単純化して書いてあるので,これが全てではないと思って読んでください.

造岩鉱物の識別のポイント

    [オープンニコル]

  1. 有色鉱物では,同一鉱物でも化学組成によって色が異なる.一般に,Fe/Mg比が大きい(Feに富む)ほど鏡下で緑〜黄色が濃くなる(肉眼では黒っぽくなる).逆にFe/Mg比が小さい(Mgに富む)ほど無色に近くなる.また,Tiを多く含む(≒より高温で結晶化した)ほど赤っぽく見える.
  2. 多色性

    ステージを回転して色が変わる性質を,多色性という.結晶の向きによって,光(偏光)を吸収する度合いや吸収する光の波長が違うためにおこる.多色性が強い鉱物(黒雲母,普通角閃石),弱い鉱物(輝石類),ない鉱物(かんらん石や無色鉱物)がある.同一鉱物では,Fe/Mg比が小さいほど多色性が弱くなる.
  3. 劈開

    鉱物によっては,ある特定の方向に割れやすい性質がある.この割れ目(あるいは,割れ目をつくりやすい性質)を劈開という.劈開の強さは,雲母類>角閃石類>輝石類>長石類>かんらん石,石英 の順. 劈開の方向も鉱物により異なる.雲母はc軸(雲母の場合は短軸)に直交した一方向(=シート状).角閃石と輝石はc軸(長軸)に平行な2方向(=柱状)が発達する.c軸に直交する断面で見ると,2方向の劈開が,角閃石では約60度(54-58度),輝石では約90度(87-88度)で交わる.この性質は,肉眼鑑定で両者を区別する際も有効.
  4. 屈折率

    無色鉱物では色も干渉色も似ているので,屈折率の違いが識別に有効.屈折率が高いと浮き上がって見え,低いと凹んで見える.方解石のように複屈折が非常に大きい鉱物では,ステージを回すと結晶が浮いたり沈んだりするように見える. 隣り合った2つの鉱物のどちらが屈折率が高いかを知るには,ベッケ線を見る.対物レンズを10倍以上とし,光を絞ると,鉱物の境界に明るい線が現れる(ベッケ線).対物レンズから薄片を離す方向にピントをずらすと,ベッケ線が屈折率の高い方に移動する.未知の鉱物のおおよその屈折率を知るには,既知の鉱物や樹脂(屈折率1.54)との接触部で比べればよい.
  5. 質感

    意外と重要.石英のように結晶構造に乱れがなく混ざり物がない(固溶体をつくらない)鉱物はクリアーでしゃきっとしている.長石類は風化で傷みやすいので,やや汚れたものが多い.かんらん石やざくろ石は屈折率が高いので,表面がざらざらして見える(研磨でできたざらざらが目立つ).

    [クロスニコル]

  1. 干渉色

    複屈折の大きさを示す.鉱物の種類によってことなる.しかし,同一鉱物でも見る角度によって干渉色が異なるので注意が必要.光軸の向きから見た場合は複屈折ゼロなので,干渉色を示さない.光軸と直交する向きが複屈折最大で,これが鉱物の固有値となる.等軸晶系の鉱物は干渉色を示さない(クロスで暗黒:複屈折がない).
  2. 消光角

    鉱物の長軸や劈開の方向と消光位(=通常光や異常光の振動方向)との角度を消光角という.消光角0度(=90度,結晶長軸が縦と横で消光)を直消光,斜めで消光するものを斜消光という.消光角も見る方向によって変わるので要注意.最大値が重要.
    角閃石の消光角は30度以下,単斜輝石は40-45度,斜方輝石やかんらん石は直消光.
    結晶系でいうと,c軸とa, b軸が直交するもの(正方,斜方,六方,三方晶系)は直消光する.c軸とb軸±a軸が斜交するもの(単斜,三斜晶系)は斜消光する.
    一軸性結晶では,結晶軸(c軸)と光軸が一致していれば直消光,一致していなければ斜消光になる.二軸性では,2本の光軸の等分線がc軸と一致する場合に直消光になる.
  3. 光軸角

