと思います。そこで出てくる疑問はたくさんあるかと思いますが次回以降それらが消えていくような内容にしたいと思います。

戻る