ちゅ。 「…おい」 ちゅちゅ。 「エクセレン」 ちゅちゅちゅ。 「エクセレン!」 「なぁに?キョウスケ」 困りきった声をあげるキョウスケにエクセレンが顔を上げる。 「…先刻から何をしている」 「何って…kissよ」 ちゅ。 解らないの…?と、心外そうに答え、再びキョウスケの頬にキスを落とす。 「そうじゃなくてだな…」 「うふふ。キョウスケ可愛い」 ちゅ。 嬉しそうにキスを落とすエクセレンに一瞬キョウスケの抗議が止まる。…どうせ、キョウスケが何を言っても行為を止める気はないのだろうが。 それでも、である。 バスタオル1枚のエクセレンに襲われるのはいい加減勘弁して欲しいところだろう。 「エクセレン」 「ん〜?」 ちゅ。 シャワーを浴びた後、ベッドに転がって目を閉じていた。おそらく、その後転寝でもしてしまっていたんだろう。気が付いたら、バスタオルに身を包んだエクセレンにキスの雨を降らされていたのだ。 それも、なるべく動けないようにか、上に乗り、腕を首に回す要領で両手を押さえながら。 エクセレンに押さえられたところでどうと言う事もないのだが、そこはそれ。相手は見事な薄着と幸せな表情、自分は半覚醒状態ときてはなかなか行動に移れない。言うなればエクセレンの作戦勝ち、とでも言おうか。 「…楽しいか?」 「とっても」 巧みに口唇以外の場所にキスを繰り返すエクセレンに溜息を吐く。放っておけば、1時間でも2時間でもやっているに違いない。 「…何が楽しいんだか」 「んふふ〜。私、kissするのって好きなの」 嬉しそうに言われると、キョウスケとしては黙ってしまうしかない。 「こんな事、外では出来ないし?寝てるキョウスケ見たら、これはkissしなきゃ!…て感じ?」 「…外でもするくせに」 「え〜?」 ぼそりと呟いた言葉に、誤魔化すような笑顔。悪戯が暴露れた時の様な表情を浮かべると、再び顔中に雨を降らせ始める。 「このキス魔」 「あら。キョウスケにだけよぉ?」 「嘘つけ。この前、ラトゥーニやクスハ曹長にもしていただろう」 「やぁねぇ。見てたの?」 「…その前はレフィーナ艦長にもしてなかったか?アヤ大尉にも」 過去の罪状を挙げていくキョウスケにくすくす笑う。 「…あぁ。リュウセイにもしてたな。ブリットやマサキにも。…マサキの時はリューネにもしていたか」 「よく見てるわねぇ。…妬ける?」 「さぁな」 悪びれないエクセレンに苦笑を返す。駆け引きに近い言葉の応酬は、いつもキョウスケに分が悪い。 「ああいうのは単なる親愛の情よ?キョウスケのとは違うわ」 「…」 「だって、皆には1回ずつしかしてないし、ましてやキョウスケにはここにもするでしょ?」 言いながら、初めて口唇にキスを落とす。触れ合うだけのそれは、確かにキョウスケだけのもので。 一瞬、納得してしまいそうになる。 「キョウスケはkissされるの嫌?」 「それはないが…」 「なら、良いでしょ?」 甘えた色を視線に湛え、小さく首を傾げるエクセレンに諸手を上げかけ…ふと、何かを思いついた。 「…エクセレン」 「何…きゃあ!」 突然、キョウスケがエクセレンの腰を抱くと勢いをつけて反転する。 「…ちょっと…」 「何だ?」 「や…、だから…。仕返し無し!!」 先刻までと立場が逆になる。咄嗟に逃げようともがくエクセレンの上に圧し掛かると簡単に動きを封じてしまう。 「何で?」 「何で…て、とにかくダメ!」 「そうか」 必死に押し退けようとするのを意に返さず、顔を近付ける。 ぺろっ 「きゃ…」 耳の後ろを舐めあげると、小さな悲鳴が上がる。 「ダメだってばぁ…」 「先刻の返しだ。受け取れ」 困ったように見上げてくるエクセレンの目元に口唇を落とした。 「…全身にくまなく、な」 耳元に低く囁くと、エクセレンがパニックを起こす。その隙に片手をさり気なく移動させる。 「…だ、ダメ!それって過剰!!」 「そうか?」 「そうかじゃな…んん!…ど、どこ触ってるのよぉ…」 「太腿」 悲鳴混じりの抗議にしれ、と答え、更に手を這わすとエクセレンが逃げようと身震いする。 「や…。触らなくて良いってば…。ん、この、すけべ」 「それは褒め言葉として受け取っておく」 「褒めてない…わ、よぉ」 「そんな煽る姿で、煽る行為をしたお前が悪い」 「格好はキョウスケには関係ないじゃないよぉ」 その気になったら、どんな重装備でもすぐ脱がすくせに…と恨めしそうにキョウスケを睨む。もっとも、瞳を潤ませながら睨んでもさほど効果はない。 「では、行為」 「kissしてただけでしょお?」 「だからそれを返しているだけだろう」 「返さなくて良いって…!それに…キョウスケのはkissって言わない!」 困りきった視線をキョウスケに送る。 「じゃあ、何だ?」 「あ…、あれは『舐める』って言うの!」 「…そうか。では、リクエストに応えて」 「してないしてないしてない!」 「…嫌、か?」 「…う…」 力いっぱい否定したものの、キョウスケの申し訳なさそうな表情に一瞬怯んでしまう。 「エクセレン?」 「…卑怯者ぉ…」 他に言い様がなくて、拗ねてしまう。キョウスケ自身はは無意識かもしれないが、相手のそういう表情に弱い自分をエクセレンは熟知している。 拒絶出来る訳がない。 どんな時だって、触れ合える程の幸福はないのだから。 それは、お互い同じ想いなのも知っている。 「キョウスケぇ…」 「なんだ?」 そっと伺うと、楽しそうな相手が見えた。思わず内心、溜息を吐く。 互いの手の内を知り尽くしたGAMEは、引き際が肝心なのだ。…ましてや、仕掛けたのは自分である。幕引きも自分になるのは仕方がない。 「…痕跡…。残しちゃイヤよ?」 視線を合わせ、拗ねた顔を見せると、気付かれないように息を呑むのが判った。少し、溜飲が下がる。 「…善処する」 "Please Kiss..." |