I'm Proud song by Tomomi Kahara words by Tetsuya Komuro

 彼女は、その船が止まっている昔は「ソロモン」と呼ばれた暗礁空域内の要塞内部から外を無限に広がる宇宙を眺めていた。

 捕らえられたわけではない、ただそこにとどまっているだけだった。

 理由はただ一つ。

 もう一度、話がしたかった。
 ただそれだけだ。
 だが、それも叶うまい。

 彼女はそう嘆息し、ワインレッドの髪をかき上げた。

 船内に残っている人間は少ない。

 彼らの大部分が民間からの協力と言うことが上げられた。
 だが、そのせいで外から聞こえるはずの喧噪はない。

 不意に彼女はかすかなプレッシャーを感じる。
 よく知っているそのプレッシャーの持ち主が、自分のいる部屋の前で止り、そして扉が開く。

「ここにいたのかハマーン」
「…いてはまずかったのか?シャア」
「ココでは、クワトロ=バジーナだ」

 彼女、ハマーンの言葉を軽く訂正し、クワトロは部屋に入り込む。

「なんのようだ」
「何故、ココにいる」

 ハマーンの声にクワトロは問いかける。

「何故?私は、連邦軍に引き渡されるのではないのか?私は、ネオ・ジオンの摂政として戦争を地球連邦政府に仕掛けた。戦犯として裁判にかけられる。そうではないのか?」
「今の連邦政府を牛耳っているのはティターンズだ。やつらはスペースノイドを認めていない。ましてやジオンなど存在すら認めてないだろう。お前は裁判にかけられずとも死刑を宣告される。……それでいいのか?ハマーン」

 クワトロは淡々と言葉を発しハマーンに問う。

「………いいわけなど…ないが…。今の状況では仕方ないのでは…?」

 すべてをあきらめた口調でハマーンはクワトロに話しかける。

 一度は裏切られたのに、もう一度逢いたいと願っていた人物。
 顔を部屋に入ってきた時一度だけ向け、その後はそらしたまま、彼女は今の状況をどちらかといえば喜んでいた。

 逃げるとしても、捕まったとしても、もう二度と逢えるとは思っていないからだ。
 ましてや、地球を救った英雄としてたたえられるはずの「ロンド・ベル」でさえ、ティターンズは追い落とそうとしている。

 その状況下で、一年戦争時に連邦を恐怖に陥れた人物として悪名高い「シャア=アズナブル」と正体を明かしたクワトロ自身も危険な状況にある。

「ハマーン。サイド3に行け」

 少しの沈黙の後、クワトロはハマーンにそう告げる。

「サイド3へ?だと…。なにを言っている。私は戦犯だぞ?それをわかって言っているのか?シャア!!」
「私も、いずれそこに戻るからだ」
「????」

 クワトロの言葉にハマーンは訳も分からず彼の顔を見やる。

「今更こんな事を言うなど白々しいかと思うだろうが…ハマーン。私に、協力して欲しい…。…いや…私と同じ未来を歩んでくれ」

 クワトロ…いや、シャア=アズナブルの問いかけにハマーンは絶句した。

 無理もなかった。
 もう二度と、振り向いてもらえるとも思わなかったのだから…。

「…大佐…」

 ハマーンの声の調子が柔和になる。

「その言葉を…待っていました。今、私はあなたと同じ時を刻み始めた。シャア、あなたと共に未来を歩みましょう」
「ハマーン…」

 クワトロがそんなハマーンを見て絶句する。

「大佐?」
「気付いていないのか?ハマーン」
「?」

 クワトロはハマーンに近寄り彼女の目に浮かぶ物を人差し指でぬぐった。
 その行動で…ハマーンは自分が泣いていたことに気付く。

 幼い頃からニュータイプとして様々な実験を強いられてきた彼女。
 ニュータイプが故の感受性の強さに、気づきたくないことも感づいてしまうことが多々合った。
 そのために、同じニュータイプとして覚醒したシャアの存在は彼女の中で誰よりも大きかったのだ。

 シャアから見れば自分はただの子供でしかすぎないと分かっていても、それでも、一人の女性として見てもらいたかった…。

「ハマーン、だまってアクシズを出たこと。あの時は…済まなかった」
「いえ…。あなたのしたことは間違っていない。ただ、私が子供すぎただけです。そんな謝らないでください」
「ハマーン」

