アメリカの真空管(Western Electric 出力管)
幻の真空管と呼ばれている252Aです。これは戦前の俗に言う大ナス管になります。電極部にセラミックを使うなど、初期の送信管スタイルを残した出力管です。ステムの上部は平らに整形されていて、さらにマイカ板を設けてフィラメント再蒸発物の付着を避けています。フィラメントは2本吊りで、プレートに450V印加しても出力は7Wしかとれません。300Bと比べると、かなり効率が悪いです。しかしながら、堂々とした風格ある大型ナス形状は魅力的です。足は銀メッキのもの(画像左:経時変化により黒く変色)と通常のもの(画像中央)があります。カニンガムの350と並べてみました。腰のところを絞った分、背が高くなっています。
この真空管のバリエーションは、@メッシュ大ナスA大ナス銀足B大ナスC戦後細ナス管プリントで、マグネシウムゲッターとバリウムゲッター、刻印と焼印の違い、プリント文字の違い、ゲッター金具の違い、の組み合わせになります。残存数が少なく、またあっても高価で入手検証できませんので、この他にもあるかもしれません。1960年代まで生産されていました。
252Aの日本電気版のTB-520-Bです。ウエスタン製よりこちらのほうが造りが丁寧で、ガラスも少々厚く重いです。形状は252Aの細管タイプと同じです。
なぜか人気がない275Aです。252Aから進化した音声増幅専用の直熱3極管で、2A3の上位クラスに位置します。フィラメントは300Bと同じ5V1.2Aでプレート電圧300Vで約5Wの出力が得られます。フィラメントは2本吊りで、ステムの形は252Aにそっくりです。1970年代まで生産されていたようです。
252Aの傍熱管にあたる271Aです。初期の物は252A同様の大型ナス管らしいのですが、見たことがありません。円筒状の炭化処理したプレートの中には太いカソードが上部のセラミック板で支えられるように配置されています。
271Aの日本電気版のTB-627-Aです。
トップグリッドの小出力管311Aです。これはトップマークと言って管頂部に型番が記載してあります。1W程度の出力管ですが、3極管接続でドライバーとして使われることがあります。
直熱5極の送信管の339Aです。これは軍用でJAN-CW-339Aとなっています。メタルベースでセラミック材をふんだんに使い、プレートにジルコニウムが塗布されたたいへん丁寧な造りです。大きさは300Bと同じで、オーディオにも使えることから人気があります。
USN−CW−349A(1950年代、US.NAVY)です。41同等の5極管です。
WE製造の350Aです。コードから61年製であることが判ります。WEの特徴であるステムの上部が平に整形されています。セラミックスリーブ、マイカの形状等は、おなじみの構成です。
これも、350Aです。350Bのトッププレート管なのですが、350Bに比べると比較的安価に入手できました。おなじみのイタリック体の黄文字と銀文字です。ロゴが異なるだけで、電極構造は同じです。この350Aはどちらもステムの上側が前述のように平らになっていませんので、WE製造のものではありません。たぶん、ナショナルユニオンあたりにOEMで作らせたものだと思います。
350Bです。この350Bはプリントが消えてしまっていたので、カシオのネームランドで「WESTERN ELECTRIC 350B」と銀文字シールを作って貼りました。造りから見て、他社のOEMではなく純正のWE製です。比較のためにナショナルユニオンのNU350Bと並べてみました。左がナショナルユニオンで右がWEです。また、真ん中の画像がWEのステムで、右端がナショナルユニオンのステムです。管頂部の管壁に固定するマイカの形状と、ステムの上部が平らに整形されていることで、容易に判断できます。プリントされている文字にこだわると、意図的に作られたものがあります。高価な真空管ですので、電極の造りで判断することをお勧めします。
80年製のWE製造の350Bです。たぶん最後期のものだと思います。
WEのOEMで有名なナショナルユニオンのNU350Bです。基本的に構造は変わりません。マイカも通称「おむすび」といわれている3角形です。6L6の動作例でほぼ問題なく動作しますが、カソードがセラミックスリーブタイプなので、ウォームアップタイムに約1分必要です。
低電圧駆動用の375Aです。ヒーターが20Vと使いにくいですが、プレート電圧90Vで約1Wの出力が得られます。トップの絞りが下手でレンズのようになっています。
421Aです。5998同等のレギュレーター用の双3極管です。オーディオ用としても2A3並の出力が取れ、1本でステレオ構成のアンプが作れます。この421Aはゲッターが上に飛ばしてあることから真贋論争がありましたが、前述の判定方法でWE純正であることが判ります。WEのゲッターは下部にあるとは、限りません。ゲッター位置での判定は、危険です。
判りやすいおなじみの421Aです。対になる整流管の422Aと並べてみました。グリッドの有無だけで、その他はそっくりです。
ドアノブ管といわれているUHF用真空管の316A(JAN)です。
316Aをさらに改良した703Aです。この703AはTUNG-SOL製です。
316Aをダブルエンドでグラファイトプレートした388A(JAN)です。この手のUHF帯域の真空管の正規の寿命は数時間らしいです。航空機の敵味方識別信号の発信などに使われていました。