031〜040

SSS031(陳腐)AS or ...

吐息を交わして。

全身に華を散らして。

追い詰めて。

突き上げて。

アツクアツク融け合う。


潤んだ視線に煽られて。

甘く味わう極上。

縋る指先を絡め取り、

擦れ洩れる歌をも飲み込む。



「…っ…ゃ…」



脳を蕩かすうわ言。


「        」


求められるまま繰り返す睦言。





『朝が来なければ良いのに…』





太古から使い古された陳腐な囁き。


それに捕まる自分。




腕の中には。



狂おしいほど愛しい存在。


SSS032(kiss)AS

キスは好き。
何度も何度もしたくなる。

例えば。

朝、起きた時。
作った朝食を褒めて貰う時。
お互いの行って来ます。
お帰りとただいま。
夕食が美味しかった時。
おやすみ。

挨拶だけでも、こんなに。

それから、二人でTV観てる時とか。
横顔がカッコイイ時とか。
目が合った瞬間とか。
淋しい時とか。


もう、数え切れないよ。
いっぱい、いっぱいしたい。


場所もね。
口…は、勿論大好きだけど。
おでことか、ほっぺとか、まぶたに目の端っこ。
こめかみ。
口の横、鼻。
指先。
…全身。


アナタにしてもらうのが、凄く好き。
ドキドキして、ふわふわして、タマラナイ。




くい。


彼の服の裾を軽く摘んで、振り向かせる。
「ん?どした?」
「…」
優しい眼差しに、思わず下を向く。
言える、訳ないし。
したいのと、して欲しいのと、それを口にするのは全然違うから。
いつだって、ここまでが精一杯。
ナサケナイ。


ちゅ。


柔らかい音と感触に慌てて顔を上げると。
目の前には優しくてカッコイイ顔がどアップ。
瞬き、数度の間に、相手の両手が顔に添えられて。
今度は何度も顔中にキスの雨。
甘い甘いソレにとろりと脳が溶ける頃、ゆっくりと開放される。
「…好きだね、キス」
「…ん…。すき」
アナタにしてもらうの、気持ちいい。
「俺以外としてたら許さないトコだけど」
からかう口調にちょっと、心が拗ねる。
でも、口に乗るのは素直な感情。
「…他のひと、は、や」
アナタがいい。
アナタだけ。
「可愛い事、言ってくれる」
「…?」
「ご褒美に、帰ったらいっぱい甘いのしてやるよ」
「…ん」
「だから、急いで帰ろーな」
「うん」




キスは好き。
アナタにして貰う、甘い甘いキス。


ねぇ、お願い。
一晩中、していて?


SSS033(邪魔)AS

…暇。

ベッドの上にうつ伏せに転がったまま、小さく欠伸を噛み殺す。
手元には見てもいない雑誌。
視線を巡らすと、頬杖ついたまま唸ってるアナタ。
…ん、まぁ、大変だよね。
小難しいレポートの提出期限、近いって言ってたし。
下書きのルーズリーフ、何枚もダメにして、ノートとテキストは書き込みだらけ。
開かれたままのPCは、エンドレスでセーバーが動いてて。
気を利かせて、重ねたティッシュに乗せて上げたウーロン茶は、汗も引いて温くなってるんだろうね?
床のゴミだって、何度かゴミ箱に入れてあげたよ?
あぁ、もう。
構ってよ。
朝早くから押しかけてきたのに、会話ったら初っ端の数語だけ。
そりゃあね。
それは、忙しいの知ってて押しかけたんだし?
相手出来ないって宣言されてるし?
イイコにしてるけどもね。
先刻から、全っ然、手、動いてないじゃん。


