「明日からいよいよ、最終決戦に突入する。最終決戦、文字通りこれが最期の闘いだ。各自悔いの残らぬ闘いをする為にゆっくり休養を取ってくれ。但し、体力温存のため SEXは厳禁とする」 途端、一斉にブーイングの砲弾がブライトの頭上に降り注ぐ。しかし、彼は難なくそれを交わすとさっさとブリッジから全員を追い出した。 「決戦前夜だってのに、何でSEX禁止なんだよっ。ここまで何とか生き残って来れたけど、明日はもしかしたら死んじまうかも知れないんだぜ?この世に未練残さない為に、SEXくらいさせてくれたっていいじゃねぇか」 ジュドーが閉ざされたブリッジの壁を蹴りながらがなり散らす。そんな行動を見て、忍がぽそりと呟く。 「お相手の多い奴は、全員回るのが大変だからって配慮じゃないのか?」 「はっ、相手のいないてめえなんかに言われたかねぇや」 「お、俺だって相手くらいいるっ!ば、馬鹿にすんな!」 「馬鹿だと?てめえに馬鹿呼ばわりされたかねぇ」 体力温存する様にと言われているのに、とうとう取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。 「………馬鹿ばっかり」 「あら、そういう割にルリちゃんとっても楽しそうね」 「……馬鹿ばかりだけど、ここまで来れたのは彼等の活躍のお陰だから」 思い出した様に、またクスッと笑う。 「珍しいわね、ルリちゃんが他人を褒めるなんて。そうだ、食堂に行ってお茶にしない?アキト君が、美味しいパンプキンパイ焼くって言ってたからさ。早くしないと、ユリカに全部食べられちゃうわ」 「有り得る有り得る。早く行こうよ。ねえジュンちゃん」 「そ〜れ〜じゃあ〜私が〜別れの〜歌を〜歌ってあ〜げ〜る〜」 「んもうっ、イズミの歌って言ったらお葬式になっちゃうわよっ」 かくしてナデシコクルーは自艦に戻ると、食堂で決戦パーティーをおっぱじめるのであった。 それぞれがそれぞれの思いを抱きながら、眠りに就く。或る者は自棄酒を喰らい、或る者は禁止されている行為を行い、また或る者は誰に宛てる訳でもない手紙をしたためたり………と。 「………ふう。」 工具を工具箱に放り投げ、額の汗を汚れていない手の甲で拭う。腰を軽く伸ばした後 床に座り込み、見上げる機体は、白い騎士ヴァイスリッター。 「………できれば、出撃させたくない」 だが、この機体のパイロットはそんな言葉を素直に聞いてくれるほど可愛い性格ではない。止めても強引に飛び出すだろう。どんな手段を強いても、きっと戦場に駆け出すに違いない。 「………守ってくれ、あいつを」 それが精一杯の願い。機体の足元に軽く口吻けて、すぐさま立ち上がる。 「──────────ああ、やっぱりキョウスケか」 声をかけてきたのは、整備のアストナージだった。 「どうしたんです?寝られないんですか?」 それは、こっちの台詞だと言いたげな表情をおもむろに浮かべた。 「綺麗な機体だよな、ヴァイスリッターは。お前さんのアルトアイゼン・リーゼとは対照的だ」 「機体のフォルムで闘いの勝敗は決まらない」 そっけなく言いながら、工具を片付ける。 「相変わらず、愛想のない男だなお前さんは」 「悪かったな」 愛想で戦闘ができるのなら苦労するだろう。瀕死状態になっても、愛想など振れないのだから。 「整備も終わったんでぼちぼち寝ますわ、俺が起こしてしまったんなら悪かった」 汚れた軍手を取り、丸めて工具箱の中に押し込むとそのまま背を向けて歩き出した。 「死ぬなよ」 突然予期せぬ言葉が紡がれる。思わず歩みが止まってしまう。 「俺は、そんなお前さんが大層気にいっているんだ。だから、死ぬなよ。生きてこのラー・カイラムに帰って来い。必ず帰って来い」 その言葉に応えるように、背を向けたままの状態で左手を軽く挙げた。 「…………死ぬなよ、か」 他人からそんな言葉を掛けられたのは久し振りだと思いながら 部屋の中に入った刹那、 「!?