「はぁー毎日毎日あっちこっちで政権争いしてて体痛いあるよ…」
とぼとぼと国に広がる竹林を歩く。
広い川を渡ったら、そこには見慣れないのが居たある。
「ん?あそこに見慣れない奴がいるある」
近づいてみればそれは我と同じもの。
「わー、新しい国あるね。ちっちゃいある〜」
周囲を見ればそこは狭苦しい所。
「こんな狭いところで生まれて大変そうあるね。我は隋ある。名は王耀颯輝(颯輝は字) ある。分からない事があったら聞くよろし」
周囲はうるさい奴が多いアルよ。けど、新羅は可愛いあるよ。
天竺はいいやつあるな。
仏教の事もうちょっと聞きたいあるよ。
それより、今は目の前の国ある。
「おまえ、お名前なんというあるか?」
「こんにちは、日の落ちるところの隋さん。私は名は豊葦原千秋長五百秋水穂宮倭命(とよあしはらのちあきのながいほあきのみずほのみややまとのみこと)。日出づる国、日本と申します。」
「し、失礼な奴ある!!!」
倭命(ヤマトノミコト)なんて堅苦しいある。
お、日本が来たある。
……逢うのは5回目のはずなのに、何で成長してるあるか?
「日本、その堅苦しい名前何とかするある」
「そう思うされましても、我が国は豊葦原千秋長五百秋水穂国と言う正式な名なのです。日本と名乗ったのは日の本(日が昇る根本)から来たという意味を分かっていただけるかと思って……」
そんな事はしらねーある。
まったく、あの時思い出したら腹が立ってきたある。
「隋さん、ちょっとこの『周礼(儒教の本。官制(十二国記好きな人はときめける)とか条坊制について書かれてる)』について教えていただきたいのですが」
「だから、我の諱(本名の事、大体は秘密にされている)は耀ある。お前だけに教える諱あるよ。でも普段は字(秘密にしてる諱の代わりに呼ぶ名前)の颯輝と呼ぶある」
「で、この条坊制についてお聞きしたいのですが…」
「我の話聞くあるよ!」
倭命(しかたねーからよんでやるある)はぶつぶつ言いながら本を読んでいる。
我の国が伝えた儒教ある。
孔子さんに我も教えてもらった事あるね。
すごく頭が良かったある。
彼のおかげで国も良くなったあるよ。
………何年かに一度体痛くなるあるけどな。
今も少し痛いある。
全く、喧嘩ばっかりして頭痛いあるよ。
「うがー」
「ず、隋さん、どうしましたか?」
倭命はわたわたしながら我を見るある。
「なんでもねーあるよ」
「そうですか」
我の言葉に納得したのか倭命はじっと……我を見るある。
やっぱり納得してねーあるな。
「………遣隋使をココまでにしたいと思います」
は?
「ご自愛ください」
そう言って倭命は我の家から遠く離れた島国へと帰っていった。
*****
目が覚めたとき、目の前にいたのは無骨そうな男だった。
「名前なんて言うある」
「……本当にいるんだな」
「何があるか」
「王耀颯輝。間違いないか?」
問いかける男に頷く。
何者あるか?
我に気づく者。
「李の姓はいるか?」
「李?」
「オレは李淵。皇冠をかぶるものだ」
「そうあるか……」
唐、それが新しい我の家の名。
そして、李淵は唐となる国の新しい皇帝。
「李はいらねーある。どうせ、使う事もねーあるよ」
そう我は言う。
国が変わる。
倭命は気づいてたあるか?
我の家の名が変わる事を。
だから、遣隋使を止める言ったあるか。
なんで直接言わないあるか?
