欧州の真空管(RE604属)






テレフンケンのRE604(ナス型)です。RE604は、ドイツを代表する戦前の民生用出力管ですが、大戦中の絨毯爆撃の影響もあって、状態の良いものはあまり現存していません。ほとんどが規格の半分以下のプレート電流で、俗に言うエミッション不良です。
大きく分類すると、RE604には6タイプあって、ナス型3種とST型が3種あります。まずナス型は、上の画像の旧ナス型(太いベースで丸みを持ったプレート、昇華型)と中期ナス型(並ベースで丸みを持ったプレート、昇華型)、新ナス型(並ベースで角張ったプレート、昇華型)です。
ST型は、新ナス型のままで外形のみがST管になったものと、通常のオキサイドフィラメントの3極管構造で、フィラメントが3本吊りのものと2本吊りのものがあります。さらに、ナス型もST型も、ロゴの位置がトップとサイドの二通りあって、これらの組み合わせになります。
RE604の規格は二通りあって、旧型および中期ナス管は、プレート電圧の最大値が200Vです。ただ、中期ナス管では、ステムから出ているプレート引き出し部にガラス管が付いている物は、250Vだと言う説もあります。新型ナス管以降は、良く知られている250Vになります。旧型であっても、プレートに250V印加してもすぐに壊れることはありませんが、生き残った貴重な真空管ですので、規格を守って大切に使ってやりたいものです。


3本を比較してみました。微妙な違いが判ると思います。新ナス型になって、テレフンケン特有の腰のくびれたグラマーなタイプになります。


これらとは別に、トップシールのナス管もあるようです。左は最初に知ったものの画像です。画像で見る限り「ピンが後期ナス管風のバナナタイプ」ということで、違和感があります。私には、別物に思えます。右のものは、捜し求めていた最初期RE604です。動作不問(不動)でもかなり高額で取引されていて、「まぼろしのRE604」だそうです。この2本はネットオークションに出品された物で、私の所有物では有りませんが、貴重な資料なのでUPしました。


クラングフィルムのKL71403です。これは、テレフンケンのRE604で新型ナス管です。3枚目に2本並べてみました。左側(KL71403)が若干背が低いですが、ロットのばらつきです。クラングフィルムは、真空管製造をしておらず他社からのOEMで対応していました。




フィラメント3本吊りST管タイプのRE604です。ベースにハーケンクロイツの刻印があります。大型ST管のゆったりとした空間に整然とプレートが配置されています。一見するとナス管のものとは別物のように思えますが、芯のある厳格な表現力のある音色には「なるほど」と思える共通点があります。後述のKL71403と全く同一のものです。




ST管のKL71403です。フィラメント3本吊りのタイプです。


UNIONのRE604/Eです。直熱5極管の3極管接続です。ほとんど知られていない真空管です。実測してみたところ、動作は自己バイアスで使う限りRE604に非常に似ています。固定バイアスでは、別物です。戦後?にRE604が必要になって、作ったものかもしれません。




RE604同等管として有名なバルボのLK460です。しかし、実際はバイアスがほんのわずかですが浅く、RE604と同じバイアス電圧では当然ながらプレート電流は少ないです。これは通常見かけるアルミクラッド鋼板プレートで酸化物フィラメントの後期版ではなく、バリウム昇華型フィラメントの初期型です。髪の毛のように細いフィラメントが複数回往復してあって、点灯してもその灯りはほとんど見えません。管壁はゲッターでほとんど見えませんが、プレートは大きくニッケルのようです。幸運なことに、2タイプが入手できました。RE604と並べると、バルボ特有のナス型がよくわかります。大きさは、少々小さいようですが、並べて比較しないと「小さいな」という感じはしません。音は、RE604系の厳格で太い音色です。


バルボのよく知られたタイプのLK460です。酸化物フィラメントです。後述のD404にそっくりです。


左からフランスマツダの601、フィリップスのD404でいづれもRE604同等管です。ドイツ製とは違った感じの真空管です。




フランス、フィリップスのE406です。フィリップス特有の形状のナス管で昇華型カソード(フィリップスではミニワットカソ−ドという)の希少管です。ガラス棒を組み合わせた軸にフィラメントが固定されています。RE604よりも増幅率は高く、後に後述のE406Nに改良されました。RE604と比べてみましたが、大きさはほとんど同じです。(左:RE604、右:E406)


RE604の弟分のRE304です。バリウム昇華型カソードです。RE604の半分のフィラメント電流で、出力も約半分です。プレートは横向きで、損失は5Wです。大きさは、RE604に比べると2/3の大きさで迫力はいまいちですが、大変効率の良い出力管です。このサンプルは、割りピンの初期型です。RE304は通常プレートのものは、作られなかったようです。


RE304のバルボ版のLK430です。一見、RE304と区別が付きません。バリウム昇華型カソードで、横向きのプレートが入っています。ハーケンクロイツのマークがあることから、1930年代後半に作られたもののようです。


ムラードのAC064です。RE304クラスの出力管で、大きな1枚プレートにフィラメント2本吊りの構造です。ムラード特有の管頂のマークが特徴です。


左からフランスRTのE406N、フランスマツダのDW802、タングスラムのOP10/500です。いづれもE406同等管(OP10/500はE406N同等管)です。E406を改良したものがE406Nです。E406Nは、プレート電圧が500Vまで掛けられるようにセラミックのスぺーサーで電極をしっかりと固定した、いかにも頼り甲斐のある真空管です。RE604より内部抵抗が高いですが、良く似た規格なのでここで紹介します。


フィリップスのE408です。プレートは当時スタンダードだった斜めで、フィリップス特有のガラス棒とセラミック碍子を用いた古典的なフィラメント支持方法をとっています。ゲッターの飛び方から、バリウム昇華型バリウムカソードと思われます。テレフンケンのRE614同等です。


フィリップスのE408N(旧型)です。フィリップス特有のガラス棒とセラミック碍子を用いた古典的なフィラメント支持方法をとっています。テレフンケンのRE614同等です。


フランスSBのE408Nです。前述のナス管から見ると別物のように見えます。E406Nより少し大き目の規格です。次はゼニスのW10Nです。いづれもプレート損失は10〜12Wで出力は1〜2W弱です。


デンマークのMP社のU4Hです。RE614同等ということですが、その造りは殺風景で面白みが沸きません。このサンプルは、1943年にドイツ軍に納入されたものです。


<規格>

名称 フィラメント
電圧(V)
フィラメント
電流(A)
プレート
電圧(V)
プレート
電流(mA)
グリッド
電圧(V)
gm
(mA/V)
内部抵抗
(Ω)
増幅度 負荷抵抗
(Ω)
出力(W) プレート
損失(W)
RE604(旧) 3.8〜4 0.65 200 43 -30 2.5 1400 3.4 3500 - 10
RE604(新) 4 0.65 250 40 -45 2.5 1400 3.4 3500 1.7 10
LK460 4 0.6 250 40 -40 2.7 1300 3.5 3500 1.7 10
RE304 4 0.3 250 20 -32 1.9 2600 5 5200 1.1 5
DW802 4 0.57 250 26 -25 4 2000 8 - 1.3 -
E406 4 1 250 48 -24 4 1500 6 2800 1.5 -
E406N 4 1 500 24 -68 3 2000 6 11500 5.2 12
E408N 4 1 400 30 -36 2.7 3000 8 - 5.2 12