第十試合 アイリス 対 フィリア 『相打つドジっ子ツンデレ』 担当MS:リオン |
−プレイング− |
偽旅団シナリオプレイング 因縁(後付け設定+思いつき) フィリアさんは昔所属していた隊(ドジッ娘部隊)の元隊長 私その部下 突然フィリアさんがいなくなったため後の隊長に フィリアさんは反逆者なので始末しに来た 必殺技 序盤(優先度低い) 昔の戦闘系ドジっ子、勇者についていった大商人の闘法、ころんで会心の一撃狙いだ! えい!ミス! … そう上手くいきませんよねー、てへっ♪ とりあえず戦闘はグダグダになると思われ ドジのレベルの違いからこっちが圧倒(フィリアさんがドジの意) 終盤(優先してほしい) くっくっくっ、長年実戦を遠ざかっていたのは大きいな!フィリア!(急に強気な感じで) お前にはじめて見せてやる とどめだ… (怪しいオーラを出してみる) これはドジっ娘とツンデレの二つの要素を組み合わせた新しいジャンルでな… 私もまだ理解しきれていない… まだ名もないジャンルなのだが… フィリア「名ならある…「ドジツン」という…」 な、その構えは… フィ「私もまだ上手く操れないのでな…注意しろよ?アイリス?」 ↓(中略) (フィリアさんの服がはじけ飛んだりいろいろサービスシーンあり?) (問題なく実力の差を見せつけられて敗北) なぜ私を連れて行ってくれなかったのです… フィリア様…(涙) 適当にフィリアさんのプレイングがよほどの負けプレイングでない限りフィリアさんの勝ちにしてください 頭に浮かんだ設定から負けキャラなので… 後半私はそのまま砕○さんです。向こう夜○さんで 砕峰さんってドジっ娘ツンデレにしか見えないですもん 詰め甘すぎだし 大体こんな感じでお願いします ―月下流水・フィリア(a35776)のプレイング― 【プレイング】 ◆対戦表 ドジッ娘アイリス殿 VS クールに生きたい いや切実に フィリア ◇【行動と言いつつも台詞が大半】 「ふン・・・・あぁ、良い空だ。まったく、アイリス殿。目玉焼きと言ったら(醤油/ソースだろう、(醤油/ソース)。 (アイリス殿とは違うほうを選択)。) (台詞はチアキ殿に任せる。頑張ってくれたまえ(鬼) ◆【必殺技】 故にフィリアは居合いの構えをとったのであった。 「ふふ・・・この我が家系に代々伝わる秘宝の剣・・・・抜けば一瞬でキミを消し去るだろう!」 フィリアは身体を深く沈め。一気に跳躍の準備をとった。 「それでは・・・いくぞ―(ボキッ) ・・・・しばしの沈黙 「・・・・お、折れたわけじゃない!こ、これはだな、ちょっと間違えて持ってきてだな!(泣) フィリアは剣を抱えて半泣きになりつつ、 「だって、本物だなんて物騒じゃないか・・・」 赤面しつつ 「だが、この借りはいつか返す!いつか返すからなー!」 そのまま脱兎した。試合はあっけなく終わったものであった。 ・・・・あぁ・・・やりすぎた・・・今は反省している。第一、私は医術士であった(まる) |
−リプレイ− |
太陽は頂点を目指しその身を移動している。 あとどれくらいで正午となろうか。朝でも無く、昼でも無い時間帯に行われた 第10試合は、異色の取り合わせであった。 晴れ渡る青天の中、審判により第10試合の開幕が告げられると、観客はひときわ 激しくどよめきたった。 対戦者は、アイリス・リーゼ(a16328)。 それに対するは、フィリア・スチリアード(a35776)。 天下に名高きドジっ子2名による、まさしく頂上決戦である。とにかくこの一戦だけ でも見ようという者も、観客の中には数多くいたのだ。 中盤の山とも言える世紀の一戦であった。 観客達が予想した通り、この試合は開始前から既に勝負が始まっている。 かくして両名が試合場に姿を現わしたのは、実に試合開始が告げられて半刻以上も 経過した頃であった。 試合開始からいきなりの大遅刻。 アイリスはパジャマとナイトキャップといういでたちで欠伸をしていたし、フィリア といえばパンをくわえて服が前後逆という状態である。 