第一試合

a03763_icon_7.jpgリオン 対 ラスQa14869_icon_10.jpg

 『リオン剣破れたり』

担当MS:チアキ

−プレイング−

    ―舟木・リオン(a03763)のプレイング―

    リオンとラスキューは無二の親友である。
    その経緯とは・・・

    ●因縁
    「スパイラル・ゴッド・スプラッーシュ!!」
    リオンの拳がうなりを上げた。
    ゲーム画面のカメ達が、マリオに踏まれて次々と破裂
    爆散していく。
    レバーを握る不自然なまでに捻られた腕は、この必殺技を
    生み出す言わば発射基地だったのである。
    肘関節から手首の回転がレバーに強烈な横ブレを与え、
    それがマリオの動きをまるでワープしたかのように見せて
    いるのである。
    ラスキューの「アルマゲドン・ブルース」を超える神技であった。
    ・・・全世界ゲームキング決定戦。
    その決勝戦は、二人のゲーム戦士の必殺技が激突する
    名勝負となっていた。
    旗を滑り降りるマリオを満足げに見やりつつ、リオンは
    言い放つ。
    「貴様の『ゲーム拳128連打』など私には通じん。
     ゲームの命はレバー捌き。それを忘れて何がゲーム拳か!」
    「面白い。拙者のゲーム拳が連打だけだと思うなでござる!」
    ラスキューはニヤリと笑うとおもむろに叫んだ。
    新必殺技である。
    「ミッション・クルーズ・プロモーション!」
    「うおおっ!? あ、あんなにものすごい速さでレバーが
     動いているだと!? ええい、だが私も負けん!」
    「なにいィー!? 拙者と同じぐらい速くレバーが動いて
     いるでござるだとゥ!?」
    「これが私の底力よ!」
    「馬鹿な、腕がもげるでござるぞ!」
    「それはお前も同じ事! お前のような強者との戦いで
     腕を失うならば本望!」
    「リオン・・・なんと熱き魂を持つ漢! ならばこの勝負、
     先に腕が壊れた方が負けでござるな!」
    2人の操るマリオは、もはや常人では目で追えぬほどの
    速度で移動し、敵を殲滅していた。
    そして、ついに決着の時が来た。
    「なんとか腕が壊れる前にクリアできたぜ!」
    「拙者も腕が壊れる前にクリアできたでござる!」
    得点は両者とも5894876903200点。
    全くの同点であった。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    「フッ・・・見事なゲーム魂だった。東洋の島国と言った事、
     今こそ詫びよう。君達はビッグなゲーム戦士だ。」
    「アメリカに貴殿のような漢がいるとは・・・また日本に
     来た時には、もう一度拙者と戦ってくれ。」
    「いや、フレンドと戦う気はない。2P協力ゲームなら
     喜んで相手を務めよう。」
    「約束でござるぜ、マイフレンド?」
    「ああ。その代わり、ゲームがツインビだった場合は
     俺がウインビーを使うからな。」
    「ははは、こやつめ。」
    拳を合わせて去る、2人のゲーム戦士。


    ●試合
    奇しくも仕組まれた親友との戦い。
    心苦しいが仕方がない。
    「マイフレンド、殺しあわぬように手加減しつつ、急所を外すようにして戦おう。」
    と事前に打ち合わせる。
    そして試合開始。
    「死ねやぁーーー!!」
    急所に向けて渾身の一撃。
    ”ハンチク”だァ? バカタレェ、ぜってぇ”殺す”ゾ!?

