第七試合−第八試合

『幕間』

担当MS:チアキ

     


    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ

     第七試合が終了した段階で日は落ちていた。
     太陽が落ちては灯が無い。故に続きは日が明けてからという事になった。
     出場者は皆、専用の宿舎へと案内された。

    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ 

     運営側は審判と言う立場柄、出場者と同じ場所と言うわけには行かず、特別に円卓の間に近い宿舎を利用することになっていた。

    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ

    「よっ・・・と。これでお布団は大丈夫デスねー」
     逃亡者などの不審な輩を防ぐ為、陣幕裏にて待機していた舟木・トート(a16979)はこの宿舎にいた。
    「トート殿!」
     扉の影からヌッと顔を出す語り手・チアキ(a07495)も、審判役のため、当然この宿舎にいた。
    「わ、チアキ君なにごとデスか」
     突然の登場にトートがビックリしながら答える。
    「今日は焼き鉄串を沢山使ったデスから、早く眠りたいのデス」
    「微妙にビックリとは違う受け答えじゃがまぁ良かろう。実はトート殿に伝えたい事が」
     扉から半分だけ顔を出し、なにやら怯えた様子でチアキが話しかける。
    「なんかわしの割り当てられた部屋から、カチコチと珍妙な音がするんじゃ。わし思うにコレ自爆霊か何かのポルターガイスト現象かナニかじゃと思うのじゃが。故にちょっと一緒に確認してくれんか?出なければわしは怖くて夜もトイレに行けん」
     ガタブルと震えながら訴えるチアキ。どうやら本人には相当深刻のような。
     仕方ないのでトートがチアキの部屋を見て廻る。と、パッと見て謎の音の原因が判明する。

    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ

    「ああ、これデスね」
     トートは柱のような置物を指差して言う。
    「コレ?」
    「ハイ、これが原因デス。これ、確か『時間を正確に刻むモノ』だそうです。バネ仕掛けらしいのでこんなカチコチ音がするとか」
    「ほほぅ、コレが・・・」
    「試作機らしくて、まだこれしか無いらしいのデス。だからチアキ君。イジッて壊しちゃダメデスよー?」
    「ハッハッハ、いくらわしとていきなりそんな事はせんわい!」
     絶対やるつもりだったなぁ、とトートは思った。
    「しかしまぁ、幽霊の正体見たり!じゃな。うむ、トート殿ありがとう!コレでグッスリ眠れそうじゃ!」
     チアキはトートに感謝すると、部屋へ戻した。そして先ほど、異音によって中断された作業を再開する。
     今日まで行われた御前試合の、結果記録だ。

    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ

    「十一月二十五日・・・晴れ・・・月の傾きは・・・」
     窓より外を眺める。
    「ふむ、十三夜か。明後日になれば、良い満月になるじゃろうなぁ」

    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ

    「・・・ん?・・・十三夜?二十五日に?」
     十三夜とは満月の二歩手前の月だ。満月は通常十五日近辺に来る。そう月齢で計算されている。だから二十五日に十三夜が来るのは・・・
    「ま、エエか」

    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ

    「第一試合、リオン対ラスキュー・・・両者死亡により引き分け・・・と。第二試合、ウカ対アリシア・・・アリシアの反則負けによりウカの勝利・・・と。第三試合、マーテル対ノソハル・・・マーテル死亡するもノソハルが勝利を譲り、マーテル勝利・・・と。」

    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ

    「第四試合、ジオ対ネフェル・・・両者死亡により引き分け・・・と。第五試合、アルル対ユウキ・・・ユウキの勝利放棄でアルルの勝利・・・と。第六試合、リノアン対カヤ・・・リノアン死亡によりカヤの勝利・・・と。第七試合、セナ対リューディム・・・リューディムの勝利・・・ふむ」

    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ

     時を刻む音色の中、惨劇の記録は刻まれてゆく。
     夜が明ければまた残酷無惨の物語は紡がれるだろう。
     だからこそ今この時だけの、かすかな休息を大事にしたい。

     正確な時の刻みをBGMに、チアキはそんな事を考えた。



    ―続―





    カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ           カチ

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