ooooo この石,何だろう? ooooo

ここは,石に興味のある方が自分で石の種類を見分けるのを支援するページです.

岩石鑑定表←岩石の肉眼鑑定表の試作版です(pdf: 2007 8/2改訂).
この石なんだろう?というときに使ってみてください.
青森県で見られる岩石に絞って作りました.
うまく決まらない,わかりにくい,こうしたほうがいい,などのご意見がありましたら,下記アドレスにご連絡ください.改良の参考にさせていただきます.
ueta(アットマーク)cc.hirosaki-u.ac.jp

↓岩石鑑定の基礎知識やコツなど.

[道具]
ハンマー:大工用のとんかち(げんのう)ではパワー不足なので,できるだけごついのを使います.頭の重さが1kgあれば,かなり色々な岩石を割ることができます.ホームセンターの工具売り場によく置いてあります.石を割る時には,破片が目に入らないよう,また,自分の足など叩かないよう,気をつけましょう.
・たがね:いうことを聞かない岩石を連れて帰るときに,割れ目に打ち込んでとどめをさします.平たがねより丸たがねのほうが強力です.ホームセンターの工具売り場にあります.
ルーペ:野外では折りたたみ式の「繰り出しルーペ」というのが便利ですが,虫眼鏡でもかまいません.10倍ぐらいの倍率で十分です.
ポリ袋とマジック:どこで採った石かわからないと,価値が半減してしまいます.取りに行った直後は覚えていても,コレクションが増えてくるとわからなくなるものです.採集した現場で場所を記録しましょう.
磁石:小さな磁石にセロテープでひもか糸をつけたものを用意しておくと役立ちます.フェライト磁石(普通の黒い磁石)で十分ですが,ネオジム磁石(銀色のやつ)のほうが感度がいいです.フェライト磁石もネオジム磁石は百円ショップの事務用品コーナーで手に入ります(ネオジム磁石は最近少なくなった?).大抵プラスチックなどに貼り付けた状態で売っているので,磁石だけ引っぺがして使うといいでしょう.
希塩酸:塩酸が手に入る人は,1-2%に薄めたものを目薬の空き容器に入れて持ち歩くと,野外での岩石鑑定に役立ちます.手に入らない場合は,家に持ち帰った後にコップに酢を入れて岩石を浸します.
ナイフ:岩石や鉱物の硬さを調べるのにカッターナイフがあると便利です.たがねでも.シャーペンの先や車のキーなどでも代用できます.

[鑑定表の使い方]
植物図鑑などで一般的な検索方式です.上位に挙げられた特長から順に判定していくと,岩石名にたどり着きます.一例を挙げると,
まず,A or Bで,水に沈むBを選択 → B1〜B5のうち,礫が集まったB1を選択
 → B1a or B1bのうち礫が丸ければB1bを選択 → …岩石名は「礫岩」となる.
岩石に含まれる礫の種類が問われる場合には,まずその礫について同定を行い,次いで岩石全体を判断します.鉱物種が問われる場合には,鉱物を同定しながら進めます.

[岩石鑑定のコツ]
風化部を避ける: 岩石が風化すると鉄分がさびて茶色っぽくなったり,表面が鉄さびに覆われてしまい,元来の色合いやつくりがわかりにくくなります.できるだけ茶色っぽくない部分を採取します.河原や海岸の転石や水際の岩盤は,風化した部分が削り落とされているので新鮮なものが多いです.そうでなければ,ハンマーで岩石を割ると,中に新鮮な部分があります.ちなみに,深成岩は少し風化した部分の方が鑑定しやすいです.
割れ口を観察する: 岩石の表面には様々な付着物があってよく惑わされます.岩石をハンマーで割って内部を確認します.
水に濡らす: 乾いた岩石の表面はざらざらしているので本来の色より白っぽく見えます(擦りガラスと同じ).岩石のつくりを見るには濡れた状態が適しています.ただし,鉱物を観察するには,乾いた状態のほうが割れ方の特長(劈開)が見えやすいです.
変質について:地下の岩石中を熱水(温泉水)が循環すると,岩石は赤,緑,白など様々な色に変化します(熱水変質).古い時代の火山岩や火山砕屑岩,温泉地帯の岩石などは,本来の色ではないと思っておいたほうが無難です.風化と違って,熱水変質は岩石の芯まで及んでいることが多いので,最初からそういう石だと思って扱います.「お○○心と石の色」というように(←言わない...),岩石の色はあまりあてにならないのです.

