カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
第七試合が終了した段階で日は落ちていた。
太陽が落ちては灯が無い。故に続きは日が明けてからという事になった。
出場者は皆、専用の宿舎へと案内された。
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
運営側は審判と言う立場柄、出場者と同じ場所と言うわけには行かず、特別に円卓の間に近い宿舎を利用することになっていた。
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
「よっ・・・と。これでお布団は大丈夫デスねー」
逃亡者などの不審な輩を防ぐ為、陣幕裏にて待機していた舟木・トート(a16979)はこの宿舎にいた。
「トート殿!」
扉の影からヌッと顔を出す語り手・チアキ(a07495)も、審判役のため、当然この宿舎にいた。
「わ、チアキ君なにごとデスか」
突然の登場にトートがビックリしながら答える。
「今日は焼き鉄串を沢山使ったデスから、早く眠りたいのデス」
「微妙にビックリとは違う受け答えじゃがまぁ良かろう。実はトート殿に伝えたい事が」
扉から半分だけ顔を出し、なにやら怯えた様子でチアキが話しかける。
「なんかわしの割り当てられた部屋から、カチコチと珍妙な音がするんじゃ。わし思うにコレ自爆霊か何かのポルターガイスト現象かナニかじゃと思うのじゃが。故にちょっと一緒に確認してくれんか?出なければわしは怖くて夜もトイレに行けん」
ガタブルと震えながら訴えるチアキ。どうやら本人には相当深刻のような。
仕方ないのでトートがチアキの部屋を見て廻る。と、パッと見て謎の音の原因が判明する。
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
「ああ、これデスね」
トートは柱のような置物を指差して言う。
「コレ?」
「ハイ、これが原因デス。これ、確か『時間を正確に刻むモノ』だそうです。バネ仕掛けらしいのでこんなカチコチ音がするとか」
「ほほぅ、コレが・・・」
「試作機らしくて、まだこれしか無いらしいのデス。だからチアキ君。イジッて壊しちゃダメデスよー?」
「ハッハッハ、いくらわしとていきなりそんな事はせんわい!」
絶対やるつもりだったなぁ、とトートは思った。
「しかしまぁ、幽霊の正体見たり!じゃな。うむ、トート殿ありがとう!コレでグッスリ眠れそうじゃ!」
チアキはトートに感謝すると、部屋へ戻した。そして先ほど、異音によって中断された作業を再開する。
今日まで行われた御前試合の、結果記録だ。
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
「十一月二十五日・・・晴れ・・・月の傾きは・・・」
窓より外を眺める。
「ふむ、十三夜か。明後日になれば、良い満月になるじゃろうなぁ」
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
「・・・ん?・・・十三夜?二十五日に?」
十三夜とは満月の二歩手前の月だ。満月は通常十五日近辺に来る。そう月齢で計算されている。だから二十五日に十三夜が来るのは・・・
「ま、エエか」
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
「第一試合、リオン対ラスキュー・・・両者死亡により引き分け・・・と。第二試合、ウカ対アリシア・・・アリシアの反則負けによりウカの勝利・・・と。第三試合、マーテル対ノソハル・・・マーテル死亡するもノソハルが勝利を譲り、マーテル勝利・・・と。」
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
「第四試合、ジオ対ネフェル・・・両者死亡により引き分け・・・と。第五試合、アルル対ユウキ・・・ユウキの勝利放棄でアルルの勝利・・・と。第六試合、リノアン対カヤ・・・リノアン死亡によりカヤの勝利・・・と。第七試合、セナ対リューディム・・・リューディムの勝利・・・ふむ」
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ
時を刻む音色の中、惨劇の記録は刻まれてゆく。
夜が明ければまた残酷無惨の物語は紡がれるだろう。
だからこそ今この時だけの、かすかな休息を大事にしたい。
正確な時の刻みをBGMに、チアキはそんな事を考えた。
―続―
カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチコチ カチ
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