「手…、とか」
「指、とか」
「目、とか」
「瞳、とか」
「首、とか」
「鼻、とか」
「鎖骨、とか」
「オデコ、とか」
「耳、とか」
「口唇とか」
「全部欲しい」
「な、何言ってるの?持ってるじゃない」
突然の言葉に戸惑う。
いきなり何?
「そういう意味じゃない」
「全部欲しい」
「頂戴」
断続的に紡ぎ出される言葉。
意味がわからなくって、戸惑う。
「あたしの?」
「他にねぇじゃん」
「意味、わかんないけど」
そう答えたら。
「わかって」
そう答える。
「頂戴、全部欲しいから、全部俺に頂戴」
「…、全部、君のだよ」
あたしは、君のだよ。
君はあたしの恋人で、あたしは君の恋人で。
一緒に、同じ時間ずーっと過ごしてて。
あたしは、君のなのに。
これ以上、何が欲しいの?
「俺のだけど俺のじゃない」
君のだけど君のじゃない?
やっぱり意味がわからなくって首を傾げる。
「何も触れないで」
手に触れて、指に触れる。
「何も見ないで」
顔をあげさせて、瞼にそっと触れる。
「何も聞かないで」
耳元で囁く。
「何も感じないで」
口唇が首筋に降りてきて、小さな痛みを感じる。
「俺以外のすべて」
そう言って、あたしの口をふさぐ。
狂暴な程の独占欲。
「知らなかったよ」
「何が?」
長い口づけの後、あたしは息を吸いながら言葉を紡ぐ。
「狂暴な感情があるなんて事。独占欲ってあまりにも狂暴過ぎる」
「恋愛ってそんなもんじゃねぇの?」
「わかってるけど。…ちょっと怖い」
あまりにも排他的で。
わかってるはずなのに、ココまでの感情を見せられると、怖くなる。
「でも、離す気なんてないからな。せっかく、手に入れたのに。ずっと長い間、待ち続けてたんだ」
「…あたしにもあるのかな?そこまでの思い」
「ないの?」
「……わかんないよ」
「わかるよ。そのうち」
そう言って、君はあたしを抱きしめる。
狂暴な感情のを見せた後の腕はあまりにも優しかった。
この手を離さないで。
離す気なんてないから。