…………」 暗闇の部屋の中にある筈のない人の気配。手探りで壁にある室内スイッチに手を掛けてONにしたと同時に、気配に向って躍りかかった。 「誰だっ」 「うぐっ……」 躯の下に居たのは、窒息寸前のエクセレンだった。 「あ…」 慌てて躯を退ける。首を押さえ、咳き込み むせりながら躯を起こす。 「ひ…っどいの。殺す気、だった…でしょう」 咳き込んだせいで涙が出ている。それを拭いながら抗議する。 「明りも灯けずに人の部屋に潜んでいるからだろう」 しかしさすがに気が引けるので、隣に座り背中をそっと擦ってやる。 「最終決戦の前夜だから、あなたの傍に少しでも居たいから来たのに」 「だからとはいえ、他人の部屋に電気もつけずに棲むか?」 「寝込みを襲うつもりできたら居なかったから……」 「SEXは、厳禁な筈だが?」 嫌なものでも見るかの様な視線を向けてくる。 「ああ、もうっ。本当に愛想がないんだから!このままじゃ私、浮気しちゃうからね!」 「浮気か……。そうだな、浮気をするのなら、軍人はやめてくれ。できれば、一般の………戦争になど関わらない様な人間にしてくれると助かる。そうしたら、お前が戦場で死ぬ危険性は少なくなる」 「キョウスケ?本気で言ってるの?」 「正直、それを考えたら手の震えが止まらない。初めて、アルトアイゼンで闘った時ですら震えなかったのにだ。この手が震えてしまう。珍しいだろう、この俺が怯えている。ここまで闘い抜いた俺が、それを考えると怯えているんだ」 己の両手をじっと見つめ、絞り出す様にぽつりと呟かれた。 「…………お前を失いたくない」 力の限り抱き締める。 「……温もりを確かめ合いましょ」 エクセレンから受ける口唇が、触れるか触れないかの口吻け。 「離れていても…傍に感じられるように……」 その言葉に導かれる様に、口唇同士が触れ合う。触れ合うだけの口吻けから、やがて角度を変えた深い口吻けへと変わって行く。 「んっ……」 息をするのも困難な程 深い口吻けに句曇もった声を漏らす。しかし、タガの外れたキョウスケには旨く伝わらない。やがて、力なく躯がシーツの海に沈む。 「キョウスケ……」 甘く激しい口吻けに酔いしれていたエクセレンだったが、ゆるゆると上体を起こし、しなやかな指が背中に回りサスペンダーの止め金から順番に外して、床に落とす。そして、均等の取れた筋肉質の躯からシャツを取り除く。 「……じっとしていろ」 「キャッ…」 呟かれるや否や、再びシーツの海に躯を沈められたのは言うまでもない。 のしかかった状態で口吻けながら、ぎこちない手がゆっくりとベストのボタンを上から外して行く。 中から躯のラインにぴったりとフィットしたハイネックシャツが現れる。深く呼吸をする度に、形の良い胸が上下に揺れる。 そのハイネックシャツをたくし上げると、透き通るほどの白い肌が非常灯の小さなブラックライトに照らされて青白い光を放つ。その中に手を差し入れ、半ば毟り取る程強引に下着を外して床に落とす。 スカートの深くあいたスリットに手を差し入れ白い太腿を撫でながら、ガーターの金具をそっと外し、口唇で内腿をなぞりながら、ストッキングを足元まで下げて脱がせる。 耳朶を軽く甘噛みしながら、首筋に軽く口吻ける。 「あっん……」 思わず漏れる濡れた声。その声を聞きながら鎖骨に口唇を這わせ、柔らかな乳房を下からやんわりと包み込んで軽く揉む。 「んっ……」 一瞬、大きく躯をビクつかせる。安心を促すかの様に口吻けながら、淡い桃色の小粒な突起を親指と人差し指でやんわりとした愛撫を繰り返し、そっと口唇を寄せる。捲り上げたスカートのチャックを外し、鬱陶しげに更に上へと捲り上げる。胸への愛撫を施しながら、臍部を指先で愛撫し 下着の中へと差し入れる。 「あっ……」 丘に掌を預け、五指が巧みに茂みの中を分け入り、敏感な部分をまさぐりだす。 「あっ……ああっ……キョ………ッ」 思わずその腕を手で掴んで喘ぐ。