よくわかる地方税

目次

1.書評 2.本書の目次

 3.本書の内容の紹介(1)「不動産の取得の捕捉」(2)「個人の住民税―住所とは」

が掲載されています。

住宅新報 平成12年12月8日号 「新刊紹介」

『よくわかる地方税』鵜野和夫・杉之内孝司著

 地方税とはどういうものかー地方税については、個別的な解説や論文などはこれまでにも数多く発表されているが、全体をまとめ、その個別内容の関連を解説した本は、ほとんどみられなかった。地方税を全体としてとらえたいとの要望にこたえて本書は書かれた。

著者は二人とも税理士であり不動産鑑定士だ。

鵜野氏の「税の本」は、不動産業界などで「ウノ本(ほん)」と称され、実務家その他に読まれている。

杉之内氏は、最近まで東京都の地方税の担当者であった。

 著者は「はしがき」に、「ビギナーからベテンまで」と記しており、地方税の初歩から分かりやすく説明し、.問題点の指摘と検討を展開し、実務の手引きも付している。

特に固定資産税などに関連して「不動産鑑定士、不動産実務家に読まれることも念頭において書いた」としている。

 A5判・446ページ   東京法令出版発行、本体価格3,400円。

「よくわかる地方税」 目次
 第1編 地方税とは

1.国と地方自治 2.地方税と地方自治体の収入 3.地方税には、どういう種類の税金があって、それぞれの税収の構成は  4.地方税の税制と組織 5.不服申立て

第2編 地方税の税目別解説

T 住民税  都道府県民税と市町村民税

A 個人の住民税

 1-A-1 住民税とは  1-A-2 個人の住民税  1-A-3 個人住民税の均等割 1-A-4 個人住民税の所得割(1)  1-A-5 個人住民税の所得割(2) 1-A-6 個人住民税の所得割(3) 1-A-7 個人住民税の所得割(4)

1-A-8 個人住民税の所得割(5)  1-A-9 個人住民税の所得割(6) 1-A-l 個人住民税の所得割(7) 

1-A-l1都道府県民税の利子割1-A-12個人の住民税の課税方法と手続 1-A-13個人の住民税の申告と報告など

1-A-14個人の住民税の支払報告書など 1-A-15個人住民税の徴収(1)1-A-16個人住民税の徴収(2) 

1-A-17個人住民税の徴収(3) 1-A-18個人住民税の非課税と減免

B 法人の住民税

1-B-1 法人住民税 1-B-2 法人住民税でいう法人とは 1-B-3 法人住民税の均等割

1-B-4 法人住民税の法人税割と利子割

U 事業税  都道府県税

U-1 事業税 U-2 個人の事業税(1) U-3 個人の事業税(2) 

U-4 法人事業税(1)U-5 法人事業税(2) U-6 法人事業税(3) U-7 法人事業税(4)

V一1 不動産に関連する地方税

V-1-1不動産に関連する税制と地方税 V-1-2 不動産取得税と固定資産税・都市計画税
V―1-3 地価政策と土地税制                         

V―2 固定資産税と都市計画税 
V一2-1 固定資産税とは V一2-2 固定資産税の制度のあらまし

V一2-3 課税台帳と課税対象、納税者、地目、種類と面積など

V一2-4 土地・家屋の価格、評価、決定、登録、縦覧と確定V一2-5 償却資産の価格と評価

V一2-6 住宅用地の軽減特例V一2-7 土地の価格と課税標準  V一2-8 新築住宅等の税額軽減

 V一2-9 固定資産の評価及び価格決定の流れ V一2-10 縦覧制度と救済手続 V一2-l1都市計画税
V一3 土地の評価 
 V一3-1 土地の公的評価 V一3-2 不動産の鑑定評価(1) V-3-3 不動産の鑑定評価(2)

 V一3-4 固定資産税における土地の評価の基本 V一3-5 地目別の土地評価    V一3-6 評価方法の種類  V一3-7 市街地宅地評価法  V一3-8 画地の認定 V一3-9 画地計算法による宅地の評価

V一3-10 その他の宅地評価法 V一3-l1農地の評価 V一3-12 山林の評価

V一4 家屋の評価

 V一4-1 固定資産税における家屋の評価方法 V一4-2 建築費と再建築費評価点数及び評価額の関係

 V一4-3 家屋の評価方法 V―4-4 損耗の状況による減点補正率の算出方法

 V一4-5 木造専用住宅の評価の具体例 V一4-6 鑑定評価額を超える家屋の評価額

V一5 不動産取得税

 V一5-1 不動産取得税の課税客体と納税義務者 V一5-2 不動産の所有権の取得   V一5-3 取得の時期 V一5-4 不動産の取得の捕捉 V一5-5 登記されているが取得がないとされる場合