 クワトロの言葉にハマーンは穏やかな笑顔でゆっくりとうなずく。

 クワトロ=バジーナ…シャア=アズナブルが政策の違いからとは言え、アクシズを出たことはハマーンにとってかなりの衝撃だった。
 もっともその事がハマーンのネオ=ジオンの摂政としての自覚や、今回の戦いを激しくさせる原因となったのは皮肉でしかないが。

 だとしても、ハマーンはシャアがここに自分の目の前にいることが嬉しかった。

 たとえ、ココが敵(連邦)軍基地で、相手がクワトロ=バジーナと名乗っていても。

「失礼します」

 突然、入ってきたのは、アポリー。

 クワトロとなる以前からのシャアの部下である。

「お前達か。準備はどうだ?」
「大佐、準備が出来ました。隣の4番ベイに小型艇を確保してあります」
「そうか……ここからサイド3へはほど遠くないな」

 クワトロの言葉にアポリーはうなずく。

「では、アポリー、ハマーンを頼む。共にサイド3へと向かってくれ」
「大佐、あなたはどうするつもりですか?」

 さっき聞きはぐった言葉をハマーンはクワトロにぶつける。

「私は、ココに残ってサイド3より連邦軍の目をそらさねばならない。私がジオン=ズム=ダイクンの息子として名乗った為に、サイド3にあるジオン公国は連邦の監視が強くなるだろう。だが私がココにいることである程度の監視はなくなるはずだ。本国が連邦の攻撃にさらされることもないだろう」
「しかし、それではあなたが危険では」
「私の事は気にするな。ココにいるのはシャア=アズナブルではなく連邦軍の一兵士クワトロ=バジーナだ。それに、まだやることもある。分かってくれ」

 クワトロの言葉にハマーンは神妙にうなずく。

「大佐、ティターンズが今より1時間後ココに来ます」

 ロベルトがそういって入ってくる。

「分かった。では、アポリー、ロベルト、ハマーンを頼む」
「了解しました」

 アポリーとロベルトはクワトロの言葉にうなずく。

「私が戻るまでそう長くはかかるまい。その間、しっかり頼むぞ」

 その言葉にハマーンはうなずきアポリー達と共に出ていった。

「ロンド=ベルは連邦軍の特別規定により解散となる」
「特別規定…か…」
「言いたいことでもあるのか?」
「いや……。特にない」

 ブランの乗ってきた船でクワトロはマクロスを出る。

 窓の外に映るのはコロニーと月とそして地球。
 その景色を眺めながらクワトロは今後の事を考えながら、少しだけ笑った。

*あとがき*
クワハマ小説…滅多にない存在の小説です。
スパロボだから…出来る設定。
状況といたしましては以前のカミ君とユイちゃん話の後になります。
αとα外伝の間の話。
カミ君がブライト艦長によってレディ・アンの元へと逃れるどたばたあたりかな?
「〜私とともに〜」あたりはF完結編からの引っ張り(人はそれをパクリと言う)です。
あれが見たいが為に、W好きな癖して、Wストーリーを捨てた私。
すべてはハマーン様を説得し、仲間に引き入れたいが為の行動!!!
誰も、それをとがめはしないさ、DC編に行ったって!!
そのためにレディ・アンは怖いまんまだ!!

参考資料は若き彗星の肖像だっけ…。
ラストのかわいらしいハマーン様は北爪さん画のかわいいハマーン様。
「大佐っ」って呼ぶのぉ。
かわいいのよぉっ。
あの、ハマーン様を見てわたしは頭の中のねじが一本吹っ飛んだよ…。
バスローブのまま大佐の部屋に飛び込むハマーン様。大胆っ。
とまどうことなく迎え入れる大佐めっっ(その背後に流れる理由はまったく甘い関係な物ではありませんが、いろいろあって大佐の部屋に逃げ込まなくちゃならない状況でした。そこら辺は読みませう)。

そしていつでも、どんなときでも赤い人。彼が食事に女性を(ハマーン様のことを聞くが為に)誘った時も赤いクーペだった。エゥーゴの最初の機体も赤いリック・ディアス。最終的機体サザビーも赤い。もちろん赤い彗星と呼ばれたんだから最初のザクも赤い!!!
そのため、今回の壁紙等は赤いものにしてみました(爆)

そして…最後に大佐の笑った意味とは……。
それは後で出てきます。
本編のかなり後で……。そこまで書けるかな?

基本的にハマーン様サイドなので、歌は「I'm Proud」です。
朋ちゃんが一番好きな曲だそうだ。I BELIVEの方だっけ?
まぁ、両方とも朋ちゃんの1stアルバムの中に入ってます。
single版とはアレンジが違うのはてっちゃんの趣味。


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