    <アビリティ>
    おじちゃんは可愛い女の子が大好きなんだ奥義
    いくらドジっ子メイドでもジャンプと間違えて赤丸買って来るヤツは解雇奥義




    注)打ち合わせしてない。



    ―牛股・ラスキュー(a14869)のプレイング―

    『リオン剣敗れたり』(勝つ気満々のタイトル)




    11月25日。
    この日、円卓の間にて行われた御前試合は凄惨を極めるものであった。
    参列していた諸旅団の団長はみな一様に眉をひそめ、中にはこらえきれず席をたって嘔吐するものもあった。
    そして、今まさに行われようとしている試合の当事者は、ラスキュー・マルロー。対するは彼の親友とも言える男、リオン・リードである。
    親友であったこの2人が、いったいなぜ真剣をもって戦うまでに至ったのか。
    その発端となった事件は、今から1週間ほど前にさかのぼる。


    2人はそもそも、旅団「クズノハ忍法帖」に通う同門のネタ師であった。
    旅団内でも特に仲のよい親友として知られると共に、クズノハの竜虎と言われる腕前を持つ、言わばライバルでもあった。
    その日、ラスキューが旅団に出仕すると、リオンがラスキューに背を向ける姿勢で漫画を読んでいるところに出くわした。
    「おいーーっす」
    ラスキューに、別段悪気があったというわけではない。ただ、ちょっと驚かせてやろうかという悪戯心から、挨拶がてらリオンの肩を強めに叩いた。
    「いってぇなー、何すんだよ」
    リオンにしても、それほど強く叩き返す気はなかったであろう。だが不意を突かれたことにほんの少し憤りを感じた部分があったのかも知れない。
    リオンが叩き返した平手は、ラスキューが叩いた時よりも僅かに強くラスキューの胸元に当った。実際にはどうだったか分からぬ。だがラスキューはそう感じた。
    「なんだよ、そんな強く叩いてねぇだろ?」
    言いながら、リオンよりもさらに僅かに強く叩き返す。
    「いやいや、先に叩いてきたのそっちだし」
    負けじとリオンも返してきた。これが目測を誤ったのか、ラスキューの頬に当った。
    「なにおっ!(横山光輝風)拙者は顔殴ってねーだろうが!」
    顔を張られてカッとなったラスキューがリオンの頬を拳骨で殴った。
    「んだコラ?グーで殴ってくるたぁ反則じゃないんですかラスキューさんよォ!(ビキビキィ)」(ベキ)
    「一発は一発だもんねー!」(バキ)
    「じゃあお前が先に殴ってきたから、俺がこれ一発殴って最後ね」(ゴッ)
    「いやいや、なんか今の強かったし、拙者がこれ殴って最後でしょ」(ドカッ)
    「いやいや、君殴りすぎだから。最後軽く一発殴って終わりにするから」(メリ・・・)
    「いやいやいや」(ミチィ・・)
    「いやいやいやいや」(ブチッ・・・ミリミリ・・)
    「いやいやいやいやいや」(ギリギリギリギリ)

    結局、後から出仕してきたチアキやその他の団員が止めに入るまで転がりながら関節を取り合っていた2人の間には、この日以来決定的に埋め難い溝が開いてしまったのである。
    まぁそれから彼女を寝取(略
    出現率低(略
    ネタテスト帰ってこな(略
    ぬるp(略
    などいった出来事を経て、さらに溝を深めた2人が、今御大ユリシアの面前で対峙しているのである。



    ラスキューには秘策があった。
    リオンの必殺剣「リオン剣(仮)」の怖さは、親友であったラスキューが一番よく知っている。
    同様にリオンもラスキューの腕を知っている。互いにクズノハで学んだ二人が正面から戦ったら、間違いなく相打ちであると思われた。
    だからこそである。
    ラスキューは、わざとリオンの剣勢に押されたフリをして、円卓の間の一角に彼を誘い込む作戦を立てていた。
    そこに逃げ込み、追ってきたリオンがある場所に立った時に、策が彼を襲う手筈であった。
    具体的には足元に潜ませていた別キャラ「チキンレッグの忍び・カルゥア・ゲックン(a21064)」がリオン殿の両足首をロックオン。
    動けなくなったところに必殺のラスキュー剣をお見舞いするのだ!

