「エクセレン!!俺が……俺が判らないのか!!!」 精一杯の心の叫び。 「……キョウ……スケ?」 「そうだ!!俺だ!!頼む……思い出してくれっ!」 心の底からの叫び。溢れ、零れ落ちた涙がコックピットの中に舞う。 「……キョウスケ……」 ──────────赤い玉を打って────────── 僅かに聞こえたエクセレンの声。 「──────────判った」 アルトアイゼンの右手、ステイクが動く。 「なっ!?キョウスケ!!」 「ちょっ…!馬鹿な真似は止めなよキョウスケ!!」 皆の制止の声を無視し、ステイクはヴァイスリッターに食い込み、そして…………。 「俺の元に帰って来い!!エクセレン!!!」 「………これなら、大丈夫だろう」 メインモニターのスイッチを切り、端末ケーブルを引き抜く。 「………まだ、おまえは戦える」 コックピットから飛び降りる。 「………守ってくれ、あいつを」 それが精一杯の願い。 「──────────エクセレンが、眼を覚ましたってよ」 声をかけてきたのは、シロー。しかし、どうしたのだろう傍らに何時も居るはずのアイナの姿がなかった。 「──────────そうか。わざわざ、ありがとう」 言葉とは裏腹に端末ケーブルをコンパクトにまとめ、専用の袋の中にしまう。 「行ってやらないのか?」 無言のまま端末のキーボードを叩き始めるキョウスケに向かって言う。 「結果はどうであれ、あいつを撃ったのは俺です。だから、あいつに逢う事は今は出来ません」 「自分を責めているのか?」 シローの言葉に、キーボードを打つ指が止まり、下を向いていた顔はそのまま天を仰いだ。 「──────────責めている?ああ、多分そうかもしれない。俺は、自分自身を責めているのかも知れない」 「だが、今の彼女はお前を待っているぞ」 「──────────こんな、俺を。ですか?」 業を煮やしたのか、無遠慮にキョウスケの胸倉を掴みあげた。反動で端末はふわふわと空を舞う。 「お前が行ってやらなくてどうする?彼女が今必要としているのは、お前だけなんだぞ!!」 今にも殴り飛ばさん勢いで言う。 「エクセレンが好きなんだろう?だったら、素直に抱きしめてやれば良いだろう?それだけで充分じゃないのか?」 シローは興奮している様に両腕が震えていた。それが、彼の優しさ。痛いほど伝わってくる思い。 「──────────離してくれ。頼むから」 すんなりと離された襟元を軽く元に戻し、空を回転している端末を拾いすぐさまバッグの中にしまいこんだ。 「賭けをしませんか?少尉」 「賭け?何のだ?」 「俺が、エクセレンに本当の気持ちを言えるか、言えないかの賭けです」 突然問われて、思い切り複雑な表情を浮かべながら、それでもその賭けに乗るとシローは呟いた。 「分の悪い賭けは、嫌いじゃないですからね」 医務室の前には、沙羅やドモン、千鶴……艦内のクルーの殆どが揃っていた。 重々しい空気の中、キョウスケは医務室のインターホンに声を掛けた。 「……どうぞ」 自動扉が開き、中に入る事を許された。 「精密検査の結果、異常は認められなかったわ。だから、大丈夫よ。キョウスケ」 ナース姿のレインがカルテを見ながら、穏やかに告げる。 「ただ、ここで少し安静にしていた方がいいわ。無理をするのは良くないから」 言いながら、アイナが柔らかく微笑んだ。 「……んっ……」 「あっ、気が付いたみたいよ。アイナ、私達ちょっと席を外しましょっか」 「はい。恋人同士の時間は、大切にしないといけないとシローが何時も言っていましたものね。ましてや、キョウスケさんとエクセレンさんはやっと再会できたばかりですものね」 「あの…、別に、あの……」 「キョウスケったら何照れてんのっ。これから待ちに待った感動の再会のシーンでしょ!だから、お邪魔虫は退散するのよ」 取り付く間も無く二人は出て行ってしまった。序に、外に居たクルーを全員追っ払って。 「……キョウスケ……?」 「どうした?」 ベッドの傍にある椅子に腰を下ろしながら問いかける。 「………ここは………?」 「ラー・カイラムの医務室のベッドの上だ」 天井からぐるりと周囲を見回した。 「……夢じゃないわよねぇ?」 「何がだ?」 「だって………キョウスケが、こんなに傍にいる……」 ゆるゆると伸ばしてきたエクセレンの指が、頬に触れる。 「ああ、夢じゃない。傍にいる」 感触を確かめる様にエクセレンは指を動かし続けた。 その手を取って、手の甲に軽く口付ける。 「──────────無事でよかった」 「………キョウスケ………変よぉ?」 「どうして?」 