Lovin'you





「…ん…」
 目が覚めてすぐ、無意識に隣を探ってしまう。
 いる筈のない、人を。
「…変な癖、ついちゃったわねぇ」
 薄暗い部屋の中、独りで苦笑して。









 共に過ごした夜なんて、数える程しかないのに。






 同じ朝を迎えた事なんて、片手の数で足りるのに。










 それなのに、それはあまりにも自分中で自然な行為になっていたらしくて。毎朝同じ事を繰り返しては微かな胸の痛みに苦笑する。
 ベッドに半身起こして、膝を抱える。切なさに押しつぶされないように。
「…今、どこにいるの…?ちゃんと、寝てる?…なんて、貴方に聞くまでもないわねぇ」
 顔をベッドサイドに向け、サイドボードのフォトを見つめる。浮かぶのは苦笑ばかり。


 声が聞けない訳じゃない。


 モニター越しではあっても、会う事だって出来る。


 そんなのは理解しているけれど。








 でも、それじゃあ足りないの。








 貴方のぬくもりが恋しくて。



 貴方の吐息が愛しくて。



 貴方が足りない。禁断症状みたいに欲しがってる。






「貴方に…会いたいわ、キョウスケ」
 フォトグラフは何も言わない。だからと言って、本人に告げても困らせるだけ。それは、よく解っているから。
「宇宙(ココ)から地球は…。ちょっと遠すぎるわねぇ…」
 くすくすくす。
 宇宙と地球と。
 随分遠く離れてしまっているけれど。
 互いの想いが離れる事はないのも、知っている。
「…ねぇ?貴方も私に会いたいと、想ってくれてる…?」
 本物に向けるのと同じ笑みを浮かべて、フォトフレームを弾く。地上でくしゃみでもしていてくれたら、気分は良いのに。
「…さて、起きなきゃね」
 声にイキオイをつけて。部屋を明るくして立ち上がる。熱めのシャワーを浴びて、着替えたら、他人に見せるいつもの自分がいる筈だから。







「早く、迎えに来てね。待ってるから」
 フォトフレームにキスを送って、シャワールームに向かう。










 離れていても








 どこにいても








 貴方を信じているわ



















 Lovin'you






END



ちっとだけコメント。
…まぁ、そういう訳で。
渡辺美里の『Lovin'you』エクセレンver.
…好きなんです。80's Music。
Epic万歳。
世代と言う事で、勘弁してくださいませ。



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