…そろそろ、イイよね。


自分勝手に納得して、そろりと足をベッドから床に。
ペタン、と床に座り込んで、暫く様子見。
うん。
気付いてない。
何だかんだで凄い集中力してるもんね。
気付かれないように心の中だけで笑って、今度は四つん這い。
うん。やっぱり気付かない。
背後で、こんなに動いてるのに。
ふふ、と吐息だけで笑って、細心の注意を払ってゆっくりと傍に寄っていく。
勿論、這ってね。
真横到着。
まだ、気付かない。
ここまで行くと、もう、一種の才能だよ。
感心しながら、するん、と相手の左腕に自分の腕を絡ませる。まぁ、ここまでやれば、流石に気付くと思うけども。
「ぅえ?!」
あり得ないトコから出されたような声。…そこまで驚かなくても…。
「なぁに?」
「…あ。いやいや。どした?」
ちょっと拗ねた感じで口を尖らせると、苦笑したまま優しい声。低めの甘い声、大好き。
「退屈になったの。だから邪魔しに来た」
「…お前ね。今日は構ってやれないって最初に…」
「言ってたね」
だから、今の今までイイコにしてたでしょ。
「なら…」
「どーせ、進んでないじゃん。…休憩しよ?」
なるべく可愛く見えるように、首を傾げて必殺上目遣い。コレに弱いよね、アナタ。
「いや、だから…」
「気分転換!…ね、しよ?」
我侭に甘えた声を上げる。腕に縋り付いてくい、と引っ張ると、完全に弱り切った苦笑。
ねぇ、今、心、ぐらぐらでしょ?


「…ね、構って?イイコにしてた、ゴホービチョウダイ?」


鈍感なアナタは気付いてないだろうけど。
本気で集中してる時には、絶対邪魔なんかしないんだよ?
邪魔する時は、いつもアナタの集中が弱くなった時。
だって。
真面目に過ぎるアナタは、自分から息抜きなんて出来ないでしょ?
理由や言い訳なんか、こっちでいくらでも作ったげる。
邪魔された、とか、邪魔ばっかりして、とか、思ってて良いから。


ねぇ。
こんなにイイコなんだから。
いつだって、絶妙なタイミングで気分転換させてあげるから。


ねぇ。




「構って?」


SSS034(専有)AS

いらいらする。


腹が立つ、と言う程ではないものの、苛立ちがおさまらない。


あの、目の前の情景に。


人が好いのか、愛想が良いのか。
常に大勢に囲まれている、アイツ。
厭な顔一つ見せず、にこにこと笑顔を振り撒いている。
華に群がる虫のように。
アイツの傍には人が途切れるコトはない。


確かに。
顔が可愛くて。
性格も素直で。
いつでも笑顔。

…と、くれば、他人が放って置く筈がないけれど。
理解は出来ても納得出来る訳がない。
眼に入れないよう、雑誌に集中するフリをしつつ、何とか表情を隠す。




「…それ、面白い?」
「…まぁまぁ」
耳だけ欹てても仕方がないと、外音をシャットしていると、イキナリ上から声。
待ち望んだ、甘い甘い、甘えた声。
肩越しに、音もなく舌打ちしてる集団が目に入るけれど。
当の本人は気付く様子もなく、拗ねた瞳で雑誌を睨む。
「どした?」
「…何か、ヤ」
「何が」
「無視されてる気がしたの」
口を尖らせ、不機嫌な口調。先刻まで無視されていたのは、どう考えてもこっちの方なのに。
身勝手な物言い。
それがまた可愛く映って、自分に呆れ果てる。
「わがまま」
「だって」
こっちだけ見てて。構って。
白々しい溜息相手に、視線だけで訴えてくる内容は、理不尽なまでに正直で。
ヤバい位に優越感を煽ってくれる。
「…しょうがないな」
「何?」
「構ってやるから、ここにいれば?」
仕方がないから。しょうがなく。
そんな雰囲気を出して、大仰に溜息を吐くと、花咲く笑顔で抱き着いてくる。
「大好きぃ」
「そう」





