十五夜 〜たとえば、それがたとえだとしても〜
 月が煌々と照りつける夜。
 天人の技術によってたてられたビルは宇宙港タワーを中心として建てられているが、すこし離れると、まだ昔の雰囲気が漂っている。
 もっとも街灯をつけられて、昔のように明かり提灯をもって歩く、というわけでもないが。
 宴会の帰り道、神楽は傘を相手にダンスを踊る。
 それを見てるのは後からついてくるオレとヅラとヅラのペット(?)のエリザベス。
 新八はお妙と一緒に帰った。
 宴会、ホントは宴会と言うものでもなく、珍しく入った高額依頼料のおかげで慰安を兼ねた飲み食いだった(メインは飲みと言うよりも食いだが)。
 そこに割り込んだヅラ達+真撰組。
 案の定大乱闘にはなったが、その後は何故か大宴会となった。
 大乱闘の末が大宴会なのか未だに分かってない。
「神楽〜危ねえぞぉ」
「だいじょう〜ぶアルよ〜銀ちゃん〜」
 傘と踊る神楽は楽しそうにくるくる舞う。
 酒が軽めに入ってるから実際問題しゃれにならない。
 なんだかなんだ言ってもまだ神楽は10代前半の少女と言っても差し支えない。
「銀ちゃんも踊るアル〜」
「オレは踊らねえよ」
「何でカ〜楽しいアルよ〜」
「楽しいか楽しくないかって言う問題で言ってるんじゃないの」
「お酒入ってて、お月様も綺麗だから踊る。それ理由じゃないアルか?」
 ウサギじゃねえんだ。
 踊る必要もねえだろうよ。
「つまんないアルなぁ、エリー、一緒に踊るアル〜」
 そう言って神楽はエリザベスの腕を掴む。
『リーダーの頼みなら』
 エリザベスの持つ手書きの看板はそうかかれる。
 相変わらずの早業だ。
 っつーか、何でエリザベスもリーダーって呼ぶよ。
 楽しそうに踊るエリザベスと神楽。
「エリー、もっとはねるアルよ」
 そう言って神楽は月を背後にはねるように踊る。
「うーさぎ、うーさぎ。何見てはねる。じゅーごやおー月さま、見てはーねーるー」
 微妙に調子っ外れの音程でオレの隣を歩いているヅラが歌う。
「ヅラ…お前がそんな歌うとは」
「悪いか?それと言っておくが、ヅラじゃない、桂だ」
 相変わらずの文句はさらりとかわして、
「悪いとは言ってねぇよ」
 と答える。
「何を見てうさぎと思ったんだ?」
「戦闘民族、夜兎。その戦闘の別の意味を知っているか?」
 急にヅラは言い始める。
「何だよ」
 別に興味も何もなく、オレは聞く。
 そう言えば、神楽は夜兎だったな…なんて思いながら。
「踊るように戦う。戦踊民族、とも言われているな」
 そう、ヅラは言う。
「別に、関係ネェだろ?」
 確かに、踊るように戦ってるかも知れない。
「踊りは戦意を鼓舞するものでもあるしな」
 勝手なことをつらつら言い始める。
「ヅラ〜何が言いたいんだ?」
 あまりも気のない振りで問いかける。
「ウサギは、月が恋しいそうだ。いつ、月に連れてかれるとも知れぬぞ」
 そう言ってヅラは、曲がり角で止まりエリザベスを呼ぶ。
「もう、分かれ道カ?ヅラ」
「そうだ。リーダー」
「そうか、もうちょっとエリーと踊って居たかったけれどしかたないアル」
「エリザベスも、オレも攘夷活動に忙しい、時間が空いたときにまた頼む」
「分かったアル〜ヨ〜」
 楽しそうに話すヅラと神楽。
「神楽」
 呼べば、
「銀ちゃん待つアルよ〜」
 そう、声が帰ってくる。
「ほら、帰るぞ」
「フラフラアルよ〜」
 そう言いながらフラフラと回りながら神楽は俺の元に来る。
「あたりめえだ酒入ってるくせにぐるぐる回ってフラフラになるのは当然じゃねぇか」
「銀ちゃん気持ち悪いアル〜」
「げ、はくなよ神楽」
「だっこしてくれたらはかないアル」
「オレの上には頼むからしないでよ」
「しないアルよ〜」
 抱えるように抱き上げて、その場から歩き始める。
 けど、まだ姿の見えるヅラに向けて、言葉を投げる。
「ヅラ、勝手に月になんざやんねぇよ」
「ヅラじゃない、桂だ」
「じゃ、余計だ」
「ウサギが好んだらどうする?」
「ヅラ、月なんかより、光だったらどうするよ」
「…銀色の光と言いたいつもりか?」
「さてね」
 化かし合いなんて楽しくネェな。
 としても、月なんぞやれねぇよ。
「月って、光って、ウサギって何の話アルか?」
 眠そうな神楽が聞いてくる。
「月がお前を呼んでたらどうする?」
「銀ちゃんはどうして欲しいアルか?」
「お前はどうするかって言う話聞いてんの」
「銀ちゃん次第アルよ。銀ちゃんが行くなって言うなら、行かないで居てやってもいいアルよ」
「お前ねぇ」
「さっさと態度決めろ、天パ」
「態度って何だよ」
「可愛い可愛いウサギさんは月よりもお月様の光を選んでるって言う話アル〜」
 そう言って神楽は眠り込む。
 …………そこまで言って寝る?
 人が抱っこしてるっつーのに。
 重いんだぞ、このヤロー。
 本気で寝たようで、神楽は重い。
 それにしても…。
 全部聞いて理解した上で答えた神楽。
 可笑しくて、思わず笑う。
 俺が肩だけふるわせて笑うから、落ちそうになる神楽を何度も抱え直しながら万事屋に戻る。
 月だけが、静かに夜道を照らしていた。
あとがきアルよ〜
お風呂で今日は満月あるよ〜。なんて思ってたら突然浮かんだ、銀時vs桂(エリザベス)の兎争奪戦。
お気に入りは銀ちゃんとヅラの化かし合い。 「ヅラ、勝手に月になんざやんねぇよ」
「ヅラじゃない、桂だ」
「じゃ、余計だ」
「ウサギが好んだらどうする?」
「ヅラ、月なんかより、光だったらどうするよ」

って所。(桂は月にあるとされる木。転じて=月ってこと)
浮かんだとき私天才って思ったよ!!!
お気に入りぱーと2は調子っぱずれのヅラ。
あーさんってびみょーに調子っぱずれですから…。
歌聴いたことある人なら知ってると思うけど。
でも、なんでわたし聞いたことあるんだろう………。


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