映し出される感情(物書きさんに30のお題より:16・涙)

 泣くなって言われたって涙腺弱い場合だってあるし。
 また泣くって言われたって、好きで泣いてる訳じゃないし。
 ただ、泣けばすっきりするし。ただ、理由はない。

 泣けないことだってある。
 泣くことを忘れたことだってある。

 だから、泣いてるときは泣きたいからだと思ってくれるのが一番良い。

****

 目に浮かぶ涙を、指で掬う。
 地球で、宇宙で、月で、君は涙を流す。
 泣かなくなったのはいつだろう。

 いつの間にか泣かなくなった彼女の涙を、俺は久しぶりに見た。

「何?」
「泣いてる顔見たの、久しぶりだなって思って」
「…そうだっけ?」
「もしかして、操縦席では泣いてた?」

 おどけて言った言葉に彼女は首を振る。

「泣いた記憶ないかな。だって、泣いたら、前見えなくなるじゃない」

 ひどく現実的なことを彼女は言う。

「…泣きたくなかったのかもしれない。泣いたら、止まらなくなるから」

 そう言って、次々とこぼれる涙を彼女はぬぐおうとしない。

「ホントは…泣いたって、良かったんだ。感情がいっぱい表に出てたお前を見るのは楽しかったから」
「…なによ、それ」

 ようやく、涙をぬぐい、彼女は俺をにらみつける。
 それでも、涙は次々とあふれてくる。

「…だから、すっきりするまで泣いちゃいな。泣くとすっきりするだろ?泣いたら、どっか出かけようぜ」
「………ありがと…」

 あげていた顔を俺の胸に預け、小さくつぶやく。

「もう、お前が泣けなくなるようなことは起きないから。安心してろよ」

 俺に寄りかかる彼女の体に腕を回す。

「…ありがと…わたしが泣けるようになったのは君のおかげだね、きっと」
「気にするなって。俺はお前が苦しむのは見たくないから」

 だから、ここに連れてきた。

「うん、だから、ありがと」

 そう言う彼女の声はゆっくりと小さくなる。
 久しぶりに泣いた反動だろうか。
 彼女は静かに眠りに入る。

 彼女の涙はありとあらゆる感情を映し出す。
 うれしいとき、楽しい時、悲しいとき、悔しいとき。
 全ての感情をそのしずくに映す。

 彼女が泣けなくなるなんて事がないように、俺は、彼女を守りたかった。

*あとがき*
コロニーカップル。
お題で書いてたコロニーカップルの1つの話。
コレが発展して切ないお題になった。

泣けなくなるって結構つらいのかもしれない。
泣きたいのに、泣けない。
彼女の状況はそんな感じだったんだけど、彼と一緒にいることで泣けるようになりました。
と言う話。


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