「だって、キョウスケがそんな事する訳ないものぉ」 穏やかに微笑むその唇に、無言のままキョウスケは唇を重ね合わせた。 頭を包み込む様にそっと抱きしめ、深い口付けに変えながら………。 名残惜しげに唇をそっと離しながら、その身体を抱き起こす。そして、シーツの下のエクセレンの白い肌が露出するのを避ける様にシーツごと抱きしめた。 「…………お前を失いたくない」 力の限り抱き締める。 「……キョウスケ」 エクセレンは頬に生暖かい雫を感じて閉じていた瞳をそっと開いた。そこには、今まで一度も見た事がなかったキョウスケの姿があった。 「大丈夫よ……、あなたにまた助けてもらえて…良かった」 エクセレンから受ける口唇が、触れるか触れないかの口吻け。 「ありがとう………」 その言葉に導かれる様に、口唇同士が触れ合う。触れ合うだけの口吻けから、やがて角度を変えた深い口付けへと変わって行く。 「んっ……」 息をするのも困難な程 深い口吻けに句曇もった声を漏らす。やがて、力なく躯がシーツの海に沈む。 「キョウスケ……」 甘く激しい口吻けに酔いしれていたエクセレンだったが、唐突にシーツを取りさらわれて躊躇した。 「……じっとしていろ」 「キャッ…」 呟かれるや否や、のしかかった状態で口吻けながら、己の服のボタンをぎこちない手で上から外して行く。 「キョウスケ……重いっ…」 「……我慢しろ……」 露わになった白い太腿を撫でながら、口唇で内腿をなぞる。 耳朶を軽く甘噛みしながら、首筋に軽く口吻ける。 「あっん……」 思わず漏れる濡れた声。その声を聞きながら鎖骨に口唇を這わせ、柔らかな乳房を下からやんわりと包み込んで軽く揉む。 「んっ……」 一瞬、大きく躯をビクつかせる。安心を促すかの様に口吻けながら、淡い桃色の小粒な突起を親指と人差し指でやんわりとした愛撫を繰り返し、そっと口唇を寄せる。胸への愛撫を施しながら、臍部を指先で愛撫する。 「あっ……」 唯一着けている下着の中に臀部を撫で擦っていた指が侵入してくる。丘に掌を預け、五指が巧みに茂みの中を分け入り、敏感な部分をまさぐりだす。 「あっ……ああっ……キョ………ッ」 思わずその腕を手で掴んで喘ぐ。声にならない声を上げる口だけが、パクパクと動く。 指がその敏感な触れる度に躯をビクつかせる。敏感な部分に触れている指を大きく滑らせている内に、その指先が何かに導かれる様に埋める。 指を抜き差しする度に、濡れた音が微かに響いた。 「あっ……んっ、やっ…、キョ…ッ…」 何とかその動きを静止させようとした刹那、 「あ、あっ!ダメッ…!」 掴んでいた腕に思い切り爪を立てていた。 「──────────っ」 手の甲で押し上げる様にして下着を取り去り、両手で膝を左右に割り 掌を置いていた丘を掠め渡り、両手で上下から押し広げたその茂みに顔を埋める。そして、指で触れていた敏感な部分をおもむろに口に含んだ。 「きゃあああっ……」 予期していなかった余りの衝撃に悲鳴をあげる。それから逃れようと腰を浮かすのだが、がっちりと抱えられてしまっている下半身はびくともしなかった。 指で剥き出しにしたその部分を構わず口に含み音を立てて吸い上げながら、舌先を使って丹念に舐め上げる。 「や、やだっ…っキョ…スケッ…やぁっ…んんんっ…」 「や?…そんな風には感じない」 言いながら、先程指先が埋まってしまった部分に舌先をなぞらせる。 「駄目、だめっ…そこは……っ!」 舌先だけの軽い抽送から、その中にぬるりと根元まで舌を差し入れて内部をほじる様に蠢かせた。 「あっあっあっあああっ………!!」 一瞬ビクリと大きく体を反らせると、そのまま動かなくなってしまった。 舌を抜き、濡れた顎を掌で拭いながら、ベルトを緩めて抜き取り、ジッパーを下ろす。脱ぎ捨てる余裕等ない。焦る気持ちを抑えながら、己の欲望の象徴をゆっくりと外へと引き摺り出す。 「…………キョウスケ……」 乱れた髪を掻き揚げながらゆっくりと躯を起こすと両手でキョウスケのそれを包み込む。 「……こんなに固いのに……震えてる」 舌先をそっと這わせる。 「っ……」 瞬間、ビクリと動いた。しかし、構わず口唇を薄く開き、その先端をやんわりと含む。包み込んだ両手を上下させながら、舌を使って丹念に愛撫する。 「ふっ………」 それ以上の愛撫を拒むかの様に、キョウスケはエクセレンの両肩を掴んで引き上げる。そして、貪る様に口吻けた。 ゆっくりと躯を横たわらせると、無意識に躯を隠そうと腕が動く。 「何で、隠すんだ……?」 「キョウスケ…」 そう言われると余計隠したくなるのが女の心情であるのだが。 