タイピング 葉月珪セリフ集

一週目

ステージ1

1年生 春
臨海公園

最近はこの辺、いろんな建物ができるんだな。
人工物ばかりじゃ、嫌になるよね。
賛成。緑は残すべきだと思う、昼寝する場所が減るから。
昼寝する場所?
ああ。俺の趣味は昼寝だからな。
緑の木陰でお昼寝か。気持ちよさそう。
ああ!すごく気持ちいいんだ。おまえ、今度一緒に昼寝してみるか?
ちょ、ちょっと葉月君。
なんだ、嫌なのか?
わたしだって一応女の子なんだよ。
それがどうかしたのか?
わ、話題を変えようよ。そういえば入学式の時さ。
いきなり、話が飛ぶな。
教会のところで何してたの?
教会のところで……忘れた。
わたしね、あの教会がなんだかとても懐かしい気がするんだ。
そうか……。どんな風に?
よくわからないけど、教会の夢を見て泣いちゃったんだ。
悲しい夢……だったのか?
そうじゃないけど、あれは夢じゃなくて、昔の思い出かもって。
夢じゃなく思い出……か。
もしかしたら学校の教会は夢で見たのと同じかもって。
あとはどんな事を覚えてるんだ?
男の子が出てきたような気がする。
まあ、いつか思い出す日が来るかもな。
教会の中に入れたら思い出せるかもしれないのになあ。
あの教会のドアは壊れていて今は開かないらしい。
残念だけどしかたないな。
ステージ2

1年生 夏
近所の公園

なんだ、おまえか。
葉月君また公園でお昼寝してたの?
今、時間何時だ?
もう夕方だけど、もしかして今日もバイト行けなかったの?
みたいだな。……面白い夢見てたんだ。
どんな夢見てたの?
猫が……。
猫がどうしたの?
ああ、猫がたくさん出てきた。それにあいつらしゃべるんだ。
いいなー。猫とお話できたら楽しいだろうな。
おまえ、本当にそう思うのか?
どうして?葉月君も楽しかったでしょう?
あ、ああ。そうだけど、普通猫がしゃべったら変だろう?
そんな事ないよ。わたしよく近所の猫とお話するよ。
おまえ、猫の言葉がわかるのか?
そうじゃないけど、お腹空いたよーとかわかるでしょ?
ああ、それなら俺もわかる。
それから、寂しいよーとか。
ああ、わかる。体をすり寄せてくるんだよな。
そうそう、そんなときね、わたしも自分の事とか話かけるんだ。
どんな事だ?
気になる人の事とかね。わたしのことどうおもってるのかにゃー、なんてね。
ははは、かにゃーって、なんだそれ。
なんだそれじゃないよ。猫語だにゃー。
おまえって、面白いヤツだな。
そうかな?普通だと思うけどな。
よかったら、今度体育館裏の猫の家族を紹介してやる。
本当?楽しみにしてるね。
ステージ3

1年生 秋
学校屋上

最近、おまえとよく屋上で会うな。
うん、気分転換しによく来るんだ。
そういえば、おまえの弟……名前、なんだっけ?
え、尽?尽がまた何かいたずらしたの?
そうじゃない。このあいだここで家族の話したろ。
うん、ごめんね。わたし、勝手な事言っちゃって。
別に、それはいいんだ。
それで尽がどうかしたの?
ああ、俺、一人っ子だから兄弟がいるのってどんな感じなのかなって。
もうすっごく大変だよ。勝手にわたしの部屋に入ってくるし。
それから?
葉月君にも、携帯の電話番号勝手に教えちゃうし。
でも、そのおかげで俺たち今、こうしてるんだな。
そ、それはそうだけど。あと、すっごく生意気なんだ。
どんなふうに?
姉ちゃん色気無いなとか。ちゃんとオシャレしろよとか。
姉思いのいい弟なんだな。
そうかな?やたらおせっかいなだけだよ。
なんだかんだ言って、おまえたち仲いいみたいだな。
葉月君も弟欲しいの?
そうだな……やっぱ、やめとく。
(葉月君、なんだか寂しそう。わたしったら変な事聞いて悪かったかな?)
おまえ、考えてる事がすぐ顔に出るな。
えー!そうなの?わかっちゃった?
冗談。
もう葉月君ったら。
ステージ4