声にならない声を上げる口だけが、パクパクと動く。 指がその敏感な触れる度に躯をビクつかせる。敏感な部分に触れている指を大きく滑らせている内に、その指先が何かに導かれる様にググッ…と少しだけ埋まった刹那、 「あ、あっ!」 掴んでいた腕に思い切り爪を立てていた。 その場から手を抜くと そのまま貪る様にして下着を取り去り、掌を置いていた丘を掠め渡り、五指で分け広げた茂みに顔を埋める。そして、指で触れていた敏感な部分をおもむろに口に含んだ。 「キャアアッ……」 予期していなかった余りの衝撃に悲鳴をあげる。室内の防音システムを作動させていなければ、筒抜け状態な程の声だった。 それでも構わずに口に含んだそれを吸い上げて、舌先を使って小刻みに舐め上げる。 「や、」 「や?…そんな風には感じない」 言いながら、先程指先が埋まってしまった部分に舌先をなぞらせる。 「駄目、だめっ…そこは……っ!」 舌先だけの軽い抽送から、その中にぬるりと根元まで舌を差し入れて内部をほじる様に蠢かせた。 「あっあっあっあああっ………!!」 一瞬ビクリと大きく体を反らせると、そのまま動かなくなってしまった。 舌を抜き、濡れた顎を掌で拭いながら、ベルトを緩めて抜き取り、ジッパーを下ろす。焦る気持ちを抑えながら、己の欲望の象徴をゆっくりと外へと引き摺り出す。 「……私に、感じてくれたんだ。嬉しい……」 言いながらゆっくりと躯を起こすと両手でそれを包み込み、震える舌先をそっと這わせる。 「っ……」 口唇を開き、その先端を含む。舌を使って丹念に愛撫する。 「ふっ………」 それ以上の愛撫を拒むかの様に、エクセレンの両肩を掴んで引き上げる。そして、邪魔なハイネックシャツを取り除いてから口吻ける。 ゆっくりと躯を横たわらせると、無意識に躯を隠そうと腕が動く。 「何で、隠す。綺麗だ……」 「キョウスケ…」 そう言われると余計隠したくなるのが女の心情であるのだが。 口唇から始まり、耳朶へと移動した口唇が首筋を掠めながら鎖骨から乳房へ下り、臍部を這い、内腿を伝いながら、脚先に到達する。所々に紅い花びらの様に痕を残しながら。 脚先から膝に口唇を戻しながら、躯を割り、膝を立たせ 臍部に到達する。 「………Plaese…Me……」 言葉ではそういう物の、微かに震えているのが判る。安心させる様に口吻けてから、上体を起こす。 茂みに軽く触れ、濡れている事を確かめると片手で己の先端のみを外に出す様に握り締め、もう片手の五指で茂みを押し広げてその一点に先端をそっとあてがうと、深呼吸をする。吸い込んだ息を吐きだしながらその場所にゆっくりと挿し進めて行く。 「あぐっ……」 ゆっくりとした動作が返って苦痛を与えているのかもしれない。それでも、慣れていない者に無体をしく気にはならない。速度を変えずに支えていた指を離し、ゆっくりと挿し進める。 膝を持ち上げて、繋がっている部分を密着させる。息を完全に吐き切った頃、己自身は根元まで完全に埋まっていた。互いの筋肉の震えが伝わる。繋がっている場所は小さくとも血液の流れすら感じ取れる。 「……動くぞ……」 ゆっくりとした大きな動作の抽送が始まる。その動作は、エクセレンがその行為に慣れた頃には小さい小刻みな抽送も加えられた激しい律動に変わっていた。 「あっ……ああっ………、キョ……スケ」 快楽のままに体位を変え、深く激しく求めあった。 動く度に 吹き上がる汗が飛び散る。互いの存在を確かめ合う様にただ互いを貪り合う。 「あ………も、だめ……っ!おねが、…いっ」 その言葉から暫く後、深く激しい律動が不意に止んだ。 ぬるり…、抜き取ったものをそのままスラックスの中にしまいこむ。 肩で息をしながら、そのままぐったりと眠ってしまっているエクセレンの額に汗で張り付いた髪を指先で弾く様に払ってやりながら、躯が冷えぬ様に毛布を掛けてやる。 気が付くと己の欲望の果てが内容量を越えたためそこから溢れ出し、零れて流れ落ちてシーツまでもを汚していた。