第十一試合 ルバルク 対 ウィチタ 『えろい道 愛、尻染めし頃に』 担当MS:チアキ |
−プレイング− |
【ダミー旅団シナリオ/VSウィチタちゃん】 ■因縁 総ては四年前の夏……あの海岸で出会った一人の青年が物語の始まりだった。そこにある女性の羨望と好奇の眼差しをスポットライトのように浴びた青年はボクとボクの友達にもまぶしいくらいで。今思えば、あの時に彼と出逢った出来事が必然であったかのようで。クズノハエロ四天王は、元々は彼のファンクラブだったわけで。それでもボクは……やっぱりあの青年の笑顔を守りたかったわけで。……父さん、東京は北海道と違って季節でもなく気温でもなく……。人の心が冷たかったわけで…… ■試合 喰らえ、ウィチ公!! 銀河開闢(かいびゃく)にも匹敵するこの壮絶なら神の拳を!! そして思い知るがいい、貴様のエロさなど……我がエロスの前には無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄WRYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!! 喰らえッ!! 『惑星直結グランド・エロス(ルバルク版)』 同士討ち希望。二人の服が破れはだけて、お互いの体が重なったまま意識不明で担架に運ばれていくのが望ましい。むしろそれが本望。 ―もっとでんじゃらすお嬢・ウィチタ(a19193)のプレイング― 【プレイング】 「はぁっ…はぁっ…」 暗い路地を駆け抜ける2つの影。男と思わしき影が少女と思わしき 影に支えられ、息も絶え絶えに『何か』から逃げている。 「…拙者はもうダメなぁ〜ん…ウィチタ殿だけでも逃げるなぁ〜ん…」 「ラスキューさん、何を言うんですかぁ〜!一緒に逃げる のですぅ〜」 ラスキューのお尻に刺さった大根が、容赦なく彼の体力を奪う。 追い詰められた先は、断崖絶壁の崖。 「逃げ切れると思わない事にゃりよ」 不意に響く声。背後からの光でその姿は確認できないが、 おそらく『彼女』だろう。 「…最早ここまでなぁ〜ん」 ラスキューは突然白い布切れをウィチタに託す。 「ラスキューさん…?」 「これは拙者のフンドシなぁ〜ん。これを拙者と思って大事に してくれなぁ〜ん…さらばなぁ〜ん!」 そう言い残しフンドシをウィチタの手に握らせるとラスキューは ウィチタを崖から突き落とし『彼女』に向かって突進する。 「ラスキューさぁぁぁんんんんん!!」 それ以降、ラスキューの生死は不明である。観客席にいるのは きっと他人の空似だ。 今ここに、『彼女』との対決の時を迎えたウィチタ。 その手にはラスキューのフンドシ。 「…ウィチタに力を貸して、なのですぅ〜…!」 (以上。思い付かなかったのでありがちな因縁でゴメンナサイ) (必殺技) ●ニードルキュウリ(ナスでも可) スピアの代わりにキュウリやナスを飛ばす。口やら○○やらに 入り込むとエロい。マトモな人なら羞恥心を煽り戦闘不能に。 エロい人なら悶えさせ隙を作る。 ●蝶・必殺技「ぱんちゅ乱舞」 ウィチタのぱんちゅ袋から噴水よろしくぱんちゅが飛び出る。 目くらましで隙を突き、手にしたラスキューのフンドシを顔に 被せ窒息させる。臭い。 |
−リプレイ− |
そこにある女性の羨望と工機の眼差しを、スポットライトのように浴びた青年は ボクとボクの友達にもまぶしいくらいだったわけで・・・。 今思えば・・・あのときに彼と出会った出来事が必然であったかのようで・・・。 クズノハエロ四天王は・・・元々彼のファンクラブだったわけで・・・。 それでもボクは・・・やっぱりあの青年の笑顔を守りたかったわけで・・・。 ・・・東京は富良野と違って季節でもなく気温でもなく・・・。 ・・・人の心が冷たかったわけで・・・。 ・・・父さん・・・。 ♪んーん〜〜〜んんんん ん〜んん〜 ♪んーん〜〜〜んんんん ん〜〜〜〜 ♪んーん〜〜〜んんんん ん〜んん〜 ♪ん〜 んん〜〜ん んん〜んん〜〜 みんながエロ四天王のエロリプを期待しているのですが・・・。 二人のプレイングには・・・エロが殆ど無かったわけで・・・。 ・・・父さん・・・。 「にゃがー!?台詞が勝手に付け足されてるにゃー!猫は後ろの台詞書いてないぞなもし!」 有紀ちゃーん!!(涙) 「誰にゃ!?」 ●インスマスよりこんにちは 「純君はいつもメソメソしてるなぁ」 「だがそれが奴の魅力というのじゃろう。して、なんでわしらは、夏の暑さに耐えきれなくなり、旅団のみんな・主に女性団員を呼んで海に行こうと企画したら都合悪くてキャンセルばかり、気が付いたらウホッ男だらけの海中水泳大会ってな状況で海に来てまでこんな話をしてるんじゃ?」 「わーい、説明的セリフ!でも答えは「さぁ?」」 海である。 何故来ているのかは、ほぼ上記の通り。 「しい 」 「強いて言うなら夏の日差しが耐えきれなくて2005ってところでしょうかね、頭領さん」 そう、劇中はまだ2005年である。2005年ったら2005年だチクショウ。 「拙 」 「拙者も女の子が来るっていうから来たでござるのに・・・まさかリオンの野郎もいるとは聞いてねぇズェ!」 ラスキューが憤慨る。まぁ、元々みんながラスキューと同じ目的だったので何も言わないが。 「ちょ 」 「ちょいと無計画だったかもしれんな。せめてスケジュールを聞いて予定を押さえるべきじゃったか・・・折角、折角萌えキャラが増えてきたというのに!!」 血涙を流しつつチアキが咆吼する。クズノハ忍法帖は萌えキャラが増強され、今や一二を争う萌え旅団と化した。(2005年萌え総合社調べ) 「だ 」 「むむむ・・・夏のビーチでアルルや妹者と危険なアバンチュールのハズだったのに。