Mother's day Panic





 ───────────── さて。ここで問題です。5月の第2日曜日は、何の日でしょう?




答え。
 ───────────── 母の日。






 それくらいは、私だって、知ってるもん!







───────────── …で?」
「だからぁ。お花屋さんでね?カーネーションがいっぱいなんですって」
「…違う!」
 …じゃ、なんだろ。ちゃんと言ってるのに。
「俺が訊いてるのは、花屋にカーネーションが余って、それがうちとどう関係があるのかって事なんですがね?お嬢ちゃん」
 あぁ!なんだ、そういう事か!
 隊長も早く言ってくれれば良いのに!(「言ってるだろーが」byアキヤマ)
「あのね、今日、出勤する時にお花屋さんの前、通ったんですよ」
「…そら、毎日通るわな」
 そうそう。通勤ルートだからね。毎日、お店が開いてる時に通ったら、挨拶してるんだよ。んで、お花買うのもいっつもそのお店だし。おまけしてくれるし。イワユル、常連さんなんだけど。
「それでね、カーネーションが大量入荷しちゃって困ってるんだって」
「だから?」
 発注ミスじゃなくて、発送ミスだったらしくて、お花屋さん自体に損害はないそうなんだけど。
 でもさ。
 売れ残ったら捨てるだけ、とか言われたらかわいそうでしょ?花が。
「何とかして、隊長」
「だから、何で俺が」
「だって、隊長、お祭り好きだし」
「…あのな、アリス」
「はい?」
 イイコに返事をしたら、息を吸う隊長。

何だって、毎度毎度、守備範囲外のネタ拾って来るんだ、お前わっ!


しょうがないでしょ!隊長達って名指しでお願いされたんだから!



 ぜぇぜぇ。
 大声出すと、疲れるよね、うん。
「私の所為じゃないもん」
 そりゃ、本読んで影響されたとか、道端の疑問点をぶつけるとか、イロイロしてるけども!  でも、今回は隊長達ならなんとかしてくれるかもって泣きつかれたんだし。それにほら!元々は、日々お祭り騒ぎな隊長達に原因がちょっとはあるよね?…んと、多分。きっと。
「…最初はね?ポプラン中佐に頼もうと思ったんだって。母の日もそうだけど、赤いカーネーションの花言葉があなたを熱愛しますってヤツだから、ちょっとおまけしても活用してくれそうだしって」
「…適任じゃねぇ?まぁ、花屋で困るレベルの量だから大変かもしれないけどな」
「うん。それに、足元見られそうだしって」
 必要以上に値切られそうで怖いって言ってたもん。それは流石にかわいそうだよね。
「それにね、隊長」
「ん?」
「店長さん、男なの」
 だからね。
「…あぁ。じゃあ、ポプランに頼むのは無理だな」
 …うん。店長さんが女の人なら、物凄く張り切ってくれたと思うんだけど。どっちかって言うと、カッコいいんだよね。
 うーんと、隊長達の次の次の次くらいに。(注:アリスは身贔屓が激しい…かもしれない)
 だから、女の人がよく買いに行ってるのを見かけるんだ。それなりにカッコよくて、おまけとかしてくれるんだもん。お店、人気はあると思うんだけどね。それでも、物凄く売れ残りそうな程、入荷しちゃったんだから大変だよね。
「ダメですか」
「…ったく。俺もオトコに協力すんの、好きじゃないんだがな」
「お花に協力」
「はいはい。…って事で、コーネフさん、ポプランさん、何か妙案はありませんかねぇ?」
 …へっ。
「…ねぇよ」
「花屋に転職した覚えはないんだけどねぇ」
 あー。少佐たち!いつから聞いてたんだろ。
「だって、お花、かわいそうだったんですもん」
「…うーむ」
「…どう考えても、俺達がアリスに甘いのバレてるよな」
「まぁ、今更。…アリス、ほらケーキ」
「いただきまぁす!」
 わーい。コーネフ少佐のケーキ〜。美味しいんだよ。甘さ、ちょっと控えめだけど!なんとなく大人っぽくて、美味しいの。
 もうちょっと甘くても、全然、構わないんだけどね!
「…まぁ、赤のカーネーションで簡単に思いつくのは母の日だよな」
「縁の薄い行事出されてもなぁ」
 隊長の言葉に、あんまり乗り気じゃないポプラン少佐。…縁がないって言えば、私も母の日には全然、縁がないんだけど。施設育ちだしなぁ。
「いやだから。この際、『母的な人』にプレゼント、とかでも良いんじゃないかと」
「…はい?」
「イゼルローンに母親がいるなんて、家族で赴任してきた一部の人だけだろ」
「あぁ、うん」
 イゼルローンに住んでる、ほとんどの人は、独身…って言うか、単身赴任なんだよね(一応、軍事施設な所為らしいよ。もっと時間が経つと変わってくるみたいだけど)。
「だから、この際、行きつけの店の小母さんでも、面倒見てくれる誰かでも良い。自分が贈りたい人に贈るってのはどうだろーかと」
 おおー。さすが隊長。
「…アキヤマ、商売上手いな」
「おう。…で、大量にあるんだから、廉売」
「…いいんじゃね」
「まずは軍内に出店出来るか、キャゼルヌ少将に掛け合ってみようか。マージン、少し入れるように言えばOK出るんじゃないかな」
「コーネフさん、流石ね〜」
 キャゼルヌ少将にお願いするトコロがミソなんだな、きっと。それより、マージンってなんだろ。後で聞いてみよう。
「あぁ。じゃあ、後はデートの先々で吹聴して回るわ。こういうの、話題になると効果高いもんな」
 あぁ、そっか。じゃあ、私もお友達に言ってみよう。買ってくれるかもしんない。
「空戦隊は義務付けちゃえば良いし。…アリス。薔薇の騎士に売りつけるのはお前の役目だ。気張れ」
「うぁいっ!」
「…返事は、口の中のモン、飲み込んでからな」
「…はぁい」
 失敗、失敗。
「じゃ、今から行って来ます! ───────────── …ぐぇっ」
 隊長が首根っこ引っ張ったー!首が絞まる、首が!
「…待たんか。その前にキャゼルヌ少将んトコで交渉して来るから」
「認可されたら、花屋に連絡してもらわないと。アリスが頼まれたんだから」
 はぁぁぁ。順番があるのか。
「…私も行くの?」
「言いだしっぺだろーが」
 …偉い人って苦手だよーっ。




「…母の日用に花買うの?」
「はい。出来れば、皆で」
「…連隊長〜」
「あー。聞いた、聞いた。全員買え。んで、適当に撒け」
 …母の日イベントはキャゼルヌ少将のツボだったみたいで、すぐ許可が下りて、急いで来た薔薇の騎士オフィス。買ってくれるのは嬉しいけど、こんな簡単でいいんだろーか…。
 ま、いいか。







「…良くないよ。なんで、空戦隊員も薔薇の騎士も、全員俺んトコに持って来るんだ」
 …コーネフ少佐は当日、カーネーションに埋もれて頭抱えてたけどね。
 めでたし、めでたし。
「いや。だから、めでたくない」






END



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