佐為
ヒカルは変わった。
藤原佐為は私との対局中のヒカルを見て思った。
自分が消えるという不安におびえながらも…
何が変わったと言われてもそれは分からないと答えるしかないくらいの些細なもの。
最初に会った時のヒカル。
そして、今のヒカル。
変わったのは…
年が経てば、自然と人は変わる物だろう。
しかし、それでは、表せない程、ヒカルの中の何かが変わった。
それは、私が現れた事で変わったのかもしれない。
反対に、私が現れた事でその変わりが速度を落としたのかもしれない。
もし、私が現れなかったら…
ヒカルは囲碁をはじめなかったのだろうか…
佐為がここにいるのは偶然。
あの時、たまたまヒカルが来て…
碁盤に近づいて…
そして、ヒカルだけが気付いた。私の声に…
そう、きっとそれは全て偶然。
それから色々な事が起こった。
それらも全て、所詮偶然の集まり。
でも、その偶然のおかげで…
三谷、筒井、加賀、和谷、伊角、越智…
その他の限りない者への挑戦を可能とした。
そして…
トウヤ アキラ
シンドウ ヒカル
この者達が出会い、戦った過程を偶然にしたくはない。
そう…
私とヒカルが出会った事でさえ…
ヒカルはどう思っているのだろう…
思わず、漏れる疑問。
それは、声となり、相手に伝わり
相手の上辺の真意を聞くことが出来る。
そして、彼はこう言った。
「俺と佐為が出会ったのは何でかって?偶然なんかじゃねぇよ!きっと、当然なんだ!ってか、俺眠いんだけど…」
あぁ、そうか…
全ては必然。
あの時、ヒカルが来たのも…
碁盤に近づいたのも…
私の声に気付いたのも…
全ては必然。
何もかもが全てが必然の渦の中で起こった出来事。
それならば…こうして私が消えていくのも必然という物なのだろうか…
「佐為?」
リックの一言・ありがたや瑠璃架様本当にありがとうございます