背後の皆様には申し訳ないけども。






専有権は








俺にある。


SSS035(変な音)AS

こととんこととん。
ざー。
こととんこととんこととん。

「…あれぇ?」
「なに」
「この辺、電車通ってたっけ」
「え?」
「何かね、電車が通る音がしてる」
「…通ってないよ」
「だよねぇ?」
なんでだろ。電車の音がする。起き上がると、フツーの、いつもの静かな部屋なのに。
「…それ、血の音」
「血?」
「そう。血が、血管を通ってる音。心臓とね」
「誰の?」
「お前」
え?
「嘘」
「ほんと。だから、静かにベッドの中、潜ってる時だけだろ。音がするの」
「そうだけど。…え。マジで?」
「マジで」
へー。
「体内の音が耳の奥で響くらしいよ」
「へー。物知りだねぇ」
「お前よりはね」
「むぅ」
「…いいから。まだ早いから。もう少し寝よ」
「うん」
くっつくと、今度は電車の音じゃなくて、規則正しい心臓の音。
「ぎゅ、て、してて」
「いいよ」

とくんとくんとくん。
ナイショだけど、世界で一番好きなリズム。
「おやすみ」
低くて甘い、優しい声は、世界で一番好きな音。


SSS036(広い)AS

「…広い」
ベッドが。
や、別にね?ダブルとか、キングサイズとか、そんなんじゃないんだけど。
フツーの、シングルベッド。
もっのすごく贔屓目に見ても、精々がセミダブルもどき…なんてぇ大きさのベッド。

なのに。

なんだか広い。
「眠れ、ないんだけど」
気に入りの(ってか、貰った)…ブタのぬいぐるみ抱えて、ベッドの上に座り込む。
先刻から、寝よう寝ようとしてるのに、全然ダメ。
信じらんない。
こんな狭いベッドが広いなんて。
そんな理由で。
眠れないなんて。
「あー。もぉ」
ばりばりと頭を掻き毟って、枕元の充電中携帯電話を取り上げる。
「眠れないっ」
膨れっ面のまま、メールを1本。
だって。
悪いのは向こうだもん。
こんなに眠れないのはさ。
そうしたのは、向こうなんだから、責任くらい取ってもらわないと。
受信した、返信メールににっこり笑う。

後、30分もしたら、苦笑気味の彼がやってくる。
それをイイコに待ってればいい。


彼を呼ぶ、件名ナシのメールは一言。
『広い』


SSS037(勝負)AS

…一般に。
惚れた方が負け、とか言うけれど。
そんなんじゃ、絶対こっちのが不利なんだけど。


何せ、ヒトメボレ。
浅い人生、経験値0


でも、さ。
努力の結果、惚れさせた場合ってどうなるんだろう?
ヨリオオク?
それって何?
量れんの?ソンナモン。




「…また、小難しい事考えるね」
「そぉ?」
呆れた表情を隠しもしないのは、何年か前のヒトメボレの相手。
「うん。だってそれって、努力の順番が違うだけじゃない」
なにそれ。
「先に好きになった方は、好きになって貰うのに必死になるでしょ?」
うん。
「後から好きになった方は、ずっと好きでいてもらうのに必死になるんだもん」
…え?
「だって。飽きられたら嫌じゃない」
にっこり笑う、綺麗な笑顔は、『後から好きになった方』。
途惑うこっちは『先に好きになった方』。
だけど。
「どっちもずっと必死になるの。どっちが勝っても良いけど、負けられないでしょ、この勝負」


「…成程」


「ご理解いただけたようで」
「じゃあ」
「なぁに?」
「今はどっちが優勢?」
こっちは、会った時からずっと、必死なんだけど。
「…さぁ?」
「こら」
「自分で考えてよ。初心者さん?」
ヒドイ言い草だね。
「だいじょぶ。こっちも初級者」
「ああそう」
「うん」




じゃあ、取りあえず。




kissでもしようか。


SSS038(溺愛)AS&...