何が悲しくて男旅をしなければいけないんでしょうね」 「い 」 「ガハハ!『策謀のリオン』らしくない弱気な意見でござるなぁ〜ん。連れて来れないのなら現地調達すれば良いでござるよ!」 漢らしいラスキューの発げ 「ちょっとちょっとー!!さっきからみんなの言葉が拙者のセリフに被ってるでござるYO!拙者にも発言権プリーズ!」 「あ、いたんだフナムシ」 「いたでござるよ!そしてフナムシじゃないでござる!リオン殿ヒドい!!」 「いたんだぁ・・・」(取り敢えず落ち着けフナムシ殿。な!) 「見事なまでに心と発言が逆ー!?」 「まぁそんなフナムシはさておき」 ガビーンとショックを受けるフナムシを軽く流す。だって話に関係ないしね。 「流さないで!関係なくないでござるYO!もっと拙者を愛してー!」 「ラスキューさん、さっき柄にもないこと言ってませんでした?「現地調達」とかなんとか」 フナムシを更にさらりと流し、リオンがジト目でラスキューを見つめる。 「フッ・・・勿論言ったズェ。今夏の拙者はひと味違うぜ?なんつーか、魅力がだだ漏れって感じかな?拙者が歩けばナオンでハーメルごっこが出来るくらいな!」 「へー、それは凄いですね」 ガハハと笑うラスキューを、精肉場に送られる牛を見る目で見つめるリオン。むしろみんな。またラスキューの病気が始まったか・・・という雰囲気だ。 実際、今までも同じこと言って結局、みんな一緒に夕日を眺めながら体育座りで並んでいるというオチがついていたのだから、信じられないのも仕方がないであろう。 「万が一にでもラスキューさんに女性が群がったなら、専属下僕になってあげますよ。フナムシが」 「ホゲー!?なんで拙者が!」 「よーし、その言葉忘れるなよ?拙者のナンパテク魅せてやるぜ!だなぁ〜ん!」 いつもならばハイハイそうですか。で終わる物語。 だが、この日は違っていた。 そう、違っていたんだ・・・。 ●時代が奴に追いついたのか、奴が時代を追い抜いていたのか、そのとき僕は理解できていなかった 「ば、バカな・・・何故このようなことが・・・」 震えるチアキ。 「僕の計算が間違えていたとでも言うのか・・・いや、そんなはずは・・・」 メガネをズリ上げながらガリガリ爪を噛むリオン。 「拙s」 「こんな事あっちゃいけないんだ!」 「ヒガー!!ヒドいでござる!またかYO!」 セリフが被るフナムシ。もういいやこのネタ。 一同は目の前で繰り広げられる展開に混乱していた。そのあってはいけない光景に。 つまりは、そう。 「拙者 渋井丸・拓男。略してラスキュー。お姉さんつき合ってよ」 「あぁん、ステキなお方。喜んでつき合うですぅ〜」 「ラスキューさんがモテてる!!」 「つーかなんであんなナンパが成功してるんだ」 「ありえん・・・ありえんが故ラスキューか・・・」 みんな混乱しています。まぁそうですなだってコレで24回連続成功ですもの。 「ガハハガハハ!遂に拙者の時代が来たぜ!ん、ん〜〜。最高にハイって奴だ!」 「きゃー!ラスキューにゃステキーにゃー!」 「こっちむいてー!」 ラスキューの一言一言に女の子たちから黄色い声が飛ぶ。 あ、ちなみにどの娘も美人さんです。 「いや〜、参ったなぁ。拙者けっしてそんなつもりじゃなかったのになぁ。ガハハガハハ!ああ、そうそうリオン殿。さっきの約束・・・覚えているかなぁ?」 ラスキューが少年マンガ誌上には決して載せられない笑いを浮かべる。 その笑いは邪悪であり、暗黒であり、そして勝者の笑みだった。 「くっ・・・勿論覚えてるさ!フナムシ!」 リオンがさっき結んだ約定―――つまりは一日下僕権(ドラゴの)を発動しようとする。 だが、 「イヤイヤ、拙者はリオン殿に言ってるでござるよ。隣に女の子を連れていないリオン殿になぁ。ゲシャシャシャシャ!」 まさに外道!皆が一斉に思う。 リオンにはアルルという恋人がいる。だが都合により今この場所にはいない。 まぁ、なんだ。簡単に言うと勝者と敗者の図が明らかになっている、といったところか。 「敗北主義のリオン殿、拙者カレーと焼きそば大盛りとアーマーゲドンXが欲しいなぁ。あとコーラ。1分以内に買ってこいや。ガハハハハ!」 人生の勝利者ラスキュー。好機が舞い込むとこうも変わってしまうのか。今の彼は地獄すら生温い人柄だ。 そして、その勝者に刃向かうだけの手札を、普段は相棒たるリオンには持ち得てなかった。 「ち・・・ちくしょぉ〜〜〜〜〜〜!!!」 リオン・リード20歳。 見事な泣きダッシュであった。 ●人生は上等な料理に蜂蜜をぶっかけるほど甘くは無い 「まぁ、ドッキリなんだけどね」 約8時間後 海にほど近い宿の一室。 その場に5つの影があった。 リオン・チアキ・フナムシ。そして・・・『昼間、変装しラスキューのナンパに引っかかっていた女の子役』だった蒼首輪の猫・ルバルク(a10582)ともっとでんじゃらすお嬢・ウィチタ(a19193)の5人である。 「さて、ラスキューさんは我々が仕込んだとも知らずに、目論見通り女の子にモテモテになったと錯覚しているわけですが」 見事なまでに説明的セリフ。そう、昼間のは全てドッキリだったのだ。 「しかしまぁ、相変わらず見事な演技力よのぅ。あの男泣き、見てるこっちまで悲壮感溢れてきたわい」 「ふっ、僕は何事も本格派なもので」 計算通り、とあくどい顔で答えるカッコイイ方のリオン。昼間の情けなさなど何処吹く風だ。 そう、全てはリオンの計算通り。 サクラの女の子たちにラスキューが引っかかるのも、気を良くしたラスキューが明日に備えてガーガー寝ているのも、ラスキューが特にお気に入りだったのがルバルクとウィチタが変装した娘だったのも。 「お二人とも見事な演技力でした。この調子で明日のクライマックスもよろしくお願いします」 ぺこりと頭を下げるリオン。 