全天モニタから見える外の景色は、敵か味方か区別が付かないほどの混戦となっていた。
惨状に顔を上げると、透き通るほどの青い空が映し出されていた。
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コロニーのすっきりと晴れることのない筒状の空は、天の町並みが見えないように雲を漂わせている。
「コロニーは、すっきり晴れる事ってないわよね」
「まぁ、6キロ上空に、家や人が住んでいるからな。それが見えたら、怖いだろ?」
オレの言葉に、彼女は苦笑してうなずく。
「地上にいたとき、真っ青な空が怖かった」
「……」
つぶやくように言った彼女にオレは言葉をなくす。
「地球の空の青ってスゴく透明だから。でも、どうして怖く感じるのかは分からなかった。…最初は研究所にいたから。その時は綺麗だなって思ってた。でも……、どこまでも、透き通った空の青を見てたら、不意に怖くなった。この中で、自分はひとりぼっちなんだって事を教え込まれたみたいで」
そう言いながら、彼女は俯く。
彼女と再会して…記憶の中にある透明な青い空は最大の混戦の中で見た青だ。
あの青は、ひどく、透明で、たくさんのユニットが壊れていく、あの雰囲気の中では場違いなほど、綺麗だった。
あの後、彼女はひどく泣いたのを覚えている。
「…だから、コロニーの空を見たときほっとした。雲があるから」
「そっか」
「うん…」
「やっぱ、地球とは違う…か…」
オレの言葉に彼女はうなずく。
地球にも雲はある。
まねたコロニーにも雲はある。
コロニーは地球をまねて作られたものだから当然だ。
でも、コロニーの雲と地球の雲はどこか何かが違っていた。
「今は、雲があった方がいいな。なんか、落ち着くかも」
「…コロニーには必要不可欠だからな」
「そうだね…」
白い雲。
たとえ、それが空の大地を隠しているものだとしても。
雲は必要だった。