    「デンデンデデンデ・・・デラベッピン!」(刀身が光り輝くほど気合を込めて思いっきり振り被った棒で脳天を直撃するだけ)

−リプレイ−

     

     11月25日。
     この日、円卓の主を喜ばせる為、尋常ならざる真剣試合が行われたそうだ。早朝より開始された御前試合、その結果たるや凄惨なものだった。
     出場冒険者十五組三十名、敗北による死者八名、相討ちによる死者十二名、射殺三名、生還七名、中四名重傷。巻き添え数えきれず。
     まさにこの世全ての地獄を具現化したかの様な、死屍累々の結果に終わった。
     だが、この円卓の間・御前試合に関して、公式記録は全く存在していない。
     時の同盟重役が目撃者に口止めをした、そもそもそんな御前試合行われなかったなど、様々な憶測が飛び交ったが、どれも真実味を持つには一味足りなかった。
     そんな中、客席に居合わせた者が書き記した記録のみが、この御前試合を事細かに示している事が判明した。
     写術後、すぐさま回収処分及び焼却となってしまった為、現存している冊数は数えるほどしかない。
     存在自体が奇跡とも言えるこの『円卓鎖姫秘記』こそが、全てを知る数少ない方法である。


     第一試合は午前九時より開始された。
     円卓の前に用意された試合会場には陣幕が張られ、それ添うように観客たる円卓の出席者達が鎮座していた。その表情は一様に沈痛であった。
     そして陣幕の外には、不測の事態に備えて冒険者が待機している。如何なる事が起ころうとも、外に抜け出す者が出ぬように。じっと、じっと。
     開始の合図たる太鼓が打ち鳴らされ、遂に第一試合の開始となった。

    ●竜虎相打つ
     第一試合の組み合わせは、何たる悲しき運命か。互いに終生の友と認め合った親友同士の戦いだった。
     西方より出は牛股・ラスキュー(a14869)、ござる口調なのにヒトノソに生まれてしまった悲しき男。
     対する東方の舟木・リオン(a03763)は金髪碧眼のとりとめ特徴の無いシャバ憎である。
     対峙する二人を見ると行司である語り手・チアキ(a07495)は始めぃ!と開始の合図をかけた。
     その声と同時に、リオンの身体が奇妙な形に捩れていく。
     これぞリオンの必殺技『おじちゃんは可愛い女の子が大好きなんだ奥義』である。
     だが、変化はそれだけで終わらなかった。
     其処から更に、手にした『双剣・犬っ娘ソード&ツンデレブレード』を軸にし、捻りを加える。
     この捩れ、名を『いくらドジッ子メイドでもジャンプと間違えて赤丸買って来るヤツは解雇奥義』という。
     捩れと捻り、この二つの連携こそリオン必勝の型『リオン剣』である。命名・ラスキュー。しかも無断。

     それは凡そ一切の流派に、聞いた事も見た事もない奇怪な構えであった。

    「ああ、あれこそはリオン兄さん必勝の方『リオン剣』。名前はともかく、一撃必殺なのデス。タイトルで既に破られる事が決定してるみたいデスが」
     陣幕の裏にいた舟木・トート(a16979)が涙する。目にゴミが入ったからだ。

    「怪物め!」
     叫ぶラスキュー。手にした棒に、汗がつたる。
    彼奴の構え、萌えっ娘を心の底より思うことで、屈託したエネルギーを生み出し、その妄想力で無限の振動を撒き散らす。体勢こそ不自然だが、むしろその不自然さが狂気の力。直撃したならば間違いなく、人間など跡形もなく吹き飛ぶ人外の荒業。
     こんなにも捩れた状況で人が斬れるのか?
     ござる口調のヒトノソに人を殴れるのか?

     出来る!出来るのだ!!