さらに信じ難き事に、両者とも家にお弁当を忘れて来ている。 さすがは名高きドジっ子と言うべき技の冴えであった。 観客達の口を、一様に感嘆の溜息が突いたのも無理からぬ事であったろう。 「とにかくお前ら、きちんと試合の支度してから来い!」 見極め役のラルフの声が掛かると、両者は一旦幕間に引き込んだ。 膠着戦と見たために一旦休憩を挟む事にしたのだが、これはさすがはラルフと褒める べきであろう。ドジっ子を知り尽くした者のみが出来る名裁きであった。 この空き時間を好機と見たのか、世話役のチアキは傍らのリオンにささやいた。 「リオン殿。」 「なんですかな、頭領殿。」 この取り組みの提案者は他でもない、リオンなのである。 「・・・血迷われたか。」 「なんと?」 チアキは額に脂汗すら浮かべていた。一方、リオンはまるで介さず涼面である。 「アイリス殿は確かにドジっ子。それも達人と呼ぶに相応しき者。されど・・・」 「フィリア殿は比類無きドジっ子の達人。アイリス殿には万一にも勝ち目は無い、と そう申されるか。」 「ぶっちゃけ、左様。」 深刻なチアキの表情に対し、リオンはあくまでも平静であった。 「チアキ殿、試合をとくと見られるが良い。答えはすぐに出ようぞ。」 ただリオンの目は、何者かの目覚めを待つかのような異様なる輝きを秘めていた。 「っていうかリオン殿は第一試合で死んでるんじゃから、そろそろルール通りに消えて 欲しいんじゃがのう。」 「俺が?」 ●最愛なる隊長 アイリスとフィリアの二人が、この凄惨な御前試合で初めて顔を合わせたと考えて いる者もいたようだが、それは大きな誤りである。 両者は知人どころか非常に親しい存在、むしろ師弟関係にさえ近い間柄なのである。 いや、正確には「なのであった」と言うべきであろうか。 アイリスが初めてフィリアに出会ったのは3年ほど前の事である。 当時まだ萌国時代の真っ只中にあった円卓において、若きアイリスは立身を目指し 最前線の戦闘部隊に所属する道を選んだ。 部隊の名は「お塩とお砂糖間違え隊」。 後に無敵と呼ばれ恐れられるドジっ子特別戦闘部隊である。 さて、アイリスには生来にドジっ子の天稟があったようだ。 生まれ町の道場では、若くして敵う者が無いほどであった。 それは確実な自信となっており、隊に入隊した際にもそれは遺憾なく発揮された。 集合時間の2時間後にリクルートスーツ+スリッパという姿で現れたアイリスを見て、 部隊の隊員達は一様に「すごいヤツが来た」と感じたものである。 そんな中、一人の女性隊員がアイリスに向かって愚痴た。 「それにしても隊長は遅いな。まったく、長としての自覚が足りん。」 アイリスもそれには同感であった。 彼女自身、まだ隊長に会った事は無く、どんなドジっ子なのか見当もつかない。 もし大した実力も無いようなら・・・隊長の座を奪い取るぐらいの気負いは、控えめ なアイリスの心にも確かに存在した。 しかし、 「アンタが隊長だろーーー!!!」 しばらく考えた後、隊員達の総ツッコミが件の女性隊員に集中した。 「そ、そうだったか!? あ、あれ?」 女性隊員はただ赤面しながら困惑した。 アイリスは愕然とする。 同時に心が晴れ渡るような感覚を得た。 この人はドジなんてものではない。人間の想像の範囲を超えたドジだ。 いわば、神のドジである。 そのまだ見ぬ境地は既に、この偉大な先人によって踏破されていたのだ。 アイリスの瞳はこの時から、尊敬の光を帯びて「隊長」に向けられるようになった。 隊長の名はフィリアと言った。 戦いを重ね、フィリアとアイリスはいつしか強い友情で結ばれていった。 隊長のフィリアはいつでも卓越したドシっ子っぷりを発揮する。アイリスはその横で、 まるで真綿が水を吸うがごとくにドジ奥義を吸収していった。 そして驚くべき事に、アイリスはたったの半年で部隊の副隊長となる。その才覚には 相応しいものであろうが、当時としては異例の大出世であった。こうしてアイリスは 名実ともにフィリアの片腕と呼ばれるようになったのである。 そんなある日。 