ちゃんと言えば、答えられたかも知れないというのに……。
初めてあったときから、倭命は何を考えているかよく分からないある。
でも勉強熱心で、次々といろんな事を吸収していくから教えるのも楽しかったある。
最初は仲良くなるのも難しかったあるけどな。
「颯輝様、倭国から倭命と名乗る者が」
李淵が軟禁されたとき初めてあった李世民。
どんな荒くれ者かと思ったら制度を次々と整えてびっくりある。
隋の時の律令制度を受け継いで発展させたある。
「律令制度について教えを請いたいのですが」
「……久しぶりの挨拶もなしあるか?」
「お久しぶりです……唐さん」
「……………………我の名前は王耀颯輝あるよ。何度言えばわかるあるか?」
「…………………………唐さん、コレを売るところを知りませんか?」
「………ぎゃ〜〜〜〜〜何をいうてるあるか〜〜〜」
倭命が持っていたのは、李世民の収集品。
金銀、瑠璃(ラピスラズリ)に玻璃(水晶:石英)、金剛(ダイアモンド)珊瑚、瑪瑙、真珠、翡翠。
遠く波斯(ペルシャ)の織物、羅馬(ローマ)の硝子の器。
「ど、どうしたあるか」
「いただきました…。が、私が欲しかったのは、書物ですので……こちらは邪魔になります。金も、銀も、玻璃も、珊瑚も、翡翠も持っておりますので。……さすがに金剛や瑪瑙は珍しいですが」
そう、倭命は淡々と言う。
「本なんて買ってどうするあるか?」
「学ぶべき事は山ほどあります。私はまだまだ若輩者。年長者に教えを請うのは当然の事だと思われませんか?」
「そ、そういうもの……あるか?」
我の言葉に倭命は頷いて手に持っているそれらを我に突き出す。
「コレ…少ないものではありますが……いつも、教えていただいているお礼だと思ってください」
「そ、そんなものいらねーある。くれなくても教えるあるよ」
「ありがとうございます」
倭命は勉強熱心ある。
ココまで勉強熱心とは思わなかったある。
倭命が余った宝石を持って売りに行くとは椅子に座っている李世民も思わないだろう。
本やその他いろいろを大量に買っていく倭命は命がけの海を渡る。
いつも思うある、無事に帰れればいいあるが……。
*****
とうとうこんなことになったある。
百済も大人しくしていれば新羅だって手を出さないはずだったのに……。
「颯輝様、百済が日本に救援を頼んだようです」
「そうあるか……」
倭命はこうなる事に気がついていただろうか。
知らなかったはずある。
新羅が百済を攻め滅ぼすなんて……。
そして生き残った百済の王国が、日本に助けを呼んで、我と新羅の連合軍と戦う事になるとは…。
結局、その後30年近く、……倭命は唐には来なかった。
*****
「颯輝さん、お久しぶりです、日本です」
「は?」
「豊葦原千秋長五百秋水穂国改め、日本と申します。名は今まで通り、豊葦原千秋長五百秋水穂宮倭命で構いません」
「…………だから、長いある!!!」
久しぶりにあった日本こと、倭命はりりしく青年の様になってきたある。
「それは何というあるか?「山上復有山???」
「山の上もう一つ山と言う事で『出』ですが」
「ややこしいある!!!」
「文字遊びですよ。漢字ありがとうございます。コレを使っていろいろ遊べるようになりました……」
「遊ぶなある!!!」
倭命が漢字で遊び始めたある……。
なんで文字で遊ぶあるか。
「そうそう、きょうは報告したいことがあって、こちらに参りました」
「何あるか?」
「ハイ、以前教えていただいた、『周礼』を元に、都を整えました…。連れてきたかったのですが、何分恥ずかしがり屋なもので、こちらに来てはもらえませんか?」
「日本にあるか?」
「えぇ」
倭命は我の言葉にそう頷いた。
「今まで自由にさせていたのですが…国の制度を整えるに辺り、都も整えなければならぬと上司も申しましたし……窮屈かとも思ったのですが……」
「都を整えるのは必要ある。国の玄関となるような場所ある。そこはその国の力を見せつけるところあるよ」
「えぇ、この長安を見ればわかります」
我達が居る部屋からは長安の町が一望出来るある。
この先これ以上の都は無理だろう。
そんな事を思い浮かばせるぐらいスゴい都ある。
「いつか、このような都を作りたいです…」
「その新しい都は、長安を参考にしてねえあるか?」
「はい、この長安が『周礼』を元に作られた都だとは思っていませんでしたので……」
「そうだったあるか……」
唐が出来た頃、倭命は、『周礼』や他の本を学ぶのに精一杯だったはずだったある。
「いいある。行くある。久しぶりに、日本も見たいある」
そうして、我は倭命と共に、日本の地を踏む事になったある。
*****
朱雀大路を掛けてくる少女が居る。
「水穂兄様、お帰りなさい」
「、今帰りました」
10ぐらいの少女ある。
「唐はどうでしたか?兄様の唐の話がまた聞きたいです」
裳の上に内衣、袍を身につけ、前髪をあげ、後ろ髪の端を結い上げた少女が期待を込めて倭命を見上げている。
「、お客様の前ですよ。きちんとなさい」
倭命の言葉にようやく我が居る事に気がついたらしい少女は驚いた様に直立してしまったある。
「怖がらなくても良いあるよ。我は何もしないあるよ」
「颯輝さん、彼女がこの都。この藤原(現在の橿原)の地に立つ新益京(あらましのみやこ)です。名を橿葉毘売命(かしはひめのみこと)と言います。橿葉、彼は唐国、王耀颯輝さんですよ」
「……唐国様っ」
そう言って橿葉毘売命は倭命の後ろに隠れてしまう。
「、失礼ですよ、きちんと挨拶なさい」
倭命の言葉に頷いて、橿葉は倭命の隣に来る。
「…唐国様、失礼いたしました。私は豊葦原千秋長五百秋水穂宮倭命の妹、藤原新益京橿葉毘売命(ふじわらのあらましのみやこ、かしはひめのみこと)と申します」
だから、長いし固いある!!
