7T40ブースターアンプ

プレート損失1kWの直熱3極送信管、7T40のブースターアンプです。いろいろと回路を考えましたが、結局大きさ?ゆえにブースタータイプとなりました。フィラメントは、トリエーテッドタングステンです。



<規格>

7T40の規格については東芝送信管ハンドブックに記載されています。

基本定格
 ・フィラメント:電圧〜7.5V、電流〜16A、トリエーテッドタングステン多数並列
 ・増幅率:35
 ・使用位置:垂直
 ・口金:上部および側部〜A14S(東芝のRD-8、または低損失時には811A用のものが使える)、下部〜HV2002(いわゆる211のソケット)
 ・冷却:500Wまで自然空冷、それ以上は強制空冷
 ・グリッドリーク抵抗値:指定なし

B級Push-Pull動作例(2管の値)
 ・プレート電圧:6000V
 ・グリッド電圧:-160V
 ・プレート電流:100〜830mA
 ・グリッド電流:40mAmax
 ・負荷抵抗:14.8kΩ(P-P間)
 ・励振電力:12W
 ・出力:3100W

と、ここまでが、東芝の詳細な公式規格表からの抜粋です。これでは概要はわかりますが、オーディオアンプとしては大きすぎてもてあましてしまいます。そこで、特性曲線からいくつかの動作例を計算してみました。

動作例
 ・プレート電圧:1000V
 ・グリッド電圧:-12.5V
 ・プレート電流:100mA
 ・負荷抵抗:6.4kΩ
 ・出力:29W

本機の動作(その1:A2級シングル)
 ・プレート電圧:1100V
 ・グリッド電圧:カソード抵抗に150Ω
 ・プレート電流:70mA
 ・負荷抵抗:7kΩ(FX50-7Sを使用)
 ・出力:約25W


本機の動作(その2:A2級シングル)
 ・プレート電圧:1200V
 ・グリッド電圧:カソード抵抗に150Ω
 ・プレート電流:80mA
 ・負荷抵抗:7kΩ(FX50-7Sを使用)
 ・出力:約30W



<本機の概要>

回路構成は、H-5S(5kΩ:8Ω)の2次から信号を受けて7T40に入ってFX50-7Sにつながる簡単な回路です。この方式は、ごく普通のブースターアンプの回路です。7T40の増幅率が35と程よく、感度は良好です。出力管とトランスを延々と連ねた佐久間式?ではありません。念のため記載しておきます。これでも48cm×29cmのシャッシが狭いくらいです。本機の特徴は、高圧の1次側にスライダックを設けて電圧調節できるようにしたところです。動作電圧を変えることで、ある程度の調節ができます。
5B38のアンプと同様に、フィラメントトランス(特注)を別にして、フィラメント点火から120秒後に高圧がスタンバイするようにタイムリレーをつけて高圧回路とは別回路にしています。ノーゲッタの大型送信管では、フィラメントを先に灯すのは当然の手順です。最近では、オムロンの任意時間設定タイマーがオークションで安価に出品されているので、入手は簡単です。ちなみに正規に購入すると¥10000近くします。

本機では扱う電流も電圧も、さまざまなのでケーブルの使い分けが必要です。つまり、音声部分にはモガミの0.5SQOFC、一般配線はサーマックスのテフロンケーブル(AWG20)、7T40のフィラメントは電流が16A流れるので2SQのテフロンケーブル、1次側AC100Vには0.75SQテフロンケーブルです。高圧の引き回しには、手持ちのDEARBORN WIRE & CABLE VW-1 AWM STYLE 3239 E-31467(150℃ 40kV)というシリコンゴム皮膜の耐圧40kVの銀メッキ銅線を使いました。現在、愛用のRE604アンプにつないで慣らし運転中です。245のアンプでもやってみましたが、エネルギーが高域よりになり今ひとつだったので、RE604にしました。今までRE604で押し切れなかったパワフルな曲が、エネルギッシュに再現されています。


<おまけ>
7T40入手時の注意点
この真空管は、ノーゲッタ、並列多数フィラメントの真空管です。よって、@真空度が保たれているか?Aフィラメントは全エレメントが生きているか?が、最低のチェック項目となります。テスターチャックでは、判りません。実際に定格でフィラメントを点灯してエレメントが輝度差なく灯ることを確認する必要があります。放送局のAM送信機の終段で使われていたようで、放出品をよく見かけます。この場合、ある程度の管壁の汚れ(部分的に茶色になる)はやむを得ません。5T30の場合も同様です。


<7T40を5T30に変えてみる>



本機は電圧可変型のブースターアンプであることから、出力管を7T40からプレート損失450Wの5T30に変えてみました。5T30は米国名称を450TLと言います。外形は7T40とはほぼ同じ大きさですが、@プレートのフィンがない、Aグリッドの引き出しが短い、の2点が異なります。フィラメントは、電流値が少し小さく7.5V14Aでトリエーテッドタングステンの並列多数張りで、増幅率は18です。詳細は、東芝送信管ハンドブックに記載されています。以下に本機の動作条件を示します。

本機の動作(A2級シングル)
 ・プレート電圧:950V
 ・グリッド電圧:カソード抵抗に150Ω
 ・プレート電流:80mA
 ・負荷抵抗:7kΩ(FX50-7Sを使用)
 ・出力:約25W


特に問題なく動作し、その音色は7T40よりも若干ですが低域にエネルギーが膨らんだ感じがしました。どちらのほうが良いかと言うのは愚問です。そのときの気分で差し替えて楽しんでいます。