団員のひとりごと 第7回

第九の季節

担当: 第二バイオリン 川上
いつの間にか“第九”の声を聴く季節となった。
私は、この“第九”を聴くと、一方で“第五”すなわち“運命”交響曲のことを、つい思い出してしまう。

“運命”はかくの如く扉をたたく、、、の冒頭に始まり、打ちのめされた個人がどん底からゆっくりと身を起こし、一歩一歩あゆみ始め、最後に“勝利の凱歌”にたどり着くという、その単純明快、、、だけど凝縮されまくった名曲はあまりに感動的だ。

この曲のモチーフはどう見ても個人的・内面的な体験が示唆されるが、一方で“第九”はもっと歴史性、普遍性を訴えた曲のように思えてならない。言うなれば、有史以来、人類がくぐりぬけてきた幾多の苦難の歴史が再開され、そうした事柄たちの昇華の上に理想の世界を夢描く、、、、そんな曲に聴こえて仕方がない。

同時多発テロとそれに引き続くアメリカなどのアフガン攻撃、それによって生まれた大量の難民、緊張が極めて激化しているパレスチナ、世界のあちらこちらで多発し続けている内戦。また経済の方も、まったく先行きが見えない状況で失業率はどんどん上がってゆく始末。教育、文化の面でも問題は山積みだ。

このような一年の終わりに聴く“第九”は、ベートーベンがこの曲に込めた思いが、200年も経った今現在でも、その生命力を持っているように思えてならない。
早く“過去”の曲になって欲しい、、、と思いつつ。
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