Armed Assault レビュー -ArmA訓練所-

ArmA訓練所
2007/05/06

ここではBohemia Interactiveが開発したゲーム、Armed Assault(アームドアサルト,略称はArmA)のレビューを書いてみたいと思います。
バージョンによって不具合が解消されているので、プレイしたタイミングによって感想は変わるかもしれません。
このレビューを書いた時点のArmAのバージョンは1.05です。


目次


パッケージ

日本向けのパッケージは2007年4月20日にZOO(ズー)から発売されました。
中身は日本語マニュアル付きのEUROバージョン(英語版)です。
その少し前から505 Gamesから通常のEUROバージョンも発売されていました。
ZOO版と505版の違いはマニュアルの言語(日本語と英語)と、外箱の有無(ZOO版は紙箱、505版はDVDケースのみ)、
そしてメディアケース(ZOOは紙ケース、505はプラスチックのDVDケースで外箱を兼ねています)です。
個人的にZOOの紙ケースは好きではないのですが、DVDドライブに入れっぱなしにするか、別のケースで保管しましょう。
ZOO版の値段は店によって変わりますが7000円前後のようです。


動作環境

動作環境は前作のOFP(Operation Flashpoint)同様、ソフト発売時点のハイエンドゲーム機で
画質・パフォーマンス的に満足出来るかどうか微妙なラインということらしいです。
私の場合、ver1.05でAthlonXP2500+(1.83GHz L2 512KB)、メモリ1.5GB、Geforce7600GS 256MB AGP、SoundBlaster Audigyという構成で
Advanced設定をvery lowかlowを多用すれば満足に動いています。ネット対戦でも十分対戦可能でした。
Geforce8800GTXが無いとまず動かないとかそういうことはありません。
Geforce6800XT 128MB AGPだとさすがに設定をすべてvery lowにした上で解像度を800x600にしないと
市街地や森林で敵を狙いづらくなったので、Geforce7600GTクラスはあった方が良いでしょう。
そもそも私のPCはAthlon64、X2やCore2などよりCPUやメモリも遅く、PCI-Expressより性能の劣るAGPの環境なので
多くのゲーマーはグラフィックボードとメモリさえあれば意外といける気がします。
メモリ1GBだとゲームがクラッシュする可能性が高まるので1.5~2GBはあった方がいいと思います。

対応OSはWindows 2000/XPとなっていて、Vistaは動作対象外となっています。
しかし、ネット上にはVista 32bit版で動作可能という報告が上がっています。
DirectX 9.0cに最適化が行われていて、ビデオカードはこれらにハードウェアで対応するものが必須になります。
具体的にはGeforce FXシリーズ以上とRADEON 9500以上となっています。
また、DirectX関連のトラブルが多く、DirectX9.0cがインストールされていれば大丈夫とは言えないことがあります。
例えば「d3dx9_30.dllが見つかりません」と言ったメッセージ等が表示されたりします。
DirectX9.0cが公開されてから時間が経っており、9.0cに収録されていない拡張が開発側に配布されたため、
9.0c公開以降に配布された拡張を追加インストールする必要があります。
DirectX End-User Runtimes 2007年2月版
これをダウンロードしてインストールすればDirectX9.0cに追加の拡張がインストールされます。
また、サウンドの不具合も多いことから、可能であればサウンドカードのドライバを更新したり、
OpenALの最新のものをインストールしておくことをお勧めします。OpenALは次のページからWindows用をダウンロードします。
OpenALのダウンロードページ


キャンペーン

ArmAには一つのストーリーをプレイするキャンペーンと、個別の任務をこなすシングルプレイミッション、
そしてLANやインターネットに接続して他のプレイヤーと協力、対戦できるマルチプレイミッションがあります。
まずはキャンペーンについて。

英語

ストーリーは英語で、すべての内容を理解するには相当な英語力を求められますが、
英検3級クラスとプラスアルファの英語の知識があればプレイには支障はないと思います。
せいぜいdestory(破壊せよ)とかseize(占領せよ)とかそういう単語を見つけられれば目標は分かりますし、
行き先もマップや画面上に表示されるので、何をしたらいいか分からないということは少ないと思います。
また、シナリオを日本語に翻訳しているサイトもあるので、それを見れば大丈夫でしょう。

ストーリー

詳しくは翻訳サイト等を見た方がわかりやすいのですが、Sahraniという島に、中央を境に南北にそれぞれ国があり、
アメリカ軍が南部の国で軍事訓練を行っていて、その活動から引き上げを行っている最中に、
北の国が南に侵略してくる・・・という流れになっています。
主人公は帰国のタイミングが遅かったために、この侵略を止める作戦に参加することになります。