…あ。
可愛い。
めちゃくちゃかっこいい先輩と楽しそうに話す、俺の宝モノ。
警戒心の欠片もない全開の笑顔が本当に可愛い。
隣でやっぱり楽しそうに笑う先輩は、羨ましい位にかっこいいし。
まぁ、ね。アノ人には溺愛してる恋人がいるし?
無駄に嫉妬をする必要はないし、妙な危機感を抱く必要もないから良いけどもね?
良いんだけど。
何と言いますか。
「あ〜。眼福」
あ。それそれ。
…って。
へ。
いきなり真横から聞こえた声に振り向くと。
「目の保養だよね。アレ」
くすくす笑いながら件の二人を指差す、笑顔の印象的な先輩。
「目の保養って…」
片方はアナタの恋人なのでは。
今更言うのも憚る内容は黙ったまま、苦笑い。つまりは、そういう事。
「だって、無駄に男前だし。無邪気で可愛いし」
「あ〜。まぁ」
一枚絵みたいに見えますけどね。そういう問題じゃないと思うけどなぁ。
「何の話してるんでしょうね」
「何だろうね。あ。かっこいい」
うっとり呟く先輩は、大事なアノ子には負けるけど、物凄く可愛い笑顔を見せる。
「…写メ撮っときましょうか」
「良いかも」
遠くで話す二人の、どっちの顔も写メ撮っときたくなる位、だから。
微妙に劣等感を刺激されるけど、まぁ、その程度。
笑ってるのを見るのは好きだし。
「先輩の顔も写メ撮って良いですか?」
「え。何で」
「…後で売る?」
「売れないから」
苦笑されてしまう。
結構、高額取引出来そうだけどな。自覚ないみたいだけど、可愛いしね。
作りが割と派手なアノ子とはタイプが違って、あまり目立たないけど。


「あ」
「何?」
「話、終わったみたいです。こっちに来る」
話が終わった、て言うより、見てるのがバレたんだろう。目が合ったから。
嬉しそうに飛んでくるのも可愛い。
…って、ベタ惚れですか?
何かもう、終わってる。
「…溺れてる顔、してるよ」
「え?」
「他人の事、言えないけど」
にっこり笑って、立ったままでこっちを見てる人の方に行ってしまう。

オボレテル

それってつまり。


「…ねぇねぇ」
「何」
呆っとしていたのを突かれて、軽くナナメ下を見る。
「先輩と、何話してたの?」
それは、どっちかってぇと、こっちの科白なんだけども。
「んー…。溺死体?」
「何それっ」
「いやいや。まぁ、そっちこそ何話してたの」
「んー…?視野狭窄?」
や。あまり楽しそうにに話す内容じゃないんじゃ…。
「…へーぇ。楽しかったの」
「うん」




…うん。
先輩の言葉に納得。
よく判らないまでも、楽しかったんならそれでいいや、何て思える程度には。


溺れてる。


SSS039(惚気)AS&...溺愛の別視点^^;

「おー。良い笑顔」
可愛がってくれてる先輩に、くしゃりと頭をかき混ぜられる。
この先輩、凄く好き。
カッコイイし、一般的には『くだらない話』になっちゃうような事もちゃんと聞いてくれるし。
…こっちには結構大事な話なんだけど、皆、聞いてくれないんだもん。
「えー。だって、ホントにそう思ったんですもん」
「カッコイイって?」
「そうなんですよー!真剣な横顔なんて、ずっと見てたいし。うっとりしちゃうんですよ。…解ってくれます?」
「解るよ。…同じだから」
こっちの言葉に頷きながら、くく、て笑う顔は本気でカッコイイ。
うーん。美形って凄い。
大好きな彼でさえ、ココまで造作整ってないよ。
カッコイイな、なんてて思うのは、勿論彼の方が上だけど。
「先輩も思います?」
「思う思う。毎日…一秒毎、可愛いって」
「おんなじ!」
うん。もう、一秒だって目を離したくない。
今だって、先輩を正面にしてるクセに、視界の片隅には彼が居て。
綺麗だったり可愛かったりする人が近付いて来ないか警戒中だもん。
…周りの人は、そこまで警戒しなくても良いって言うんだよね。
この先輩だけは同意してくれるんだけど。
「…あ」
「何ですか?」
「指差された」
ふぇ?
楽しそうな視線の先は、こっちの視界の片隅にあったモノと一緒で。
要するに。
だぁい好きなアノヒトの方向。
こっそり、でもよく見ると、先輩の恋人さんが彼の横で笑ってる。
「…何の話してるんだか」
「…さあ」
すんごく仲良さそうで、楽しそう。
…ヤキモチなんか妬く必要ないってのは解ってるけど。解ってるんだけども!
あんなカッコイイ顔、他の人に見せちゃヤだ。
ほらほら、先輩、ウットリしてるし!
「んー。妬けるねぇ」
「ふぇ」
「…横目で窺ってないで、ちゃんと見なさい」
妬けるとか言ってるクセに、楽しそうな先輩の言葉に振り返る。
あ。
目が合った。
「行っといで」
「はい!」
スターター、鳴らされた時みたいに足が床を蹴る。
ダメダメ。
先輩の大事なアナタだけど。
彼と居て良いのは自分だけ!