     そもそもこの二人が何ゆえ戦うことになったのか。その事件は今より一週間程前に遡る。

    ●ゲームセンターARASI!
     いや、間違えた。
     順を追って説明しよう。この二人、出会った当初は敵同士であった。
     そう、全てはあの大会から始まった。


    「スパイラル・ゴッド・スプラッーシュ!!」
     リオンの拳がうなりを上げる。
     ゲーム画面のカメ達が、マリオに踏まれて次々と破裂爆散していく。
     レバーを握る不自然なまでに捻られた腕は、この必殺技を生み出す言わば発射基地だったのである。
     肘関節から手首の回転がレバーに強烈な横ブレを与え、それがマリオの動きをまるでワープしたかのように見せているのである。
     ラスキューの『アルマゲドン・ブルース』を超える神技であった。
     全世界ゲームキング決定戦。
     その決勝戦は、二人のゲーム戦士の必殺技が激突する名勝負となっていた。
     旗を滑り降りるマリオを満足げに見やりつつ、リオンは言い放つ。
    「貴様の『ゲーム拳128連打』など私には通じん。ゲームの命はレバー捌き。それを忘れて何がゲーム拳か!」
    「面白い。拙者のゲーム拳が連打だけだと思うなでござる!」
     ラスキューはニヤリと笑うとおもむろに叫んだ。
     新必殺技である。
    「ミッション・クルーズ・プロモーション!」
    「うおおっ!? あ、あんなにものすごい速さでレバーが動いているだと!? ええい、だが私も負けん!」
    「なにいィー!? 拙者と同じぐらい速くレバーが動いているでござるだとゥ!?」
    「これが私の底力よ!」
    「馬鹿な、腕がもげるでござるぞ!」
    「それはお前も同じ事! お前のような強者との戦いで腕を失うならば本望!」
    「リオン・・・なんと熱き魂を持つ漢! ならばこの勝負、先に腕が壊れた方が負けでござるな!」
     2人の操るマリオは、もはや常人では目で追えぬほどの速度で移動し、敵を殲滅していた。
     この戦を見ていた観客達は、後にこう語った。
    「二人の後ろに、竜と虎が見えたんだ。アレがオーラって奴だよ。あんなの初めてみた!俺たち、歴史の生き証人になったんだ!」
     二人の争いに呼応するかの如く、店内の応援もヒートアップしていく。機体もこの戦いに歓喜しているのだろう。放電し周囲を巻き込んで行く。まるで生きているかのように。
     電撃乱舞の中、二人は更に互いの必殺技をぶつけ合う。まるでそうすることにより、お互いを確かめているように。深く、深く、深く・・・。

     そして、ついに決着の時が来た。
    「なんとか腕が壊れる前にクリアできたぜ!」
    「拙者も腕が壊れる前にクリアできたでござる!」
     得点は両者とも5894876903200点。
     全くの同点であった。

     戦いは終わり、朝日が昇る中、二人の戦友が向かいあう。
    「フッ・・・見事なゲーム魂だった。東洋の島国と言った事、今こそ詫びよう。君達はビッグなゲーム戦士だ」
    「アメリカに貴殿のような漢がいるとは・・・また日本に来た時には、もう一度拙者と戦ってくれ」
    「いや、フレンドと戦う気はない。2P協力ゲームなら喜んで相手を務めよう」
    「約束でござるぜ、マイフレンド?」
    「ああ。その代わり、ゲームがツインビだった場合は俺がウインビーを使うからな。
    「ははは、こやつめ」
     拳を合わせて去る、2人のゲーム戦士。
     たまらぬ男たちであった。

