アメリカの真空管(整流管)

米国整流管の代表といっても良いくらい有名なRCAカニンガムの80です。フィラメントが吊ってある初期タイプと直接マイカに固定されている後期タイプがあります。初期型は、「音が良い」とのことで、価格が高沸しています。音は良いか否かは個人差で何とも言えませんが、丁寧な造りであることは間違いないです。

ナショナルユニオンの80です。この80は、いわゆる「波型プレート」といわれるもので、プレートにヒダが設けられています。発熱による真空度低下防止対策の1つだと思います。フィラメントは、マイカに直接固定されています。

アーチュラスの80(刻印)です。アーチュラス特有のブルーバルブです。

RCAの5Z3とKEN-RADの5U4Gです。5Z3と5U4Gの関係はベース違いのみです。共に1950年代のマグネシウムゲッタータイプです。後にバリウムゲッターでフィラメントを上部マイカに直接固定する構造に変わりました。

シルバニアの83Vです。83Vと言うのは、「83並に効率の良い」所から名づけられました。80クラスの傍熱型整流管です。

ポピュラーな整流管の5Y3GT(RCA)です。80同様最も良く使われた整流管の1つです。

5R4WGAです。5R4Gの改良管でとてもがっしりとした重い真空管です。

5852は6X5の高信頼管です。ベンデックスの「これでもか」というくらい丁寧な作りです。

傍熱型整流管の5AR4(US.Philips)です。比較のシーメンスのGZ34(=5AR4)より一回り大きく電極構造も異なりますが、規格は同一です。

RCAカニンガムの82(ナス型刻印)です。後述のST管の82の原形です。

RCAの水銀蒸気整流管の82です。82は83より1周り小型で、45のAB2級回路等に良く使われました。

83です。水銀蒸気整流管は、水銀がイオン化する電圧分だけの電圧降下で、当時の整流管の中ではレギュレーションが良くこのようなB級回路に良く使われました。

レイセオンのガス入り放電整流管のBHです。初期はトップシールでベースも長いタイプでしたが、後期は通常のナス管になりました。この真空管は、ガス入り放電管です。よって、ヒーターやフィラメントはありません。

RCAの高圧整流管の2X2Aです。隣は同規格の国産の1K22です。外形はほとんど同じですが、RCAのものは、ベースにX線の発生に関する注意書きがプリントされています。

Amperexの高圧整流管の221Aです。ちょうどUV204からグリッドを除去したような真空管です。フィラメントは、トリエーテッドタングステンの5V10Aで25000V300mAの整流能力があります。

RCAの水銀蒸気整流管、866A(VT46)です。大きさは300Bとおなじで迫力があります。フィラメントが2.5V5Aと大食いの片波整流管なので使いにくい感がありますが、整流時の水銀イオンの青い放電の美しさには、それを克服して使うだけの魅力があります。

RCAの小型水銀蒸気整流管の816です。大きさは、310Aと同じです。フィラメントは2.5V2Aで2A3のフィラメントよりも小さいです。これも片波整流管です。整流時は866A同様に水銀イオンが美しく青く光ります。右端はカナダマルコーニの816です。規格はRCAのものと同じです。水銀の量が多いようで管壁が曇っています。

816の動作時の画像です。アノード-カソード間の水銀イオンの怪しい青色の放電が美しいです。水銀蒸気整流管は、フィラメントを加熱して内部の水銀が気化して一旦曇ってその後晴れてきてから、高圧を印加します。決して80や5AR4のようにフィラメント加熱と高圧の印加を同時にしてはいけません。壊れてしまいます。次は水銀蒸気整流管の泣き所、炭化プレートの経年劣化によるカーボン膜の剥離状態です。電極間がタッチしない限り使えるのですが、耐圧は劣化しています。高性能な整流管だけに残念です。右端の画像は手持ちの866系と816を並べて見ました。左からNECの2H66(=866)、RCAの866A、マルコーニの816、RCAの816です。NECとRCAでは、バルブと電極の形が若干異なります。また、866にはクラシックバルブで紹介されているようなナス型もあります。

BENDIXの6754(=WE412A)です。6AC7と6X4の中間ぐらいの規格の傍熱型整流管です。小型ですが、セラミック板で電極を固定した精巧なつくりの整流管です。