団員のひとりごと 第10回

担当: 第二バイオリン 川上
このお正月、WOWOWで“なつかしアニメ一挙大放送”ということで「アルプスの少女ハイジ」が10日間連続再放送されました。懐かしい気分になった私は、毎日ビデオをばっちりセットして録画しまくり、遅ればせながら2月に入ってようやくそれらをすべて観ました。

子供の頃の印象としては、自然の中で純真なハイジとその仲間たちが繰り広げるドラマ、最後は自然の中でクララが歩けるようになるハッピーエンド、、、という単純な印象でしたが、今回改めて30年ぶりぐらいに観るとずいぶん印象が変わりました。

まずは主題歌「おしえて」ですが、アルプスの朝を象徴するようなホルンの旋律に続いてヨーデルが序奏を奏で、♪口笛はなぜ〜、遠くまで、、、♪とおなじみの主題歌が始まります。バックの弦楽器、特に低音が案外激しい動きをしているのに驚きます。ところどころ合いの手で入るバイオリンのオブリガートも印象深いです。そして再びヨーデルに戻っていよいよその日のお話のはじまり、はじまり、、、。

さて、今回全編通して観た感想としては、日常的に非常に心理描写が多いアニメであること、ハイジの夢遊病、身体表現性障害としてのクララの“足の病気”の治る過程、、、などドラマの筋書き自体が心理療法的な過程であることに感心いたしました。

一癖もふた癖もあるけど本当はやさしいおじいさん、そこにひょっこりやってきた純真なハイジ、その交流の中でおじいさんの硬くなった心が氷解していく様子が様々な場面の描写に示されています。羊飼い・ペーターとハイジのかかわりでは、同じ子供どおし、楽しみを共有したり時にはやきもちを焼いたり、、、思わずこちらも童心に帰ったような心持にさせてくれます。

フランクフルトでは山のことを考えたり話したりすることを禁じられたハイジは夢遊病を発症し、その解決として山に再び帰されます。そこにやってきたクララ。ハイジという自他の区別がないぐらい真心からクララを思う存在、バランスのいい距離を保ちながら父性・母性の両方を備えたおじいさん、子供仲間としてのペーター、そして本来の力を目覚めさせてくれるアルプスの自然、、、、こうしたクララを囲む願ってもない環境の中でクララの足は治るべくして治ってゆきます。娘を持つ身で、そろそろじい様になってきた私としては、フランクフルトから帰ってきたハイジがおじいさんと再会する場面は、おじいさんの心中を思うとあまりに感動的でした。

それから、このアニメには悪人が登場しないこともおもしろい。ロッテンマイヤーさんというクララのゼーゼマン家の執事は、一見、口うるさく意地悪な存在のようではありますが、彼女はその当時の慣習、礼儀に則った“由緒正しい”価値観からいろいろ言っているわけで、決して悪人ではありません。それでいて“ロッテンマイヤーさんが、、、、”という緊張感を子供に与えてくれます。

子供の時は子供なりの、大人になっては大人なりの見方ができて楽しめる。”名作”というのはこういうものか、、、と実感した経験でした。

そこへいくと、最近のアニメはちょっとお寒い、、、。
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アルプスの少女 ハイジ