    ●すれ違い
     熱き友情を深め合った二人の信頼関係が壊れたのは、些細なきっかけであった。
     その日、ラスキューが旅団に出仕すると、リオンがラスキューに背を向ける姿勢で漫画を読んでいるところに出くわした。
    「おいーーっす」
     ラスキューに、別段悪気があったというわけではない。ただ、ちょっと驚かせてやろうかという悪戯心から、挨拶がてらリオンの肩を強めに叩いた。
    「いってぇなー、何すんだよ」
     リオンにしても、それほど強く叩き返す気はなかったであろう。だが不意を突かれたことにほんの少し憤りを感じた部分があったのかも知れない。
     リオンが叩き返した平手は、ラスキューが叩いた時よりも僅かに強くラスキューの胸元に当った。実際にはどうだったか分からぬ。だがラスキューはそう感じた。
    「なんだよ、そんな強く叩いてねぇだろ?」
     言いながら、リオンよりもさらに僅かに強く叩き返す。
    「いやいや、先に叩いてきたのそっちだし」
     負けじとリオンも返してきた。これが目測を誤ったのか、ラスキューの頬に当った。
    「なにおっ!拙者は顔殴ってねーだろうが!」
    顔を張られてカッとなったラスキューが横山光輝風に激怒し、リオンの頬を拳骨で殴った。
    「んだコラ?グーで殴ってくるたぁ反則じゃないんですかラスキューさんよォ!(ビキビキィ)」
    !?
    ベキ
    「一発は一発だもんねー!」
    バキ
    「じゃあお前が先に殴ってきたから、俺がこれ一発殴って最後ね」
    ゴッ
    「いやいや、なんか今の強かったし、拙者がこれ殴って最後でしょ」
    ドカッ
    「いやいや、君殴りすぎだから。最後軽く一発殴って終わりにするから」
    メリ・・・
    「いやいやいや」
    ミチィ・・
    「いやいやいやいや」
    ブチッ・・・ミリミリ・・・
    「いやいやいやいやいや」
    ギリギリギリギリ

     結局、後から出仕してきたチアキやその他の団員が止めに入るまで転がりながら関節を取り合っていた2人の間には、この日以来決定的に埋め難い溝が開いてしまったのである。
     まぁそれから彼女を寝取(略
     出現率低(略
     ネタテスト帰ってこな(略
     ぬるp(略
     ガッ!(略
     などいった出来事の結果、二人の溝はもう、修復できない所まで来ていた。
     しかしここまでならばいつもの事。二人が御前試合で戦うまでに関係悪化したのは、世に言う『萌え総取事変』のせいである。
     ある日、リオンが何気なく発した言葉「世界中の萌えキャラって僕に惚れてるよねー」に、ラスキューが激怒した。
    「ふざけんなッつーの!萌えキャラは拙者に惚れてんだッつーの!俺は運命の眠れる奴隷じゃないッつーの!」
     最後に良くわからない言葉が混じっていたが、激昂している事は周りからも見て取れた。
     団員達は取っ組み合う二人を羽交い絞めにし、引き剥がした。だが、それでもお互いを罵り合っていた。
     その時、ラスキューの口からとんでもない言葉が飛び出した。
    「そんなに言うなら今度開かれる御前試合で決着だなぁ〜ん!」
     久々の「なぁ〜ん」。いや、それよりもこの単語。
    『御前試合』。
     その言葉に場にいる皆が凍りついた。円卓の主、御大が主催する御前試合。その恐ろしさは今までの事から、どのような経過になるか大体は予測できる。そして予測した経過よりも、数百倍も最悪な結果となって終わりを迎えるのだ。その恐怖ゆえ、対面するリオンに対しての反応が遅れたのも事実。
    「よーしわかったヒトノソ!首を洗ってまってろ!?(ビキビキィ!)」

     他の団員達は必死に止めにかかった。「待ちなさい、まだ先は長いんだから」とか「イヤむしろ萌えキャラはわしに惚れてるよ?」とか。
     だが、その言葉全ては燃え盛る二人には意味を成さなかった。
     円卓に申請した結果、あっさりと二人の対決は許可され、御前試合に参加する事となった。
     元親友同士の戦いは、栄えある第一試合に決まったのだった。

    ●奥の手
     舞台は移り、試合前日。親友たる二人は、本来禁じられている試合前の会合を果していた。
    「まさか僕らが戦う事になるとはね・・・」
    「リオン殿、皆まで言うなでござる。こうなってしまったのも、初めて会ったあの時からもう、決まっていた気がするなぁ〜ん。でもリオン殿!拙者、今日は手加減しないズェ!だって尊敬するリオン殿と闘えるんだから!」
    「OKマイフレンド。でも殺しあわぬように手加減しつつ、急所を外すようにして戦おう!」
     がっしりと握手する二人。美しき友情が其処にあった。そう、其処にだけ。