「にゃはは。こんな面白い機会は滅多に無いにゃり。猫は楽しんでやってるにゃろよw」 「ウィチタもですよぉ〜。ラスキューさんにアタック出来るなんて・・・ポッ」 「二人ともやる気充分のようですね!では明日はよろしくお願いします。キーワードは火サス風味にドロドロで!」 つまりはルバルクとウィチタでラスキューの奪い合いになると言うことだ。 勿論、演技ではあるが。 今日は解散、と言うことで皆、明日を楽しみにした顔で部屋を後にする。 特にリオンは、明日自分たちが【ドッキリ】の看板を出した時の顔を想像するだけでもう、ご飯三倍はイケる。 くくく、ラスキューさん、せいぜい今は夢の中で幸せを満喫するとイイですよ?グヘヘホヘホヘラホヘラ。 思わず笑みがこぼれる。宿の店員に変な目で見られたが、まぁイイ。 「ああ、明日が楽しみだなぁ」 金髪シャバ僧は自分の素晴らしき発想に、涎が止まらなかった。 リオンの計画はほぼ完璧であった。 ただ一つ。 そう、ただ一つ誤算があったとするならば・・・女性役に頼んだ人達が、自分たちと同じく“一寸先は何を考えているかわからないクズノハ団員”であったことだけ・・・。 ●乙女心 IN DEEP 何故こんな事になったのだろう? 確か、予定では大岡越前ばりに左右から引っ張られるラスキューさんを眺めて、彼が人生的に破産した頃に【ドッキリ】の看板を持っていて「なーんだ、ドッキリだったんだ。テッヘヘー、一本取られたなー♪ トホホ、もう海はコリゴリだよ」てな感じに鼻の下を擦るラスキューさん、でヒキのはずだったのに。 それが何故、夏のビーチに。 大根が尻に挿さって倒れている烏合の衆、なんて地獄絵図が展開されているのだろう。 夏の日差しに、冷や汗がヤケにダラダラ流れ落ちた。 事件はオチの段階で起きた。 ハーレムの主と化したラスキューにウィチタが告白するシーン。追い打ちでルバルクが告白し、そこから火サスに発展する予定だった。 だが。 「ラスキューさん、ウィチタと一緒に逃げてくださいですぅ〜!」 アレ、なんか微妙に違うな? 仕掛人たちが一様に思う。そしてそれにいち早く反応したのがルバルクだった。 「・・・ウィチタにゃ・・・まさか・・・まさか!!」 「ごめんなさいルバルクさん・・・。ウィチタは・・・ウィチタはエロ四天王よりも愛に生きる衝動に駆られちゃったですぅ〜!」 愛に生きる。それはつまり、エロ四天王を裏切ると言うこと。 ウィチタ、衝撃の離反である。 「エロ四天王・エロ規則第五条「エロは魅せても愛に魅せられるな」を破るって言うにゃりか!ウィチタにゃ!今なら猫の小さな胸の内にしまっとくにゃ!だから・・・」 ルバルクの双眸がウィチタを悲しく見つめる。 「だから・・・だから今の発言を取り消すにゃ!その口で!」 「ルバルクさん・・・ウィチタの考えは変わらないですぅ。ウィチタは今日から、普通のエロい女の子に戻るですぅ〜!」 「否!女の子はエロに興味あるけどあくまで興味!それ自身では決して無い!えっちなシーンでは『顔を手で隠すけど、指の隙間からちょっと見てしまう』くらいの好奇心が女の子なんだー!」 「そうだそうだー!頭領さんの言うとおりだー!エロじゃなくて『ちょっとえっち』なのが萌えるんだー!」 「うっさいアホじゃり!女の子は頭ン中エロがひしめきあって○○で○○○ってエログロにゃー!!」 「ヒィ!夢も希望もない!」 「エロく無い女の子などファンタジーと解れにゃ!」 崩れ落ちる漢たち。まぁ絶望に打ち拉がれるアホたちはさておき。 ウィチタはこの夢追人の横槍を好機と判断し、ラスキューの腕をむんずと掴む。 「ラスキューさん、行くですぅ〜!」 そして脳内CPU不足で未だ状況判断が付かないラスキューを連れて、逃亡開始したのだった。 場に残されたルバルクは。 胸元から己の獲物を取りだし。 走り去る二人を見つめていた。 その双眸は。 悲しむ様に、憐れむように。 ●逃亡者VS処刑人 「はぁっ・・・はぁっ・・・」 もうどれくらい走ったであろうか。 1時間?2時間?それとも、まだ30分も走っていない? 走りながらだとどうにも思考能力が落ちていけないですぅ。ウィチタが心の中で呟く。 いや、走りながら、だけではない。追っ手から逃げながらだから、尚更思考は低下してしまう。 共に逃げるラスキューを見やる。こんな切羽詰まった状況にも関わらず、小話で場を和まそうとしている。「そしたらそれがワイフだったのさ!」というオチから、アメリカンジョークだったのだろう。思わずクスリ、と笑ってしまった。そのせいで走るスピードが落ちる。 と、その直後、本来の走る速さで到達していたと思しき場所に衝撃が走った。 後方から稲妻でも飛んできたかの衝撃。 正確には追っ手の飛び道具。地面に突き刺さる追っ手の、白く輝くメインウェポン―――大根を見てウィチタは戦慄した。あんなのがお尻に挿さったら・・・想像するだけで恐ろしい。 「ウィ〜〜チ〜〜タ〜〜にゃ〜〜〜〜。今なら2本で勘弁してあげるにゃ〜。素直に挿さったら更に1本サービスするにゃりよ〜」 恐ろしい!2本挿すだけじゃ飽きたらずもう1本挿す気なのか! 「絶対にイヤですぅ〜!そんな事されたらウィチタの可愛い●●が●●ちゃうですぅ〜!」 その言葉を聞き、横を走るラスキューが鼻血を出す。そして速度が遅れた。 「いけない、ラスキューさん!避けて!!」 だが、間に合わない。 「おごぉ!!?なに、何事でござるか!突如拙者の尻に激しい鈍痛が!ウィチタ殿、状況説明を出来るだけソフトに!」 「世の中には知らない方が良いこともあるですぅ〜。というより、多分知ったらショック死しちゃうかも・・・」 「じゃあ、敢えて何も言わないで。拙者も気にしないから」 数秒で立ち直ったラスキュー。