英国の電力増幅管(3極管)
マルコーニのLS5です。たいへん古い時代の出力管で、ゲッターは有りません。フィラメントは逆V張りで純タングステンフィラメントです。PX4が現れるまで、大出力管(と言っても1W程度)として君臨していました。
STCの4101Dです。これは、ウエスタンの101D同等ですが、ベースの作りなどはこちらの方が丁寧に思えます。板状の電極をガラス棒で巧みに保持した職人技が冴える真空管です。ベースは、ウエスタンのような継ぎ目はなくシームレスで絞り込んでいます。
STCの初期1930年代の4300Aです。STCのロゴがない頃の物で、赤で「4300A」と記載しただけの素っ気無い表示です。「STC」とはどこにも書いていません。管の太さはWE300Bと同じですが、背は若干高いです。炭化処理したニッケルプレートで艶が有り、ゲッターはバリウム系で一箇所に飛ばして有ります。ステム上部はWE300Bのように成型していません。また、ベースにバヨネットピンは有りません。電極の保持方法は、プレートから横方向にマイカ付きのアームを出して管壁に接触させて固定しています。この方法は、最後まで引き継がれました。
最近になってやっと入手した4300Aの大型管です。1950年代の軍用管です。WE300Bを少し背を低くしたような形状で管の太さは変わりません。ニッケルプレートにジルコニウムを塗布した丁寧な造りの真空管です。フィラメントが直列接続になっている関係で、ステムは非常にすっきりとしています。
STCの4300A(1970年代)です。大きさは2A3クラスになります。WE300B同等ですが、カーボン処理したプレートにさらにジルコニウムを塗布した丁寧な作りになっています。
STCの4300Bです。4300Bという真空管は、1970年代に神戸に有ったサンセイエンタープライズという輸入会社がSTCに特注して作らせたものです。STCの真空管はWEの型番の頭に「4」がつくことから、4300Bと呼ぶようになりました。よって、日本独自の呼び名です。画像のものは、1975年製でバルブ形状を太くした通称「太管」です。形状をWE300Bに近づけていますが、少し背が低くグラマーな印象を受けます。電極の造りは最後期の4300Aと同じです。
STCの4043Cです。フィラメントの保持の仕方など4300Aに通じる点が多くあります。オリジナルの箱が面白い構造なのでついでに紹介します。箱内に木枠を設けて4方からばねで吊るして布製の袋に入っています。
STCの4033Aです。傍熱型3極管で斜めに電極が取り付けられています。なぜそうなったのか判りません。この真空管は後に、4033L→4033XとST管に形状を変えて、電極も通常の物になります。
その4033Lです。ずんぐりむっくりした独特のST管です。電極は、同社の4300Aによく似たジルコニウム塗布の波プレートです。サブ電極がプレートに内部接続された傍熱型の3極管です。ヒーターは、6.3Vではなくて6Vです。
Cossorの41MPです。補助グリッドを設けた傍熱型3極管で、1W程度の出力管です。このサンプルは、プレートに「C」のエンボスが入った初期のナス管です。
後期のST管になったサンプルです。初期のものと比べると大型(形状は2A3並)になっていて、これで1Wクラスと言うと納得できませんが、規格上はそうなっているので素人判断で使うのは球を短命に終わらせてしまいます。
改良管の41MXPです。
マツダのACPです。マツダ独特のナス型です。41MP同等の傍熱型3極管です。補助グリッドを設けていることが上部より確認できます。小出力のパワーアンプや強力なドライバーとして用いられました。
マツダのAC/P1です。Cossorの41MXPと同等です。このAC/P1は大型管と呼ばれるもので、PP3/250とほぼ同じ大きさです。プレートの一部を切断して開いています。なぜこのような構造になったかは定かではありませんが、AC/HL等の電圧増幅管のパーツを流用したものと思われます。
珍しいLISSENのP220です。小型の出力管で、プレート電圧150Vで170mWの出力が得られます。ニッケルプレートのきれいな真空管です。
かわいい出力管のCosserの220PAです。ラジオ等の出力管として良く使われました。
210DETです。ラジオ等の出力管として良く使われました。
B級増副管のDA41です。類似管に傍熱型のDA42があります。欧州管ですが、なぜか足は米国式のUXです。
たいへん古いトップシールナス形状のDA60(GEC製)です。炭化処理されたプレートを用いている関係で、灯が入ったものは大抵この画像のように管全体が黒ずんでいます。動作は奇跡的に良好ですが、もう1本の入手は絶望的です。
GECのDA60です。大型送信管ベースで、プレート損失60Wの直熱3極管です。DAシリーズの中では、唯一のタングステンフィラメントです。プレート損失60Wにしてはプレートが小さい板状ですが、支持棒を太くして放熱効果を狙っているようです。このサンプルは、英国海軍に納入されたNT18です。たぶん、レギュレーターかモジュレーションに使われていたものと思われます。
GECのDA100です。大型送信管ベースで、酸化膜フィラメントのプレート損失100Wの直熱3極管です。今では幻の真空管になってしまいました。A級シングルで30Wの出力が取れ、よく米国の845と比較されます。初期型はトップシールで大きさも30cm近くありました。その後、そのままの大きさでボトムシールになって、戦後このタイプになりました。この真空管は1967年製で、グリッドは金メッキされています。MJ誌で松並氏が発表されたNT36は、DA100のボトムシール大型管です。NT36というのは、英国の軍用番号であってそういう特別な真空管があるわけではありません。NT36=DA100=CV1219ということです。
オスラムのDA100の大型管です。先のDA100と異なり、フィラメントは4本吊りになっています。大きさは30cm近くあり、先に紹介したDA60の延長線上にあるような造りです。MJ誌で松並氏が発表されたNT36は、このタイプです。このサンプルは、ベースピンのバネが外れていますが、電気特性はきわめて良好です。
<規格>
名称 | フィラメント 電圧(V) |
フィラメント 電流(A) |
プレート 電圧(V) |
プレート 電流(mA) |
グリッド 電圧(V) |
gm (mA/V) |
内部抵抗 (Ω) |
増幅度 | 負荷抵抗 (Ω) |
出力(W) | プレート 損失(W) |
備考 |
4101D | 4.2 | 1 | 130 | 7.7 | -9 | - | 5800 | 6.2 | - | 0.065 | 2 | |
4300A | 5 | 1.2 | 350 | 60 | -74 | 700 | 3.85 | 4000 | 7 | 40 | ||
41MP | 4 | 1 | 200 | 24 | -7.5 | 7.5 | 2500 | 18.7 | 3000 | 1.25 | - | 傍熱 |
41MXP | 4 | 1 | 200 | 40 | -12.5 | 7.5 | 1500 | 11.2 | 2000 | 1.7 | - | 傍熱 |
220PA | 2 | 0.2 | 150 | 15 | -14 | 2.7 | 2400 | - | 4100 | 0.35 | - | |
P220 | 2 | 0.2 | 150 | 6 | -6 | 3 | 4700 | 14 | - | 0.17 | - | |
4033A | 6 | 1.4 | 400 | 50 | -20 | 9 | 1670 | 15 | 7000 | 4 | 25 | |
4043C | 7.5 | 1.2 | 600max | - | - | 2.3 | 3500 | 8 | - | - | 35 | |
DA60 | 6 | 4 | 500 | 120 | -135 | 3 | 835 | 2.5 | 3000 | 10.5 | 60 | |
DA100 | 6 | 2.7 | 1000 | 100 | -146 | 3.9 | 1400 | 5.5 | - | 30 | 100 |