「クレイモア…あと、2度位はいける…か」 右手を伸ばし小さなキーを素早く弾いてショルダーのベアリング弾の残弾を確かめる。 残弾数は既に空の数値を打ち出しているものの、旨くやれば言葉通りの数は行かれそうだった。しかし、右腕の残弾の残りは後1発。 「…残弾は、僅かか」 ステイクを放つ右腕は、まさに切り札に等しい。 「分の悪い賭けをしたな…」 けたたましくアラートが鳴り響く中、極めて冷静な思考回路をしていると我ながら思う。 「切り抜けられるかな…」 いや、切り抜けなければならない。切り抜けて…生き延びなければならない。どんな事があっても………。 突如、敵感知装置が悲鳴を上げる。 廃墟の影から現れたのは、数体の未確認エアロゲイターだった。 こちらに気付き攻撃を仕掛けてくる。 「…やらせん!」 寸での所で交わす。着弾出来ずミサイルは後方に逸れて行く。 「…この距離で、俺に勝ったと思うなよ」 言うが早いか両肩が開き、チタン製の球状の弾頭が弧を描きながら一斉に敵の機体に風穴を開け大破させる。 「その…程度で…。他愛もない…!」 ゲシュペンストシリーズである事を示す唯一の武器・右手の3連マシンキャノンを打ち込みつつ、ヒートホーンで相手を文字通り串刺しにしながら突き進む。 「む…!?」 猛進していたアルトの足を止め、すぐさま左に急旋回させる。刹那、高射砲が掠めながら疾り去る。 「手段を選ばず…か」 仲間を巻き込んでいる事から、それは明らかなる事だった。 恐らくこの戦地のボスなのだろう、小物の影からやっと姿を現す。己の前を進む全ての者を消し去りながら…。 「戦艦並みの高射砲を積んでいる…とは、な」 幾ら装甲が厚いとは言え、最強の盾と言われるジガンとは違う。掠めただけで機体に多少の振動が来る。高射砲を食らえば、大なり小なりの破損は免れない。 「敵も…必死という訳か」 迷っている暇などない。体制を立て直す。 「しかし…だ。俺を殺したければ…死ぬ気でかかって来い!!」 言うと同時に両肩を開き、ベアリング弾の雨を降らせながら懐に飛び込み、すぐさまアルトアイゼンの最強、かつ最大の武器、掘削機の様な右腕を突き立てる。 敵機を貫いた右腕のシリンダーが高速回転し、きしみながら弾丸を放った。 「切り札を切らせたその代償はデカいぞ!」 …死ぬ訳にはいかない。 ここで死ぬ訳にはいかない…。 生き抜いて…あいつの顔を再び見るまでは…。 死ぬ訳には…いかない |