正確には立ち直っていないが、心が折れてないから大丈夫だろう。 だが、逃亡を続ける上でこのダメージは深刻だった。 走る速度は見る見る落ち、あっという間にルバルクに追いつかれてしまった。 更に悪いことは続く。 逃亡した末に辿り着いた場所は・・・これ以上先がない、断崖絶壁だった。 仕方なく方向転換しようとすると、その足下に大根が突き刺さる。それも、3方向に。 逃げ道は完全に、ふさがれてしまった。 「ウィチタにゃ。ついにチェックメイトにゃりよ。大人しく粛正を受けるにゃ」 にゃふふ、と笑いながら、ルバルクが見事に育った大根を構える。両手の指に大根を挟んでいる。指の間に一本ずつ持っているから、同時に3方向へ攻撃が出来たのだ。 ルバルクの小さい両手は、今や6本の熟成された大根を放つ発射台へと変貌していた。 今更ながら、自分も武器を用意していなかったことを悔やむ。あったならば、せめて反撃が出来たのに・・・。 絶望に心が折れそうになった時、予想外の人物が口を開いた。 「・・・ウィチタ殿、ここは拙者が時間を稼ごう。その間にウィチタ殿は逃げるでござるよ」 「ラスキューさん?」 「フッ・・・未だ状況は掴めないでござるが、どうやらここは拙者の見せ場と判断したズェ?ここで前に出たら拙者の評価も鰻登り、今後も今日のように女の子を左右にはべらして札束風呂でドン・ペリニヨン・コークさ!」 さすが、決める時は決める男・ラスキュー。動機は不純だが決まっている。後光が差していた。 「そんな・・・ラスキューさんを置いていくなんて、ウィチタには出来ないですぅ〜!なんとかしてラスキューさんも一緒に逃げるですぅ〜!」 必死に説得するウィチタ。だが、ラスキューの決意は固かった。 「ウィチタ殿・・・達者で」 ラスキューがウィチタを、唯一の逃げ場―――崖へと突き落とした。 だが、ウィチタも素直に落ちなかった。 執念だろうか。手近にあった布を掴む。それにより一時的にだが落下を防ぐことになった。 「ちょっwwwウィチタ殿wwwwそれ拙者のフンドシwwwwwww」 先程の大根が挿さったショックで、ズボンからホロリと出ていた純白のフンドシ。ウィチタはそれを掴んで落下を防いだのだ。 「イヤですぅ〜!ウィチタは一人では逃げないんですぅ〜〜!ラスキューさんと一緒じゃなきゃイヤンですぅ〜〜!!」 「ウィチタ殿・・・締め付けがキュッて! お願い・・・取り敢えず離して・・・」 「イヤですイヤですぅ〜〜〜!!」 必死のウィチタ。手を離せば恐らく、ラスキューはヤられてしまうだろう。そして、もう会うことも出来まい。 ウィチタとは違う意味で必死のラスキュー。今すぐこの締め付けを何とかしなければ、一大事だ。 「何が一大事かって?おっと、子供はもう寝る時間だ・・・おぐぅ!!」 アメリカンジョーク風に言うも、尻に鈍痛。恐らくルバルクの追撃だろう。もう怖くて後ろは見られない。 まさに前も後ろも大混乱だ。 だがしかし、それが好転の兆しを見せた。 追の衝撃により、ラスキューのフンドシの紐が解けたのだ。 スルリとラスキューから抜け落ちるフンドシは、それに掴まるウィチタと共に崖下へと惹かれて行くこととなる。 「ラスキューさぁぁぁんんんんんん!!」 絶叫。 その声は重力に反し空中へと置き去りにされ、むなしく響き渡る。 ウィチタはもう、重力すらも感じられなくなった。 逃亡は果たした。だが、それと同時に彼女は大切な人を・・・失うこととなった。 浮遊感に胸を裂かれながら、ウィチタは誓ったのだ。 ・・・復讐を。 そして崖上ではその光景を、遅れてきたリオンたちが目撃していた。 「ら、ラスキューさん・・・アンタ・・・」 追いかけてきた彼らに対し、『ヒロインを助けて犠牲になる男』を体現したラスキューはニヒルな笑いを浮かべた。 「フッ・・・リオン殿、拙者の雄志を見たかね?シャバ憎のリオン殿には難しいだろうけど、ステキにイカス拙者にはあっさり出来ちゃうんだなぁ」 ゲッゲッゲと笑うラスキュー。得意気になっているが、周りの反応がちょっとおかしいことに気付いた。 「・・・リオン殿?」 「ああ、ああ、わかってますよラスキューさん。出来心だったんですよね。うん、大丈夫。僕はわかってますから・・・あ、警部。こっちですこっち」 見るからに武術を学んでいる感じの男が赤色灯を光らせて近寄ってくる。手には丸い物体を持って。 カシャン 「16時53分、少女突き落とし事件の現行犯で犯人確保!」 「ゲェー!?リオン殿これは一体どういうことでござるか!」 「どうもこうも無いですよ!メッチャ人突き落としてたじゃないですか!アンタ・・・そこまでするなんて!」 そう、そうなのだ。彼らは突き落とすシーンから見てしまったのだ。 つまり。うん、そのシーンだけならば・・・ 痴情のもつれから、相手を突き落とした。 シーンに見えたりもする。 「ち、違う!そうじゃないんだ!拙者じゃないんだ!弁護士を呼べー!!」 余りの事に混乱したラスキューが訳のわからないことを叫ぶ。弁解することも間違えているしね。 こうして、痴情事件は悲しき結果となった。 ドラゴが持つ、行き場の失った【ドッキリ】の看板が、夕日に照らされていた。 ●愛、尻染めし頃に 「と言うわけでウィチタはあのとき死んだラスキューさんの仇を取るために、ルバルクさんと戦うのですぅ〜」 「しかしウィチタ殿。ラスキュー殿は第一試合にいt・・・」 「他人の空似です」 キパッと言い切っちゃった。 「して、申し込まれたルバルク殿。お主は如何に?」 「ぱんちゅ娘・・・いい度胸にゃ。ならば猫も全身全霊をもって答えるにゃ」 にゃふふ、と笑いながらルバルクが大根をペロリと舐める。 「ラスキューにゃが身をもって助けた命、大衆の前で儚くエロく散らすがいいにゃ!」 