最初の印象は、細い少年だった。
少年と言うには語弊があるだろう。
少年と見間違うぐらい外見と細さだった。
大人になりきれていない、年齢というか。
ともかく、キネの最初の印象は細いと言う物だった。
連れてきた人間が逆に骨太い人間だからそう思ったのだろう。
彼の名前はコウ。
連れてきた人間がそう彼を呼んでいたので間違いないだろう。
キネ達にと言うか、キネに預けていった連れてきた人間…古い友人の『マツモト』の話だと『コウ』は、未完成のシンガーだと言う。
能力者は互いに引き合い影響しあう。
おそらくこの、コウはマツモトがシンガーだと気付いたのだからかなりの力なのだろう。
ウツの様にその力を出せないでいるから、未完成とマツモトは言ったのだ。
キネは目の前の無表情でいるコウを見ながらそんな事を思っていた。
「誰?」
不意に背後からテツの声がした。
振り向く間もなくテツはキネの隣にきてもう一度少年についてキネに尋ねた。
「マッちゃんが連れてきた子供。少しの間頼むって」
「ふーん」
興味が沸いたのかテツは少年を見つめる。
「ウツに似てる」
「似てるか?」
「顔じゃないよ。持つ、雰囲気とか、上手くは言えないんだけど」
テツの言葉にキネは内心、驚いた。
テツはおそらく、少年のまだ目が出ていないシンガーと言う能力に気付いたのだろう。
「君、シンガー?」
テツの言葉にコウはとまどう。
おそらく、自分がシンガーという能力だとは知らないのだろう。
「よく、分かりません」
「だろうね」
コウの言葉にうなずきながらテツはさらりと言う。
「シンガーだって分かったの?」
「マツモトはなんて?」
「…シンガーだろうって。まだ未完成」
「どこから連れてきたの?」
「さぁ、置いていって、またどこか行ったから」
「ちゃんと聞かなきゃ駄目だよ」
「聞く前に行っちゃったんだよ。マッちゃんもあなたと同じでテレポーターだから」
「キネはテレパシストで透視も出来るでしょ?探せるんじゃないの?」
「もう、オレの範囲外。オレの範囲は10キロ四方なのよ」
「結構増えたね」
「…言われてみれば」
「昔は2キロ四方だったじゃない?」
「能力者は互いに影響しあう。あなたの持論が立証された証拠でしょう?」
「そう言えばそうかも。ボクのテレポート範囲も広がってるし。ウツのシンガーの範囲も広がってるしね」
そうテツは言った。
「で、コウは?」
「ウツが連れてきた女の子みてる」
キネが向けた視線の先を見てれば、部屋の隅の簡易ベッドに誰かが眠っているふくらみがあり、その脇には彼らの仲間であるミツコが眠っている『少女』の様子を見ており、その様子を、コウが見ている様だった。
「コウ」
マツモトが名前を呼ぶとコウは静かに顔をマツモトの方に向け、問いかけた。
「終わったのか?」
「まぁ、ぼちぼち。お前は気にするな、コウ」
「…………………わかってる……けど」
「いいから、気にするな」
そう、マツモトはコウに言った。
その様子は兄が、弟を心配するような…そんな感じだった。
いわゆるBz編って言う奴です。
ミツコっていうのはもちろん、みっこさん。
Bzはいわゆるゲストキャラです。
キネの(昔の)能力範囲だけちょっと修正。
コウはシンガー。マツモトはテレポーター。