次の新曲のためのミーティング?か、それとも雑談か。
主な作曲はチェスターだから、簡単に言えば、チェス待ちというか。
何気なしにピアノの前に座っているのは、暇つぶしのためかもしれない。
--- 出会い :コラボレーション ---
「ねぇ、クロン。今のフレーズ、もう一回弾いて」
突然、チェスターが言う。
何気なしにならしたメロディーだ。
「今、の?」
「そ、無意識に弾いてた奴」
「無意識?」
「クロン、とうとうぼけたか?」
俺がチェスの言葉に首を傾げるとマレイグがちゃかしてきた。
「俺はぼけてないっ」
反論したってマレイグはいつも通り、笑い転げる。
「ねぇ、弾いてよ。クロン」
「わ、分かったから」
チェスターに言われるまま、今し方浮かんだフレーズを奏でる。
ただし、浮かんだ所まで。
「ふーん」
感心して、チェスターが弾き始める。
で、彼も、止まる。
多分、浮かんだ所まで。
で、俺の顔を見る。
続きを弾けって事か。
俺のフレーズ、チェスのフレーズにつながるフレーズを弾く。
そして、次はチェスの番。
ふと、マレイグに目をやると子供のように目を輝かせながら見ている。
また、チェスが止まったら俺。
それを繰り返していたら。
「できたね、1曲」
チェスターが声を上げる。
1曲、完成した。
俺とチェスとの共同で。
「さすが、だな、出だしのメロディーいい感じだろ?マレイグ」
「また、そうやってクロンは調子にのる」
「クロンだけで、作った訳じゃないじゃん。チェスと共同でしょ?」
気持ちよく、通しで弾いていた俺にチェスとマレイグがけちをつけてきた。
「けど、最初の出だしは俺だし最後も、俺だ」
とは、言わずに。
「まぁ、ともかく、1曲できたからな、次の新曲はこれにしよう」
と、まとめてみる。
我ながら、いいできだと思う。
チェスとの共同作業ではあるが。
「ちょっとー何で、クロンがまとめるのさ、リーダーは僕だよ」
「では、リーダーに質問です。どうしますか?」
なんて意地悪く言うと、チェスはムーっと顔をゆがませて、言う。
「癪だけど、その案はいいと思う。マレイグもオーケー?」
「オーケーだけど、歌詞はどうするの?」
「エリンに頼む?」
俺はマレイグの言葉を受けて、チェスに聞く。
エリンとは昔なじみの作詞家。
デビュー以来、何かとお世話になっている。
俺はワール・ワーズでは詞に手を出さないようにしている。
自分が歌う場合は別問題なのだが、やはり、ワール・ワーズでは歌う人の雰囲気を大事にしたいし。
「ん〜僕が書いていい?いい詞が浮かんだんだ。軽く書いてみてみるよ。だから、少し待っててくれるかな?」
「了解、リーダー」
チェスの言葉に俺とマレイグはうなずく。
「もー、リーダーって言うのやだよ」
「でも、リーダーでしょ、あなたが」
「そうだけど、ボクが言いたいのはリーダーって呼ばれるのがいやだって事。なんかお笑いグループみたいじゃない」
お笑いとか、そう言うのがすきなくせに我らがリーダー様はぶつぶつ言ってる。
「まぁ、いいや。じゃあ、少し待ってて」
そう言って、チェスは別室に入る。
その間に俺は今しがたできあがった曲を形にしていく。
その様子をマレイグはじっと見ている。
「マレイグ、どうしたんだよ」
「えっ?あぁ、なんかさ、クロンとチェスの作曲風景見てたら、すごいなぁって思って」
「今度作ってみるか?おもしろいぞ」
「そうだな。まぁ、そのうちな。まぁ、チェスとクロンがいるからさ」
「ん?ほめたって、何も出ないぞ」
「ほめてないって」
マレイグが俺の言葉にツッコミを入れた。
***
とある音楽雑誌の表紙。
『ワール・ワーズ 新曲発表!!君は、新たなワール・ワーズの世界を知ることになる。ワール・ワーズスペシャル号!!!』