補11.戦い済んで


「何事も踏み込むのは簡単だが、抜け出すのは容易ではない」ラムズフェルド米国防長官。

奮闘努力の甲斐あってか、「窮すれば通ず」と云う諺どおりか、よほど運が良かっただけかは分かりません、私は何時もの様に成田山のお助けがあったからと確信していますが、信じられない事に誰にも迷惑を掛けずに会社を解散することが出来ました。(でも、この一年は長かった。)

そんな訳で、また清算人になりました。二度あることは三度あると言いますから、次は人生の清算という事になりますが、それまでの間のんびりと自由気ままに過してみたいと思います。

さて、すべての生き物の目的は自己の生命の維持と遺伝子を残す事だそうですが、人間の場合、生命の維持の為には衣食住を得る事が必須で、誰もが悪戦苦闘していると思います。

その他、人間と他の生物とが完全に違うのは人間には精神上の高い境地がある事で、この境地に達する事が人間のみが持つことの出来る目的だと思います。

私の場合生命の維持は、少々長生きしても大丈夫になりました。

このような事を云うとよほど貯め込んだと誤解されそうですが、この高い境地に入ると衣は被褐懐玉、食は霞や棗とまではいきませんが質素の方が体に合い、住は雨が漏らなければ良いという程度で満足できるので、年金で充分です。

自分の遺伝子を残す事はもうどれだけ頑張っても今までの実績以上は無理だと思います。

随って今後は精神上の境地でリッチになろうと決めました。

そんな訳でお金であくせくする必要が無いので世俗との交わりは出来る限り絶つ事にしましたが、せっかく続けてきた徳を積むと云う一点のみは世間との窓口として残しました。

この話を知人にすると「どう見ても徳を積んでいる様には見えないが」と言うので、私の場合は陰徳だと答えると「陰徳を施しすぎて下女孕みですか、それもよろしおすなあ」と一人で納得していました。

石塔の赤い善女がまた孕み(夫を亡くした女のお腹がまた大きくなった)という川柳もあり江戸時代は男も女も真面目にやるべき事はきちんとやっていたのだと思います。

以前「ムトーの踊るマハラジャ」という映画を見ましたが、やや太めで元気いっぱいって感じの女性たちが「私と結婚したいのなら、日に12回愛していると口に出して言う事、6回キスをする事、3回ベッドインする事を誓いなさい」と歌いながら踊っていました。この女性軍団を受けて立つ事の出来る日本人はいないだろう、インド人は立派だと思って観ていると、貧相な男どもが出て来て、「昔と違い今は朝から晩まで働かなければならないのでそんな事は無理だ」と情けない歌を歌っていました。

男は同じ女が違う、日本の場合女性もインドの男の様になって来ている、そして此処に少子化の原因があると気が付きました。

日本人に生まれた事、これも運が良かった事の一つだと思いました。

以前空港のラウンジでインド人と知り合いましたが、一時間近くも一人で喋り捲っていました。よほどストレスが溜まっているのだろうと思っていましたが、その理由が分ったので、今度出会ったら肩に手を置いて「日に3回は辛かったんだね」と慰め、また徳を一つ積もうと考えています。

なお、運と目的については生命40億年全史 リチャード・フォーティ 渡辺正隆 訳 草思社から得る所が大でした。

この本はなかなかのもので、法然上人の一枚起請文も理解出来た様な気になりました。
2007(19)/3/26

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