その日の戦いも大勝利で終えたフィリアは、アイリスを連れて休憩に来ていた。 広い丘の上、青い空がさらに広く頭上にあった。寝転ぶと、まるで空が目の前にある ように感じる。 「アイリス殿、今日の働きも見事だったぞ。」 「えへへ。ありがとうございます、フィリア様♪」 アイリスは照れながら返答した。尊敬する隊長に褒められるのは、彼女の生きる意味 の一つにさえなっている。 フィリアもそんな素直なアイリスの事を好ましく感じていた。 いや、許されるなら「友」と呼びたいほどに。 だが知り合ってたった半年。機会あるたびにいろいろと話しかけてくるアイリスは フィリアの事を多く知っていたが、実はフィリア自身はアイリスの事をあまりよくは 知らないのだ。 隊長の激務もある。 だがそれ以上に、フィリア自身の「人と親しくなる事を嫌う」ような・・・むしろ 好ましい相手にこそ辛く当たるような、単にクールという言葉では片付けられない 不思議な性質。 これは後に「ツンデレ」と呼ばれる精神的特性である事が解明されるが、この時には まだそのような単語すら存在していない。 そもあれ、それがフィリアにとっては大きな障害となっていたのだ。 フィリアは突然、口を開いた。それは彼女の大きな進歩であったろうか。 「ふン・・・・あぁ、良い空だ。」 「そうですねー。お日様が目玉焼きみたいですね。」 アイリス殿は相変わらず萌えキャラのような事を言う。 「そうだな・・・ところでアイリス殿、目玉焼きと言ったらソースだろう。」 もしくは醤油か、とフィリアは内心で苦笑した。 ソースだといい。しかし醤油でも決して悪くはない。 目玉焼きにかけるもの、それは人生にかけるものと同じ。フィリアは常日頃から そう考えていた。 それをアイリスと共有出来るなら、自分の閉じた心も開かれる。 そんな奇妙な確信があった。 しかし、運命の悪戯とでも言うのだろうか。彼女の意に反し、アイリスの返答は想定 したどの解答とも違っていた。 「お塩じゃないですか?」 瞬間、フィリアの背筋に冷たいものが走る。 自分の片腕と信じて疑わなかったアイリス。我が友となりえる存在、アイリス。 その彼女が、事もあろうに憎むべき「目玉焼きには塩」派だった。 その事実は、フィリアの心を千々に乱した。しかし、 「そ、そうか・・・」 フィリアは務めて冷静に言う。 だがはたして、アイリスは本人が意識する事もなく、愛する隊長に対して絶縁状を 叩き付けてしまったのである。 「うーん、ソースならウスターソースですね。」 と。 ――中濃!! フィリアは心中で絶叫した。 だが哀れなり、その声が聞こえるはずもなく、アイリスは不思議そうに彼女の顔を のぞきこむだけなのであった。 敬愛する隊長の、深い絶望の念に気付く事もなく。 お塩とお砂糖間違え隊の隊長・フィリアが失踪したのは、その日の夜の事である。 ●ドジを超えし者 再び場面は御前試合に戻る。 アイリスとフィリアの戦い。それはどのような戦いになるのか。 解答から言ってしまえば、それは「隙の作りあい」「フェイントの掛け合い」という 事になる。 ドジ行動そのものでの攻撃、もしくはドジ攻撃により相手の動きを撹乱させ、その隙 を突いて攻撃をする。 古くは伝説のドジっ子部隊「お塩とお砂糖間違え隊」によって確立した武術である。 ・・・セクシーコマンドーみたいなものと考えるとわかりやすい。 ラルフにより試合開始が宣言される。 と同時に、偶然にもアイリス・フィリア双方ともに同じ技を仕掛けた。 トコトコと頼りなく歩いて、相手の目の前まで進む。 それは古えの技。 ドジ武術の基礎にして、術者の実力が最も影響される技。 両者はそれを再会の一撃に選んだのだった。 伝説の戦闘系ドジっ子が編み出した、「勇者についていった某商人の闘法」。特殊な 歩法により接近し、敵手の眼前で転倒する事に成功した時・・・その頼りなき一撃は 巨龍すらも打ち倒す「会心の一撃」へと変貌を遂げるのだ。 だが。 「・・・!!」 「どうしたアイリス!」 