2年生 春
ボーリング場

今日は何するんだ?
ビリヤードがいいな。
ああ、かまわないけど……おまえ、いいのか?
え?どういう事?
いや、このあいだあんな事があったから……。
あー!わたしは全然平気だよ。
そうか。よかった。
といっても、本当はちょっと気になる事があるんだけどね。
やっぱり、気になるか?アイツが言ってた事。
ううん、そんなんじゃなくてね。
どうしてまっすぐ打ったのに玉が曲がるのかなって。

なんだそれ。
ひどーい!笑わないでよ。こっちは真剣なんだから。
悪い。おまえ、変な事言うから。
変じゃないよ!まっすぐに打ってるはずなのに、玉が曲がっちゃうんだもん。
おまえ、やっぱり変わってるな。
葉月君は、どうやってビリヤード上手くなったの?
……なんとなく。
なんとなくって、どういう事?
最初から、なんとなくできたから。
(やっぱり天才なのかな?)
今日は俺がちゃんと教えてやるから。
本当?うれしいな。
ああ、ビリヤードの教え方を教わったんだ。
(え、それってもしかしてわたしのために?)
基本的に物理学だから、まっすぐ打てれば何とかなる。
ぶ、物理学ですか?
いや……おまえ、考えなくていいから。
そ、そうだよね。じゃあ、葉月先生お願いしまーす!テヘ!
やっぱ、帰るか……。
あーん、ごめんなさーい。
ステージ5

2年生 夏
芝生広場

緑が気持ちいいな。
うん、今日も特製お弁当作ってきたんだ。
サンキュ。おまえ、気がきく。
へへへ。ところで葉月君。
なんだ、その変な作り笑いは?
葉月君の苦手な食べ物ってなんだっけ?
生野菜の……苦いやつ。
そうだったよね。でもカイワレ君はもう大丈夫だよね?
まあな。おかげさまで。
ふふふ。それでね、今日は春菊ちゃんをサンドイッチにはさんでみましたー!
春菊ちゃん……。
そうだよ。葉月君に食べてもらいたくて一生懸命育った春菊ちゃん。
待て……春菊って、生で食べないだろ?フツー。
そうかな、そんな事ないよ。
そうだ。すき焼きとか、鍋に入れるんだ。
えー、でも無農薬有機栽培で体にとってもいいんだよ。
無理って言ったら、無理。
(わたしって、お料理のセンスないのかな?)
……もうわかったから、そんな顔するな。
え、それじゃあ葉月君食べてくれるの?
……食べる。
やったー!春菊ちゃんも喜んでるよ。
もう、他にはないだろうな。
うん、今日のところはね。
今日のところは?
(ふふふ、次はパセリ君かな。)
ステージ6

2年生 秋
修学旅行

おまえ、大丈夫だったか?
え、なんの事だっけ?
ほら、さっき枕投げの時、ケガしなかったか?
大丈夫だよ、ちょっとビックリしたけどね。
真っ暗だったな、押入れの中。
(あらためて思い出すと、どきどきするな。)
でも、俺、すぐにおまえだってわかったんだ。
え!どうして珪君?
シャンプーの匂い。おまえ、前と一緒だから。
前と一緒ってどういう事?
いつか、森林公園で。俺がファンの女の子に見つかりそうになったとき。
あの時ね。すごくびっくりしたけどスパイ映画みたいで楽しかったよ。
いい匂いだって、思った。あの時も。
そんなふうに言われると、なんだか照れちゃうな。
あすの自由行動、どこ行くか、決めたのか?
ううん、まだ。わたしはどこでも構わないけど。
俺、行ってみたい所があるんだ。
え、珪君どこに行ってみたいの?
大文字焼きが、見えるとこ。夜の闇の中に炎の文字が燃え上がるんだ。
でもあれって八月で終わってるはずだけど。
そうなのか?
うん、大文字焼きはお盆の送り火だから。
おまえ、やけに詳しいんだな。
テレビで見たんだ。珪君はテレビまだ直してないの?
……ああ。そういえば、まだ。
そうか、残念だったね。せっかく楽しみにしてたのに。
大した事じゃない。忘れろ。
(やっぱり珪君、ちょっと残念そう。)
ステージ7