    2軸性結晶では,2本の軸が交わる角度(2V: 光軸角)が鉱物の種類や化学組成によって変わる.光軸角を見るには,干渉色を示さない結晶(=光軸方向から見ている)を探し,コノスコープ像を出す.アイソジャイヤーが直線のときは2V=90度.光軸角が小さいほど強く曲がる.2V→0度では直角に折れ曲がるとともに2つの光軸のアイソジャイヤーがくっつくので,十字型になる(=一軸性)

  4. 書きかけです...

岩石組織の観察ポイント

  1. 自形or他形

    結晶外形が結晶本来の面(結晶面≒劈開面)を示す場合を自形といい,他の鉱物の隙間を埋めるなど自己主張の弱いものを他形という.中間のものは半自形.
    火成岩の場合,マグマから早期に晶出した結晶は自由空間で成長するので自形性が強い.一方後期に晶出したものは,すでにある鉱物の間を埋めるので,他形になる.このため,鉱物が晶出した順序を決めることができる.
    変成岩の場合は,固体状態の岩石中で結晶が成長するのでずっと複雑.鉱物によって,自形性を示しやすいものとそうでないものがあり,温度や力のかかり方でも変わる.そのため,自形性は晶出順序を示すとは限らない.
  2. 融食形

    しばしば,ある結晶の外形が融けたり溶けたような外形を示すことがある.アメーバ状だったり,妙に丸っこかったりする.これらを融食形(溶食形)という.ある時期にその結晶が化学的に不安定になり,融解したりマグマや間隙水に溶けたことを示す.
  3. 包有関係

    ある鉱物Aを別の鉱物Bが包んでいるとき,BはAを包有するという.先に晶出したAを,後から成長したBが包んでしまった結果なので,結晶ができた順序を決めることができる. 包有される鉱物(A)が自形の時と,融食形の場合がある.自形のときは,AとBがともに成長しつつも,Bが遅れて出現したことを示す.Aが融食形のときは,Aが分解しながらBが成長したことを示すので,岩石中でおこった化学反応を知る手がかりになる(つまり,Aが化学反応の左辺,Bが右辺にあったことになる).
  4. 共晶関係

    2種類以上の鉱物が複雑に噛み合った組織を示すことがある.長石と石英の間などによく見られる.ミミズがからみあったようなものをミルメカイト,楔形文字のようなものを文象組織という.これらは,複数の鉱物が狭い空間に一気に晶出したことを示し,マグマの最終残液でできる.
  5. 置換関係

    ある鉱物Aの一部を,別の鉱物B(複数可)が置き換えているとき,BはAを置換するという.鉱物Aが化学的に不安定になり,より安定な鉱物Bに置き換えられたため,Bのほうが後期である.またAは化学反応の左辺,Bは右辺にあったことになる. 置換は,鉱物の外周や割れ目,劈開から進行するので,AはBに虫食い状に置換されることが多い.これは,化学反応に水などの流体が関与していたことを示す. 鉱物Aが完全にBに置換された結果,Aの外形なのにBでできている,ということがおこる.この場合はAの仮像という.
  6. 鉱物の配列

    柱状や板状の結晶の長軸が,ある一定の方向に揃う傾向が見られることがある.多くの場合,これらはマグマ(火成岩)や固体岩石(変成岩)の流動の結果である.一般に,鉱物の長軸は流動方向と平行になろうとする傾向がある.
  7. 鉱物粒子の大きさ

    火成岩では,マグマがゆっくり冷えながら結晶が成長するほど粒が大きく(粗粒),早く冷えるほど粒が小さく(細粒)なる.あまりに早く冷えると,結晶を作る間もなくガラスになる. 変成岩では,一般に高い温度で変成したものほど粗粒になる傾向がある.また,力が加わり変形した場合には,変形の度合いが大きい(歪が大きい)ほど細粒になる.