こうして、エロ四天王最期の二人の戦いが確定してしまった。 円卓の間 御前試合。 尋常ならざるその試合も遂に十一試合目を迎えることとなった。 十一月二十五日。 正午を越えたその時間帯に、前代未聞のエロ勝負が行われようとしていた。 「しかし御大もよく許可したモンじゃなぁ。自分の誕生日に、もうじき正午になろうとしているその時間帯からエロ勝負となりそうな戦いを許可するとは・・・。まぁ、残酷な試合がもう十一試合目も来てるから、口直し的意味合いも含めてるのかもしれんがな」 そう、第十一試合目。“正午”から、エロい戦いが展開される。 「・・・むむむ?」 審判兼進行のチアキは、違和感を覚えた。 正午?確か・・・正午には第四試合を行っていなかったか? 第三試合までの血と臓物臭により、多くの観客が食欲を無くして――― 「チアキさん、次の試合が始まるデスよ?」 トートの声に、思考の渦に落ちていたチアキが我に帰る。 「あ、ああ。そうじゃったな。うむ」 「何か考えごとデスか?」 小首をかしげトートがこちらを見つめてくる。 「・・・いや、なんでもない。・・・多分」 表現し辛き思考を脳の片隅へと追いやり、チアキは審判の仕事に集中する。 ―――だが、脳の奥へと溜まりし暗想は、いつまでも晴れないこととなる。 円卓の間、前に用意された試合会場に敷き詰められた白砂はもう、何度取り替えられただろうか。 出場戦士たちの血で、観客達の血で彩られたために。 それは命を賭した戦いによる産物であったり、はたまた粛清によるものであったり・・・。 または、興奮による鼻血であったり。 またあのエロ勝負が見られるのか。 第十一試合の面子を見た観客達は、その興奮に震えていた。 エロ四天王最後の二人が変えられたばかりの白砂を踏みしめる。 ごくり。 誰かが唾を飲み込む。もしかしたら全員かもしれない。 ウィチタが一歩、前へ出る。 手にはラスキューが残した最期の白布。 (ラスキューさん・・・どうか・・・どうか天国からウィチタを見守っていてください・・・) 「ウィチタ殿ー!がんばるでござるなぁ〜ん!ウィ・チ・タ!そぅるあ!ウィ・チ・タ!」 観客席にはやけにはしゃぐヒトノソがいる。きっと幻覚だ。 「ウィチタ殿ー!あれ?聞こえないのかな?拙者拙者!ラス・・・ぶぼっ!」 どこ(試合場)からか飛んできた石が騒がしいヒトノソの顔面を直撃する。静かになった。これで試合に集中できるだろう。 向かい合う二人の空気が一変し・・・試合は開始された。 キュウリが飛び、大根が飛ぶ。たまにナス。 それは飛翔し地面に、天幕に、そして観客達に突き挿さる。 ・・・こう現すと意味不明だが、まさにこの通りの試合なのだからしょうがない。 最初、ウィチタがいつも開いている胸元を更に広げた時、観客の男たちが挙って前に乗り出した。 それが災いした。 胸元を開いたのは、エモノを取り出すため。出てくるのはキュウリ。ナス。 細くて長くそりたつ様に曲がったモノと、太く黒々とした愚直なモノ。 ウィチタはそれを胸から取り出し、チュッと軽く口付けをする。 その行為にノックアウトだ。煩悩と野生に囚われた観客が試合会場になだれ込む。意味不明な雄叫びを上げながら、猛る野獣をその身に変えて。 だがしかし、古来より踊り子に手を触れてはいけないように、彼らも踊り子に触れること叶わず。 何故なら攻撃動作に移ったウィチタに射殺されたのだから。 「ニードル・・・キュウリですぅ〜!!」 「おふぅ!」 「にゃんの!大根アタックにゃー!」 「アオォ!?おお・・・ぉぉぉ・・・」 「負けないですぅ!キュウリ!キュウリ!&ナス!」 「おおォ!あおォ!おごぉ!!」 「にゃー!連射速度なら負けないにゃー!」 「そんな!!(ズコッ)エロイモノが見れるって!!(ザコッ)聞いて・た・の・に!!!(ズンッ!ズンッ!ズズズズン!!)」 犠牲者達からは悲痛な叫び声が聞こえる。だが、歓喜の呻きが洩れるのも事実。 其処は地獄。生と死、エロスとタナトスが邂逅する禁断の楽園。其処に降り立つは年端も行かぬ美少女二人。 「地獄か・・・天国か・・・ガクリ」 また1人倒れた。金髪のシャバ憎よ、ヴァルハラへ征け。 「にゃふー。ぱんちゅ娘、あの時とは動きがダンチにゃりね!」 「ウィチタは、特訓したですぅ。あの時の悲しみを繰り返さない為に・・・。そしてラスキューさんの仇を・・・取るために!!」 飛翔するキュウリ。だが軌道は既に見破られていた。ルバルクはすぐさま片手に持つ三本の大根を放とうと――― 「―――影刃!!」 正確には影茄子だろうか。放たれたキュウリよりほんの僅かタイミングをずらして投げ、キュウリの陰にナスを隠すことにより隠し武器となる。キュウリに気を引かれては防げない代物だ。 「舐めるにゃー!!」 片手に3本。両手で計6本の大根を直線に放つ。先頭がキュウリを撃ち落し、続く二陣が軌道を代える。三陣がナスの軌道を――― 「―――変わらない!?にゃっ!にゃぅん!」 辛うじて避ける。危なかった。あと少しであの黒光りするモノが口に入り込む所だった。 「あんな黒くて大きいの・・・猫には入らないにゃ・・・あ、ナスの話にゃよ?」 誰に向かっての訂正か。ナスの話しにキマッテルジャナイですか。マッタクモウ。 だが観客達はそう思わなかったようで。次々と鼻血を噴出していく。 「極楽やで〜」 「ふふふ・・・強猫さんにたら・・・エロス」 飛び交う野菜たち。無限にも思える攻防。だが、それにも終焉はくる。 「ぱんちゅ娘。そろそろエモノがなくなるんじゃないかにゃ?」 「まだまだ。ルバルクさんに挿れる分はあるですぅ〜」 ルバルクの問にウィチタは内心動揺する。谷間に挟み込んだエモノはもうキュウリが二本、ナスが一本しかない。コンビネーションとしては次が最後だろう。 