欧州の真空管(AD1属)
AD1は、サイドコンタクト管を代表する3極出力管です。
テレフンケンのAD1とベースのハーケンクロイツの刻印のUPです。テレフンケンのAD1は、昇華型カソードを使った最大級の真空管です。画像のものは、ベースにハーケンクロイツの刻印がされています。AD1は、フィラメント4V0.95Aでプレート損失15Wです。一時期雑誌に掲載されていたフィラメント4V1.5Aのプレート損失30Wは、別の業務用管の規格です。この辺の話は、故浅野勇氏がMJ誌で解説されています。サイドコンタクト管のソケットは、ベースの部分がソケットに入り込むようになったソケットです。嵌まりやすいですが、抜けにくいソケットなので要注意です。
ラウイオプタのAD1/400です。ラウイオプタのAD1/400は、20年近く待ってやっと入手できた逸品で繊細で丁寧な作りになっています。フィラメントは12本が6本のフックで吊ってあり、グリッドは銅です。プレートには、カーボン系のものが塗布されています。よほど細工に自信が有ったのでしょう。ラウイオプタは、あの複合管3NFなどを作っていた会社です。他に比べるとプレートが大きいですが、規格は同じで耐圧も300Vです。なぜか、この球は1948〜49年製造のものばかりです。ステムの一部が欠けて小ガラス片が管内に落ちているものが多いです。
バルボのAD1には、ストレートタイプを含めていくつかのタイプがあります。このAD1は、よく知られたバルボを代表するタイプのAD1です。
これもバルボのAD1です。外形は先に紹介したものとよく似ていますが、電極はシーメンス/テカデの旧型Edにそっくりのフィン付きの物が入っています。グリッド放熱翼も4つあります。プレート周囲が銀色になっていて、オーバーロードによるものと思われがちですが、これはバルボ-フィリップス系特有の造りのようです。ちなみに実測したフィラメント電流は、4V1.1Aでした。
2タイプのAD1を比べてみました。外形はほとんど同じですが、電極形状の違いが良く判ると思います。
RWNのAD1です。テレフンケンによく似た形状ですが、電極はリブ付きの薄い1枚プレートです。グリッドに放熱フィンが設けられています。通常の酸化皮膜フィラメントです。
戦後に製造されたEBVです。プレートに放熱フィンが設けてあって、いかにも頑丈に作られています。業務用の真空管で市場には出なかったため、残存数の少ない希少な真空管です。この規格が先のフィラメント4V1.5Aのプレート損失30Wです。その他の規格は、AD1と同じです
タングスラムのAD1です。タングスラムのAD1は、よく知られた細身のタイプで壁面がカーボンされていて電極が見にくいですが、良く見ると細長い電極が入っています。タングスラムには、通常のタイプもあります。
フィリップスの4683(AD1/350)です。フィリップス特有のラッカー仕上げで同じ構造になっています。4683は、AD1の高耐圧仕様でプレート電圧は350Vまで許容されています。サブグリッドが内部で接続された3極管です。欧州の3極管には、このような作りが良く見られます。このようにサブグリッドを設けてプレートに接続することで、内部容量下げて高周波特性を改善しています。れっきとした3極管です。
フランスDARIO(フィリップス系)のAD1です。
クラングフィルムのKL72406の旧型管です。テレフンケンのAD1のB4ベース版で、特性はAD1と同じです。
こちらは新型管のクラングフィルムのKL72406です。バルボ直管タイプのAD1のB4ベース版になります。シーメンスEdの原型と言われていますが、シーメンス製のKL72406(=AD1)があり、新型Edとそっくりな電極の直管タイプで管径がこれよりも細いです。
KT231は偶然入手できた逸品でプレートに放熱フィンが設けてあって、いかにも頑丈に作られています。この真空管は、業務用管EBVのB4ベース版です。この規格が先のフィラメント4V1.5Aのプレート損失30Wです。その他の規格は、AD1と同じです。
テスラのAD1nです。唯一の傍熱型AD1です。太いカソードが、ヒーターの中点につながっていて、自己バイアスならそのまま差し替えて使えます。外形は一回り小さく、ヒーターは4V2Aです。
タングスラムのP15/250です。P15/250は、同社のAD1のベースをB4にしただけで電極構造も規格もAD1と同じです。
旧ソビエトのYO186です。YO186は、AD1同等とは言えませんが、規格が似ているのでここで紹介します。1枚プレートの現行のロシア製6B4Gに似ているような気もしますが、1939年製です。欧州のものと比べるとどうしても見劣りしてしまいます。
テレフンケンのAD101です。珍しいスリガラスの真空管です。
<規格>
名称 | フィラメント 電圧(V) |
フィラメント 電流(A) |
プレート 電圧(V) |
プレート 電流(mA) |
グリッド 電圧(V) |
gm (mA/V) |
内部抵抗 (Ω) |
増幅度 | 負荷抵抗 (Ω) |
出力(W) | プレート 損失(W) |
備考 |
AD1 | 4 | 0.95 | 250 | 60 | -45 | 6 | 670 | 4 | 2300 | 4.2 | 15 | |
AD1n | 4 | 2 | 250 | 60 | 750Ω | − | − | − | 2300 | 4.2 | 15 | 傍熱 |
4683 | 4 | 0.95 | 350 | 35 | -75 | 5 | 750 | 5 | 3000 | 6 | 15 | |
KT231 | 4 | 1.5 | 250 | 60 | -45 | 6 | 670 | 4 | 2300 | 4.2 | 30 | |
YO186 | 4 | 1 | 250 | 57 | -37.5 | 3.2 | 1200 | 4 | - | - | 15 | |
AD101 | 4 | 1.6 | 300 | 38 | -26 | 4.4 | 1450 | 6.3 | 5200 | 1.8 | 12 | 傍熱 |