【アクトレス】

Gradation
Gradation / 奥菜 恵

 瞳の扉〜Believe in your eyes〜
 I・I・K・A・G・E・N 愛してる
 今でも…あなたが好きだから
 とってもゴメンネ
 あなたのそばで
 sweet time
 短い夏
 こんなふうな せつなさって
 雨の雫
 一番星を探して

「アイドル?女優?どっちでもいいや」

 90年代の中頃から終わり頃はバブル崩壊と言われたごく初期の段階の頃で、景気はまだ今ほど悪くありませんでした。そういうこともあってちょっと名の知れた女優さんなら誰でもシングルの一枚くらいは発表していたものです。三井ゆりや葉月里緒菜もシングルを出していたし、少し前なら坂井真紀、菅野美穂なんかもシングルを出していましたね。女優として大ブレイクした裕木奈江はそれ以前には渋谷のライブハウスで定期的にライブ活動をしていました。確かに中には話題先行型でお世辞にも歌がうまいとは言えなかった人もいましたが、なかなかクオリティの高い作品を作っていた人もたくさんいました。

 今回は精力的な歌手活動をしていたにもかかわらずあまり評価を受けることがなかった5人の女優さんについて紹介していきたいと思います。個人的にはこの5人の歌手活動が過小評価されているのが非常に残念で仕方がありません。今からでも遅くないから是非再評価されてもらいたいものです。

奥菜 恵
STAIRS
STAIRS
/奥菜 恵
オキメグ  奥菜さんのシングルは、特に初期のものは「えっこれがシングルで本当に良いの?」というようなマイナー系な曲が多いですがどれも完成度は高いです。デビューシングル“この悲しみを乗り越えて”からして失恋した女性(女の子ではありません)の感情を歌にしたすごい内容でした。このシングルが発売された当時まだ奥菜さんは高校一年生!

 そして初期の傑作といえば何といっても3枚目のシングル“あなたのそばで”に尽きます。ゆったりしたリズム、生ギター、ベースを基調にした曲で、アイドルでブラコンやらせたら右に出るものがいないと言われている山川恵津子の作品。こんな曲がお菓子のCMソングだったなんて!他にはなんとEVERY LITTLE THINGが後にセルフカバーした4枚目のシングル“今でも…あなたが好きだから”、そのC/Wの“瞳の言葉〜Believe in your eyes〜”と名曲がそろっていてます。これらを収録した3枚目のアルバム「Graduation」は和製ポップスの傑作でお奨めの一枚。

 サウンドプロデューサにRKこと河村隆一を迎えた後期の“ゆらゆら”はドラムが小田原豊、キーボードが土橋安騎夫というレベッカ陣で、特に土橋氏の「片手で弾けるキーボード」はもろにレベッカサウンドになってます。アルバム「i・n・g」の一曲目に収められた“Cherry Pie”は奥菜さんのセクシー路線大爆発。♪甘くてぇ〜あつい午後ぉ〜♪の「〜」の部分の息の抜き方がすごく良い感じ(^^)。この時期の奥菜さんは小悪魔的なイメージも相まってちょっときわどい曲が多かったですね。

 これだけすごい曲が目白押しなのにセールス的にはいまいちだったのが非常に残念。ビデオクリップも何曲かは製作されているはずですが結局商品として発売されることはありませんでした。“淑女の夢は万華鏡”のクリップでドラムをたたく奥菜さんすごくかわいかったんだけどな。ちなみに奥菜さんは特技でドラムがたたけます。

広末涼子
Arigato
アリガト!
/広末涼子
ヒロスエ  ヒロスエが歌手デビューした時にはマスコミを含め日本全国で話題になったような記憶があります。この時期カラオケでは誰もが“MajiにKoiする5秒前”を歌っていましたね。個人的にはマスコミにチヤホヤされていてあまり好きではなかったのですが、2枚目のシングル“大スキ!”を聴いてから一気に好きになりました。

 ヒロスエは豪華作家陣がサポートしたこともあってシングルはどれも非常にクオリティが高いですね。何しろファーストシングルが竹内まりや、セカンドが岡本真夜、サードが原由子ですから。そして冬の女王広瀬香美が提供した4枚目“summer sunset”とか椎名林檎(!)が提供した“プライベイト”(ジーンズc/w)も好きです。ただ、良い曲がいっぱいあるのに殆ど歌われる機会がなかったのが残念。