     当然、試合会場にはそんなもの全く無かった。
     白砂を踏みしめ、全身を限界まで捩じりに捻った荒業『リオン剣(ラスキュー命名)』。リオンはラスキューを仕留めるにはこの技しかないと思っていた。現にラスキューはこの技を一度たりとも避ける事が出来ていない。まさしくラスキュー殺しと言えよう。
     例え、何らかの対策を強いていようとも、リオンは己の技に絶対の自信を持っていた。

     リオンからの強烈なプレッシャーにより、徐々に立ち位置を動かしていくラスキュー。リオンを中心とした円の動き。何度と無く斬られてきた悪しき記憶が、ラスキューの精神を削り取って行った。
    “ハンチク”だァ? バカタレェ、ぜってぇ“殺す”ゾ!?
     そして、惨劇を呼ぶかのように、リオンの剣先が煌めいた。
    「死ねやァァァーーーー!!」
     試合前の誓いも何のその、魂の叫びと共に限界まで捩じられたリオンの身体が震える。捩じりが反発する原理で強烈な斬り込みを生み出すリオンの刃が、円の動きを見せていたラスキューに迫り、両断する!!

     と、誰もが思ったその時。試合会場は予想外の出来事が起こっていた。

     今まさに身体を反発せんとしていたリオンの身体が、止まっていたのである。
     否、止められていたのである。

     何処から忍び込んだのか『チキンレッグの忍び・カルゥア・ゲックン(a21064)』がリオンの両足首をロックオン。その脅威の反発力を強引に腕力で押さえ込んでいたのだ!
    「ふ、愚かな! この程度でこのリオンの攻撃を止められると思ったか!」

     しかし、一瞬の隙を生むには十分だった。

     ハッとリオンが気づいたときには、上段に振りかぶるラスキューの姿が見えた。
    「デンデンデデンデ・・・デラベッピン!」
     刀身が光り輝くほど気合を込めて思いっきり振りかぶった棒が、リオンの脳天に直撃する。身を捩って逃れようとしたが悲しいかな、その回避行動は間に合わなかった。
    「・・・うぐぅ」
     聞き様によっては萌え語っぽいが、その発音は原哲夫キャラのそれである。ともあれ、ド頭からピューピュー噴水の様に血を出しながら、リオンは遠い国へと旅立った。
     喜び勇むラスキュー。二対一なので勝って当然だが、例えどんな手を使おうとも宿命のライバルに勝利したのだ。
    「ガハハ!やったでござるなぁ〜ん!これで拙者がクズノハ一でござる!カルゥアも良くやったでござる!・・・あれ、カルゥア?」
     だが、勝利に貢献したカルゥアの様子がおかしい。リオンの足を掴んだまま硬直している。
    「カルゥア、もう良いでござるなぁ〜ん。カルゥア・・・ヒィ!」
     ラスキューが悲鳴をあげた。何故ならば、未だ両足を掴んでいたカルゥアの身体が突如、爆ぜ始めたからである。丁度リオンの両足を掴んでいた手から、順々に爆ぜてゆき・・・最期に両足が爆ぜた。
    「ヒィ!一体なにごとでござるか!? 確かにリオン殿は倒したはず!だとしたら一体・・・」
     ラスキューは考える。もしかしたらリオンは・・・自分の最後の太刀を、身体を捩じって避けようとしたリオン。アレは避けようとしていたのではなく、リオン剣を放とうと、攻撃しようとしていたのでは?
    そして、剣から、微弱な、がらも振、動が、カルゥ ア や拙者   に  届いて いた   の    では    ・   ・ぬる  ・ぽ

     ラスキューがことの真相にたどり着いたとき、白砂の上には金髪碧眼で頭からピューピュー血噴水するリオンだったモノと、爆ぜた二体の骸のみが残っていたという。



    ―終―

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