「花火が見たい」
と言ったら、一瞬目を見開いて、次いで優しく笑って、肯いてくれた。
日時を調べて、天気予報を確認して。
今日は快晴。
月もナシ。
きっと綺麗な花火が見れる。
いつものようにジーンズで、早い時間に迎えに行ったら、部屋に引き込まれる。
にやりとした、含んだ笑顔で渡してくれたのは、綺麗な布。
押し込められたベッドルームで袖を通す、真新しい浴衣。
…用意してくれた?
それにしてもよく、着丈とか判ったなぁ…なんて、詮ない事を考えて。
そぉっと部屋から出ると、満足そうな顔。
はぐれないように、繋いだ手がちょっと嬉しくて。
履きなれない下駄で必死に歩く。
きっと、今日の花火は世界で一番綺麗。 |