なんと、双方とも転ぶことなくお互いにギリギリまで接近してしまった。 顔を突き合せる両者。 そして静寂。 しばらくして、アイリスはハッと我に返る。 「そういえば・・・転ぶの忘れてました!」 「・・・わ、私もだ!」 ――ドジっ子だ! ――萌えた!! 観衆がどよめいた。 伝説的ドジっ子をも上回るドジの攻防。 まるで絵空事のような超絶の戦いが、眼前にて展開しているのである。 「そう上手くいきませんよねー、てへっ♪」 「そ、そうだな・・・」 コホン、と咳払いをすると、両者は開始位置まで戻る。 観衆は息を呑んだ。ここで呼吸を整えねば、次はいつ息をつけるかも分からないのだ。 そして仕切りなおし、戦いは第二局面を迎える。 先に仕掛けたのはアイリスの方である。 「くっくっくっ、長年実戦を遠ざかっていたのは大きいな、フィリア!」 口調が一変した。 明らかに何かを仕掛ける前触れである。 世話役のチアキが目を見張ったのはその時だった。 「こ、これは・・・! っつーか、わしらこのまま忘れ去られるかと思った!」 リオンが応える。 「まったくだ!伏線忘れてんじゃねえよ! さて、ドジっ子は気弱か大人しいタイプと 相場が決まっている。だが若い情熱はその常識さえ乗り越えついには・・・!」 「ついにはどうなるんじゃ!」 「・・・俺にだって・・・分からない事ぐらい・・・ある。」 「っつーか、解説が終わったらお主にはさっさと死んで欲しいんじゃがのう。」 「俺が?」 強気な物腰から繰り出されるドジ。それはいかなるものか。 衆目が一瞬たりとも見逃さぬ勢いで集中する中、アイリスは構えた。 「お前に初めて見せてやる。これはドジっ娘とツンデレの二つの要素を組み合わせた 新しいジャンルでな。私もまだ理解しきれていない。まだ名もないジャンル。」 その言葉を信じられた者ははたして何人いただろうか。 多くの者は己の耳を疑った。 ドジとツンデレの融合など、有り得る話ではない。 それはいわば、池に石が浮かぶがごとき自然法則への反抗に等しい話である。 だが、それを疑いなく聞いた者がただ一人だけ、いた。 そのたった一人・・・フィリアが応える。 「名ならある。「ドジツン」・・・「ドジッ子ツンデレ」という。」 そして構えた。 「な、その構えは!」 アイリスは思わず驚愕の声をあげた。 フィリアが、自分と同じ構えを取ったからである。 「私もまだ上手く操れないのでな・・・注意しろよ、アイリス?」 それは居合いの構えに似ていた。 「我が家系に代々伝わる秘宝の剣・・・抜けば一瞬でキミを消し去るだろう!」 フィリアは身体を深く沈める。 跳躍する気だ。 ドジの心得ある者は、すべからくそう受け取った。 疾走・跳躍・運搬。ドジ奥義は主としてこの3種の構えから発する。 跳躍から発するドジ奥義の数々・・・それは隙こそ多いが破壊力は絶大である。 だが、アイリスの考えだけは違った。 ――構えは・・・フェイク! 「それでは、いくぞ。」 そう宣するや否や、フィリアは神速をもって剣を滑らせ・・・ボキッ。 という音が響く。 そこでフィリアの動きは止まった。 ・・・。 「・・・お、折れたわけじゃないぞっ!」 そんな事は誰も言っていない。だが、弁解に夢中なフィリアの手の中を、剣がスルリ と滑った。剣はものの見事にポッキリと折れている。 それもそのはず、剣はただの竹光であった。 ・・・。 「こ、これはだなっ、ちょっと間違えて持ってきてだなっっ!」 フィリアは剣を抱えて半泣きになりつつ、弁解し続けた。 まさに手練のドジ。フィリアの真骨頂である。 だが、ここからが ――神域の技 アイリスは隙を作らぬよう、じっと守りを固める。 フィリアはぷっと頬を膨らませ、拗ねる様に、かつ頬を染めながら言った。 「だって、本物だなんて物騒じゃないか・・・」 観客は声にならぬ驚嘆の叫びをあげた。 明白にドジっ子であった。 明白にツンデレであった。 ドジッ子とツンデレの完璧なる融合。そして、その双方が完璧にお互いを引き立て あう。観客達の知らぬ世界が、そこにはあった。 アイリスも自覚した。 勝てない、と。 