師走というのは、のんびりゆったりしてるお師匠さんも走り回るから、師走なのだという。
その気配を存分に見せながら、本田邸は阿鼻叫喚の様相を漂わせていた。
まぁ、くどくど言いましたが、要するに、『修羅場です』
コタツテーブルの上に広げられるは、原稿用紙と漫画製作用のペンとスクリーントーンとパソコンと。
「、BGMをお願いします」
「了解」
流れるBGMはなんかそぐわない。
「そんなBGMで大丈夫か?」
「大丈夫だ問題ない」
「一番いいBGMを頼む」
なんか某ゲームのネタで遊びつつ、BGMを変える。
「………、一番、いいBGMですか?」
「良いじゃないですか、心洗われませんか?」
バッハのカンタータ、この時期にはぴったりじゃないか。
「確かに、世の中的にはぴったりでしょう。教会音楽ですし。ですが、この場には全くふさわしくない」
「…気分だけでもクリスマス気分を味わわせてよ、菊ちゃんのバカ!!!」
「バカとは何ですか、バカとは!そんな口の利き方する娘に育てた覚えはありませんよ」
「っていうーか。育てられた記憶ないし」
「私だって、好きでクリスマスに原稿をやってるわけじゃないですよ。仕方ないじゃないですか、まさかの新ネタ降臨!コピ本出したくなったんですよ」
今日はまさかのクリスマスイブ。
まったりケーキを食べながら『リア充……いいなぁ』思いながらとフランシスさんからもらったシャンパンを飲みながらTVでも見ようかななんて。
思ってお出かけから帰ってきたら、お茶の間のコタツテーブルには原稿が散乱してたわけです。
どういう事?
って首傾げたあたしは間違ってないよ。
今日、24日だよね?(ドイツ、イタリア、イギリスの日付変更時に何故かメリクリメールが来たんだよ)。
菊ちゃんが冬コミ出すための原稿は先週に終わって、印刷所に入稿して、後はできあがるのを待つだけだったはずだった。
そう、それだけだったはずなのに、何故か原稿用紙が散らばり、菊ちゃんが原稿用紙と格闘してた。
「何してるの?」
と聞いたのは言うまでもない。
で冒頭の会話に戻る。
菊ちゃんが『突発新刊出したい病』にかかるのは分かる。
何かに目覚めたんだろう。
だからって、年末のクリスマスの時期に目覚めなくたって良いんじゃないかって思うんだよね……。
「菊ちゃん、お腹すいた。チキン食べたい、ケーキが食べたい」
「ケン○ッキーでよろしければ、買ってありますよ」
「おぉ、く〜りすますがことし〜もやってくる〜♪。食べよう食べよう」
あたしが台所に向かうと菊ちゃんがため息をつく。
「、先にココを片付けましょう。が言うとおり、チキン食べて、ケーキ食べて、シャンパン飲んでTVでも見ましょう」
「原稿はいいの?」
思わず聞いてしまう。
新ネタのコピ本を出したいと言ったのは菊ちゃんだ。
それを見ただけになんだか、申し訳ないような気持ちになる。
「コピー本ですからね、目的の場所は書きました。次回の新刊への予告のようにしてしまえば…私だけでも大丈夫ですよ」
なんて菊ちゃんは言う。
「いいの?」
「はい。が来て初めてのクリスマスだと言う事を忘れてました。今までは一人だったので、気にせず原稿をしていたのですよ。ですが、今年はと一緒。コレもいわゆるリア充って奴かもしれませんね」
そう言って菊ちゃんはテーブルの上を片付け始める。
「……来年は、ドイツかイタリアかイギリスでクリスマスする!!!ってさっき思いついたんだけど……やっぱり日本で菊ちゃんと一緒に家族なクリスマスするね」
うん、それがいい。
へへへ、なんか幸せかも?
「……」
「なあに?」
「一つ聞いても良いですか?」
「いいよ」
一つって何聞かれるんだろう。
「何故、その三ヶ国なんですかーーーーーーーーー!!!」
え………。
な、何でだろう。
「な、何となく?」
深い意味は………ないよね?
「なんで言った貴女が疑問系なんですか」
いやぁ……だってうん。
「じゃあ、、持ってきてください」
「了解!!」
片付いたコタツテーブルの上。
原稿とかはあたしがチキンを持ってくる間に部屋に持って行ったらしい。
すっきりした居間はチキンとケーキとシャンパンだけでちょっと寂しいけどこんなのもありなんだよね。
「クリスマスが終わればお正月の準備。大掃除もしないとなりませんね」
「大掃除か……この家広いからなぁ。掃除が大変だ」
「普段出来ない所をやるというのが大掃除のポイントです。まぁ、今はクリスマスを楽しみましょうね」
「うん」
菊ちゃんがグラスにシャンパンを注ぐ。
シャンパンゴールドがグラスに輝く。
「では、、メリークリスマス」
「メリークリスマス。菊ちゃん」