 V一5-6 家屋が新築された場合の納税義務者 V一5-7 附帯設備に対する不動産取得税の課税

 V一5-8 相続等による非課税 V一5-9 法人の合併または分割による不動産の取得の非課税

 V一5-lO 信託の場合の不動産の取得の非課税 V一5-l1譲渡担保財産の復帰による非課税

 V一5-12 住宅を取得した場合の課税標準の特例 V一5-13住宅用土地を取得した場合の軽減措置

V一6 特別土地保有税

 V一6-1 特別土地保有税はどのような税か V一6-2 特別土地保有税の課税の基本原則

 V一6-3 特別.七地保有税の課税の体系 V―6-4 非課税 V一6-5 特別土地保有税の納税義務の免除

 V一6-6 徴収猶予と納税義務の免除

V一7 事業所税とその他の不動産関連税

 V-7-1 事業所税はどのような税か V一7-2 事業所税の課税団体 V一7-3 事業所税の課税の仕組み 

V一7-4 事業に係る事業所税の納税義務者 V一7-5 新増設に係る事業所税の納税義務者

V一7-6 みなし共同事業 V一7-7 水利地益税 V一7-8 共同施設税 V一7-9 宅地開発税

W 自動車関連税

 W-1 自動車取得税 W-2 自動車税 W-3 軽自動車税 W-4 軽油引取税

V その他の地方税

 V-1ゴルフ場利用税 V-2 入湯税 V-3 鉱区税と鉱産税V-4 狩猟者登録税と入猟税 V-5 たばこ税 

V-6 国民健康保険税 V-7 地方消費税 V-8 消費税のあらまし V-9 法定外普通税と法定外目的税

V1 地方税の徴収

 Y-1 地方税徴収のための地方自治体の努力

 Y-2 自力執行権 Y-3 地方税優先の原則 Y-4 滞納整理の体系

Z これからの地方税

 Z-1 国と地方の税源配分 Z-2 地方団体の課税自主権 Z-3 地方団体の自主税源の確保

第3篇 実務の手引き

T 個人住民税の実務

 1.個人の住民税の具体的な算出の仕方 2.住民税の所得金額の算出まで 3.所得金額から課税所得の算出まで

3.課税所得を求めたら税額の算出 4.算出税額から納める税額へ 5.土地建物の譲渡所得の特例

U 法人住民税の実務

 1.法人住民税の申告書を作成するには 2.法人税割の算出

V 法人事業税の実務

 1.法人事業税の申告書を作成するには 2.法人事業税の算出

W 消費税と地方消費税の実務

「よくわかる地方税」.238

2編 地方税の税目別解説

V一5-4 不動産の取得の捕捉

取得の捕捉はまず登記から

  不動産の取得がなされると通常所有権の移転登記とか新築の登記等がされます。この登記簿に基づいて不動産の取得があったことを推定して不動産取得税が課税されます。しかし、所有権の取得の有無と登記の有無とは直接の関係はありません。わが国では、不動産登記は物権変動を第三者に対抗するための要件であっても、所有権取得の要件であるとはされていないからです。

 したがって不動産の取得の有無は登記を基準とするのではなくて、実質的な法律関係に則して判断されることになります。

  しかし・現実には不動産を取得しても、不動産取得税の申告がほとんどなされないという実情があり、また不動産の所有権を取得した場合には通常登記がされ、登記名義人はその不動産の取得者であると推定されるところから、実務的には登記から取得があったと推定して、その名義人を不動産の取得者として課税しています。

 賦課決定方式と申告義務

 不動産取得税は申告納税方式の不申告については条例で3万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができますが、課したという話を聞いたことがありません。登記も申告もなければ、課税庁の調査で取得を捕捉するしかありません。

 登記も申告もなされない場合の捕捉方法

不動産を取得したが登記申告もされない場合には公平に課税するという観点からも・捕捉漏れによる課税漏れの発生があってはなりません。課税庁は登記も申告もされない場合でも、取得者を捕捉して課税しなければなりません。では・どのようにして取得者を捕捉するのでしょうか。登記も申告もされない場合の事例としては、次のような場合が考えられます。