「…ねぇねぇ」
「何」
ゆっくりとこっちと擦れ違って行った先輩を呆っと見送ってた、ハクジョーな彼を突っつく。
「先輩と、何話してたの?」
他人の恋人に見惚れる位、何、話してたの?
「んー…。溺死体?」
「何それっ」
溺死体で何でそんなにカッコ良く笑ってたのっ!
「いやいや。まぁ、そっちこそ何話してたの」
「んー…?視野狭窄?」
「…へーぇ。楽しかったの」
「うん」
そんな、訳解んない事言う人には教えて上げないんだからね。




ノロケバナシ、してたなんてさ。


SSS040(内緒)AS&...上記二つの続き?

「中てられちゃった」
「…同じく」
機嫌良さそうに待っててくれる彼に、殊更ゆっくりと近付きながら言うと、同意される。
なんだ。
お互い、惚気られてた訳だ。
「楽しかった?」
「んー。溺れ切ってる笑顔見ちゃうとね。楽しいって言うより可愛い?」
視線は真っ直ぐ恋人へ。
素直な表現は、羨ましいくらいに一途で。呆れるよりも微笑ましい。
「そっちは?やっぱり可愛かった?」
「可愛いっつーか…。何も見てないわ。アレは」
「へーぇ」
思いだしたのか、くつくつ笑う。…よっぽど楽しかったんだろう。
「正にナントカは盲目ってヤツ」
笑顔のまま。目尻に皺寄せて、そんなのもカッコイイ…なんて、自分もほとほと、他人の事言えない。誰よりも見慣れてる筈なのに、いつだって、目を奪われてしまう。
「…妬いてたし」
「へ?」
「妬いてた。仲良さそうにしてるから」
…それって。一緒に見てた事、言ってる?
「俺もちょっと妬けた」
「…何で?」
必要ない。見てたのは、お互いの恋人で。その話しかしてなかったのに。もし、妬くならこっちの方だと思うんだけど。仲良いの、よく知ってるから。
「中々見られない、極上の顔してた」
「誰が?」
「お前」
「だから、何の話してるのかな、とか。気になった」
話してたのは。
「…そんな顔してた?」
「もう、最高の笑顔してました」
見てたのは。
「何の話、してたの」
目の前の、相手なんだけど。
「え。いや…。大した事は話してないよ」
そんな事、言える訳がない。
「言いなさい」
無理!
「な…内緒」
「こら」
「そんな大した話、してないって」
「じゃ、言えるでしょ」
「無理です」
恥ずかしい。
「言いなさい」
「嫌です」
弱味みたいで、絶対言えない。

貴方しか見えてない。

なんて、そんな事。悟られる訳にはいかない。それに、惚気られてたって、先刻教えた筈だし。忘れてる方が悪い。
「言えって」
「いーやー」
「言いなさい。…惚気てたって」
「!」
憶えてた!
「知りません」
「あ。そういう態度」
楽しそうに笑って抱きついてくる、相手はきっと確信犯。
だから、答えは変えてあげない。
「…内緒だって」
「内緒?」
「そう」
「内緒嫌いなんだけど」
「…コレは内緒」
公然の秘密。言わぬが華。
わざわざ言質を取られるなんて羽目には、陥りたくない。
「…内緒だよ」




代わりに、もうしばらくは人前でくっついてても、我慢してあげる。



このページの隠しテーマは東/洋/音/箱であ/つ/し/ん。
ってか、ナマモノ?
…あ。いや。オリジナル、オリジナル(笑)
…んなコト言ってる場合じゃないけども。