「結婚式は6月ね」 唐突に切り出されたエクセレンの台詞にキョウスケは飲んでいた紅茶を吹き出しかけた。 「六月の花嫁は幸せになれるって昔から言われているじゃな〜い。だから、結婚式は6月ね」 嬉しそうな微笑みを浮かべながらエクセレンは、ドレスはやはり白で式は教会で上げる等と一人で話を盛り上げていた。 「誰が結婚するんだ?」 すっかり話に置いていかれた状態のキョウスケだったが、気を取り直して問うてみる。 「誰って、私の結婚式に決まってるじゃない」 おかしな事を問う、という表情のまま。 「誰と?」 今一つ飲み込めない。何かを焦っているのだろうか。 「んもう。私とキョウスケに決まってるでしょ〜。それとも、キョウスケは私が誰か他の人と結婚しても良い訳?」 「誰か他に相手がいるなら、俺は構わないが?」 どうしてそんな台詞が言葉がでてしまうのだろう。途端、エクセレンは怒って飛び出して行ってしまった。 「、たく」 誰に言うまでもなくぽつりと呟いた。 「キョウスケは私が他の男と結婚してもいいわけ〜?他の男と結婚して欲しいわけ〜?」 宇宙空間の見えるデッキの手摺りに身を寄せながら小さく愚痴る。 本当にそう思われているのかもしれないと思う自分が情け無い。 「私の事、嫌いなのかな」 「嫌いだったら、お前を捜したりはしない」 声に驚いて振り返ると、キョウスケが立っていた。かすかに肩で息をし、額を汗ばませながら。 「だって、私と結婚したくないんでしょ〜。キョウスケは、私がいない時に私以外の良い人見つけたんでしょ〜。だから、私が結婚式の話持ち出したら嫌な顔したんでしょ〜」 「ばっ、そんなんじゃない!そういう事は男から切り出すのが普通だろう」 途端、しまったという表情を一瞬浮かべる。そのままバツが悪そうに横を向いてしまった。 「俺の側に居るのは、おまえでなければ意味はないんだ エクセレン」 意を決した様に告げながら、エクセレンの身体を抱き締める。 「女神ヘラの祝福を受ける気はあるか?」 抱き締めたその耳許に低く囁く。 予期せぬ最愛の人の告白に言葉なくただ頷く事しかかなわない。 「もう、離れずに…ずっと俺の側にいてくれ」 抱き締めていた腕を緩め、青い瞳から溢れ落ちる涙を唇で受け止める。 「返事は?」 「…………はい」 女神ヘラの祝福は永遠の幸福。でも、その幸福が永遠のものかどうかは互いの考え方次第である。 |