「良くできました」
「ありがとうございます、水穂兄様」
「それある!!!」
さっきから感じてた違和感ある!!
なんで倭命は橿葉の事『』と呼ぶある。
で、橿葉は倭命の事『水穂』と言うある!!
なんであるか?
我は呼んではダメあるか?
「あぁ、それは呼び名というか普段の名ですね。颯輝さんの所の字の様なものです。その長いと颯輝さんがおっしゃる名前は正式な名なのです」
「なら、我もそっちで呼ぶある、構わねーあるな」
もう決めたある!!
嫌だって言われてもそう呼ぶあるよ〜〜〜。
「構いませんよ」
あ、随分とあっさりあるな。
「ようやく、国を整えられた記念だと思ってください。後は……………颯輝さんが驚くのを見ているのが面白かったというか……」
からかって遊んでたあるか〜〜。
倭命……水穂が不良になったある。
「何を人聞きの悪い事を。両方同じなので構わないのですよ。どちらでも」
そう言って、水穂は穏やかに笑う。
「水穂兄様、颯輝様を案内しても良いですか?」
「えぇ、お願いします。」
「はい。颯輝様、どうぞこちらへ、新益京をご案内しますです」
「、我の事は水穂と同じ様に兄と慕うよろし」
「…………………………………………………」
な、なんでそこで黙るあるかぁ!!!!!
全く、我をなんだと思ってるあるか!!
*****
承和5年(838年)、日本に踏み入れた我は都の位置が変わっていた事に驚いたある。
「今はなんて言うある?その前は平城京(ならのみやこ(平:平坦な、ならしてある+城京))だったあるな」
「平安京(たいらのみやこ)です、にーに。今は、万代宮(よろずよのみや)って呼ばれているんです」
「よろずよのみやあるか……。永遠に続くという意味あるか?」
「はい、水穂兄様が楽しそうに教えてくれましたです」
は脇息にもたれながらそう言う。
香炉からは薫物の香りがする。
沈香か。
知ってる香りなので安心した。
久しぶりに日本に来たら、都が奈良から京に変わっていたある。
長安を模したその都はやっぱり城壁は無く、大丈夫あるか?と問えば
「誰が攻めてくるんですか?」
とは笑ったある。
心配しているのにそれはねーある。
日本は島国ある。
だから都を落とされると言う事もねーある。
常に北と西からの侵略におびえてくる我とは違うある。
「日本は落ち着いてきたあるな」
「はい。奈良時代とか、遷都直後はいろいろありましたけど……40年も過ぎれば……。って言いながらいろいろあると思うんですけど、今の所は安心です。山部王(桓武天皇の親王時代)が望んだとおり、平安になってるのです……。でも…」
「不安あるか?」
「……少しです……」
水穂から聞いてたある。
遷都直後に大事件(薬子の変:平城天皇の変)が起って大変だったって言う事を。
「、御簾内に殿方を入れてはならないと言われませんでしたか?」
不意に、御簾が持ち上がり、水穂が入ってくる。
「にーにです、水穂兄様。問題ないです」
「全く、身内にはあまい」
そう言って水穂はの言葉に嘆息する。
が、水穂も人の事言えねーある。
水穂が一番、に甘ーある。
「コレ食べるよろし」
二人に土産をと思って持ってきた物を取り出す。
今日は中秋節ある。
月がまあるいある。
「菓子ですか?」
折敷の上に菓子をのせる。
「月餅あるよ。月見には必要ある。食べるよろし」
「中秋節でしたね。では、こちらもどうぞ」
水穂が銚子と杯を出す。
「御簾もあげましょう」
そう言って巻き上げれば綺麗なまあるい月が見えたある。
「にーに、水穂兄様、月が綺麗ですね」
「えぇ、とても」
「綺麗ある。見事にまあるいあるよ。美しいある」
「あぁ、杯に映ってますよ」
水穂の言葉に杯を覗けば月が映っている。
「今がとこしえに続けばいいあるなぁ」
この空気がなんだか良くて。
水穂とと我とのんびり月を見るこの時間が永遠に続けばと。
「何を…おっしゃるかと思えば」
「酒に酔っただけある」
そんな風にごまかした。