内容

基本的には戦場シムということで、自分はアメリカ兵となって作戦を遂行します。
敵から拠点を防衛したり、敵の拠点を攻撃したり、潜入して破壊工作を行うといったものがほとんどです。
多人数で行動するものと、少人数や単独で行動するものもあり、前作のOFPより短いとはいえ、バラエティーには富んでいて飽きません。
また、メインミッションとサブミッションに分かれていて、サブミッションをクリアするとメインミッションに変化が起こるようですが、
私はサブミッションをクリアしながら進めたのでどのような変化が起こるのかはサブミッションをクリアしないパターンと比較しないと分かりません。
よく言われているのは、敵の増援が来なくなったり弾薬が豊富に用意されると言ったものですが、私は未確認です。

やっぱり前作のOFPと比較してしまいますが、今回は夜間のミッションが多かったような気がします。
グラフィックがDirectX9.0cに対応したため、HDRの影響か光源処理が格段に綺麗になっています。
OFPでは画質調整で明るさを上げれば夜でもナイトビジョンゴーグル(以下NVGとします)は不要でしたが、
今回はNVGを使用しないとほとんど見えないため、そのPRのようなものと言ったところでしょうか。
ただ個人的に思うのは、暗い場所はNVGが必要だとして、島全体がかなり暗いというのもどうなんでしょう?
日本に暮らしていると深夜でも何かしら明かりがあるのが常識となっているせいか、
Sahraniでも街に街灯はありますが、何となく少なすぎるような気がします。
これじゃ夜に外出も出来ないんじゃないかと思ってしまいます。

昼間のミッションは至って普通で、集団で街を攻めたり、乗り物で移動したり、
戦車で制圧したり、スナイパーライフルで狙撃したりと一通りのシチュエーションはあるようです。


シングルプレイミッション

キャンペーンのようなストーリーなどはありません。
製品には最初からチュートリアルミッションと、いくつかのシングルプレイミッションが収録されています。
チュートリアルミッションでは基本的な操作を学習でき、初心者でもスムーズに操作が出来るように配慮されています。
射撃訓練やリーダーの命令コマンドの使用方法、ヘリの操縦方法など様々なチュートリアルが用意されています。
普通のシングルプレイミッションは車列の妨害や、潜入ミッション、援軍の輸送、街の制圧などが用意されています。
ストーリーとはまた違ったシチュエーションが楽しめます。


マルチプレイミッション

前作OFPでメインとも言える楽しみ方であったのがマルチプレイです。
OFPでは多くのユーザーがミッションを作成した結果、とても数え切れないミッションがネット上に溢れていました。
ArmAもその機能性を継承しており、日本版発売時点で先に発売されたチェコ版やドイツ版などを使って作られたミッションが多数存在し、
ネット上での協力プレイや対戦プレイに困ることはありません。
ただそのせいか、公式マルチプレイミッションはあまり手の込んだものは少ないようです。

前作では問題点とされていた途中参加機能が付加されたため、時間のかかるミッションもやりやすくなりました。
多人数対戦をサポートしており、仕様上は100人プレイも可能とされていますが、
現時点ではサーバーのスペックなどの問題から事実上100人は無理のようです。


ミッションエディター

前作のOFPで特に注目されたのがこのエディター機能でした。
ArmAもミッションエディターを備えており、OFPと同様の操作や手順でミッションが作れるため、
OFPでミッションを作った経験のある人はスムーズにArmAのミッションを作ることが出来ます。
ミッションエディターでシングルプレイミッションやマルチプレイミッションを作成できるため、
ネット上にはいくつものミッションが溢れています。
がんばればキャンペーンも作成可能なため、このエディター機能はArmAの生命線と言っても良いかもしれません。
また、別のツールを使うことで登場ユニットや兵器を増やすMOD制作も可能であるため、
エディターとMODを合わせてより柔軟にゲームを楽しむことが出来ます。


AIの動作

ArmAで重要な要素の一つがAIです。
私がやったゲームの中ではとても多くの動作をするAIなだけに、ver1.05の段階ではいくつか問題点があります。
街中での移動でスタックしてしまったり、乗り物を運転中に時々障害物に当たる、
発砲禁止命令を時々無視する、航空機を操縦中に墜落や味方機と接触するなどです。
バージョンが上がる度に徐々に改善しているようなのでもうしばらく完成を待たないといけないようです。
上記の問題があるとはいえ、発生頻度は危機的なものでもないため、ミッションをやり直せばおおかたうまくいきます。
それ以外では乗り物に乗せたり、隊形を組んだり、武器を拾わせたり、特定の敵を狙わせたり、特定の地点に移動させたりと
実に様々なアクションを実行可能です。
このAIを使いこなせるかどうかがArmAの腕の見せ所かもしれません。