だが、不思議とスッキリした気持ちが胸に広がってもいた。 敬愛するフィリアは、再会した今も自分のやはり遥か先に立っていたのだ。 それが嬉しかった。 だが、ここで何人も想定していなかった事態が起こる。 客席に座っていたウヅキ・クズノハが呆れ顔で呟いたのである。 「・・・無粋な・・・ツッコミだと・・・思いますけど・・・。隙を作っても ・・・折れた剣で・・・どうやって・・・攻撃・・・する気でしょう・・・。」 「あ。」 複数の声がハーモニーとなった。 その場全員の視線がフィリアに注がれる。 ――どうやってトドメの攻撃を入れるんだ? ――懐中に副武器があるんだ、きっと。 ――手裏剣か何かを投げるのでは? ――いや、ここからさらに・・・ ――これが見せ技? そんなバカな! 「うう・・・」 フィリアの首から上が、だんだんと赤くなっていく。 ――まさか、何も考えてないなんて事は・・・ ――ははは、まさか。ありえんよ ――ああ、流石にありえんよなぁ ――ありえんありえん だが、なんという事であろうか。 顔が完全に耳まで真っ赤になると同時に、フィリアは堰を切ったように試合場から 逃げ出していたのである。 それは何人にアッとも言わせぬ早業であった。 そして捨て台詞。 「負けたー! でも、この借りはいつか返す! いつか返すからなーーー!」 ――ありえたーーーーーーー!!!!(ガビーン) ここにきてトドメのドジ。 まさに天然である。 だが、あっけない幕切れながら、観衆の表情は不思議と満足げであった。 フィリア、敵前逃亡。 究極のドジっ子を呆然としたまま見送ったラルフは、ふと我を取り戻して試合結果を 宣言する。いや、しようとした。 「勝者、ア・・・」 「フィリア様!!」 奇妙な事が起こった。 あと数瞬待てば勝者となりえた者。 それが勝者名乗りを受ける直前に、試合場を飛び出していったのだ。 「・・・両者逃亡。よって、相討ちの引き分け。」 その声には少なからず呆然の色があった。 「ふー。奥深い試合じゃったのう。見事な組み合わせじゃったわ、リオン殿。」 「ええ。神域のドジ、私自身も堪能させてもらいましたよ。両者逃亡とはいえ、試合 内容は予想以上のものでした。」 チアキとリオンが満足げに感想を述べた。 だが、チアキはふっと何かを思い出し、戦慄する。 「・・・E!? 両者逃亡!? イカン! そんな平和な結果は御大が許さんぞ!」 「ははは、心配ご無用。そんな時のために我が妹者がスタンバって・・・」 トートがスタンバっている方角へと目を向けるリオン。 そこには 『ごはん食べてくるデスよ』 という張り紙があった。 「・・・リオン殿?」 「・・・。」 さーっ(←血の引く音) 「・・・こここれってもしや、わわわしとリリリオン殿がせせ責任を取る事に・・・?」 「ははは、そそんなバカな。いいいいくら御大でもそそそんな理不尽な・・・」 ちゃり 「ヒィ!」 そして試合場には・・・まるでフィリアとアイリスの身代わりだと言わんばかりに、 2つの肉塊が捨て去られていた。 それは「よーく見ると白トカゲとシャバ僧だったんじゃないかなー」ってぐらい、 原形を留めぬ無惨なものであったという。 タイトル『身代り試合』でも良かったかもね♪ 「よくねえよ!」 ●おかえりなさい 試合会場からしばらく離れた街道。 「フィリア様!」 これまでの人生で一番大きな声を出したと思う。 アイリスのその声にフィリアは思わず足を止めた。 「・・・なぜ追って来た。勝者はキミのはずだろう。」 にらみつける。 勝者が敗者にかける言葉などなかろう、という風である。 それを見て取ったアイリスは、悲しげに 「フィリア様・・・」 と呟くように漏らした。以前のアイリスならばそこで終わっていたかもしれない。 だが、感情の高ぶりと3年の月日は彼女に勇気を与えた。 ハッキリと、相手の顔に叩きつけるように言い放つ。 「また私を置いてっちゃうんですか?」 フィリアの身体が揺れた。 無意識だった。無意識だったが、ビクリと震えたのである。 かまわずアイリスは続ける。 