カウントダウンの至近距離 切ない10のお題・5・後少しの距離

 手を伸ばせば届く距離。
 それがひどくもどかしい。
 意識をしたら、お終いだと頭のどこかで考えていたはずなのに。
 手が伸ばせなくなった。

****

「あのさぁ」
「…何?」
「…いや、別に…」

 呼んで振り向いてくれても何を言えばいいのか分からない。

「言いたいことがあるなら、言いなさいよっ」
「…何でも…ないっていうか…説明しずれぇんだよ」

 弁解しながら、彼女の様子をうかがう。

 触れてもいい?

 一緒に暮らしてはいても一定のラインは引いている。
 暮らしている理由は、昔からの知り合いで、彼女を放っておけなくて、他に行くところもないんだったら…誘ってみた。
 なんて理由が後から後から付けられていく。

 ホントは、ホントの所は、言えないでいるのに。
 ホントの所に、気づいてしまったのに。

「どうしたの?」

 不意に彼女が顔を近づける。
 その近さは、眉毛の一本一本がはっきりと認識出来る近い位置。

「熱…あるの?」

 心配そうに見つめる彼女は俺をどう思っているのだろうか。

 昔からの知り合い。
 あの戦いの最中に再会した。
 昔からの知り合いと言う理由から、いつも一緒にいた、相手。

 聞きたいのに聞けない彼女の心の奥。

「大丈夫?」

 おでこに触れようとする彼女の手をつかむ。

「な、何?」
「大丈夫だよ。オレは、平気。お前は、お前の方は平気なのかよ」

 怖がらせないように笑みを浮かべて聞く。

「平気だけど…」

 息がかかるぐらいの距離は、あまりにもぎりぎりのラインで動いているオレ達に似ている。

「あ、あのさぁ」

 とまどった表情を見せた彼女を見て、オレは一つ息を吐く。

「…何?」

 自分の気持ちに気づかない振りはやめよう。
 そろそろ、素直になってもいいと思う。

 それでも、彼女の気持ちが落ち着くまでをカウントダウンしながら。

*あとがき*
相変わらず切なくない内容は続く。
ちゅーしそうな勢いの至近距離までしか近づけないって考えたら切ないかも知れないけど。
体質的に切ない話しかけないのかなぁ???


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