その気配を呼んだのかルバルクはニヤリ、と笑う。 「にゃにゃ★ やっぱり少ないみたいにゃね。だったら・・・切り札を使われる前にトドメを挿してやるにゃ!!」 宣言すると同時にルバルクの気が膨れ上がる。それに呼応するかのように大気も震えだしてきた気がする。 「このエロス力・・・ルバルクさん、まさか!」 「気づいたようにゃりね。そう、これから猫が使う技はクズノハエロ四天王のみが使用できる究極最終奥義『惑星直結グランド・エロス(ルバルク版)』にゃ!」 「こんな・・・こんなたくさん人がいる場所で奥義を放つのですかぁ〜!」 恐ろしい。ルバルクは・・・周りにいくら犠牲が出ようとも構わないつもりだ。 あんな奥義使ったら、間違いなくここにいる人たちは・・・血の海に沈むだろう。 「ルバルクさん!」 ウィチタが止めにはいる。如何にエロ四天王とはいえ、あの技は危険すぎる。 しかしそれを拒否するように、闘気によってルバルクの衣服が爆ぜる。肩布、腰巻、まるで意思を持つかのように。 徐々に露出が多くなっていく少女の姿に、観客の男性達(まだ無事なのがいた)は更に身を乗り出す。念のため張り巡らされた境界ロープは重圧に耐え切れず今にも千切れそうだ。 ルバルクの目が、カッと見開いた。 「喰らえ、ウィチ公!!銀河開闢(かいびゃく)にも匹敵するこの壮絶な神の拳を!!」 大地が唸る。 「そして思い知るがいい、貴様のエロさなど・・・我がエロスの前には無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄WRYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!」 大気が澱む。 「喰らえ!!『惑星直結グランド・エロス(ルバルク版)』!!」 ルバルクを中心とした激しい閃光が辺りを包み込む。 そして世界は反転した。 ●エロス畑でつかまえて 鼻血による出血多量に陥った観客達には、何が起こったのか判断がつかなかった。 ルバルクの高らかな宣言と共に彼女の闘気は爆発的に膨れ上がり・・・爆ぜた。 しかし・・・それで終わりだ。何も変わった事は無い。 いや、一つだけある。 あの眩い閃光を浴びたが故に、少々目が効かなくなっている。 だがこれもいずれ消える効果。問題は無い。 ルバルクが自信満々に放ったグランド・エロスとは一体・・・。ただの目晦ましだったのだろうか? 観客達の心に寂しい気持ちが浮かぶ。最後にこの技だったのか・・・。 「あれ?」 観客Aは不意に聞こえた音に反応した。微かに、僅かにだけ聞こえた様なその音に。 「なんでこれ、今の音って・・・」 ぷにっ 「!?」 聞こえる。形容しがたき音だったが、確かに『ぷにっ』と聞こえた。 はっきりと聞こえるはずがない。だけど。この音は。 ぷにっ ぽよんっ 「!!??」 また聞こえた。間違いない間違いない。 音を聞いた反応だろうか。脳内に“その”映像が浮かび上がってくる。柔らかくて大きい・・・。 血液が沸騰する。血圧が上昇する。頭が燃え上がるように熱い。 この張りがあり柔らかい感覚の音は間違いなく。 「・・・おっ」 “きゃっ! もう、えっちなんだからぁ!” あり得ない声が聞こ ブシュゥゥゥゥゥゥ!!! 噴出す鼻血。まるで火山のように赤々とした血液が豪勢なアーチを描く。それと同時に貧血に陥った観客Aは息絶えた。 「これが・・・エロ四天王奥義グランド・エロス・・・」 「にゃふふふふ!視覚を封じ聴覚を鋭敏にすることで妄想力を乱反射させる!それにより普段は他愛もない音も、エロ反射効果で脳内爆破を起こす!コレが猫特別のグランド・エロスにゃ!」 なんと恐ろしい。生体反応に直接訴える技。つまりは、生きている限り決して避けられないということ! 擬音だけならば何とか耐えられるかもしれない。だが今、この空間には女の子の声も響いてくる。 そうなれば想像されるのは、否応がなく・・・それだけだ。 「この技を受けて生き延びたエロは今まで居ないにゃ!ウィチ公!貴様も風前の灯火にゃねぇ〜」 「なんて恐ろしい技を無差別でかけるでござるy」 ぷるんっ 「ボハッ!!」 また一人犠牲者が。いや、一人どころではない。音だけしか聞こえないが、ウィチタの耳に聞こえる限り四十人以上が倒れた気配がある。 「まずいですぅ〜。このままではウィチタも・・・」 ウィチタの耳にも非常にエロ心を突かれる擬音が聞こえる。この世には決して生まれない音。人々の脳内にしか生息できない哀しき妄音たち。だが、しかし。 「命儚いからこそ・・・取り憑かれると厄介ですぅ〜」 確実に心を貪られる。脳を壊され、心を壊され、行き着く先は・・・ 「ぽわ〜〜」 この幸せそうな顔で死んでいる観客達と同じだろう。 こうなる前に・・・使うしかない! 「にゃにゃ?ウィチ公。遂に使うのかにゃ?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「ルバルクさん・・・ウィチタは真正面から・・・貴女に挑むですぅ〜!」 ウィチタの眼差しが見えないルバルクを睨む。視界はまだ回復していない。 だが、ウィチタは確かにルバルクを睨んでいた。 確かに、睨んでいた。 「ラスキューさん・・・ウィチタに力を・・・」 大地が唸る。 「ルバルクさん・・・エロ四天王として、全てを貴女にぶつけるですぅ〜!」 大気が澱む。 「いくですぅ〜!『惑星直結グランド・エロス(ウィチタ版)』!!」 ウィチタを中心とした激しい振動が周囲を揺さぶる。 そして反転した世界は、再び色を無くした。 何故なら、世界はぱんちゅで彩られていたから。 「うおぉぉぉぉおおぉ!?ぱ、ぱんちゅ少女が!ぱんちゅ少女が!空を飛ぶ!?」 「うわーい、ガンダーラはこんな所にあったんだー。