「飼われてみない?」
「……熱あるの?」
突然言われた科白に瞬きして。
呆れた声で額に手をやってやる。
目の前に酒はない。
だから酔っている筈もない。
なのに、何でこんな世迷いごとを。
…まぁ、コイツが妙な事を言い出すのは今に始まったことじゃないけどね。
「ないって」
「変な事言うからでしょ」
「え〜。良くない?イイコだったらご褒美あげて、そうじゃなかったらオシオキ」
「あ〜。ハイハイ」
「絶対大事にしてあげるよ?首輪だって用意するし」
「…イイお医者さん探してあげようか?」
「……冗談デス」
「よろしい」
全く。
なんて馬鹿げた、突拍子もない事を言い出すのやら。
変なモノでも食べたのかな。
「でも、さ」
「本気で大事にするのになぁ」
「…そういうのは、フツーでいいのよ」
意味ありげに見てくる相手にぴしゃりと言い放つ。
それでも。
一番最初に。
物凄く、甘美な誘惑の科白に。
息を飲んだのは。
バレてるのかもしれない。 |