シーツは洗ってしまえばどうってこと無いのだが、己の掃き出した欲望を受け止めた方は放って置くと悲惨な結果になるので、濡れたタオルで綺麗に拭ってやる。 「………愛してるよ」 とろとろとまどろんだ後、部屋を抜け出して個室のシャワー室に飛び込んだ。使用中のランプがつくのを確認して鍵を閉める。中に入ると、どうやら先客があったらしく、シャワー室の床が濡れていた。 「一緒にはいろ?」 髪止めを取りながら告げられる言葉に一瞬嫌な表情を浮かべるが、断る言葉が見つからず 結局狭い空間に二人で入る。コックを捻り、温めのシャワーを勢い良く躯に浴びる。水圧と冷たさがほてった躯に心地好い。狭い空間の中で、器用に互いの躯を、髪を洗い合う。 「うーん、ちょっとシワシワだけど………。ま、いっかぁ」 何もその服しか無いわけでは無いだろうに、エクセレンは昨日脱ぎ散らした服を着る。 そういう自分も、シャツ以外は昨日着ていた服だったりするのだが。 「おはようございま〜す」 何事もなかったかの様に、食事を取りパイロットルームに足を運ぶ。 「エクセレンさん、何か良い事あったんですかー?」 「あははっ、ある訳ないでしょ。体力温存するのに良く寝たから気分がいいんじゃないかしら?」 「服、皺だらけじゃないですか。まさか、そのまま寝ちゃったんですか?」 「アイロンかけるの忘れただけよ。それより、アイナのここ…キスマーク着いてるわよ」 途端、慌てた様に首までチャックを上げてしまう。 「ブ、ブライト艦長には内緒にして下さいっ」 「言わないわよ。だって、シロー君と熱烈な体力温存したんでしょ。一回や二回したからって体力無くならないわよ、若いんだから」 何と言う話をしているのやら、ブリッジに聞こえないから良い様なものの女は強いと思う瞬間である。 突如として、けたたましいサイレンが艦内に流れる。 『未確認識別コード、MAP上に出現!!』 『直ちに、詳細を確認されたし!!』 『未確認識別コード、正体確認!!敵機です!数40!』 『撃ってきます!!』 その瞬間、艦が大きく揺れる。 『被害状況を知らせろ!!』 『ナデシコ、反撃開始します!!』 「かあっ!とうとうやってきやがったか!!ああ、腕がなるぜっ!」 『搭乗パイロットは、速やかに各々のモビルスーツ、及びモビルアーマーに搭乗し戦闘準備下さい』 「敵機確認、各員戦闘配置に着け!アルトアイゼン・リーゼ 第一カタパルトへ!!」 アルトアイゼン・リーゼが起動し、ゆっくりと第一カタパルトに向う。 「エクセレン」 不意にエクセレンの個人回線が開かれる。 「?どうしたの?」 「この闘いで、生きて戻れたら」 先ほどの攻撃で微妙に電波傷害を起こしているのだろうか。それとも、近くにコアエネルギーの微粒子が飛んでいる影響だろうか、回線が混線し始める。 「戻れたら…?」 暫くの沈黙の後、絞りだされる様に言葉が紡がれた。 「ずっと俺の傍にいてくれ」 恋人の関係になってもうどれくらい経っただろう。初めて告げられる飛び切りの口説き文句。 「喜んで、ダーリン」 「…………その呼び方はよせ」 少し照れたような返事。 「キョウスケ・ナンブ アルトアイゼン・リーゼ出撃る」 先手必勝を武器とするアルトアイゼン・リーゼが第二カタパルトから飛び出したダンクーガの後に続いて宇宙へと駆け出す。 「ヴァイスリッター 第三カタパルトにそろそろ準備してくれ!」 出撃の指示が降りる。了解の合図を送りながら、ゆっくりと第三カタパルトに向う。出撃は、ビギナ・ギナの後、しんがりに程近い。 「あ…」 服から微かに薫る、キョウスケの気配。胸がキュンとなる。何気にミラーに映る自分の首筋に視線を止める。 「………キョウスケ」 襟から見え隠れする首筋に残る 恋人の残した情事の後を指でそっと擦りながら、カタパルトに乗る。 「エクセレン・ブロウニング ヴァイスリッター出撃ます!」 生き残るために、宇宙へ駆け出した。 |