アハハハハーぱんちゅ少女がー」 「こ、これはまさか!遙か古代中国の皇帝が愛用したと言われているぱんちゅベッド!生きて本物に出会えるとは・・・」 「バカな!彼女は清純派だ!そんな過激なぱんちゅを履くわけが・・・アレ?なんだろう、この胸に過ぎる情熱は・・・」 「俺は・・・泣いてるの?○○さんがこんなセクシーぱんちゅ履いてるのを見て」 「なにぃ!?何て羨ましいモノを見てんだ!テメェ俺の○○ちゃんのと変われ」 「聞き捨てならん!お前こそ譲れ!」 「そうか、そういうことだったのか!」 「知っているのかリオン殿! ・・・アレ、リオン殿さっき死んでなかった?」 「そんな些細なことはどうでも良いです!それよりもウィチタさんの技の秘密がわかったんです!」 「え、もう?」 「ページの都合という奴です。良いですか?ウィチタさんの『グランド・エロス』は視覚に訴える技だったんです!人間の情報は80%近くを視覚から得ています。それを認識できているかどうかはさておき。認識・・・人間は目に映るモノを『見ているが認識できていない』という状態が必ず起きています。個人差はありますが。聴覚・嗅覚など他の器官を連動しているため、視覚に全ての感覚を振ることはできないんです」 いつの間にか黒板を持ち出して説明するリオン教師。その周りにはこの原因を知ろうと観客たちが集まっていた。 「で、もし全て知覚できていたら一体どうなると思います?目に入るモノ全てを認識し、それを脳に焼き付ける事になるでしょう。ウィチタの技は、それを強制的に起こす技だったんです!見てください、グランド・エロスと同時にぱんちゅ袋から放たれた無数のぱんちゅ。強猫さんの『グランド・エロス』のせいで僕たちは目が利かないハズなのに、飛んでいるぱんちゅは見える。これはルバルクさんの眩ましの中を突き進み、ほんの少しだけ印象を与えられたぱんちゅが何十倍にも印象づけられている効果なんですよ!」 「な、なんだってー!?」 「印象づけられたぱんちゅは脳内で乱反射し、更に増幅する。その結果、被験者たちにはぱんちゅだけじゃなくそれに伴った女性たちの見える世界が広がるというわけです!」 「うむむ、恐ろしい。恐ろしい・・・」 「ええ、全く恐ろしい技でボハッ!!」 「リオン殿ー!!」 「頭領さん・・・僕はもうダメです・・・でも・・・悔いはありません・・・だってぱんちゅと共に・・・逝けるんだから・・・」 「リオン殿ー!!!」 「ところで頭領さんは何で無事なんですか?」 「いや、わしはどちらかと言うとぱんちゅよりも白ガーターの方が・・・」 「・・・白ガーターと白ぱんちゅはセットですよね」 「・・・・・・ボェ!!」 「計算通り(ニヤリ)」 「にゃがが!さすが愛に生きようとしてもエロ四天王!これほどの威力をだすにゃんて!」 戦慄するルバルク。 「だけど・・・まだまだ甘いにゃねぇ」 次の瞬間には邪悪な笑み。 「む、ルバルク殿のあの余裕は何でござるかボヘー!!」 「一般的に必殺技は後から出した方が有利!にも関わらずあの余裕。一体どんな策がブフー!!」 「ああ、見ろ!さっきまで見えていたぱんちゅがなんだか薄くなってきているぶしゅー!」 「まさか・・・スタミナ切れ!?」 観客たちが死にながら解説する。 まさにその通り。ウィチタはスタミナ切れに陥っていた。 それというのも愛に生きる決意をして以来、エロリストパワーが不足している為だった。常にエロく生きてきたルバルクと比べ、圧倒的にエロスタミナが足りない。 「くっ・・・一時でもエロリストの称号を捨てた罰ですぅ〜」 ウィチタが片膝を付く。苦しそうなその姿は明らかにルバルクの猛毒にやられている。 今まで自分に力を与えてくれたエロパゥワーが今や、逆に身体を蝕んでいる。妄想音が脳を貪る。 「ラスキューさん・・・」 あのとき、身を挺して自分を助けてくれた人を想う。 どんなヒロイック・サーガの主人公よりも輝いていた彼を。 「にゃふふ。仇討ちも無意味に終わったにゃねー。あのとき虫ケラの様に死んだラスにゃは全くの無駄死にってことにゃ!」 ちなみにラスキュー氏はあのとき死んでいません。おロープされただけです。 「んじゃまぁ、トドメにふるぱわーをお見舞いしてやるにゃり!こぉれぇでぇ・・・終ゥー了ゥー!!」 ルバルクのエロパゥワーが更に上がる。光はウィチタのばらまいたぱんちゅをかき消し、世界を包み込んだ。 「おわー!またか!またあの妄想音が聞こえてくるのか!」 「ギャー!今度は息づかいまで聞こえてくる!あわわ、背中に、背中に柔らかいモノが当たる音が・・・」 観客に伝わるパニック。妄想音界は目の前の敵をうち倒すため、加速した。 「・・・虫ケラですってぇ?」 ドクンッ 「にゃにゃ?」 勝利を確信していたルバルクが、突如聞こえた呟きに耳を傾ける。周囲は妄想音に囚われた観客たちの叫び声、昇天声で包まれている。 その中でしっかりと聞こえる声があった。 「虫と言ったな?あの人を、虫ケラと言ったな!」 穢された。 穢された。 あの人の思いを。あの人の誇りを。あの人の生き方を。 「許さない。許さない。許さない。許さない。許さない!!」 赦さない 「にゃ、にゃが!?もしかして猫、地雷踏んだ?」 ウィチタの気配がどす黒く染まる。 閃光に包まれた空間に亀裂が入る。ウィチタを中心にまるで蜘蛛の巣の様に無象に広がっていく。 「にゃがー!?崩壊!?浸食じゃなく、崩壊にゃとぉー!!」 奈落の底のようなウィチタの目が、ルバルクを睨んだ。 「征きます。征きます。征きます。征きます!!」 「にゃー!やべー!このままじゃ猫、紅葉おろしにされちゃうにゃ〜!」 その速度は電光石火と言うべきか。尋常ならざる急加速により、ウィチタはルバルクまでの距離を一瞬でゼロにした。 「やらせんにゃよ!」 