「──────────エクセレン」 二人の体重を感じて救護用のベッドが悲鳴を上げる。その音を聞きながら、覆い被さると柔らかい口付けから、深い口付けに変える。口唇から始まり、耳朶へと移動した口唇が首筋を掠めながら鎖骨から乳房へ下り、臍部を這い、内腿を伝いながら、愛撫は脚先に到達する。エクセレンの白い肌の所々に鮮やかな紅い花びらの様に痕を残しながら。 「……あなたを……感じさせて──────────」 脚先からゆっくりと膝に口唇を戻しながら、躯を割り、膝を立たせ 再び臍部に到達する。 「………Plaese…Me……」 言葉ではそういう物の、微かに震えているのが判る。安心させる様に口吻けてから、上体を起こす。 「──────────エクセレン」 茂みに軽く触れ、指を動かし、その部分がまだ濡れている事を確かめると深い深呼吸をした。片手で己の先端のみを外に出す様に握り締め、もう片手の五指で茂みを押し広げてその一点に先端をそっとあてがうと、もう一度深呼吸をする。吸い込んだ息を吐きだしながらその場所にゆっくりと挿し進めて行く。 「あぐっ……」 ゆっくりとした動作が返って苦痛を与えているのかもしれない。それでも、慣れていない者に無体をしく気にはならない。速度を変えずに支えていた指を離し、ゆっくりと挿し進める。 両膝を押し広げて、深く繋がっている部分を密着させる。息を完全に吐き切った頃、己自身は根元まで完全に埋まっていた。互いの筋肉の震えが伝わるほど。繋がっている場所は小さくとも、血液の流れすら感じ取れる程に。 「……動くぞ……」 ジッパーの金具がエクセレンの肌を傷付けてはいないかと気にしながら、それでもゆっくりとした大きな動作の抽送をし始まる。その動作は、エクセレンがその行為に慣れた頃には強弱のついた小刻みな抽送も加えられた激しい律動に変わっていた。 「あっ……ああっ………、キョ……スケ」 本能の赴くまま、快楽のままに体位を変え、深く激しく求めあった。 深く大きく動く度に 吹き上がる汗が飛び散る。ベッドが悲鳴を上げる。だが、そんなベッドの悲鳴など耳には入らない。互いの存在を確かめ合う様にただ互いを貪り合った。 「あ………も、だめ……っ!おねが、…いっ」 「……良いのか?」 「頂戴……、キョウ…スケ……。あ…なたの、思いを…………」 その言葉から暫く後、エクセレンは身体を仰け反らせた。そして、キョウスケの深く激しい律動が不意に止んだ。 肩で息をしながら、キョウスケはぬるり…と、エクセレンの中から抜き取ったものをそのままスラックスの中にしまいこむ。 床に落ちているエクセレンの下着を手っ取り早く丸めて自分のポケットに押し込んだ。そして、事切れた様にぐっすりと眠ってしまっているエクセレンの額に汗で張り付いた髪を指先で弾く様に払ってやりながら、躯が冷えぬ様に毛布を掛けてやる。 ふと気が付くと己の欲望の果てが内容量を越えたためそこから溢れ出し、零れて流れ落ちてシーツまでもを汚していた。 「このままでは、まずいよな」 シーツは洗ってしまえばどうってこと無いのだが、己の掃き出した欲望を受け止めた方は放って置くと悲惨な結果になる。 何か良い手立てが無いかと周囲を見回すと、清潔なタオルが眼に入った。 「……拭かないより、ましだ……」 そのタオルをむんずとつかんでお湯で濡らし それで綺麗に拭ってやる。 「ん……キョウスケ…………」 「──────────エクセレン」 「──────────んん?」 声に反応して無意識ではあるものの声のする方に身を捩じらせる。 「………愛してるよ」 薄く開いた口唇に、そっと口唇を重ね合わせた。 「──────────で?その賭け、どっちが勝ったのシロー」 アイナとゆったりとお茶を飲んでいるシローに向かってチャムが問う。 「どうだろう?どっちが勝ったんだろうね?」 「なんで?なんで?」 「この賭けの勝敗なんて、関係が無いんだよチャム」 「そうそう、関係ないんだよ」 「分の悪い賭けは嫌いじゃないんだから」 「──────────なんの話をしているんだ?」 「キョウスケ、エクセレンはぁ?」 「もう、戻ってくる」 タイミングよく自動扉が開く。 「どうだった?エクセレン」 「そおねぇ、全く持って順調だって」 「良かったですわねぇ」 「一雫が、ポイントだったって事か?」 「豹馬!!!!言葉が悪い!!」 「一雫って何だねぇちゃん?」 「んふふふ……ひ・み・つ。ねぇ、キョウスケ?」 「あ?あれ?キョウスケ君は?」 「分の悪い賭けは──────────嫌いじゃない」 |