3年生 夏
近所の公園

このあいだ、雨の日、悪かったな。先に帰って。
こっちこそごめんね、尽がお話の邪魔しちゃって。
いや……別にいいんだ。
まったく、急に現れるんだから。困ったヤツ。
変わった弟だな。
濡れて帰って、風邪ひかなかった?
ああ、大丈夫。なんともない。
よかった。心配してたんだよ。珪君、気を悪くしたんじゃないかって。
そんなんじゃ……ないんだ。
そういえば、珪君、何か言いかけてなかったっけ?
あれは……もう、いいんだ。忘れてくれ。
そうなの。よかったら、いつかまた話してね。
ああ……いつかな。
うふふ、よかった。
そういえば、もうすぐ花火大会だな。
そうだね。ねえ、今年も一緒に行ってくれるかな?
ああ、おまえ一人じゃ、迷子になりそうだからな。
わ、わたしって、そんなに頼りないのかなあ?
冗談。……おまえ、去年の花火大会の時、浴衣着てきただろ。
うん、ひらひらして金魚みたいだって。
ああ。……おまえに似合ってた。今年も浴衣着るのか?
実は、新しい浴衣を買おうと思ってるんだ。
そうか。じゃ、今日これから、付き合ってやろうか?
本当?ありがとう。ブティックナナミで売ってるんだ。
よし。じゃあ、行くか。
(珪君とショッピング、楽しいな。)
ステージ8

3年生 秋
臨海公園

今日は大観覧車、乗ってみるか。
うん、わたしもそう思ってたんだ。
そうか、じゃ行くぞ。
ねえ、珪君、このあいだの話の続きをしてよ。
なんだ、このあいだの話って?
ほら、観覧車が故障で止まったときの。
ん……?俺なにか話したか?
珪君が子供のころ泣いてると、おじいさんがしてくれたお話。
あー。じいさんの話。
そうそう、話の途中で故障が直って、おしまいって。
そうだったか?
そうだよ、だから今日はその続きを話してよ。
たいした話じゃない。
あの夜、どんな話かずっと考えていて眠れなかったんだから。
おまえ、それで次の日、遅刻したのか。
もう。変な事ばかり覚えてるんだから。
俺、そういうの覚えんの、得意。
そうじゃなくて、おじいさんのお話してよー。
ああ。じゃあ、今日も観覧車、止まったらな。
(こうなったら、非常停止ボタンを押すしかないかな。)
おまえ、今すごく危険な事考えてただろ。
ええ!な、なんの事かしら。あははは。
やっぱり、はばたきタワー、行くか。
(なんだか上手くはぐらかされてしまったな。)
ステージ8の
デート後
(ああ、今日のデートは最高だったな。こうして珪君に家まで送ってもらえるし。)
なあ。空、見てみろよ。
うわー、今日は満月なんだね!
ねえ、珪君。お月さま見てるとなんだか悲しい気持ちにならない?
別に、俺はそんな事ないけど。
ほら、かぐや姫とかさ、月の砂漠の歌とか思い出すとさ。
おまえ、結構変わってるんだな。
じゃあ、珪君はお月さま見てどんな事思うの?
おれは……うさぎ……かな?
ねえ、知ってる?お月さまにうさぎがいるように見えるの、日本だけらしいよ。
そうなのか?
うん、国によって別の形に見えるんだって。
へえ……。猫に見える国とか、あるか?
猫かあ。それだったらニャージーランドかな?
なんだそれ。
(最近、珪君よく笑うようになったな。)
ステージ9