ルバルクとてエロ四天王。ただではやられない。距離が狭まったならば好都合だ。ゼロ距離から再び『グランド・エロス』を放てば一瞬なりとも注意を引ける。その隙に体勢を立て直せば。 だが 「ぱんちゅ!?」 ぱんちゅの、壁。 ウィチタが武器として用意したぱんちゅ袋。その袋からまるでウィチタに呼応するかのように、ぱんちゅたちが飛び出してルバルクに襲いかかった。 「にゃが!この程度でー!!」 手にした大根を振るいぱんちゅを払いのける。 完全な囮である、ぱんちゅを。 「にゃあ!?」 気付いた時には既に遅し。 ルバルクは完全に捕縛されていた。 ウィチタの手にした白い布で。主に顔を。 ラスキューの残した―――フンドシを。 「にゃー!!くさっ!いやむしろ苦ッ!に゛ゃー!!」 ルバルクが苦悶の悲鳴を上げる。されど弛められず。ギリギリと締め上げるのみ。 「蝶・必殺ぱんちゅ乱舞!」 ウィチタが更に締め上げる。ここで落とさねば・・・負ける。それだけは出来ない。自分を、命を賭して助けてくれた彼のためにも(注意:死んでません) 勝負を決めるために接近戦を選んだウィチタ。ぱんちゅ乱舞もこの距離ならば確実に当たる。 だがそれは、ルバルクの攻撃も確実に当たると言うこと。 ルバルクの手がウィチタの顔を掴む。 「グランド・エロス!!」 聴覚を犯すルバルクのグランド・エロス。それが今、攻撃範囲を単体に変換しウィチタに襲いかかった。 その威力は通常の約九倍! 「くっ・・・あぁあ!!」 「妄想に共鳴せよ!妄想に反応せよ!妄想に殉ぜよ!!」 グルグルと、ウィチタの妄想回路を掻き乱すルバルク。次から次へと矢次に妄想を送り込む。そして反応するモノ全てを暴走させる。脳に負担をかけるために。 それはまるでウィチタの記憶回路を一つずつハッキングしているかの如く。 ルバルクによる、心的陵辱。 新たな記憶を漁り、新たな記憶を貪らなければ。この臭いで息絶える前に。 もっと奥に、もっと奥に、奥に奥に奥に奥に奥に奥に奥に奥に ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 「おや、ルバルク殿。奇遇でござるねぇ」 「・・・!ラスキューにゃ!なんでこんな所に!」 妄想回路の入り乱れる通路。こんな所に思い出はあっても人格などがいるはず、無い。 「ハッハッハ、拙者は何処にでも居て、何処にも居ないんでござるなぁ〜んよ。あ、なんか今スゲー久しぶりにござるな〜んを言った気が」 「・・・なんか、すごくどーでも良い気がしてきたにゃ」 「あ、待って待って。実は拙者、ゴイスーな情報を持ってるんですよアニキ」 「アニキじゃないにゃ!アネゴにゃ!・・・で、そのゴイスーな情報ってなんにゃ?手短に話さないと猫、そろそろヤバイにゃよ?」 「小話風に説明すると 「やあジョン。元気が無いようだけどどうしたんだい?」 「ああ、マイクか。聞いてくれよ。なんだかウチの嫁さんが冷たいんだ」 そしたらジョンは言ったのさ「k 」」 ピシィ!と乾いた音が聞こえた。 ウィチタの記憶が乱れる。舞い落ちる硝割の様にはらはらと、崩壊していく。 今のはきっと・・・自分のグランド・エロスが破られた音だろう。 ルバルクは何となくそう理解した。 肉体と精神を切り離してまでウィチタの内部に食い込んだモノの、どうやら間に合わなかったらしい。 「にゃー。負けちゃったにゃりかー。勝てると思ったにゃが・・・残念」 ウィチタの中でぷかぷか浮かびながら、ルバルクは呟いた。 「まぁ、ゾーリン姉さんフラグを踏んだ時点でもしやとは思ってたにゃが」 ぷかぷかと浮かぶ身体を横にし、寝転がる。 「ふにゃ〜〜〜♪ ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪」 がらがらと崩れる欠片に埋もれながら、ルバルクは一人、鼻歌を唄っていた。 その声に誰かが併せて鼻歌を唄っている気がしたが、きっと気のせいだろう。 ここには誰も、いないのだから。 「いるとするなら主人たるぱんちゅ娘だけにゃりが、まだ生きてるだろーし」 まぁ、誰でもいい。世界の終わりに誰かといれるなら。 ルバルクは再び、鼻歌を唄いだした。 金属質の物体が割れるような、裂けるような金切音が響いた時、視界を遮っていた白光はバラバラに砕け散っていた。 妄想に囚われつつも辛うじて生き残っていた観客たちは一様に試合場を見る。 そして、ようやく事態を理解した。 試合場には出場者たる二人の少女が立ちつくしていた。 共に、息絶えた状態で。 恐らくほぼ同時に相手を仕留めたのであろう。 ルバルクはフンドシによる窒息死。 ウィチタは強度の妄想強与により・・・心が折れた。 立ち往生となった二人には、何故かほぼ全裸となっていた。 専門家は互いの必殺技の相乗効果だろうと推測したが、当事者たちが死亡してしまい真偽は定かではない。 噂のみが一人歩きすることになるだろう。 勝敗は如何に決められるのだろうか? エロ勝負と言うこともあり、勝敗の判定基準は衣服に判断された。 当初、ぱんちゅのみを履いていたウィチタがエロいと言うことで勝利が下された。 だが、この判定に不服を出す者が現れた。 エロさで判断するならば、ニーソックス(しかも黒)を残したルバルクの方が熱い、と申請してきたのだ。 審判団もその意見は尤もだ、と納得。ニーソックスルバルクを勝利をと思ったが、ぱんちゅ派がこれに反対。 困り果てた審判団は生き残っている観客全員を対象に、どちらが勝者か決を採った。 ぱんちゅ十三票、ニーソックス十三票、ガーターベルト二票(無効票)、むしろ嫁に来い一票(処刑) 結果、この試合は両者引き分けと宣言された。 例え命が尽きようと 妄我の領域朽ち果てぬ 是ぞ エロリストなり ―終― |