1 中間省略登記の場合

  Bが売買によってAから不動産を取得し、登記しないままこれをCに譲渡し,Cは登記したという場合には、Bは登記面上現れてこないため、Bの申告がない場合には,課税庁はすぐにはBの取得を捕捉できません。

ABC

   (中間省略登記)

 登記の公示機能からすれば、AからBBからCへの所有権の移転の経過が登記されることが望ましいのですが、Bの中間省略登記も一定の要件の下に認められています。Bの登記の有無にかかわらず,Bは不動産を取得しているのですから、Bに対して不動産取得税が課税されなければなりません。Bのような登記面からは直接捕捉できない取得者を捕捉するための方法として、以下の三つの方法が考えられます。

@ Cからの申告

  Cから取得の申告がされ売買契約書等が提出されれば、Bの取得を捕捉することができます。Cに課税標準の特例の適用を受ける等の利益があるような場合には、Cからの申告が期待できます。

A AまたはCに対する照会

  Aに対しては買主の照会、Cに対しては売主の照会をすることにより、Cの取得を捕捉することが可能です。

B 税務関係書類の閲覧

  ACから協力が得られない場合には、Aの税務関係書類を税務署で閲覧して、Bの取得を捕捉することができます。

2 所有権は移転したが登記しない場合

  所有権は移転したが・登記しない場合があります。二重譲渡される危険性もなく、抵当権設定の必要性もないような場合には、登記しないままにしておくことがあります。このような場合には、申告がなければ捕捉することはほとんど不可能です。       

3 新築。増築したが表示登記・保存登記をしない場合

  家屋を新築・増築しても、表示登記も保存登記もしない場合には、家屋の原始取得を登記からは捕捉できません。申告がない場合には、現地調査、建築確認申請あるいは航空写真等によって新築や増築を捕捉します。改築は外観からは分からない場合が多いので、増改築といった登記がなされないと捕捉することは容易ではありません。

(注)

(1)不動産を取得した者は当該道府県の条例の定めるところによって、不動産の取得の事実その他不動産取得税の賦課徴収に関し伺条例で定める事項を申告し、または報告しなければなりません(地法73条の!8@)

(2)地法73条の20

(3)地法73条の14C

..「わかりやすい地方税」p.29より

1-A-2 個人の住民税

均等割と所得割とがある

 どこの市()町村に納めるのか一11日の住所地

 ある個人が市()町村に住んでいれば、その市()町村に市()町村民税を、そして、その市()町村のある都道府県に都道府県民税を納めなければならないということを、1-A-1で説明しました。

 では、年の中途で引っ越しをしたようなときは、どちらの市()町村に住民税を納めるのかということになりますが、この場合は、毎年1月1日に住所のある市()町村に1年分の住民税を納めることになっています。この11日を賦課期日といい、.この日の現況によって、課税される要件などが確定されます。

 住所とは

 二⊃の家をもっていて、行ったり来たりしている人の場合、どちらが住所かという疑問がでてきますが、それは、その人の生活の本拠としているところが住所と解されており、具体的には、原則として、住民基本台帳に住所として記録されているところということになっています。なお、転勤などで単身赴任していて、休日に家族の住んでいるところへ帰るという状態のときは、家族の居住しているところが住所ということになりますが、赴任地に1年以上居住している場合には、その場所が住所ということになり、本人の住所と家族の住所とが二つあるということになります。また、外国人でも、日本国内に1年以上居住していれば,その居住地を住所とし・住民税が課税されることになります。

住所以外に事務所や家があれば

 自分の住所のある市()町村以外の市()町村に事務所や事業所をもつているとき、また、家屋敷をもっているときには、その市()町村で均等割の住民税だけ課税されるようになっています。ここでいう家屋敷とは、本人または家族の居住用のもので別荘などがこれにあたりますが、貸家用のものは含まれません。

()

1)賦課期日:地法318条、39

 2)住所:「各人ノ生活ノ本拠ヲ以テ其住所トス」(民法21)

3)住民基本台帳による住所:地法294(市町村民税の納税義務昔等)A〜C、24(道府県民税の納税義務者等)A、地通()5

4)単身赴任などの住所:地通()6

5)外国人などの住所:「外国人等に対する個人の住民税の取扱いについて」(昭41,5.31       自治・府第54号、最終改正・昭52.4.19自治・府第42)

6)事務所・家屋敷:地法291条@2号、24条@2

 

 

 

 

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