[山のおつまみ 秋編]

文字通りの実りの秋.朝晩冷えるようになりますが,秋の夜長を呑み通す(?)べく多くの食材が準備されています.

[ぼりぼり]
10月は木の葉も落ちて山が明るく虫もいないので,もう寒いのですが調査にはいい時期です.荒れたブタ沢など歩いていてふと顔を上げると,倒木や切り株にびっしりと....そうです.ぼりぼり君達が密かに私を待っていたのです.喜び勇んで最初の一本をむしりとると,群がり生える1本1本が「ぼくも採って!」「わたしも採って!」と誘ってきます.ザックを投げ出してむしっては袋に詰め,もう採り尽くしただろうと思っても,はがれかけた木の皮の裏側やうろの中まで生えていてなかなか許してくれません.ようやく息をつくと,サンプル袋の中でぼりぼり君たちが嬉しそうに顔をゆがめて詰まっています.
こうなってしまったら,もう石どころではありません.ハンマーを持ち直して歩き出しても目がきのこ,脳ミソもきのこ,見えるものは林の中の切り株ばかりです.きっとぼりぼりは,地球の秘密が暴かれないように何者かが蒔いたにちがいないのです.

ちなみに最盛期になると毎日採れるので,テントに帰ってからはその日に採った多量のぼりぼりを食べる(フライパンが小さいので小分けにして延々と炒めつづけ食べつづける,したがって呑みつづける)だけで終わりがちで,データの整理どころではありません.このことからも 誰かの陰謀であることがわかります.

←(花)[またたび](収穫)→
林道の脇や河原の縁,沢の中では少し開けて陽があたるようなところの木にからみついて,またたびのつるがあります.秋は一斉に黄色くなって,晴れた日は透けて実にいい色です.しかし葉っぱごときに惑わされてはいけません.なぜなら,その奥にまたたびの実が隠れているからです.
橙色の熟れた実はたしかに甘いですが,あまり好きではありません.しかし,ある年思い立って青い実を焼酎に漬けて,噂に聞くまたたび酒をつくったら実に美味でした.調子にのって翌年は瓶の2/3までまたたびをうずめて高純度のまたたび酒を試みたのですが,これはやたら渋くて何の感動もありませんでした(10リットルもつくってしまった).やはり欲張ってはいけないのですね.
やつらは結構高いとこになるので,手が届くか届かないかの瀬戸際で勝負します.細い木の枝にまたがってしぶといつるを引き寄せて,手をいっぱいに伸ばして(なぜか口があいてしまう)ふらふらゆれながらあざ笑うまたたびと格闘してると,パン食い競争のようでフラストレーションがたまってしまいます.

[こがねたけ]
林道脇などの地面から,たまにビロード状のオレンジ色で,にぎり拳ぐらいのぶあついきのこが出てきます.でかいのでややぎょっとしますが,しかしこれがなかなかイケるのです.肌触りもよろしい.孤立した群れでポコポコっと生えてくるのですが,どこもかしこもというわけにはいかずたまにしか出会えません.が,肉厚なので1箇所でもけっこう食べ応えがあります.炒めたり汁に入れたりします.炒めたほうがうまい気がします.

[きいちご]
うっとしい木苺の藪は,夏のあいだは罵倒の対象でしかありません.とにかく刺さるし引っかかるし,しかもどう行っても必ず痛い思いをするように配置されていたりします.痛いといえばイラクサもそうです.イラクサは源頭部では沢と両脇の斜面を覆って海になってたりします.軍手をはいても手首の隙間からちくちく入ってくるし,よろけて不覚にもほおずりしてしまったりして,実に不条理です.何も悪いことしてない(?)のに,なんでこんな思いをしなければならないんでしょうか. しかし木苺は,秋口にはいると一転して優しくなります.べつにとげがなくなるとかやわらかくなるとかではないはずです.しかし,大群落を見つけて藪に分け入り夢中で食ったことはよく思い出しますが,なぜか秋に痛い思いをした記憶がありません.精神統一のなせるわざなのでしょうか?
写真の黒いやつが一番うまいように思います.肴にはなりませんが.

[むきたけ]
秋も深まり,そろそろ雪の心配をしだす頃になると,あれだけ元気だったぼりぼり君はどろどろにくさって消滅し,替わりにこのムキちゃんが出てきます.肉厚でとろっとしておいしいのですが,結構虫もついてしまいます.出がけは黄色っぽい焦茶色で,何日か経つとだんだん薄い黄色になってくるように思うので,若くて色の濃いのを採るようにしてます.ツキヨちゃんとちょっと似ているのですが,首元(軸)に襟(ツバ)がなくかわいい毛がぽわぽわ生えているので,これさえ確かめれば大丈夫です.今年(2004)は全部豚汁の具にしてしまいましたが,たまには炒めてあげればよかった.かつて11月中旬に腰までつかって沢を調査したときは,たくさんのムキちゃんがなぐさめてくれました.


[岩魚天丼]
今秋(2004)の調査では,魚のいる沢に入ったし,毎日ムキ茸豚汁というのも飽きてきたので,一念発起して天ぷらにしました.

← 誰もいない山奥でひそかに天ぷらを揚げる.

作業机(テントにちゃぶ台がある)は...→



ほら,嬉しい食卓に早変わり! →

←余った分は翌日の弁当に.


しかしその日は弁当をテントに置き忘れて,昼飯抜きで歩いたのでした (T_T)