「あの時みたいに!」 何も知らない。 アイリスは何も知らないのだ。 敬愛する隊長が何に絶望したのか、何を憂いて出て行ったのかを。 「なぜ私を連れて行ってくれなかったのです・・・」 それがアイリスはただ無念だった。 3年間、ずっと考えていた事。 御前試合で、運命の悪戯によりフィリアと対戦する事が決定した時。 嬉しかったのだ。 怯えや悲しみよりもまず先に思ったのだ。 ――フィリア様に会える と。 そしてそれは他の何もかもを覆い隠す喜びだった。 しかしまた再び、今度は見ている目の前でフィリアが行ってしまう。 「私は・・・」 一方、フィリアは答えを失っていた。 自分はなぜ、出て行ってしまったのか。 そして。 今もなぜ、アイリスから逃げようとしているのか。 ――逃げる? そう、目玉焼き云々は体のいい逃げ文句だった。 本当は怖かったのだ。 ありのままの自分をぶつける事が。「隊長ではない自分」「ただのフィリア」を アイリスに見せてしまう事が。 「やだ!」 アイリスの叫び声が聞こえる。 フィリアは思わず耳を疑った。 この大人しい少女が、これほどに感情をむき出しにしたのを初めて見たからだ。 「せっかく会えたのに、もう離れ離れになるのは・・・」 言いながら、アイリスの瞳から涙が爆発するように溢れる。 「やだよ! 一緒にいたいよ! もっと話したいよ! もっと二人でいろいろな所に 行って! もっといろいろなものを見て! 笑って、泣いて! だから・・・」 ――ああ 「もう離れたく・・・離れたくないよぅ・・・!」 その先は声にさえなっていなかった。 しかしフィリアにはハッキリと感じとれる。 なんて純粋なんだろう。なんて重いんだろう。まっすぐな気持ちというのは。 つまらない事でヘソを曲げた事にして、アイリスと距離を置いたのは自分である。 つまらない理屈で自分を縛ったのは、他ならぬ自分自身である。 ――フィリア、お前はどう思う。その通りに言えばいい、アイリスのように。 ――弱さを見せていいんだ。心が違っていてもいいんだ。 ――怖えたままで、いいんだ。 心のままに言葉を紡ぐ。 「私だって嫌だ・・・」 それは自分に言い聞かせるような言葉だった。 だがその響きにアイリスは顔を上げた。 その顔にぶつけるようにしてフィリアは叫ぶ。 「私だって、アイリスと一緒がいい!!」 明確に、かけがえのない人へと向けた言葉。 「フィリア様っ!」 「一緒に来い、アイリス!」 二人は弾かれるように、お互いへ向けて駆け出した。 そして、その真ん中で影が一つになる。 ――どこへも行かない。 フィリアは強く強く思う。 ――アイリスが私の家だ。他に帰る場所なんて、どこにも無かった。 それは今決めた事ではない。 ずっと前からそうだったのを、たった今、思い出しただけなのだから。 ――ただいま ――おかえりなさい 〜〜( ´∀`)ノ それから1ヶ月ぐらい経ったデスよー 〜〜 〜〜(;´∀`)=3 今回は出番なしかと思ったデス・・・ 〜〜 「ところでアイリス。」 町の中をぶらぶらと目的もなく歩きながら、フィリアは訊いた。 「なんですか?」 「目玉焼きには何をかける?」 アイリスはその問いにしばらく考えてから答える。 「塩と胡椒ですねえ。」 答えを聞いたフィリアはふふっと笑った。 「私はソースだな。そして中濃だ。」 「あー、ソースならとんかつソースでも美味しいですよ?」 「とんかつソース? ありえないな。」 ぷいっ、と他所を向く。 それを見てアイリスは悪戯っぽく笑い、わざとらしく悲しげに言った。 「・・・ダメですか?」 「だ、ダメってわけじゃない! ただ私はだな・・・」 フィリアが慌てて振り返ると、そこにはアイリスの笑顔がある。 「アイリス! 私をからかったな!? こらーっ!」 「あははは」 笑いながら逃げ出すアイリスを、フィリアも笑いながら追う。 「ツンデレだ〜」 「ツ、ツンデレじゃないっ!」 御前試合も終わって、いよいよ新年を迎える準備に忙しい町に、二人の 笑い声がいつまでもこだましていた。 ―終― |