 後期には奥菜さんと同じセクシーロック路線にチェンジし、シングル“果実”を発表。この曲、一般人からは既にヒロスエマジックが溶けた頃に発表されたこともあってあまり話題になりませんでしたが、ヒロスエの傑作の一つだと思います。最近になってこの曲のクリップをCSでエアチェックできてうれしかったものでした。今のところのヒロスエの再新曲は「Perfect Collestion」で発表された“睡蓮の舟”で、これは東京スカパラダイスオーケストラからの提供でした。

辺見えみり
DEBUTANTE
DEBUTANTE
/辺見えみり
 今回の5人の中では一番歌手としての活動が一般に広まっていない気がします。テレビ番組で歌っているのも見たことがないし。でも曲はさすがFUN HOUSEという感じでシティポップス路線まっしぐらのセンスの良い曲が多いですね。モータウン調の“きれいになろうよ”とかアコーディオンが良いアクセントになってちょっとヨーロッパっぽい“いつも大好き”とか「サージェントペパーズ」の頃のビートルズ路線の“白い自転車”とかが好きです。ここでも山川恵津子さん、大活躍しています。

 後期にはスピッツの曲をたくさんカバーしていて、シングルとしては“流れ星”が発表されています。個人的にはスピッツの曲で一番好きな“夢じゃない”のカバーがやっぱり良いですね。辺見バージョンが発表された当時、原曲はまだインディーズでしか発表されていませんでした、何とこの半年後にスピッツがメジャーレーベルでリメイクしました。このリメイクバージョンが奥菜さん主役のドラマ「ふたり」の主題歌だったわけです。

木村佳乃
ONE AND ONLY
ONE AND ONLY
/木村佳乃
 デビュー曲が“イルカの夏”というちょっと人を食ったようなタイトルだったので歌手活動はお遊び程度と思われているのがちょっと残念ですが、結構コンスタントにシングルは出していたし、オリジナルアルバムも2枚発表しているしライブ活動も行っていたし本人的には相当歌に入れ込んでいたと思います。CMソングだった“ハローマイセルフ”がお気に入り。

永作博美
N
N
/永作博美
ながさく  この5人の中では最も歌手活動が長くそして一番古いです。もともとはribbonという3人組のアイドルグループのメンバーとしてデビューし、'93年にソロ第一弾シングル“My Home Town”を発表しました。この曲はL⇔Rの黒沢氏の曲で、ポップスマニアの氏らしくベースラインや間奏のトランペットの音は「リボルバー」の頃のビートルズを彷彿させます。また、少しくもぐもしたミックスはどんよりとした空を思い起こさせ'93年の記録的な冷夏にピッタリでした。

 ファーストアルバム「N」は“My Home Town”と同路線のアコースティックサウンドでお気に入りの一枚。特に冒頭の“Go Alone For Love”はウッドベース、バイオリン、アコースティックギターのカッティングそして永作のボーカル全てが有機的に溶け合って大好きな曲です。ちょっとしたリゾートソングですね。

 元アイドル出身ということもあってか曲自体に関してあまり評価されていないのが残念。あっ、ribbon自体も“Do You remenber Me?”のカバーとか当時のアイドルとしてはかなりクオリティの高い曲が多かったですよ。

 以上5人が歌手活動をしていたのは7cmのCDシングルがまだ全盛の頃でした。この頃にはアナログのシングルに準じてカップリング曲もあり、音楽ファンとしては「シングルを買っている」という気分があったものでした。今は12cmのいわゆるマキシシングル全盛になり、カップリングにリミックスバージョン等が収録されているのも多くなり、以前ほどシングルを買っているという感じではなく、12インチシングルとかミニアルバムを買っている気分です。だいたいCDの大きさがアルバムもシングルも同じなんですから。なんだかシングルはアルバムよりも小さいサイズの方がしっくり来るのですが、そういう考えはもう古いのかもしれません。

(03.06.07)

ジャケット写真は全て私が所有するCD、レコードその他を撮影したものです。

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