乗り物

様々な乗り物が登場します。
一般的な市民が乗る乗用車を始め、軍用の輸送車、トラック、装甲車、戦車、対空戦車、上陸用の船、
輸送ヘリ、攻撃ヘリ、戦闘爆撃機、そして固定機銃などが登場します。
また、いくつかの乗り物にはガンナー席が用意されていて、運転手とガンナーは別々のプレイヤーが操作可能になっています。
前作にはなかった複数ガンナー機能も用意され、いくつかの乗り物ではガンナーを複数乗せることが出来ます。
今回、特に特徴的だったのはヘリが弱体化したことでしょうか。
着陸時に勢いよく地面にヒットするとダメージを受け、ダメージによってはエンジンがかからなくなることがあります。
AAミサイルや機銃などによるダメージでは燃料漏れを起こしたり、テールローターが故障し姿勢制御が不可能になることがあります。
テールローターが破損したヘリを見ると思わず「ブラックホークダウン!」と叫んでしまいそうです。
固定機銃の種類が増えていますが、大型のものでもすべて対人用の弾薬を発射するタイプなので、
対戦車砲が無かったのは残念なところです。ただ、エディットで対戦車用の弾薬を搭載させることが出来れば何とかなりそうです。


グラフィック

すでに少し触れましたが、DirectX9.0cのグラフィックス機能に対応していて、
海面や砂浜の表現は綺麗ですし、太陽を見たりするとまぶしくて視界が悪くなったり、
暗いところにいてもしばらくすると目が慣れてある程度見えるようになったり、
また、暗いところで急に明るいものを見ると眩惑したり、NVGで光を見るとほとんど何も見えなくなるなど、
グラフィックがゲーム性にも影響を与えています。
太陽を背にして攻撃を仕掛けると相手から気づかれにくいという作戦が再現可能です。
地形的にもマップが広大で、その広大なマップに草や木々が多数生えています。
OFPよりも森林は綺麗に、そして広くなっています。
綺麗と言えば綺麗なのですが、その他のゲームで特に画質にこだわったものと比較すると、
ArmAは劣ると言わざるを得ないかもしれません。
多くのゲームは小さな街、建物の中や、洞窟の中など、ArmAよりは狭いマップでゲームが進行するため、ArmAほど処理を必要としません。
対してArmAはマップが広大であるが故に、ある程度個々のテクスチャなどの質を落としているのは事実でしょう。


サウンド

サウンド処理はDirectSoundおよびOpenAL+EAXに対応しているようです。
初期のDemoバージョンではEAXを有効にすると乗り物のエンジン音がとても大きく感じられましたが、
ver1.05時点ではこれといっておかしな音が鳴ることは無いようです。
車両などのエンジン音は建物や壁などの障害物があるとくもった感じで聞こえてきます。
銃声や爆発音は賛否両論ですが、ドップラー効果が再現されており、近づいてくる物体と離れていく物体では
異なる効果音が聞こえてきます。
特に銃弾がこちらに飛来してくる場合は「パチン」という乾いた音がします。
調べてみると、これはどうやら実際の銃弾が音速を超えて飛来するとこのような音がするとのことです。
これらの音が変な音と評される場合もあり、あえて非現実的でも迫力のある音の方がいい音だとされるかもしれません。
私がプレイした感じでは、この「パチン」と言う音に最初は違和感を感じましたが、概ね雰囲気を壊すようなものはなく、
改善の余地があるとはいえ戦場の雰囲気はいい感じで演出されていると思います。


感想

前作OFPを楽しめた人なら買って損はしないゲーム。
初めてプレイするなら、リアル系というジャンルに抵抗を感じない人でないと受け付けないと思います。
多くのゲームはHealth値が存在し、ダメージを受けたら回復アイテムを使用する作りが多いのですが、
このゲームは銃弾を1~4発も食らえば確実に死ぬので、回復すれば大丈夫とかそういう考えは通用しないためです。
自ユニットと敵ユニットに能力的な差はないので、ランボースタイルで攻略することはまず不可能です。
地道に敵を倒したり、味方AIを操作して戦場を有利に戦える能力がないと楽しむのは難しいでしょう。

リアル系に抵抗が無ければ、大規模な戦場で戦うという感じがよく出ているゲームといえます。
よく比較対象にBattleFieldシリーズが出てきますが、全く似て非なるものです。
例えるならBFシリーズは爽快感、ArmAは重厚感と表現されるのではないでしょうか。
ArmAはどの装備も乗り物も使いこなしが難しいため、この難しさを乗り越える楽しさがあるといえます。

近年のゲームは昔に比べて制作時間が延びており、コストの関係からどうしてもゲーム性が軽視されたり、
発売タイトルの減少でユーザーが選べるゲームの数が減ったり、個性的なゲームが減る傾向にあります。
そんな中、ミッションエディターを搭載してユーザーの作ったデータを共有し、
日本で言うRPGツクールとよく似たユーザー自身が遊びを提供、享受できるシステムは正解だと思います。

人を選びますが、リアルで難しいゲームをやりたいとか、自分もミッションを作りたいとか、
マルチで多人数協力プレイ・対戦プレイに興味があるという人にはもってこいのゲームだと思います。

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