*****
その時を最後に、日本とは交流が途絶えた。
もっとも、唐はその間に滅び、紆余曲折の末、宋となり、……蒙古に無理矢理、元と国名を変えさせられて、本当に久しぶりにあったのは……明になってからある。
………400年近くあってなかったと水穂は様変わりしていたある。
「お久しぶりです、颯輝さん。豊葦原千秋長五百秋水穂宮倭命改め、本田菊と申します。コレより先は本田菊とお呼びください」
久しぶりにあった水穂は……本当に様変わりしたある。
空気が柔らかかったのに、何処か猛々しくなったある。
腰には刀を差している。
「……また名前が変わったあるか?」
「またとは……人聞きの悪い事を。変わったのは、元寇より前の事です…。亡き後鳥羽上皇より、本田の姓と菊の名を賜りました」
「はどうしてるある?」
「室町にいます。あの子は清盛公が台頭してからいろいろなところに歩く事になりました…もとより分かっていましたが。今はこの都より南にいった室町の地にいますよ。元気ですから顔でも見せていってください」
「それはちょうど良かったある。倭寇について取り締まりの協力して欲しいあるよ。おちおち世界を巡れないある」
「世界……ですか」
「そうある。蒙古が我の家に居座ってたときに聞いたある。世界は広いあるよ、だから世界中に我の名を知らしめて貢ぎ物ゲットするある」
「………ゲットとか言わないでください……まったくなんですか…そんな事するんですか」
「そうある。楽しみある〜〜。鄭和と一緒にいってくるあるよ〜〜」
*****
「にーに!!お久しぶりです」
「久しぶりあるな、」
小袖をかずいてはやってきたある。
「鄭和さんって言う人今、義満様にお会いしてます。にーにと一緒に来た人ですよね」
「そうある。倭寇のこと相談に来たある」
「どのくらい居るんですか?」
「すぐに立つある。そしたら一旦明の港に戻って、大航海ある!!」
「大航海?世界を見るって鄭和さんがいってたです」
「そうある。土産物いっぱい持ってくるある」
「はい、楽しみにしてます」
は我の言葉に本当に楽しみにしているのか頷いた。
世界は広い、いつかや菊にも見せたいと思ったある。
……まさかイスパニアが来て、をヨーロッパに連れて行くとは思ってもみなかったあるが……。
*****
「にーに、どうしたの?」
懐かしい香りがしたような気がして目を開けたらそこはが我の顔を覗いてたある。
???えっと、
起き上がり辺りを見渡せば、そこは日本の東京にある菊の家だったある。
ちょっと、夢と今の現実がつかないある。
「にーに、どうしたの?ぼーっとしちゃって。麦茶いる?」
はそう言って氷の入ってグラスを我に渡してきたある。
一口飲めばのどが渇いていた事に気づいたある。
「熱射病にならないように気をつけてくださいね」
「ならねーあるよ。我は昔からキチンときたえてあるからな」
「そうでしたか。それは存じませんでした」
菊は昔と変わらない表情で笑う。
我も笑ったある。
「今日は中秋節あるよ。月餅たべるよろし」
「そんなカロリー高いのなんて食べられませんよ。十五夜はススキと団子を備えるんです」
「菊ちゃん、あたしみたらしじゃなくってきなこで食べたいなぁ」
「じゃあ、両方用意しましょうね」
「うん」
「だから、月見には月餅あるって言うてるある!!全く昔からお前達は話聞かねーあるな」
「何をおっしゃいますか、耀さんだって話を聞かないじゃありませんか。我が国では、昔より、月見には団子とススキを備えると決まっているんですよ。ねぇ、」
「そ、そうかな?」
「うわ〜〜〜〜ん、また魔改造されたある!!!」
いつも変わらないある。
こんな調子でこの先も進むような気がしたある。
*****
いつかの夢を見るある。
「を傷つけたら我が許さねえあるよ。イスパニア」
「姫さんを傷つけるつもりはあらへんよ」
「………お前、ヴェネチアーノとあった事あるのか?」
「…………ちびあるな」
「ちびって言うなっっ」
いつかの夢を見たある。