3年生 冬
クリスマスパーティー

おまえ、今日、なんか大人っぽいな。
そうかな、このドレスのせいかな。
かもな。その口紅の色も、おまえに似合う。
ありがとう。珪もタキシード決まってるね。
そうなのか?自分じゃ、よくわからない。
結局何を着ても似合っちゃうんだよね。
なあ、それより、プレゼント交換だけど。
今年もわたしたち、お互いのプレゼントをもらったね。
ああ、三年連続。……どういう事だ?
すごい偶然だよね。こんなことあり得ないよ。
それに、俺の欲しかった物、必ず入ってるんだ。
(うふふ、珪が気に入りそうなものを買ってるからね。)
俺、いつも、自分が気に入った物、選んでるんだ。
アイマスク、安眠枕、今年がスノードーム。たしかにそうだね。
おまえ、気に入ってるか?
うん!全部気に入ってるよ。
だろ?俺も、同じの持ってる。結局、いつも自分の分も買っちゃうんだ。
理事長の家のクリスマスパーティーも今年で最後だね。
ああ……。まあ、俺はな。
俺はって。わたしも卒業だよ?
だと、いいけどな。
ひどーい!たしかに成績は良くないけど。
冗談。そうか……今年で最後なんだな。このパーティーに来るの。
(これが珪と過ごす最後のクリスマスパーティーなのかな?)
なあ、おまえ、今日この後……。
え?今日この後?
いや、なんでもない。それじゃあ俺、行く。メリークリスマス、よい夜を。
(なんだろう?珪、何か言いたそうだったけど。)
ステージ10

3年生 冬
葉月君の部屋

なんのお構いも出来ませんが。
あれ、そのガラスの一輪挿し。
ん、あぁ。クリスマスパーティーでおまえにもらったやつ。
飾っておいてくれたんだね。
ああ、結構気に入ってるんだ。
赤いバラがとっても似合うね。
だな。モデルの撮影の時に使ったやつとか、もらってきてさしてる。
わたしもスノードームで毎日雪、降らせてるんだ。
毎日?さすがに飽きるだろ?
そんな事ないよ。だって珪にもらったプレゼントだもん。
バカ。
(雪が降る間、ずっと珪の事想ってるんだ。)
どうした?なんだか顔、赤いぞ。
な、なでもない!そうそう、珪にもらったジグソーパズルだけど。
ああ。ホワイトデーのヤツ。
そう。百一匹子猫ちゃん。
なかなか、いいだろ、あれ?
うん、とってもかわいいんだけど。
どうした?
難しくてまだ完成してないの。
……おまえな。あれ、もう1年以上も前のプレゼントだぞ?
わたし、やっぱりとろいのかな?
悪い。べつに、責めてるわけじゃない。
はあ。あとどれくらいかかるんだろう。
そんな顔するな。今度一緒にやってやるから。
本当?それじゃあ、わたしの部屋に来てくれる?
……おまえの、部屋?
女の子の部屋って、やっぱり緊張する?
いや、女の部屋っていうより……。
どうしたの?顔、赤いけど。
別に……。熱、あんのかもな、俺も。
(うふふ、珪ったら。)

二週目(ステージ5までは同じ)

ステージ6

2年生 冬
初詣

今年もおみくじ引くのか?
当然だよ。年の始めはやっぱりおみくじでしょ。
そういうもんか?
そういうもんだよ。珪君のおみくじは、やっぱり今年も?
ああ、大吉。
今年も運勢いいんだね。わたしなんてまた大凶だよ。
それはそれで、珍しいだろ。……おまえ、気にすんのか?
そりゃあ、やっぱり気にしちゃうよ。
じゃあ、交換してやる。俺のと。
(珪君、そういう事じゃないんだけどなー。)
ん、おまえのおみくじ……待ち人来たるって書いてあるぞ。
本当だ!やったー、これだけでも救われるよ。
誰か……待ってるヤツ、いるのか?
(目の前にいるんだけどなー。)
誰だよ?……待ってるヤツって。
あれ、もしかして、気になる?
……別に。
じゃあ教えてあげない。
じゃあ、聞かない。
(本当に素直じゃないんだから。)
そういえば、さい銭、投げた後、ずいぶん熱心にお願いしてたな。
そ、そうかな?まあ、いろいろとね。
おでこのしわ、まだ取れてないぞ。
えーやだ!本当?
冗談。
珪君って、結構いじわるだよね?
まあな。……おまえ、何お願いしてたんだ?
いじわるな珪君には教えないよ!
ケチ。……なあ、今年もいい一年になるといいな。
うん!そうだね。絶対にいい一年にしようね。
ステージ7

