続焼酎
焼酎を呑み始めて二ヶ月と十日、ビール、日本酒、他の焼酎に較べて芋焼酎は原料、麹、蒸留方法に変化が多い所為か、各銘柄による差が明確である事が解り、その評価の繰り返し性、再現性も充分な精度が有る事が解った。
その割にワイン・日本酒等に較べて値段の差が少なく、値段を気にせずに随分と楽しむ事が出来たが、その結果はお恥ずかしい事だが所謂プレミアム物に高い評価を与える事になった。
森伊蔵は手に入らなかったが、伊佐美と魔王の他入手困難と言われている品々が当地では何故か容易に入手できたから、入手困難に因る過度の有難味など無く比較的冷静に評価できたと思うが、魔王と伊佐美が抜群で前田利右衛門がこれに次ぐという結果となった。
逆に考えると巷間云われているようなある種の操作によって値を吊り上げるという結果では無く、やはり味が良いのだと思う。
その美味さには当初固持していた現地の芋使用、反桶買いの考えが吹っ飛んでしまった。
特に魔王に付いては最近その評価特にお湯割について芳しからざるものも見受ける事がありあまり良い感じを持って居なかったがとんでもない、呑んでびっくり特にそのロックは秀逸であると思った。ただお湯割は伊佐美に一歩譲るような気がする。
異論反論続出は承知の上で、今まで呑んだ焼酎について十段階評価を行って見た。今まで呑んでいた気に入りのビール・日本酒で5、誤差は±0.5といった所である。(空欄は未賞味)
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ロック |
湯割 |
燗 |
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千年の響 |
泡盛 |
4 |
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那由多の刻 |
蕎麦 |
3 |
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いいちこ |
麦 |
3 |
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吉四六 |
麦 |
4 |
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伊佐美 |
いも |
8 |
6 |
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森伊蔵 |
いも |
9 |
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伊佐錦 |
いも |
5 |
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前田利右衛門 |
いも |
7 |
5 |
3 |
里の曙 |
黒糖 |
4 |
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五木 |
米 |
4 |
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利右衛門 |
いも |
5 |
2 |
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海乃邦 |
泡盛 |
4 |
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竹山源酔 |
いも |
5 |
2 |
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富乃宝山 |
いも |
5 |
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鷲尾 |
いも |
5 |
2 |
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かめ壷仕込み純黒 |
いも |
7 |
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新焼酎(五代) |
いも |
3 |
3 |
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芋 2000年仕込み |
いも |
4 |
2 |
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山ねこ |
いも |
4 |
2 |
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伊勢吉どん |
いも |
5 |
2 |
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石蔵 |
いも |
5 |
3 |
3 |
鉄幹 |
いも |
4 |
2 |
2 |
千亀女 |
いも |
4 |
2 |
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魔王 |
いも |
9 |
5 |
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喜六 |
いも |
5 |
3 |
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黄麹蔵 |
いも |
6 |
5 |
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酒器
酒は呑む場所や酒器によっても随分と味が変わる。日本酒ならやはりお座敷そしてその酒器となるとピンは恐ろしい値がついている。洋酒はまたその種類によって覚え切れないほど多種類のグラスが用意されているし、呑む場所も多様である。
私の気に入りのビール用グラスはサンルイ系で、持つところは手の熱が加わらない様に分厚くカットされ、呑み口は切れの良さを損なわない様に薄く仕上げられているが、焼酎の場合は呑み口が厚手のほうが好みだ。
それでロック用には大正プレスガラスのコップ、口当たりが好くまたなんとなく雰囲気が焼酎に合っている様に思えるので気に入っている。お湯割は江戸期の塩笥小服茶碗が陶質で口がすぼんでいるのでさめ難くまた香りを楽しむのに最適である。ただ日本酒の徳利のような物が無いので一升瓶から直接注いでいるが色気が無いと思う一方ビールも瓶から直接だからまあ良いかと思ったりしている。
ビール・日本酒・焼酎の相違点
ビールの味はメーカーや銘柄によってあまり変わらない様に思える。大体発泡酒との差もあまり無い事を考えても当然のことだ。むしろその時の気温など外部条件による処が大きい。
日本酒の銘柄を選ぶ基準は呑んでいて不味くならない事と、熱燗で美味い事だった。日本酒は何故か飲んでいると次第に不味くなってくるのが多く、又にごりと異なり清酒は燗をするのが当然と思っていたからである。
長年の検討の結果、紙パックの料理用に近い安いのが気に入りとなり、この点は有難かったと思っている。
焼酎はこれに反して何故か呑んでいるとどの銘柄も段段美味くなって来る所が日本酒より勝っているが、美味い品が高価であるところが日本酒に較べ格段に劣っている。
ぜひ安くて美味い焼酎を作ってほしいのだが、業界は高級(容器と値段と名前だけ)志向のように思えるのが残念だ。
おわりに
8月末から始めた焼酎体験も一応決着に近づいた。伊佐美つぎに前田利右衛門そして黄麹蔵が気に入り納戸に一升瓶が並んでいる。ロック専用だから魔王が良いのだが手に入り難く本数は少ない、森伊蔵は外で飲んだだけで当地では手に入らない。
呑み方は全ての銘柄でロックが勝ったので之に確定した。好みが決まってから気に入らない順にロックだけの再検討しながら空瓶にしていったが、今度は評価が変わらなかった。
現在、はずれの最後の銘柄となったかめ壷仕込み薩摩の薫・純黒と利右衛門(前田ではない)の一升瓶が食卓に乗っている。
ワイン党の妻は偶にしか焼酎を呑まないが純黒を呑んで昨日呑んだ利右衛門より美味い、前はそれほどでなかったと思うがと言うので、前に飲んだのは鷲尾だ、純黒は僕の評価でも一点高いと説明したが、人が違っても差がはっきりしているのには驚いた。伊佐美だけでも良いのだが値が張るので、前田利右衛門、黄麹蔵、純黒をもう一度再検討し一銘柄に絞り伊佐美との二銘柄を常用としたいと云う結論が出たところでタイミング良く新しい興味が別に出来たのでこの項は之で終了とする。
その後
純黒と黄麹蔵との競いは、純黒が勝ったので黄麹蔵は、脱落となった。純黒と前田利右衛門では略同じ(純黒は初め
6点だったがだんだん気に入ってきて7点になった)。伊佐美と純黒とは伊佐美が上、魔王と前田利右衛門では魔王が上になった。
結局、入手の容易さにウエイトを置いて伊佐美とかめ壷仕込み薩摩の薫・純黒と前田利右衛門の三銘柄を常用とする事にした。