[岩石と鉱物の違い]
岩石を五目おにぎりに例えると,鉱物は飯粒や具に例えられます.飯粒や具の種類によって,おにぎりの種類も変わります.
鉱物:一様な化学組成をもった結晶.原子が規則正しく配列しているので,決まった方向に割れやすい(劈開).
ガラス:原子が規則的に配列していない無機物質.火山噴火でできる(火山ガラス).天然では不透明なことも多い.
岩石:鉱物が集まってできた物.火山岩では,しばしばガラスも含まれる.

[石英と長石の見分け方]←岩石鑑定に必要な,鉱物の見分け方です.
石英:
・無色透明で,風化しても濁らない.
・岩石中では透明感のある灰色に見える.
・割れ口は不規則で平面がない.
・外形は粒状.まれに六角柱状(水晶)または算盤珠状.
斜長石:
・無色透明だが風化すると白濁.
・岩石中ではやや濁った白に見えることが多い.
・割れ口には平面があり,光にかざすと鏡のように光る.
・典型的な外形は長方形〜短冊状〜針状.
カリ長石:
・風化していなくても不透明で濁って見える.
・白〜薄ピンク色.外国産の石材では濃い赤のこともある.
・割れ口には平面がある.
・理想的な外形は長方形だが,他の鉱物の隙間を埋めた不定形なことが多い.

[有色鉱物と無色鉱物]
色が濃く黒っぽい鉱物(輝石,角閃石,黒雲母など)が有色鉱物,白っぽい鉱物(石英や長石)が無色鉱物.岩石全体に占める有色鉱物の割合を「色指数」といいます.

[含有比]
有色鉱物や礫がその岩石に何%含まれるか,含有比を基準にすることがあります.以下の図(築地書館「地学ハンドブック」より)と照らし合わせて,えいやっと決めてください.

[砂粒か鉱物か?]
 砂岩と粒の細かい深成岩は見分けが難しいときがあります.目安として,ルーペで見たとき,深成岩は白(無色鉱物)と黒(有色鉱物)の2色の粒がごましお状に混ざっているのに対し,砂粒は白・黒以外に灰色など中途半端な色の粒が多いことで判断します.

[磁性]
糸に吊るした磁石を静かに岩石に近づけた時に,引き寄せられる度合いで判断します.フェライト磁石(黒い磁石)で十分ですが,ネオジム磁石(銀色の磁石)のほうが感度がいいです.古い時代の玄武岩と泥岩や,砂岩と粒の細かい閃緑岩はプロでもたまに間違えますが,磁石があればかなり識別できます.岩石中の鉄分(とくに磁鉄鉱の量)を反映しています.

[ナイフで傷がつく/つかない]
岩石や鉱物の硬さを調べます.硬い岩石や鉱物はでナイフで傷がつかず,逆に鉄がこびりついて銀色の筋がつきます.柔らかい場合は粉をふいたように傷がつきます.岩石は,風化すると軟らかくなるので,風化していない部分で試します.石英や長石が多く含まれている岩石は傷がつきにくくなります.

[酸で発泡]
方解石(炭酸カルシウム)を含む岩石は,酸をつけると発泡します.希塩酸がわかりやすくていいですが,家庭では食酢に浸せば少しずつですが発泡します.石灰岩や大理石は岩石全体から泡が出ます.その他の岩石でも一部分から泡が出ることがありますが,全体からでなければ「発泡しない」と判断します.

[水に浮く]
多孔質な岩石の中には空気がたくさん含まれているので,水に浮くものがあります.軽石(流紋岩の一種)は,マグマ中の火山ガスがビールのように発泡してスポンジ状になります.珪藻土は,かご状の形をしたプランクトン珪藻の遺骸が集まって多孔質になっています.空気が抜ければやがて沈みます.

[舌に吸い付く]
内部に小さな隙間が多い岩石は,毛管現象によって水(や唾液)を吸い上げるので,舌にピタと吸い付く感覚があります.岩石をなめても腹をこわすことはないと思うので,なめてみましょう.割れ口ならきれいです.






[注意事項]
正式な岩石種の同定には顕微鏡での観察や化学分析が必要です.当検索表は,肉眼(+ルーペ)の範囲で同定できるよう作成したので,学術的な基準に従わない(泥臭い)部分が多くあります.実用上あまり意識する必要はないと思いますが,以下に注意点を書いておきます.
・火山岩は化学組成で分類される.本検索表では,一般的な見かけの特徴を挙げた.
・斑れい岩や閃緑岩は,石英やカリ長石の含有量で花崗岩類と区別されている.本検索表では簡素化のため,肉眼で石英が見られるものを花崗岩,見られないものを閃緑岩か斑れい岩とした.
・斑れい岩と閃緑岩は,含まれる斜長石の化学組成で区別されるが,本検索表では有色鉱物の含有量(色指数)による区分とした.