3年生 春
校舎裏

……ん?今日は猫の親子、どこかに出かけてるみたいだ。
あーん、せっかくミルク持ってきたのにな。
残念だったな。でもすぐ帰って来るだろ。
そうだよね、帰って来るね。ところで珪君。
……何だ?
このあいだ、子猫の一匹をわたしの名前で呼んでたよね?
……忘れた。
ううん、絶対呼んでたよ。
……そう、だったか?
うん、マイペースでとろいところがわたしにそっくりだって。
おまえ、つまんない事はよく覚えてるな。
(わたしにとってはつまんない事じゃありませんよ。)
アイツ、他の子猫たちがミルクもらってるときも、いつまでもじゃれてるんだ。
ふーん、そうだったんだ。
だから、他のヤツらともうまくいってなくて……。
そう言われれば、たしかにそうだね。
身体も、ちょっと小さいんだ。
そっか。みんなと仲良く成長してくれるといいね。
ああ。独りでやってくのって、結構キツいから。
(珪君。もしかして自分の事言ってるのかな?)
なあ……アイツと同じ名前、イヤか?
ううん。いいよ。愛着わくし。
サンキュ。おまえのそういうとこ、助かる。……俺、大切にするから。
(え!猫の事だよね。)
ほら、帰ってきた。猫の親子。
本当だ。待っててよかったな。
やっぱり小さいな。たくましく育って欲しい……おまえみたいに。
ちょっと引っかかるけど。よーし、今日は君にたくさんミルクあげようね!
ステージ7の
デート後
(図書室で勉強してたら遅くなっちゃった。)
(あれ?あそこにいるのは?)
(珪君だ。どうしたんだろう、あんなに真剣に何の本読んでるのかな?)
珪君、何読んでるの?
お、おまえか。ちょっと……調べもの。
植物図鑑?
ああ。
もしかしてアクセサリーデザインの参考にするの?
おまえって、ふだんトロいくせに時々鋭いこと言うんだな。
あ、またトロいって言った。
悪い。
それで、どんな植物の形にするの?
ああ、それは……ヒミツだな。
ケチ!教えてよ!
イヤだ。
教えてくれたっていいのに。
教える。……いつか、必ず。
(珪君?)
ステージ8

3年生 秋
葉月君の部屋

はい、ジュースしかないけど。
ありがとう。
なにか、音楽かけようか?
うん、バイオリン協奏曲がいいな。
メンデルスゾーン、チャイコフスキー、ベートーベン。どれにする?
珪君にまかせるよ。
それじゃあ、これにするか。
いいね。あ、そういえば珪君って、昔バイオリン習ってたんだよね?
ああ、子供の頃。
すごーい。おぼっちゃまって感じだよ。
そうなのか?ウチは、たまたま、母親がな。
珪君のお母さんが、どうしたの?
……俺の母さん、オーケストラのバイオリニストなんだ。
うわー!じゃあ、英才教育だね。
あまり、押し付けられたりはしなかったけど。ただ……。
ただ?どうしたの?
……バイオリンを弾いてると、
いつの間にか父さんと母さんが、そばで聴いていてくれたんだ。
すごく絵になりそう。幸せな家庭って感じだね?
それが嬉しくて、夢中で練習してたような気がする……。
さすが、お父さんもお母さんも珪君の性格、よくわかってる。
まあな。そういえば、独りで暮らすようになってから、弾いてないな……。
そっか。二人とも、今は海外なんだね。寂しいね。
慣れっこだからな……今さら、どうって事もない。
(珪君。本当は寂しいんだろうな。)
なんか、湿っぽいな。そんなシリアスな話じゃない。
ねえ、寂しくなったら、いつでも言ってね?
寂しくないって言ってるだろ?
でも、本当は無理してない?
寂しくなる前に、いつもおまえがいるから。今は……。
(珪君。そんな風に思ってくれてたんだ。)
ステージ9

