50と10属
1930年代に米国で最大出力を誇った50とその原型になった10属です。50のナス管は大型で迫力がありますが、グリッドが高温になることもあって、グリッドリーク抵抗は10kΩ以下と指定されています。10は50の原型となった真空管で開発は1920年代までさかのぼります。純タングステンフィラメントのUV-202からスタートした送信管で、大きさは50より一回り小さいものが標準ですが、そうでないものが沢山あります。
デフォレストの450(刻印)です。世界で一番最初に3極管を作ったメーカーとして有名です。この450も大変丁寧に作られていますが、全体的に黒いです。これは、どの450でも同じようなので、製造の関係から来るものだと思います。50属の中では、ほとんど見かけない希少な真空管です。
日本はマツダのUX-250です。前述の450より若干プレートが大きいですが、そのほかの造りはほとんど同じです。戦火の関係もあって、良品はほとんど残っていません。
カニンガムの刻印、CX-350です。最近の製作記事では、グリッドリーク抵抗10kΩ以下を無視した回路を見掛けますが、貴重な真空管が壊れてしまいますので止めて頂きたいものです。後期には大型のST管になりました。
その大型ST管(ST19)の50です。このサンプルは、RCAカニンガムの刻印です。ナス管から改良されただけあって、プレートの支持方法もマイカを使ったがっしりしたものになっています。ただし、グリッドリーク抵抗の上限は10kΩのままです。シルバニアでは、2A3と同じ大きさの通称「ミニ50」があります。
ARCTURUSの50(刻印)です。ブルーでは有りませんが、特有のグラマーなボディーが魅力的な真空管です。ゲッターの位置が少々変わっていて、プレートから引き出して管壁に向けて撃っています。
RAYTHONの4ピラーの50です。大変丁寧で堅牢に作られていたす。ガラスも厚めで他社の50よりも重いです。
シルバニアの通称「ミニ50」です。プレートの大きさは、大型管と同じです。特徴は、グリッドに放熱翼が設けられているところです。軍用を前提にした場合、小型でグリッド励振ができるように改良されたものと思います。このサンプルは、比較的古い刻印ものです。
欧州タングスラムのPX2500(=50)です。細身のナス管ですが、プレートは大きく、フィラメントは3本吊りです。
欧州フィリップスのF704(=50)です。グリッドリークの10kΩについては判りませんが、10kΩ以下と見ておいた方が無難です。ベースは、欧州型のB4です。
1920年代の10の原型、トップシールタイプのRCA/GEのUV-202です。当時の分類は、5Wタイプの送信管でした。また、当時は今様のゲッターではなく、リン系のゲッター代替品が使われていました。そのため、管壁前面が金色に着色しています。フィラメントもトリエーテッドタングステンではなく、純タングステンが用いられています。管壁には、前面に旧RCAのロゴが、裏面にGEのロゴがエッチングされています。ベースは、当然ながらUVタイプです。
WIZARDのX-210(=10、刻印)です。10同等管は非常にたくさんあり、これもその1つですが、250と同じ大きさの珍しいタイプです。フィラメントも通常の10のトリエーテッドタングステンではなく、酸化皮膜です。
ARCTURUSの210(刻印)です。ブルーでは有りません。フィラメントは、酸化皮膜です。
RCAの801です。10の改良でプレートに600Vまで掛けられるようになりました。フィラメントは、トリエーテッドタングステンです。電極の保持にセラミックが使われている点と、プレートへの結線がステムの脇から引き出しているのが特徴です。分類上は小型送信管になります。
有名な川西真空管のC-202Aです。帝国海軍で良く使われたようで「11号発信電球」とも呼ばれていました。プレートに川西マークの刻印があります。10同等管で「魅惑の真空管アンプ・続編」で紹介されました。フィラメントはトリエーテッドタングステンで明るく灯るのが魅力です。3枚目は米国の210(=10)との比較ですが、電極が半分の大きさです。
あまり知られていないマツダのUX-202Aです。これはサイモトロンの刻印があるUX-202Aの初期のものです。後にST管になりました。3本を並べてみました。大きさは異なりますが、規格はどれもおなじで、米国の10相当管です。
ST管になったマツダのUX-202Aです。業務用、主に軍用に使われていました。アメリカの10同等のタングステンフィラメントが明るく灯る真空管です。
フランス、ネオトロンのA710(=10)です。VISSEAUX社からのOEMのようです。酸化皮膜フィラメントです。ベースはUXではなく、欧州のB4です。
欧州タングスラムのPX2100(=10)です。これも酸化皮膜フィラメントです。
50や10の整流管といえば、この片波整流管の81になります。50のナス管より高さは同じですが少し細身です。このサンプルは、カニンガムのCX381(=81、刻印)です。
ドイツ、バルボの片波整流管G715です。アメリカの81相当ですが、規格は1周り上です。外観は、同社のF704にそっくりです。
<規格>
名称 | フィラメント 電圧(V) |
フィラメント 電流(A) |
プレート 電圧(V) |
プレート 電流(mA) |
グリッド 電圧(V) |
gm (mA/V) |
内部抵抗 (Ω) |
増幅度 | 負荷抵抗 (Ω) |
出力(W) | プレート 損失(W) |
50 | 7.5 | 1.25 | 300 | 35 | -54 | 1.9 | 2000 | 3.8 | 4600 | 1.6 | |
350 | 45 | -63 | 2 | 1900 | 3.8 | 4100 | 2.4 | ||||
400 | 55 | -70 | 2.1 | 1800 | 3.8 | 3670 | 3.4 | ||||
450 | 55 | -84 | 2.1 | 1800 | 3.8 | 4350 | 4.6 | ||||
UV202 | 7.5 | 2.35 | 350 | 45 | -11.5 | 1.7 | 8 | ||||
10 | 7.5 | 1.25 | 250 | 10 | -23.5 | 1.33 | 6000 | 8 | 13000 | 0.4 | |
350 | 16 | -32 | 1.55 | 5150 | 8 | 11000 | 0.9 | ||||
425 | 18 | -40 | 1.6 | 5000 | 8 | 10200 | 1.6 |