「Bang The Gong!!」
背後から聞こえる彼女の声と、背に突きつけられた銃口。
この状況はあまりにも滑稽で思わずテツは苦笑してしまう。
「何がおかしいの?テツ」
「君がボクに銃口を突きつけている事」
「今にも殺されそうなのに、ずいぶんと余裕ね」
「死ぬ直前でじたばたして、みっともないまねをするよりはましだと思うけど?」
さらりと言ったテツに、彼女は劇鉄をあげる。
カチャリ、と劇鉄をあげる独特の音を感じたとき一瞬ひやっとしたものの、それでもテツは冷静さを失わない。
3人の中でも一番の冷静なのはテツ。
リーダーと言う面からそうならざるを得ないと言う事もあったが、それでも激情に駆られると言う事はあまり多くないのが彼だった。
「どうする?」
『……』
「どうするって言われても困るわ。私は、あなたを殺さなくてはならないんだから」
「そう…だね」
『……くる』
「さよなら、テツ」
引き金を引く。
その瞬間、テツの姿は彼女の目の前から消える。
「…テツ?…っ」
探し始めた瞬間、彼女は凍り付いた。
「形勢逆転ってこう言う事をいうんだよ」
彼女の背に突きつけられた銃口。
背後から聞こえる、テツの声。
「…テツ、あなた、能力者だったの?」
「知らなかったとは思えないな。ボクを殺そうとしているんだから。君は冷静でとても頭がいい。そんな君が、他人を殺そうとするとき、相手の事を調べないとはとても思えない」
「……そうね……。私も、能力者が『私達』を相手にしてくるとは思わなかったから」
「…私達?」
「…そうよ」
『テレポートの準備。歌を、流す!!!』
テレパスが入る。
キネのサポートはいつも的確だ。
「ーーーーーーーーーー」
歌が聞こえる。
「……何?この、歌…」
歌に負け、膝をついた彼女にテツは
「やっぱり、君の意志じゃないね。ボクを殺そうとするのは、『君達』の意志は、この歌声には勝てないよ」
そう言い残して、消えていった。