3年生 冬
フリーマーケット

このあいだはサンキュー、おまえのおかげでアクセサリー全部売れたな。
ううん。珪のデザインがいいからだよ。
あれくらいのデザイン、誰でもできるだろ。
そんな事ないと思うけどな。
そうだ。やっぱりおまえが来なかったら、あんなに売れなかったと思う。
わたし、商売の才能あるのかな?
ある。俺には、絶対無理だと思う。
実はね、将来の夢があるんだ。
将来の夢、なんだ?
珪の将来の夢って宝飾デザイナーでしょ?
ああ、そうだけど。
わたしね、珪のアクセサリーを販売したいんだ。
おまえ、よくそんな無茶なこと考えるな。
えへへ。でも作ったアクセサリーを売る人が必要でしょ?
まあ、そうだろうな。
だから、わたしが珪のアクセサリーを有名にするの。
気楽なヤツだな……そう上手くはいかないだろ。
大丈夫!アクセサリーがジャンジャン売れたらね。
ジャンジャンって、おまえなぁ……。
素敵なお店を出すの。
どこまで行くんだ、その話……。
そのお店の名前なんだけど、珪、何がいい?
……いや、名前って言われても。
もう!わたしたちのお店の事なんだよ?
そっか、悪い。……名前……ちょっと待て。おまえの夢の話じゃなかったか?
だからわたしの将来の夢は珪の。
俺の……?
なんでもない!
ヘンなヤツ。ン?……おまえ、顔、赤いぞ?
そ、そうかな?
どうした、熱でもあんのか?
(珪が、にぶくてよかった。)
ステージ10

3年生 冬
並木道

やっぱり、まだ寒いな。
本当だね。息が白い。
この並木道、おまえと何度も歩いたな。
そうだね、春のお花見の時も来たね。
ああ、桜吹雪が本当の雪みたいだった。
夢の世界にいるみたいだったよね。
夏にもよく来たな。
日差しがすっごくまぶしくて!一緒に飲んだお水がおいしかったね。
そういえば、あの池のボート、結局乗らなかったな。
だって、恋人同士で乗ると別れるって噂があったからね。
おまえ、ずいぶんムキになってたな。俺とは絶対に乗らないって。
そ、そうだっけ?
どうしてだ?
(もう。本当ににぶいんだから。)
なんだよ?……ヘンなヤツ。ここ、秋も落ち葉がきれいだったな。
映画のワンシーンみたいでロマンチックだったよね。
ああ、そして冬が来て、また春が来る。
ねえ見て。また新しい芽が、ほら。
本当だ。今年もまた、桜……きれいだろうな。
(卒業したら、もう珪と一緒に桜吹雪は見られないのかな?)
……どうした?俺、ヘンな事言ったか?
ううん、なんでもないの。ただ、ちょっとだけ。
ただ、ちょっとだけ?
クシュン!
寒いのか?……ほら、俺のマフラー貸してやる。
(うわー!珪のマフラー温かいな。なんだか眠くなってきた。)
なあ……桜の咲く頃、またおまえと……。
あ、ごめん!今なんて言ったの?
……風邪ひかないうちに、帰るか。

(なんだか大切な事聞き逃したような。)

エンディング

  (あーあ、もうすぐ卒業か……。あっという間の三年間だったな。)
誰だろう?……もしもし?
俺、葉月。
珪。どうしたの?
今からちょっと、出られるか?
うん、大丈夫だよ。
じゃ、これからおまえの家まで迎えに行くから。
悪かったな、こんな時間に。
ううん……わたしもちょうど珪に会いたいなって思ってたから。
そうか……。
それで、どうしたの?
ああ……。もうすぐ……卒業だな。
そうだね。
俺……おまえと……。
え?……どうしたの?
……いや……なんでもない。
(珪?)
ねえ、海岸まで行ってみない?
ああ、いいかもな。

この続きはあえて書きませんでした。