序章
「だからって何でオレが閉じこめられなくっちゃならねぇんだよッ。母さん」
一人の少年が扉の向こうにいる母親に叫ぶ。
「だって思わなかったんですもの、あなたの体の中に、よりにもよって魔王シオドニール=シュバイクが封印されてるなんて」
少年の言葉に母親はショックを隠しきれないでいた。
「母さんっ。こいつは、母さん達が言う魔王シオドニール=シュバイクじゃねぇよっ」
それでもあきらめず閉じこめられた部屋の中から少年は叫んでいた。
「あきらめなさい。言ってもわかってもらえませんよ」
「おまえはそれでいいのかよ」
「良くはありませんが、今は仕方ないでしょう?…それよりも私が心配なのは彼女がこのことを知ったらショックを受けると言うことですよ」
「…………だよな……。あいつ…だけだもんな…。おまえのこと…認めてるのって」
「そうですね……。今はおとなしくしているしかないでしょう。…私はもう少し眠ります…。まだ動くのは無理のようなのであなたに任せますが……無茶なことはしないように」
「わかってるよ、てめぇに言われなくたってなっ」
今の会話を聞いていた母親は悲しみに暮れる。
今の会話を展開していたのはたった一人の少年。
声や口調の違いから二人いるように思われるが、閉じこめた部屋の中には少年は一人しかいなかった。
魔王シオドニール=シュバイク。
約400年ほど前、世界を恐怖と混乱に落としいれた魔王。
だが200年後に突然、姿を消す。
そしてそれから200年……。
かつて、3つの巨大国家法人があった広大な大陸の片隅から始まった出来事。